経済倫理=あなたは、なに主義? (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062584197

作品紹介・あらすじ

いま私たちは、かつてないほど発達した市場経済の中に生きている。そして私たちは、あるときには市場の「効率性」を評価し、またあるときには市場の「失敗」をきびしく批判したりする。では、市場社会はどのように倫理的な評価/批判をされるべきだろうか。そのような問いに対して、現代のイデオロギー-リベラリズム、ネオリベラリズム、ネオコン、リバタリアニズム、平等主義、共同体主義、マルクス主義-は、いかに答えうるのか。そしてあなた自身は、なに主義なのか?時事問題や、あなた自身の日常的で素朴な倫理感覚からスタートして、さまざまな思想のエッセンスを、実感的かつ体系的に理解できる、驚きの一冊。

感想・レビュー・書評

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  • あるべき社会に関する様々な思想を、様々な評価軸を使って分析していく。細かな分析はともかく、自分で考えていく上で参考になる評価軸がいくつもあり、そうしたカタログ的な使い方のできるユニークな本だと思った。

  • 経済倫理に関する具体的な政策や価値観についての質問に答えていくことで、自分のイデオロギー的な傾向を明確にし、自分自身の立場に一貫した説明を与えるための手助けとなってくれる本です。

    質問に対してどちらがいいと明確に答えられない場合は、たとえばリベラリズムならリベラリズムの立場をめざすつもりで回答を試みるという仕方で、「リベラリズムの練習問題」として利用することもできるかもしれません。

    それぞれの立場がそれぞれの問題に対して、どのような根拠に基づいて答えを提出しているのか、といったことについては、それほど詳しい解説はないのですが、おもしろい読み方ができる本だと思います。

  • 本書の後半に「政治経済の羅針盤」というアンケートがある。購入してすぐにやってみた。保守主義、共同体主義、福祉国家型リベラリズム、リバタリアニズムの4つに分けられている。その中で、私は、経済的自由度はやや低いが、政治的自由度が高めの福祉国家型リベラリズムに位置した。パートナーにもやってもらったが、ほぼ中間値に近いが、やや福祉国家型リベラリズムであった。生活を共にする人間が、このあたりで大きく異なると苦しくなるのかもしれない。本書にはもう一つアンケートが掲載されているが、いずれも具体的な内容で興味深い。我が家ではよくホームパーティ(単なる近所の飲み会)をするが、その際、それぞれの家庭の考え方を聞くのがおもしろい。お正月などいろいろな節句、七五三などのしきたりを重んじる家庭、ダンナが洗濯物を干したり、ゴミを捨てに行ったりするのを嫌う家庭、などなどいろいろある(我が家は正反対)。男子が集まると、車、スポーツ、家電、最近では景気の話などが多い。女子が集まると、PTA(つまりいろいろな家庭の噂話や先生のこと・・・何々先生が格好良いとかも)、ダンナの悪口、子育て・教育についてなど。私は男だけれど、どちらかというと女子の輪の中に入る方が興味深い。お金の使い方なども家庭によってずいぶんと違う。本書のアンケートを飲み会で実施するのはちょっと難しいが、いろいろ聞くのは実に楽しい。

  • 筆者の主張
    ・個別の問題を最初から全てプラグマティックに考えるのではなく、一貫した思考パターンで判断するべきである。民主主義の成熟のためには。

    ●経済倫理 あなたは何主義?

    利益と道徳
    ・経済合理性か倫理的に埋め込まれた商慣行か
    ・企業が社員を倫理的に包摂(道徳)
    ・政治的市民の経済的自立(利益)

    原理としての善か秩序としての善か
    ・公正を貫くか、安定や成長を優先するか
    ・全体はいいから、特殊共同善派、原理自由派、原理的革命派(原理)
    ・経済よりも伝統価値を守れ、保守派(秩序)

    自由な関係性と人為的なリベラル制
    ・連帯の価値か個人の自己責任原則か
    ・談合は必要悪か、阻止すべきか
    ・家長父制は自由か家事労働の有償化か

    包摂主義と非包摂主義
    ・倫理家は、政府が積極的に企業の道徳を促進(包摂)
    ・信条家は、信条は自由、信条のある人が長期的視野をもてばよい(非包摂)
    ・願望家は、長期的利益を求める企業だけが市場に残っていけばいい(非包摂)
    ・利己主義者、どんな利益を求めようが自由(非包摂)

    ●8つの倫理的立場

    ▼新保守主義(ネオコン= 道徳・秩序の善・自由な関係性・ 包摂/非包摂
    ・経済全体の成長と健全なナショナリズムによる社会の道徳化。WASP文化の復活
    ・格差でなく貧困が問題
    ※ネオコンは優先雇用や解雇権制約には消極的


    ▼新自由主義(ネオリベ= 利益・秩序の善・自由な関係性・  非包摂
    ・「秩序と成長」のための自由 (⇔リバタリアニズム)

    ▼リベラリズム(福祉国家=利益・秩序の善・人為的リベラル制・包摂/非包
    ・「個人」の自立をめざす。ヒューマニズムにつながる。経済変動からの自由
    ※リベラリズムは包摂主義を主体の自立化の温情措置と捉えるか、単に自立支援とみなす。

    ▼国家型共同体主義 =  道徳・秩序の善・ 自由な関係性・包摂主義
     地域型共同体主義 =  道徳・原理の善・ 自由な関係性・包摂主義

    ・地域や国家の共同体という文脈に個人が組み込まれる。共同体の秩序と活性化をめざす
    ・福祉政策は「連帯」(⇔リベラリズムは「原理」の倫理)
    ・連帯経済

    ▼リバタリアニズム =   利益・ 原理の善・ 自由な関係性・非包摂主義
    ▼マルクス/啓蒙主義1=  利益・原理の善・ 人為的リベラル制・包摂主義
    ・革命志向、強弱の転覆
    ▼平等主義/啓蒙主義2=  利益・原理の善・ 人為的リベラル制・非包摂
    ・平等こそ正義


    ▼(新)近代卓越主義
    ・道徳、秩序の善、人為的リベラル制、非包摂
    ・民間の環境対策など、リベラルな人間関係と社会全体の道徳性を両立している
    ▼開発独裁、経済ナショナリズム
    ・利益、秩序の善、自由な関係性、包摂
    ・国の繁栄に貢献することこそ、最も倫理的。エリート主義

    ●経済学は、「善い社会」を括弧に入れて、とりあえずそこに必要そうな2次的価値(成長、安定、公正、厚生)を追求する
    ●経済倫理学は、その2次的価値をどのように追及するのが良いかを求める。すると何が「良い社会」かという、一次的問いも避けられない。

    三章
    ●包摂主義  →祭司型、主体化型
    ●非包摂主義 →ヒューマニズム型、サバイバル型


    5章 文化的価値構造
    24年3月
    ・普遍主義、自己統制=一致適合、刺激=快楽=安全、達成、慈愛心、権力、伝統
    ・知的自立、情緒的自立、調和、保守、支配=平等主義、階層支配構造

    ・日本人は隣接する価値を支持していない
    ・平等主義とリバタリアニズムや国家と地域共同体主義は心理的に近い
    ・反対に、リバタリアニズムと地域共同体主義は、心理的には相いれない

    ・英語圏は自己表現価値 ⇔ 生存価値
    ・価値観は、下部構造(社会の発展段階)の影響をうけ、言語宗教文化、地政学的位置やイデオロギーによってもある程度影響される

    ・マルクス的イデオロギー批判によって、自身の規定関係を自覚し相対化する
    ・大切なのは批判とコミットメントの往復!

  • アンケートに答えていくことによって自分の経済倫理の立場がわかる。そもそも経済倫理にはどのような立場(分類分け)があるのか?という観点からも読みやすい。

  • 質問に答えることで、自分の思想を明らかにして、それから議論を進めようという大学講義のような本。
    自分の思想〜一般的思想の理解〜倫理的な考察〜さらに心理的思想の分類という構成です。
    討論のような部分は無く、倫理的事例は沢山取り上げている割に掘り下げが浅い印象です。
    面白かったのは後半のシュヴァルツの分類。
    対立する心理的思想を使い、「リバタリアニズム」と「平等主義」は近いという結果を導くところ。
    二つは経済的自由を巡っては完全に対立するが、心理的には近く、容易に考えを乗り換えられる。
    逆に「リバタリアニズム」とは小さな国家で一致する「地域型コミュニタリアン」では
    心理的には遠いので全く相入れないという部分にはかなり納得出来た。
    アンケートに答えるのは面倒でもあるが面白かった。
    ジョルジュ•バタイユがニューディール政策を評して「消尽」の祝祭であると指摘して、経済的意味はマイナスであっても、社会的紐帯を育む意味では価値があった、との見解の紹介には抵抗を感じながらも非常に面白いと思えた。
    本書の序盤にも書いてあるが、自分の思想がハッキリしていて、かつ幅広い思想を知っている人は読む必要のない本です。
    ですが、大まかでも経済思想を知っておきたいのなら入門書として良いのではないかと思います。

  • 現在支配的な思想をカテゴライズして解説、アンケートなどもあるのでそれを通して自分が何に分類されるかテストすることもできる経済倫理の入門書。
    下部構造によって規定される自身の思想を相対化するマルクスのイデオロギー批判の考えを人類共存に必要なものとして紹介している。
    またおれのオリジナルと思っていたハイエクとマルクスの思想を融合するとゆう試みがすでに行われて自生化主義なるものがあるってことでそれはちょっと悔しかった。
    最後にシュバルツとイングルハートの研究成果。おもしろいのは文化価値に関する人々の評価を国ごとに平均化してマッピングしたこと。国や文化ごとでクラスターができること、そしてポスト産業化社会では下部構造では価値観が説明できないこと。

  • 政治には非常に興味があるけど、ネオリベとかよく分からないし、自分が右か左かもよく分からない、そんな人にオススメの書。
    いくつかの政治・経済的な問題(論点)を取り上げ、それについての立場によって、自らの立場が決定される。
    だが、もちろんそれが絶対的に正しい訳ではない。
    一貫して同じ立場に立ち続けることなんて非常に困難なことなのだから。

  • 思想の整理は、自分が言っていることが何を意味するかということを理解するために必要だ。

  • 自分のポジションがどこにあるのか良く分っていないので、たまに自己分析をしておいたほうがよさそう。

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著者プロフィール

橋本努(はしもと つとむ)1967年生まれ。北海道大学大学院教授。専門は社会経済学、社会哲学。単著に『自由の論法』(創文社、1994)、『社会科学の人間学』(勁草書房、1999)、『帝国の条件』(弘文堂、2007)『自由に生きるとはどういうことか』(ちくま新書、2007)、『経済倫理=あなたは、なに主義?』(講談社選書メチエ、2008)、『自由の社会学』(NTT出版、2010)、『ロスト近代』(弘文堂、2012)、『学問の技法』(ちくま新書、2013) など。 共著に『日本を変える「知」』(光文社、 2009)、『一九七〇年転換期における 『展望』を読む』(筑摩書房、2010)など。

「2014年 『現代の経済思想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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