世界のなかの日清韓関係史-交隣と属国、自主と独立 (講談社選書メチエ)

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  • 講談社
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レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062584203

作品紹介・あらすじ

朝鮮半島は、東アジアの国際関係史を考えるうえで、きわめて重要な位置を占めている。一六世紀の東アジア情勢から説き起こし、江戸時代の「日朝交隣関係」と「清韓宗属関係」の併存、一九世紀後半の「属国自主」を検証。そのうえで、近代の日清韓の利害対立、国際関係の行方を追う力作。日清、日露戦争にいたる道とはなんだったのか、大きなスケールで描く。

感想・レビュー・書評

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  •  久しぶりに再読。朝鮮は、日清戦争までは清に対し「属国自主」。日本の影響下の甲午改革時期には「独立」が備わっても「自主」が実質的に否定された。俄館播遷時期は逆。日露の勢力均衡と清韓の対等な通商条約が結ばれた1899年にやっと「独立自主」が揃った、という流れである。それも、1905年の保護国化ひいては1910年の日韓併合までの短期間しか続かなかったわけだが。
     特に「属国自主」の時期。「国際法では理解しがたい」と筆者が評するこの関係には、「属国」と「自主」どっちつかずの中間領域が存在していた。袁世凱が「属国」を強調した結果この中間領域は消滅し、日清戦争となったということである。軽々に現在の東アジアに重ね合わせるのも短絡的だが、地理的に近い朝鮮半島では、中国との間合いの取り方は日本のそれよりもずっと難しいのだろう。

     登場人物の中では金弘集が物悲しい。日本に利用される存在であろうことを自覚しつつも改革の可能性に賭けて甲午改革を推進。しかし親露派クーデターに際し従容として死を受け入れた、とある。

     「属国自主」の中間領域は具体的には以下のような点にみられていた。
     ・シャーマン号事件とそれに続く辛未洋擾において、対応を迫る米仏に対し、清は「朝鮮は自主」、朝鮮は「自らは属国」だからと責任を押し付けあった。
     ・琉球処分後、日本牽制のため清は朝鮮に西洋との条約を結ばせようとするが、朝鮮は当初は消極的。清の駐日公使館作成の「朝鮮策略」を読んでから動き始める。
     ・1881~2年、米朝条約文自体には盛り込めずとも、清朝間で合意された「属国自主」の言葉。清は朝鮮を「属国」だと他国にも認めさせようと思っていたが、朝鮮は、「自主」の自分を保護してくれる限りにおいて清の「属国」という態度。
     ・朝鮮国内の独立党/事大党、穏健/急進開化派は、「朝鮮は清朝の属国だが、内政・外交は自主」を基点とした振れ幅の中。「属国」をどう見るか次第。
     ・「属国」は、朝鮮(の意を汲んだ外国人顧問デニー)の認識では a state tributary to China、清の認識では vassal state。

  • 32頁:首鼠兩端の朝鮮
    ・『新明解四字熟語辞典』:ぐずぐずして、どちらか一方に決めかねているたとえ。また、形勢をうかがい、心を決めかねているたとえ。日和見ひよりみ。穴から首だけ出したねずみが外をうかがって、両側をきょろきょろ見回している意から。▽「首鼠」は「首施しゅし」に同じで、躊躇ちゅうちょするさまともいう。「両端」はふた心の意。
    ・形容躊躇不決,瞻前顧後的樣子。猶豫不決、動搖不定貌。/首鼠: 鼠性多疑, 出洞时一进一退, 不能自决; 两端: 拿不定主意。 在两者之间犹豫不决〔「左」を脱する?〕右动摇不定。 /『史記』注:首鼠,一前一卻也。/首鼠:遲疑、躊躇。《三國志.卷六四.吳書.諸葛恪傳》:「緩則首鼠,急則狼顧。」也作「首施」。《後漢書.卷一六.鄧禹傳》:「雖首施兩端,漢亦時收其用。」
    ・韓国辞典:どっちつかずに両方に足をかける。/(穴から頭を出して左右を見まわす鼠のように)どうしていいのかわからず,途方に暮れて決められない。
    『朝鮮王朝實錄』に22回出てくるらしい。

  • 東アジアの国際政治を朝鮮半島を中心とした視点で解説した本。冒頭は16世紀の明朝との朝貢に基づく宗属関係の解説。従来は「夷狄」であった北方民族による清朝が成立したあとの清との関係を詳述。さらにロシアの南下、日本の大陸進出により、清・ロ・日のせめぎ合いの中心には常に朝鮮半島があったことが書かれている。また、周囲の大国のパワーバランスの中で、朝鮮の国内政治は、それら諸外国のシンパごとに分断された状態であることが常態化していることも。カタチを変えてはいるが、東アジアの国際関係において朝鮮は常に緊張の源泉であるのは今も一緒。勉強になる本だった。

  •  書題は「日清韓関係史」だが、実質的には16世紀から20世紀初頭までの朝鮮国の対外交渉史。特に19世紀後半の「属国自主」路線をめぐる清朝間のせめぎあいに紙幅を割く。

  • 朝鮮と清朝の関係は陸続きで国境を接しているだけに微妙である。隣国とはいえ我が国と両国との関係とは大差がある。

     朝鮮王朝が清朝に対していかに苦労したかが見えるようにわかった。「属国自主」を掲げ、朝鮮は清に対して儀礼的朝貢はする「属国」であるが、政治的には「自主」であることを貫こうとする。それに対し清は徐々に干渉を強めていく。そしてそこに日本が介入しなければならなくなっていく。

     教科書では教えてくれない、日清戦争へ向かう経緯などがよくわかり、近代の日清韓関係を知るのにとても良い著作だと思った。また、この手の著作は偏向する傾向があるらしいが、本著は大変中立的立場で書かれていると思われた。

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著者プロフィール

1965年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。現在、京都府立大学教授。専攻は、近代アジア史。主な著書に、『近代中国と海関』(名古屋大学出版会、大平正芳記念賞)、『属国と自主のあいだ』(名古屋大学出版会、サントリー学芸賞)、『中国の誕生』(名古屋大学出版会、アジア・太平洋賞特別賞・樫山純三賞)、『世界のなかの日清韓関係史』『中国「反日」の源流』(いずれも講談社選書メチエ)、『李鴻章』『袁世凱』(いずれも岩波新書)、叢書「東アジアの近現代史」第1巻『清朝の興亡と中華のゆくえ』(講談社)など多数。

「2018年 『近代日本の中国観 石橋湛山・内藤湖南から谷川道雄まで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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