- Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062584388
作品紹介・あらすじ
スキタイ人・メディア人・ペルシア人・バクトリア人・パルティア人…史上最初の騎馬民族にして壮大なる世界帝国の樹立者。ユーラシア大陸を舞台に興亡を繰り返す諸民族の足跡を、「アーリア性」をキーワードに気鋭のイラン学者がたどる。
感想・レビュー・書評
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「20世紀にジョルジュ・デュメジルが三機能仮説として提唱したインド・ヨーロッパ語族の宗教を,イラン系アーリア人だけに限定し」た本。古代オリエントとイスラーム時代の間の動きについて。
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主に扱うのはイラン系アーリア人。地域としては中央アジア・西インド・パキスタン・アフガニスタン・イラン・イラクまで。このあたりの歴史地図を見て「この国を作ったのはどんな民族?」と思ってたのが、本書のおかげでかなりイメージできるようになった。すばらしい。
アーリア人といえばヒトラーのファンタジーを連想し、よくわからなかったのだけど、この本でイラン系アーリア人の移動や興亡をつぶさに見ていくことができた。
●中央アジアから出た遊牧民といえばテュルクと思いがちだが、その前にアーリア人がいた。
●イスラム化後はアラブに同化されたと思いがちだがそうではなく、近世ペルシア文学はイスラム化後の中央アジアから華開き、ごのあたり全域をペルシア語で標準化した(!)
このような事実を知ってとても衝撃的でスリリングな読書だった。
ダイナミックに移動し征服したりされたり、ややこしいが、研究者の著者ながら幅広くやさしく図表も添えてあって面白かった。図書館で借りたけど、改めて購入しようと思う。また参照したいし。 -
カザフスタン・キルギスの旅(2016/5)の傍らで読む。
遠く天山山脈を望み、何時間バスを走らせても移動してないように変わらぬ草原の風景を見ながら、3000年前からこの地で馬を駆っていたアーリア系遊牧民の各部族の興亡に思いを馳せる。
この書は、イラン系のアーリア人について遊牧民と定住民に分けて、西から東へなめるように網羅的に入門知識を与えてくれる。
だが、現在の中央アジア5カ国に残るアーリア系はタジク人のみ。他はトルコ系モンゴロイドで親戚のおじさんのような顔が並んでいる。 -
ゾロアスター教などの著作もある著者が、イラン系アーリア人を中心に解説をしている本である。
アーリア人というと、ヨーロッパのドイツが戦時中に、アーリア人という言葉を使ったことで有名であるが、本来は、インド・イラン系のアーリア人が正当な使い方であり、20c初頭の言語分類の間違いからアーリア人が適切に使われていない。
イラン系アーリア人として遊牧民型、定住地型に分けて、それぞれを解説しているが多くの民族が出てきていて、途中で混乱することがあり、そのあと本書で確認した。また、巻末の方には簡単ではあるが、インド系アーリア人と、ヨーロッパ系アーリア人が載っている。
とにかく、アーリア人(インド系がメインで)を知りたい人には、格好の入門書だと思う。 -
中央アジアのあたりにいた人々。ユーラシア大陸を駆け巡る。遊牧の民。商人。定住化。部族間の抗争、融合。支配者の交替。大陸は広く、文化ははるか遠い時間から紡がれている。思いを巡らせると雄大な気持ちになる。現在のかの地は殺伐とした印象がある。けれども、そこに住む人の胸にこの歴史に対する誇りがあるのだろう。(歴史になってしまうと部族間の駆け引きすらも美化してしまう自分に気づく。)部族間の駆け引きの時代を経て地球に住む人として何とかやっていく仲間になりたい。支配・被支配という関係ではなくうまくやっていた時代もあったようだ。そのやり方は参考になるのではないか。アーリア人であることで高貴な人種であることとしたかった西欧人。西欧人が作り上げた「人種」のからくりがとてもおもしろい。