近代政治の脱構築 共同体・免疫・生政治 (講談社選書メチエ)

制作 : 岡田 温司 
  • 講談社 (2009年10月9日発売)
3.80
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  • レビュー :8
  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062584517

作品紹介・あらすじ

世界的に注目を集めるイタリア現代思想にあって、ひときわ光彩を放つロベルト・エスポジト。本書は、彼の主著である三連作『コムニタス(共同体)』『イムニタス(免疫)』『ビオス(政政治)』のエッセンスがわかり、かつ、最新作『三人称』にいたる道筋をも示す、エスポジト哲学にもっとも入りやすい著作である。フーコーによって提起され、アガンベンや、ネグリの『帝国』によって展開された「生政治」の思考は、どのように深化・進展するのか。そこに、「免疫」という視点はどのようにからむのか。九・一一とは、ナチズムとは…。もっともスリリングな政治哲学への招待-。

近代政治の脱構築 共同体・免疫・生政治 (講談社選書メチエ)の感想・レビュー・書評

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  • うーん。難しい。

    本書のキータームとなっている「免疫」がいまいちまとめきれない。「免疫」とは、他者と競争し続けてつぶしあうことも避け、一方で共同体における「贈与」や「義務」からも逃れることを指しているのか。

    とはいえ、「免疫化とは、予防のために外部をあらかじめ内在化すること、外部を中和化し適合化すること以外の何ものでもないのだろうか」(p133)と問いを立てたうえで、「自由は、共同体のなかで免疫化に抵抗し、みずからと同一化することなく、自己との差異へと開かれたままのものである」(p145)とする。

    とするならば、「中和化」それ自身をも脱構築しないといけないのかもしれない。「あらゆる実存の単独性に開かれる共同体、つまり、これこそが自由という経験」(p145)。共同体は欠損していることが本質で、決して完成することがない。かといって、欠損を個人同士で埋めあうわけでもない。共同体は欠損していて、個人は単独のまま、結びつく。しかし個人はばらばらではない。といっても、その結びつき方は、つねに脱構築される…。

    って、具体的にどういう人間社会の状態なんだ…???

    まあ、いいや。置いておこう。後半のナチズムの位置付け、歴史哲学の考察は面白かった。とくに後者。

    「歴史はもはや哲学の客体ではなく、ことによると主体である」(p237)
    「歴史は、しばしばおたがいに対立している数多くの意味=方向のベクトルのあいだで生じる対比や衝突からなるもの」(p237)


    以下、雑多なメモ。まとまらないままに、おもいつくままに。


    自由民権運動研究は、(1)当初階級性からその運動が解かれ、その後(2)「自由党=地縁」「改進党=主義」という組織論で位置付けられてきた。さらに、(3)国民国家論によって、近代化(=国民化)を推進した運動として位置付けられてきた。

    (2)と(3)のあいだの架橋は必ずしも問題にされていない。国民国家論がいわば外在的に導入されたがゆえに、日本社会のなかでの歴史的展開(すなわち(2)のような動向)と結びつける機会がなかったのだ。

    でも、エスポジト「少なくとも近代の法の概念においては、主体的権利と呼ばれるものを合法的に要求できるようにするためには、あらかじめそれが人格という囲いのなかに組み込まれる必要があった」(p259)という議論を補助線にして、民権運動を位置付け直すことで、(2)と(3)の架橋ができるのではないか。

    すなわち、エスポジトがいうように、近代化(というか近代法の成立か?)によって「人格」が措定されているということと、「地縁」にせよ「主義」にせよ、政党組織論において個人が主体となるということは、軌を一にしている。

    だとすると、自由党や改進党が登場してきて、それが急速に広がっていくというのは、日本における近代法の成立と「人格」概念の浸透(それは「国民化」という形で現前化するのかもしれないけど)と密接につながっているのではないか。政党の出現と定着は、そういう日本における「近代」社会の成立と結びつけて、考察されるべきではないのか。理論的には。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784062584517

  • 気晴らしがてらポストモダン思想に触れてみました。

    本書は、イタリアの思想家エスポジトの論文・講演集です。
    彼の思想のテーマは、ハイデガーの存在論をモチーフとした「共同体communitas-免疫 immunitas」という彼独自の概念群を用いて、フーコーが提起した「生政治」の文脈を再構成していくと言ったようなものです。

    第Ⅰ部ではまず、「共同体 communitas」の語源が「義務、責任、贈与 munus」と「ともにあることcum」として理解されます。それによって、共同体は他者に開かれ、あらゆる固有性・共通性を放棄し、その根底で「ある/ない」が重なり合う達成不可能な努力目標のようなものとして表象されていきます。
    続いて第Ⅱ部では、munusに打ち消しの接頭語imを付加した「免疫 immunitas」と近代の政治的概念との関係性が考察されます。そしてcommunitasとの対比によって、他者への義務を免れ、個人の所有が保護され、外部の複雑性が内部化されてしまっている近代の「免疫型民主主義」が問題視されていきます。
    最後に第Ⅲ部では、「生政治」が「死政治」へと差し戻されるナチズムの文脈が、immunitasの思考によって自己免疫疾患として論じられ、その処方箋が考察されていきます。さらには、communitasと半ば相容れない「人格」概念の系譜が弄られ、終章ではそれに対処する「非人称性」を軸とした現代的な処方箋が簡潔に提示されることで本書を終えます。

    以上が本書の内容ですが、自分の力不足ゆえ、適格な内容把握には至らなかったように思います。
    ただ、概念の難解さと比較すると論旨が平易な点、エスポジトの思考の道筋が追いやすいように整理されている点、入門書向きです。また、各章間で内容の重複する箇所が多々あるので、適度にスキップしながら読み進めることも可能です。
    現代思想に興味のある方、おすすめです。

  • 【目次】
    訳者によるイントロダクション [岡田温司]
    ナポリ発、全人類へ──ロベルト・エスポジトの思想圏

    第Ⅰ部
     第1章 共同体の法
     第2章 メランコリーと共同体
     第3章 共同体とニヒリズム

    第Ⅱ部
     第4章 免疫型民主主義
     第5章 自由と免疫
     第6章 免疫化と暴力

    第Ⅲ部
     第7章 生政治と哲学
     第8章 ナチズムとわたしたち
     第9章 政治と人間の自然
     第10章 全体主義あるいは生政治──二十一世紀の哲学的解釈のために
     第11章 非人称(インペルソナーレ)の哲学に向けて

    訳者あとがき
    事項索引
    人名索引

    *****

  • 【目次】
    訳者によるイントロダクション [岡田温司]
    ナポリ発、全人類へ──ロベルト・エスポジトの思想圏

    第?部
     第1章 共同体の法
     第2章 メランコリーと共同体
     第3章 共同体とニヒリズム

    第?部
     第4章 免疫型民主主義
     第5章 自由と免疫
     第6章 免疫化と暴力

    第?部
     第7章 生政治と哲学
     第8章 ナチズムとわたしたち
     第9章 政治と人間の自然
     第10章 全体主義あるいは生政治──二十一世紀の哲学的解釈のために
     第11章 非人称(インペルソナーレ)の哲学に向けて

    訳者あとがき
    事項索引
    人名索引

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  • 駱駝堂bot にて紹介されていたのでふと思い出した。大学の図書館にあって気にはなってたんだけど、結局読むには至らなかった本。しかしこの著者の名前は知らなかったorz

  • ナチストたちが除去したいと欲する病はまさに彼ら自身の人種の死であった。それはナチストたちがユダヤ人たちの体の中でそして内外からアーリア人種を脅しているように見えたあらゆる人々の体のなかで抹殺したいと欲した病であった。
    ユダヤ人に対するすべての最後の挑発は、生物学的-免疫学的な特徴をもっている。ただユダヤ人を駆除することは不可能になった。

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