完全解読 カント『純粋理性批判』 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062584623

作品紹介・あらすじ

大好評、知の高峰を読み平らげるメチエ「完全解読」シリーズ第2弾。古代ギリシア以来の哲学をコペルニクス的に転回し、近代哲学の礎を築いたカント三批判書の第一書。「物自体」「カテゴリー」「アンチノミー」などのキー概念を中心に、難解でなる著作の理路を徹底的かつ平易に解読する。

感想・レビュー・書評

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  • 『純粋理性批判』のテクスト全体をわかりやすく要約するとともに、随所に著者自身による「章末解説」が置かれており、その要所が解説されています。

    ときおり、著者自身の実存的立場からカント哲学の意義を解釈している個所が含まれており、注意が必要です。たとえば著者は、カントの認識論が「実践的関心」を背景にもっており、「「善く生きたい」というわれわれの生の意欲こそ、世界とは何であるか、という認識の問いを支えている」と述べています。しかしこれは、認識論的なディスクールをエロス論的なディスクールに基礎づけることをめざす著者自身の欲望論の観点からカントの認識論をとらえなおしたものと考えるべきだと思います。

    カントは認識批判によって独断的形而上学をしりぞけるとともに、純粋理性の領域に関する問いを、理論的認識から実践的認識へと転換しました。このことによってカントは、善悪無記の自然的世界を超え出て、われわれの自由に基づいた行為が「善い行為」であるのか、それとも「悪い行為」であるのかということを評価することを可能にしている超越論的な領野を切り開くことになりました。著者はこの事態を、世界の客観的なありようを認識することから、エロスの享受をめがけるわれわれの生の意欲へと視線を向け変えることだととらえ返し、みずからの立場からカント哲学の新たな意義を見いだそうとしているように思われます。

    著者の強みは、専門家にはとうていなしえないような達意平明の言葉で初心者を哲学的な問いの中核にまで連れ出してくれるところにあるのではないかと個人的には思っています。著者のフッサール解釈が専門家の目から見て誤りを含んだものであろうとも、著者の本の意義はけっして失われることがないのは、そうした理由によるはずです。しかし本書は、カント自身の議論にできるだけそくして解説しようとした結果なのでしょうが、けっして読みやすい文章とはいえないように感じます。

  • だいぶスッキリとしてきた。最後の方の、道徳と宗教、みたいな観点が楽しそうで深めたい。

  •  「純粋理性批判」を一通り読み終え、なんとなくわかったかな、というところでこの本で再整理。いわゆる「超訳」というのか、著者らの解釈を元にオリジナルを完全に再構成したもの。オリジナルは本筋から逸れた箇所がかなりあり、論理の筋道が行ったり来たりして読みにくい箇所が多いが、本書ではそういうところがスッパリ整理されており読みやすい。一方で「あれ、こんなこと書いてあったっけ」とオリジナルに戻ると、全く違うことが書いてあったりするので注意。巻末の索引は助かるが、訳によっては微妙に訳し方が違うので意外に使えなかったりする。むしろ段落番号があったりするとテキストと相互参照できるのでよかったと思う。

  • p22.アプリオリな原理としての幾何学、という自体は、果たして一つの体系の幾何学を意味しているのだろうか。非ユークリッド幾何学はカントのこの考えを否定するものなのだろうか?
    彼のカテゴリー論の論拠はどこにあるのだろうか?多くの人を説得し、今や多くの哲学者や論理学者が彼を出発点に思考しているからだろうか。カクガクというものがアプリオリだ、空間は存在ではなく物自体を現象させる、といった彼の意見、内的発見はどのように妥当するのだろうか?例えば、彼の時間や空間の代わりに、エーテルや重力ということはできないだろうか?私は重力というパラメータを存在者に感じる、重力場こそ宇宙で存在者を存在者たらしめる、出現させる場であると私には分析できる、といったとき、カントの違いはその意見が多数になり得るか、というだけの違いなのだろうか。
    つまり、幾何学に複数の体系があるものの体系間の概念にはそれぞれ、相当するペアがあるようなものなのだろうか。

  • 哲学
    思索

  • 私は、以前、カント哲学について全く分からず歯が立たなかったが、この著書などカントに関する本の解説書を読むことによって、だんだん自分として理解できたつもりでいます。
    この本は、カントの解説書として良好と思います。

    カントは、霊魂の不滅、自由、神が客観的事実として認めることはできないとはっきりと語っていることを、私自身再確認し、しっかりと肝に銘じておく必要を感じました。

    私は、以前からの自分の課題として、霊魂の不滅、自由、神が客観的事実として認めることができるかどうかを、宗教書や哲学書などいろいろと読み重ねましたが、結論は出ず、あるときは、「あるはずだ」、「やはり証明できない」などと迷いに迷っていました。しかし、カントの著書にたどり着いて、この問題に漸くピリオドを打つことができそうです。
     そして、カントが示唆しているように、認識論の次は、「道徳」の構築が大切ということなる。この問題を今後、自分自身の課題に入れる必要性を感じてならなくなりました。

    竹田氏のこの著作は、私にとって一つの一里塚になりました。ありがとうございます。

  • いろいろと批判があるようですが、すくなくとも私にとっては新しいものの見方・考え方を導いてくれたのでよかったと思います。

  • うおお難しい!哲学は書いてあることがちょっとでもわかんないと先に進めないから困る。カント先生は立派ですけど私はしばらく哲学はいいです!

  • 一回読んだけど難しくてなかなか理解できなかったw

  • ヘーゲル「精神現象学」もそうだったけれど、この完全解読シリーズは相当に難しくて、多少の誤解が混ざっても普通の入門書から入った方がいいと思う。

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著者プロフィール

1947年生まれ。哲学者、文芸評論家。著書に『「自分」を生きるための思想入門』(ちくま文庫)、『人間的自由の条件ーヘーゲルとポストモダン思想』(講談社)など。

「2007年 『自由は人間を幸福にするか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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