北条氏と鎌倉幕府 (講談社選書メチエ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062584944

作品紹介・あらすじ

北条氏はなぜ将軍にならなかったのか。なぜ鎌倉武士たちはあれほどに抗争を繰り返したのか。執権政治、得宗専制を成立せしめた論理と政治構造とは-。承久の乱を制し、執権への権力集中を成し遂げた義時と、蒙古侵略による危機の中、得宗による独裁体制を築いた時宗。この二人を軸にして、これまでになく明快に鎌倉幕府の政治史を見通す画期的論考。

感想・レビュー・書評

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  • 鎌倉幕府の得宗専制の確立過程を描く。承久の乱に勝利した義時を理想化し、得宗(義時)権威の源泉としつつ、ライバルを滅亡させることで最終的に最高権力を握った時宗。著者はこの時宗こそ得宗家権力の最高峰であったとする。そして、なぜ、北条得宗家は将軍にならなかったのかという問いに、「将軍権力代行者」としての幕府の枠組みに満足した?という結論だったか。「得宗」成立の説は面白いと思ったが、先の問いの結論には、物足りなさ感があり、政治思想や政治の実体などより総合的な議論が必要と感じた。
    本書は、著者のわかりやすい記述を志向するという方針から、用語についてことごとく細かい説明がついているが、自分にとっては逆に論理理解の集中力が削がれわかりにくい結果となった。そもそも選書という性格から、かなり初歩的な事細かい解説まで必要であったのか。「わかりやすい」という意味を直情的に受け取り過ぎていると感じた。本書を手に取る読者層の設定を誤った商品構築と思わざるを得ない。そうした初歩的説明や、ところどころに挿入される著者の軽口(善し悪し)を除けば、本書のページ数の何割も削減されると思われ、さらにそうしたスタンスを考えても選書というよりは新書(レベルの高い新書もあるが)の方がふさわしい内容になってしまったと思う。(別書の再構築の内容とのことでもあるし・・・)設定した読者層を考えれば、最初の問いへの答えも(議論がある意味結果論で片面なため)わかりにくい結果となったのでは?

  • 「北条氏の鎌倉幕府支配を支えた論理」について考えることを最大の課題とする。つまり「北条氏は、なぜ将軍にならなかったのか?」に答えをみつけようと思う。という導入から始まり、北条氏得宗は鎌倉将軍の「御後見」なのであり、自ら将軍になる必要もなく、また、なりたくもなかったのである。と締めくくられる。①鎌倉将軍は、武家政権創始者源頼朝の後継者②北条氏得宗は、八幡神の加護を受けし、武内宿禰の再誕北条義時の後継者③義時の後継者である北条氏得宗は、鎌倉将軍の「御後見」として鎌倉幕府と天下を支配する、という論理で、北条氏得宗は、将軍の下での鎌倉幕府の正統性を獲得。ここまでに義時を押し上げた承久の乱というものをもっと深く知りたくなった。専著にあたりたい。また、北条時宗時代の異常な権力集中、独裁、緊張感みなぎる治世、その旗印となった、寡聞にして知らずであった「四代目」の源氏将軍、という存在も大変印象に残りました。

  • この先生・・・面白い
    もっと本を書いていたらいいのに
    残念すぎる

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99281466

  • <目次>
    はじめに―素朴な疑問
    第一章 北条氏という家
     伊豆時代の北条氏武士団/烏帽子親子関係に見る生き残り戦略

    第二章 江間小四郎義時の軌跡―伝説が意味するもの
     北条氏庶家江間氏/鎌倉殿家子/覇権への道/承久の乱/関東武内宿禰伝説/得宗とは何か/神話と実像の間

    第三章 相模太郎時宗の自画像―内戦が意味するもの
     奇怪な古文書/北条時輔の政治的位置①―嫡庶の順位/北条時輔の政治的位置②―烏帽子親/北条時輔の政治的位置③―外戚/北条時輔の政治的位置④―叙爵年齢/北条時輔の政治的位置⑤―南方探題就任/二月騒動の経過/二月騒動の再評価/酷烈の自画像

    第四章 辺境の独裁者―四人目の源氏将軍が意味するもの
     鎌倉将軍の系譜/氏・姓・苗字/後嵯峨源氏源惟康/北条時宗の幼・少年時代/蒙古国書の到来/将軍権力代行者/太守・副将軍/対蒙古政策/皇位介入/北条義時の武内宿禰再誕伝説と「得宗専制」の思想的背景/得宗と将軍/北条時宗にとっての「得宗専制」/代償と最期/やり残したこと

    第五章 カリスマ去って後

    おわりに―胎蔵せしもの
    参考文献

    ***
    北条氏は、なぜ将軍にならなかったのか。
    なぜ鎌倉武士たちはあれほどに抗争を繰り返したのか。
    執権政治、得宗専制を成立せしめた論理と政治構造とは―。
    承久の乱を制し、執権への権力集中を成し遂げた義時と、蒙古侵略による危機の中、得宗による独裁体制を築いた時宗。
    この二人を軸にして、これまにでなく明快に鎌倉幕府の政治を見通す画期的論考!
    (本書カバー裏表紙より)

    ****

  • 鎌倉時代は素人です。

    本著は著者の茶目っ気が文章の端々に出ており、好感が持てました。
    史料も独特の口語訳が添えられており、堅苦しくなく読みやすかったです。

  • 鎌倉にはよく訪れていますが、歴史的な知識は日本史で習った程度でしたので、読んでみようと思い手にとりました。

    当時の姻戚関係・闘争関係・宗教観などをなるべく平易に表現されてます。

    冒頭の「何故、北条は将軍にならなかったのか?」という命題に沿って、成り立ちから書かれており、分かりやすかったです。

  • ちらかりぎみのような気も

  • 鎌倉幕府について細かい部分が理解できる本であった。法名から探る「得宗」の意味や、北条時輔に関する考察の部分は、私にとっては新たな視点であった。北条氏の身分が低い云々は、太平記の北条高時に関する場面でも強調されていた気がする。改めて、鎌倉幕府関連の書籍を読み直したくなった。

  • この類の本としては,文脈に堅苦しさがない。
    難しいことはわかりやすく,
    わかりやすいことは面白く,
    面白いことは深く
    とあとがきにあるように,読み手を退屈させない。系図など少々難解なところも,読者の視点にたってフォローされているため親切である。

    さしたる武士団でもなかった北条氏がいかに権力を握ったのか,なぜ自らは将軍にならず,得宗専制といわれる体制を築いたのかを究明した本。

    承久の乱に勝利した義時が朝幕双方にとって権威づけられた所が興味深かった。 

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。立正大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程満期退学。博士(文学)。現在、中世内乱研究会総裁。著書に、『鎌倉政権得宗専制論』(吉川弘文館)、『鎌倉幕府の滅亡』(吉川弘文館)、『執権 北条氏と鎌倉幕府』(講談社学術文庫)、『頼朝の武士団 鎌倉殿・御家人たちと本拠地「鎌倉」』(朝日新書)など。

「2022年 『論考 日本中世史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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