ひとは生命をどのように理解してきたか (講談社選書メチエ)

著者 : 山口裕之
  • 講談社 (2011年10月12日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062585187

作品紹介

科学は、何を生命として捉え、分析してきたか?現代生物学が拠って立つ論理と成立構造とは?「遺伝子」概念が孕む揺らぎとは?ダーウィン以前から、分子生物学や遺伝科学が急速発展するポスト・ゲノムの現代まで「生物学」の成立過程を辿り、「科学の見方」を哲学の視点から問い直す、生命のエピステモロジー。

ひとは生命をどのように理解してきたか (講談社選書メチエ)の感想・レビュー・書評

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  • 遺伝子科学をエピステモロジー(科学基礎論)から批判した本である。骨子は遺伝子研究が行う「〜という症状を生む遺伝子」といった研究は人間の都合から遺伝子を理解するのみであり、さらに言えば「字が読めない遺伝子」があったとしても無文字社会では都合が悪いことはないように。人間という生物のさらに現代生活の都合から遺伝子を理解しているにすぎず、こうした方法からは、生命を理解するために必要な生命の「目的」はでてこないので、生物が生物を理解するには相手の主体性を前提にし、共有と確認のプロセスで理解するしかないということである。全5章からなり、第1章はヒトゲノムプロジェクトの詳細とその後の研究を概観している。海水から遺伝子を見つける方法や、最小生命(遺伝子380個くらい)の確定、DNAがどのようなタンパク質に翻訳されるのかというアノテーション研究、生体内のさまざまな科学物質をネットワークで表現する手法、このネットワークが膨大で人間には理解不能であるため、さらにそのネットワークを分析してモチーフをさがす「システム生物学」の出現などを紹介している。第2章は生物学の成立を論じている。アリストテレスにはじまる日常的な生命の把握から、ラマルクによって生物学がつくられたこと(1802)、17世紀のデカルトらの機械論によって生命を理解しようとする発想、19世紀から20世紀に至る生気論の展開(ダーウィンも「ジェミュール」という物質を想定し、獲得形質の遺伝を担うと考えていた)などを論じている。第3章は、シュレーディンガーに始まる分子生物学が「情報」として遺伝子を考えたこと、メンデルの遺伝子論や突然変異説などを取り込んだネオ・ダーウィニズムが、形態の「原因」として遺伝子を考えたこと、この二つの「遺伝子」概念を比較し分析している。第4章は、現代の遺伝子科学まで影響を及ぼす機械論は、擬人主義を排除しているように言われるが、実は擬人主義を前提にしていることが、カンギレムに基づいて、論じられている。簡単にいえば、機械は人間が目的を与えて作ったものだから、機械にもとづいて生命を理解しても擬人主義を脱出できないのだ。また、熱力学・BZ反応などの反応拡散系・プリゴジンの散逸構造・ラングマンのカオスの辺縁・カウフマンの集団的自己触媒系・マトゥラーナのオートポイエーシスシステムなどの「自己組織化モデル」を検討している。どれも生命がもつパターン(組織)を再現できる理論だが、そのパターンは観察者が認知するものにすぎないこと、さらに「自己」組織化の「自己」の部分は検討されていないと結論する。第5章では、生命を理解することは人間の理解の枠組みを問い直すことにほかならないとカンギレムの問いが転倒され、生まれたら勝手に生きていく生物を理解するには、「共同作業」によるしかなく、相互の理解は共同作業のその場で創造されていくことを指摘している。

  • はじめのうちは単なる科学読み物っぽいけど、途中から急に哲学度が上がって難解になる。

    ただ、理解できた範囲内でもかなりいい感じ。

    生命に対する理解の歴史を追いながら、「理解する」とはなにか、というところまで持っていく。そして機械を理解することと、生命を理解することの、行為としての本質的な差異を描き出す。

    単純な提起のうちで、重要な提起もいくつか。

    ひとつは、人間が理解する単位と、遺伝子の行動単位の差異。

    ひとつは、理解するとはアナロジーによって特定のモデルに同定すること。

    ひとつは、生物を機会に擬することは明らかな擬人法であるということ。


    ほかにもいろいろな思想家・科学者の考えが系統的に紹介されているのでかなりおもしろかった。

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