戦国大名の「外交」 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 176
感想 : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062585590

作品紹介・あらすじ

戦国大名たちは合戦だけをしていたわけではない。 和睦や軍事同盟、領土交渉という「外交」を、 活発に行って戦国時代を生き抜かんとしていた。 武田信玄・今川義元・北条氏康による 名高い「甲駿相三国同盟」の成立の舞台裏をはじめ、 文書と交渉者「取次」が飛び交う、 外交の現場を生々しく描き出す。 最新の戦国期研究の成果がここにある!

感想・レビュー・書評

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  • 戦国大名の「他国」との「外交」を担った「取次」に焦点をあて、戦国時代におけるその具体的実相を明らかにするとともに、それから明らかとなる戦国大名の権力構造にまで踏み込んだ力作。
    実のところ、最近の戦国史物の読者へ媚びる傾向には辟易していたのと、また最近、戦国史研究者のお気楽な論理展開や「歴史を視る目」を疑わさせるような論旨に出会うことが多かったため、本書も少し侮っていた。(笑)
    案の定、最初に戦国大名の戦争の本質は「国郡境目争論」だとしたり、武田信玄が今川氏真との同盟を破り駿河へ侵攻した際に、北条氏康が氏真室である自分の娘が徒歩で逃げる羽目になったのを面目がつぶされたとして武田と手切れし駿東に侵攻したのだ、とする話があったりして暗澹たる気持ちにさせられたものだ。(笑)
    もとより、国境紛争としての「国郡境目争論」は多々あったには違いないし、他国との両属関係にあった国衆の突発的行動が否応のない戦闘状態に発展したこともあっただろう。しかし、文書史料に「国郡境目争論」と記載されているからといって、文字通りそれを国境紛争のみと捉えるのは大きな誤りだと思う。
    そもそも両属状態の場合でも、それは暫定的に緩衝地域を生み出した結果であり、長期の政略・戦略的にみれば自己拡大運動を指向することになる戦国大名にとってみれば、いづれはそれの解消を迫ることになるだろうし、北条氏康の娘の話も面目をつぶされたことを口実にしているだけであるだろう。三国同盟を破った相手が隣国付近にまで迫っている中で、仮に娘が輿に乗って逃げることができたとして、逆におめおめと手をこまねいている方が変である。(笑)まさに「戦争」は「外交」の延長線上にあるのであり、非を打ち鳴らし「戦争」状態を惹起させることにより状況を有利にしようとしているに決まっているではないか。まさか証明書類とも成りうる文書に、あわよくば侵略しようと思っていました、これ幸いと領土拡張作戦を行いました、と書けるはずもない。(笑)いま中国も何も尖閣諸島だけを欲しているわけでも、前の胡錦濤主席の面目がつぶされたからでもなく、非を打ち鳴らし「口実」をもうけ、さらに「その先」を見据えているのだ。それが政・戦略というものだ。秀吉が島津義久と大友義統への停戦命令の中に「国郡境目争論」を持ちだしているのは、自らの「惣無事」論理の適用と国分裁定者たらんとしているからではないだろうか。そう考えないと、戦国大名らによる領域拡張運動は説明がつかないことになってしまう。
    さらに本書の話に戻ると、歴史上「取次」などそう珍しい存在でもないし、起請文や書状の作成の仕方、戦国時代の書札礼の概説的解説が長々とあったりして(これはこれで戦国時代の書札礼の勉強にはなったが)、これは選書レベルではないなと感じながらも読み進め章を重ねていくと、これが意外や意外(失礼!)、だんだん面白くなっていったのにはびっくりした。(笑)
    宿老クラスと側近クラスがペアで、それぞれのカウンターパートと交渉する話や、『戦国遺文』などをみていると副状や使者の口上という言葉が多く散見されるが、その意味するところや制度的慣習がわかり、いろいろと興味深いものがあった。さらに「取次」自体は私的交渉を公的に取り込んだものであるが、それが「取次」役の報奨や利益にもつながったという話は目から鱗のような感じであった。
    そして何より本書の真骨頂は、現代語訳した「外交」文書そのものを掲載し、交渉の成り行きを辿っていくところである。特に、北条氏康と上杉謙信との交渉過程や、主に『上井覚兼日記』をもとに再現した島津氏と大友氏離反を画策している国衆との交渉過程の描写は、それぞれの思惑のすれ違いが見事にあぶり出されていて抜群の面白さであった。
    冒頭での「国郡境目争論」の話などはガクっときたが、終章の「惣無事令」へつながる著者の見解などを読んでいると、それなりの「視点」でもって考察されていることもわかり少し安心もした。(笑)
    戦国大名の「取次」を論じることで、戦国時代を覆う社会ルールや、ひいては戦国大名の権力構造をよく理解できる一書になっている思う。
    本レビューでは筆が滑りすぎたので、支離滅裂な個所があればご容赦。(笑)

  • 戦国大名間での交渉を担当者「取次」を軸に解説した学術書。とはいえ、史上有名な駆け引きを事例として読みやすいので、戦国大名とくに甲斐武田氏と薩摩島津氏、それらの近隣大名に興味のある人にオススメ。他勢力との折衝を、接する地域を領有あるいは委託された大名従属者と当主側近ないしは宿老が共同で担当する仕組や、交渉途中での紆余曲折は現代の他勢力との交渉と同じ感覚のように思う。
    本書では触れていないけど武田と最後をともにしなかった穴山、小山田が外側の取次だったこと、亡国の臣という描写の多い武田信豊、長坂・跡部が内側の取次だったことは武田氏の呆気ない崩壊を考える切り口として面白そう。

  • MK9a

  • いやぁ〜、抜群に面白い内容だった。ちょうど大河ドラマで「軍師 官兵衛」を放送している事も影響しているだろうが、戦国時代の外交に詳しく触れている本を読んだことが無かったからな。
    これを読んだだけで、今までに読んできた歴史小説に出てきた起請文とかを詳細に理解できた。
    [more]
    特に興味深かったのは「取次」という役目だと思う。大名毎に決められた家臣が外交を担当していて、担当大名との関係が自らの発言権にも繋がるとかには驚いたよ。
    「本能寺の変」も光秀の取次に関連があるかもしれないとしれた事は新しく知った事だ。
    「軍師 官兵衛」で官兵衛が織田との外交を全て引き受けているのも小寺家内の織田担当の取次だったのかもしれないな。最終的に小寺家から織田家の家臣になったのも小寺家が毛利側に着いてしまい発言権を失ったと言う事もあり得るのだろうか?

  • 『戦国大名』の『外交』に関する書籍を読んでいたはずなのに、なぜか現代の政党間交渉みたいなものを思い浮かべて読むことが多々あった。やはり、政治的風土ってのはこの頃のものからいろいろと引き継いでいるのかなあ?
    あと、書状に取次(宿老or側近)の添え状が必要とか、『戦国大名』って西洋的専制君主とはほど遠い、『御家の代表』なのね。このあたりは事務次官の発言で裏付けが必要な軽い大臣の発言が思い浮かんだ。そして、取次の役割の重要性と、取次が所属大名では無く、交渉相手と一体化して暴走する事例等を見ると、本能寺の変の解釈も一周回ってまた変わるなあとか、いろいろと興味深く読めたので、また時をおいて読み直してみたい。

  • Lv【初心者】~
    ・2013年秋の書状展で書状に興味を持った方
    ・戦国大名同士、あるいは国衆との駆け引きが見たい
    ・とにかく面白い歴史の本が読みたい方

    戦国時代初心者の俺にも読みやすい、明快で気持ちのいい文体!
    「単純に読んでて楽しい」歴史の本は久々!

  • 歴史好きの母のすすめで購入して、正月の息抜きに読む。

    筆者はまず戦国時代の大名は「国家」であったとする。大名に戦国法の制定権があり、彼らは自領を「御国」「国家」と表現し、そしてポルトガル人宣教師たちは諸大名が王であるとして本国に報告をしている。

    そして大名、すなわち当時の国家間での外交の一部を、古文書を読みやすい現代文に書き下すという手法も用いて、華麗に再現してみせた。

    当時の取次はつまり現代の外交官であり、起請文は条約文であり、書札礼は外交(儀典)プロトコルであり、手筋はチャネルである。現代の外交と本質的な違いはない。

    一方で当時の外交官(取次)は、現代の職業外交官と違う点もある。和平交渉の相手方から知行地を与えられたり、独断でうごいたりする。また電話もメールもない時代であり、甲斐と今川ですら数日のタイムラグが発生する。

    当時の外交の手順の中でも、第三者に書簡をよまれないよう暗号が用いられていたと想像するが、その点については本書では触れられていないのが個人的に残念であった。

    最後に2点本書がよかったのは筆者があとがきに少しだけ吐露するようにまず本書には細分化し矮小化していく個別の戦国大名研究へのアンチテーゼとして外交という視点から複数の大名を横断して分析を行ったところがよい。そして「専制的で」武力による領土拡大しか頭にないというイメージの強い戦国大名像を打ち破るものとして新鮮さがある。

    2014/03/19追記
    ほとんど博論と一緒か。
    http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00100104-20090300-0103

  • Twitterで著者をフォローしていて、面白そうだとずっと感じていたのがようやく手に取ることが出来た。著者は呟きではいつもわかりやすく説明をしているので、著書も同じように軽く(それこそ『頼朝の武士団』のように・・・)話を展開しているのかと思いきや、専門的な内容が詰まっていて、読み始めはかなり驚いた。とはいえ、専門的な内容を分かりやすく伝えようというのは首尾一貫している。

    本書は戦国大名をいわば一つの国家(厳密な定義は別として)としてとらえて、その交渉を「外交」として解説を行っている。言葉や人物名など素人にはわからないところもあるが、ある程度歴史を知っていれば、著者の説明はストンと落ちてくるのではないだろうか。後半の島津家久の部分はちょっとわからないかもしれないが・・・。


    濃い内容にもかかわらずスラスラと読めたのだけど、個人的には学会(というか学問の流れの中で)著者の問題意識がどこにあるのかを十分に把握できていなかったので、一つの知識以上の読み方が出来なかったのがちょっと残念。研究における位置づけがわかればまた違った読み方が出来たのにな、と思ったりもする。

  • 本はいわゆる新書、選書、学術書の順で難しくなる。難しくなるのは、お約束ごとが増えるからであるが(いちいち説明してられないので、専門用語に頼ることになる。)、この本は、お約束ごとを出来るだけ丁寧に解説しょうという著者の意図もあって分厚くなってる。

    戦国大名を「外交」の作法から見て行くことになるので、馴染みのない作法の解説が読者の負担にならないようにとの配慮がある。しかし、選書を読むような読者は、新書レベルの本はかなりこなしているのである。

    汎戦国大名論として成功しているかどうかは専門家でないので判断できないが、「中央の儀」などの用語が、戦国大名の「外交」というコンテクストの中で語られると非常に説得力をもつのは間違いない。

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著者プロフィール

慶應義塾大学文学部非常勤講師

「2021年 『戦国遺文 真田氏編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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