アーレント 最後の言葉 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 23
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062586573

作品紹介・あらすじ

1975年12月4日、ニューヨークの自宅で、ハンナ・アーレントが急逝した。享年69。死因は心臓発作だった。
自室の机に置かれていたタイプライターには1枚の紙がかかっており、そこに何行か印字されていることが、すぐに気づかれた。
その第1行には「判断(JUDGING)」とある。これはアーレントの遺著となった未完の三部作『精神の生活』の第三部の書名であることがヘッダーの部分に記されている。この大著の第一部「思考」と第二部「意志」は原稿がほぼ完成した形で残されていたため、死後出版された。しかし、第三部「判断」のためにアーレントが執筆した言葉は、この1枚だけである。
その紙片には、タイトルに続いて二つの銘が置かれ、そこで途絶えている。
第一の銘として引用されているのは、ローマ帝政初期の詩人ルカヌス(39-65年)の『内乱』の一節。表題のとおり、これはカエサルとポンペイウスの対立を軸とするローマの内乱を描いた作品である。そして、第二の銘として引用されているのは、ゲーテ(1749-1832年)の長編詩劇『ファウスト』の一節である。
タイトルと二つの銘だけから成るこの最後の言葉は、いったい何を意味しているのか? 二つの銘が並べて引用されていることの意味は何か? そして、このような始まりとともに執筆が開始されたライフワークの最終作は、どんな書物になるはずだったのか?
手がかりはあまりに乏しいように見える。しかし、著者はここにあるルカヌスの一節をアーレントが人生の中で何回も(少なくとも8回は)引用してきたことに気づく。その一つ一つを丹念に調査し、それぞれの箇所でこの一節に付与された意味を読み解いていくと、アーレントの出自と結びつく問題系に結びついていることが見出された。それは同時に、アーレントにとって決して消せない影響を与えた男たち──クルト・ブルーメンフェルト、カール・ヤスパース、そしてマルティン・ハイデガーの記憶と交錯し、ゲーテから引用された第二の銘とも関わっていることが明らかになっていく。
アーレントが残した謎を解き明かしていく本書は、その過程で通説とされてきた伝記上の事実をも鮮やかに覆し、これまで誰も知らなかったアーレントの姿を描き出す。気鋭の著者によるスリリングにして刺激的な論考!

感想・レビュー・書評

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  • アーレントの著作にたびたび繰り返される引用から彼女の思索を読み解くスリリングな論考。

  • 東2法経図・開架 311.2A/Ko67a//K

  • アーレントは、最後の著作「精神の生活」の3部作の3作目となるはずだった「判断」のタイトルと銘をタイプで打ったところで、心臓発作で他界する。

    その2つの銘について、アーレントの他の著作での引用のされ方を検討することを通じて、「判断」がどういう本になろうとしていたかをかなり突っ込んだ文献の精読を通じて、迫って行こうという本。

    一種、推理小説的な面白さがあるが、やはりある程度アーレントの著作と格闘した人でないと分からないとこもあって、こうした本が成立すること自体、アーレントの思想がある程度、関心をもって読まれていることの反映なんだろうな。

    わたしも、今のアーレント関係図書の出版ブームみたいなものがなければ、この本は意味が分からなかったかな?

    ある程度の前提条件は必要ではあるが、基本的には、楽しく読める。

    アーレントのそれまでの著作の読み直しみたいなところはスリリングだし、最後の思想にかなり肉薄している感じ。

    う〜ん、やはり「精神の生活」読みたいな〜。

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著者プロフィール

1975年、東京都生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。現在、武蔵大学人文学部准教授。専門は、ヨーロッパ思想史、ユダヤ思想史、社会思想史。
主な著書に、『デリダの政治経済学』(御茶の水書房)、『フィクション論への誘い』(共著、世界思想社)、『人形の文化史』(共著、水声社)ほか。主な訳書に、ジャック・デリダ『エコノミメーシス』(共訳、未来社)、ヨセフ・ハイーム・イェルシャルミ『フロイトのモーセ』(岩波書店)ほか。

「2017年 『アーレント 最後の言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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