天才と発達障害 映像思考のガウディと相貌失認のルイス・キャロル (こころライブラリー)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062597029

作品紹介・あらすじ

視覚優位のアントニオ・ガウディと聴覚優位のルイス・キャロル。彼らの認知の偏りが偉大なる「サグラダ・ファミリア聖堂」や「不思議の国のアリス」を生み出した。発達障害の新たな可能性を探る衝撃の書。

感想・レビュー・書評

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  • 視覚優位と聴覚優位。認知の偏りに着目した、発達障害と才能について書いた本。
    面白い。わかりやすい。
    著者ご本人も視覚優位(映像思考)のよう。

    ガウディが映像思考(視覚優位)で、色彩にも敏感。対してルイスキャロルやダーウィンは聴覚優位。
    聴覚優位を示す人は色についての感覚が低く、描画も個々の細部は細かく表現できるが、奥行きを示すような線がわからない。(立方体の各面の陰影が認識できていない)

    視覚優位の人は逆に音に関しての反応が遅い。ガウディが死んだ事故も路面電車の音に気付かなかったからか?


    目次

    第1章 あなたは視覚優位か、聴覚優位か
    1「認知」とは何か
    人によって感覚器の感度は違う/だれにでも認知の偏りはある
    2二つのタイプの優位性ー「視覚優位」と「聴覚優位」
    神経特徴を位置づける「優位性」/視覚優位の能力と映像思考/聴覚優位の能力
    3他にもある認知特徴による分類
    「全体優位性」と「局所優位性」/視覚認知の中の「色優位性」と「線優位性」
    4認知の偏りから学習方法を見つける
    5私の映像記憶「記憶は未来からつくられる」
    6視覚・聴覚の優位性に気づいていた人たち
    優生学の創始者ゴールトンとダーウィン/視覚でものを考えるグランディン/数学者岡潔、そしてガウディとキャロル

    第2章 アントニオ・ガウディ「四次元の世界」
    1神の建築家ガウディ
    2生まれながらの資質
    3ガウディ自身が語る認知の特徴とは
    4子ども時代の病弱さ
    5ガウディとディスレクシア
    映像思考に多いディスレクシア/ガウディの場合
    6その装飾デザインが生まれた軌跡
    一ハ五枚の写真リスト/感覚の瞬間凍結化
    7成績にみる偏りと2E児
    アメリカの才能教育/ガウディにみる2E
    8ガウディの成績にみる映像思考の人の得意
    9全体を見られるか、段階的に見ていくかー同時処理と継次処理
    10年齢差のある友人たち
    11発想だけでなく「いらだち」も生む映像思考
    ちょっとした疎さと怒りっぽさ/たとえば、設計課題「中都市の霊園門」
    12四次元映像からのプランニング
    初期の作品に表れる認知特徴/カサ・ビセンスでの暮らしやすさの実現
    13映像思考にみるダイレクトコミュニケーション
    なぜか人の扱いを心得ていたガウディ/映像思考同士のコミュニケーションの場合/聴覚優位の人には理解できない/強い信頼関係がつくれる/ガウディの右腕・マタマラ
    14ガウディの視覚脳-興昧は脳のどこから生まれるのか
    15ガウディの色優位性ー色の感度の強さとこだわり
    色への強いこだわり/色彩は生を表現
    16客体視ー三次元空間の中で自分の位置を見る
    17「見られる」から生まれる「装飾」
    18ガウディの全体優位性-全体像をイメージする能力
    19縮尺フリーと「三次元は三次元で」
    20映像思考とその行動
    イメージが湧かないと前に進めない/見えるから動ける
    21なぜそれほど頑固なのか
    22ガウディ最後の不注意

    第3章 ルイス・キャロルが生きた「不思議の国」
    1子どものような心を持つキャロル
    2生まれながらの資質
    父親も聴覚優位/規則愛好者/数値へのこだわりと小さな親切
    3一方的な努力と困った行動
    4アスペルガー症候群の人にみる特徴
    5キャロルと吃音の障害
    流暢に話せない/発達障害にみる「不器用さ」/吃音障害に悩み続けたキャロル
    6 11人の姉妹と弟たちの認知特徴
    7局所優位性と線優位性
    「絵」ではなく「写真」へ/思考の局所優位性と言葉
    8表現にみる聴覚優位らしさ
    色彩、人の表情の表現がない/色の問題
    9「岡・宮尾仮説」ードナ・ウィリアムズの視覚世界から
    10奥行き感を持てない人たちー「空間」と「時間」
    11顔や表情を認知できない「相貌失認」
    相貌失認の人の見え方/キャロルの相貌失認/八ンプティーダンプティーの相貌失認
    12ダーウィンとキャロルの接点
    13キャロルにとっての写真、そしてアリス

  • さて問題です。「広場に子供たちが集まってきました。まず一番目に、長い黒ズボンをはいた”ひろし君”がやってきました。二番目に空色のトレーナーを着た”とおる君”が、三番目は赤いリボンをつけた”ともこちゃん”が、四番目にピンクのセーターを着た”めぐみちゃん”がやってきました。さらにそこへ茶色のかばんをもった”いちろう”君がやってきました。」

    「さあ二番目にやってきたのは、何色の服を着た子供だったでしょうか?」

    この問題を、前の文章に戻ることなく、瞬時に答えることができた人は、おそらく「視覚優位」の人だろう。視覚優位の人は、文字を読みながら映像で思考し、また色優位性という特性を持つことが多いため、映像から空色のトレーナーの子供のことを記憶していることが多いのである。

    一方で、聴覚優位の人というのも存在する。こういうタイプの人は言葉や文字での解説のほうが記憶や処理、そして理解をしやすいタイプの人である。先ほどの質問が、「さあ二番目にやってきたのは、何君だったしょうか?」という質問であったら、答えることができたのかもしれない。

    本書はそのような人間の認知を「視覚優位」と「聴覚優位」に分けて解説した一冊である。「視覚優位」の代表としては建築家のガウディ、「聴覚優位」の代表として小説家のルイス・キャロルの事例が取り上げられている。著者は室内設計家の岡 南氏。視覚優位の持ち主であるそうで、「小学生の頃、頭の中になぜかカエルを左斜め上から見ている映像があり、そのまま手というプリンターを使い写していました」というエピソードも紹介されている。

    ◆本書の目次
    第一章:あなたは視覚優位か、聴覚優位か
    第二章:アントニオ・ガウディ「四次元の世界」
    第三章:ルイス・キャロルが生きた「不思議の国」

    私のような多読癖のある人間は、十中八九「聴覚優位」の傾向にあるだろう。一見、視覚を通して情報をインプットしているように思えるが、黙読という行為は、頭の中で音声に変換し認知を行っているのだ。つまり、黙読とは聴覚インプットの高速化ということにほかならない。そのような立場から本書を眺めると、ガウディの「視覚優位の世界」というのは、興味深くてたまらない。

    ガウディの設計特徴は、動線計画に現れるという。日ごろ、人や物の動きや見たままを映像で記憶しているから、頭の中に三次元の疑似空間をつくり、その中を自分が歩き回り、見まわすこともできるのである。それが、住み手に取っての居住性の良さにつながるということだ。ガウディ自身は視覚で考えるということをこのように表現している。

    建築家とは、作る前に、諸構成要素を造形的にも距離的にも適切に配置・結合し、その全体像を明確に見ることのできる総合する人のことである。作る前のこの最初のビジョンには、構造デザインと色彩計画もイメージされている。

    この一文が、映像思考の特徴である「全体優位性」、「色優位性」、「同時処理」、「関連性の重視」、「空間的・総合的」という、その全てを言い現している。

    一方でガウディは、ディスレクレシア(読字障害)の疑いがあり、また映像で思考しているために、周囲への伝達に若干の難があったようである。しかし、ガウディは自分自身の認知の特徴を良く理解していたからこそ、周囲との信頼関係を築くことができた。また、偉大な業績を残している時には、周囲もまたガウディへの良き理解を示している。その中には、聴覚優位に分類される人もいたのであろう。

    「視覚優位」と「聴覚優位」が、うまくコミュニケーションを取れれば、とてつもなく良いものができあがる。本書もまた、その好例である。視覚優位の世界を言語化するためには、著者と共同研究者の間で気の遠くなるほどの対話がなされたことであろう。また、本エントリーでは割愛するが、後半に紹介されている「吃音障害」、「相貌失認」に悩まされたルイス・キャロルの話も興味深いものであった。

  • 筆者と同じ映像思考をする偉人の伝記の様なもの。
    発達障害は認知の仕方が違う。認知の偏りを知り、それを生かそう。

    色と形、聴覚と視覚

    ディスレクシアは映像優位、サグラダファミリアのガウディはこれだった。

  • 人によって認知が異なるのは何故なのか。今まで疑問だったことがこの本に書いてあった。今までも人と本の話をしていて何となく気がついていたのだが、他人は自分と同じように同じ本を読んでいるわけではないし同じような映像を見ているわけではないということだ。

    あれれ、多くの人々は、本を読んでいて映像が思い浮かばないんですか?

    本を読む、話しかけられるなどの外部から情報が与えられたときにイメージすることによって理解するのが視覚優位、その例としてスペイン建築家のガウティのエピソードが前半部分で取り上げられている。本の後半は、言葉そのものから理解に繋がる傾向、頭の中で音読することによって理解しているという聴覚優位のルイス・キャロルが例として紹介されている。

    ガウディやルイス・キャロルが天才かどうかはこの本の本筋でありません。なぜこの題なのか。タイトルだけ見ると「うちの子、言葉が遅いのよね…もしかしたら発達障害?自閉症?…いや、もしかしたら天才なのかも?!」と悩める母親が藁にすがるように手に取る本なのかもしれない。人間の認識にはふたつのパターンありますよと示してはいるけれども、全ての条件が当てはまるわけではないだろう。研究者が書く学術書とは違い、言葉のふしぶしに著者の個人的な感情を垣間見ることができ、おそらくこの本は発達障害の子を持つ母親が読むことを、あらかじめ読者を想定している。

    絵が描ける、デザインの仕事に携わっているような人は視覚優位で、聴覚優位の人は数学と言語が得意とされている。数学と言語?それは日本的な文系理系という安易な枠組みで捉えると相容れないもののように思えるが、数字も言葉も伝えるパーツとしての概念は同じなのか?

    絵が描けなければ数に弱いという単純な話でもない。数学教師だったルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』はジョン・テニエルの挿絵が有名だけれども、オリジナル版はキャロル自身(ドジソン)による挿絵で、空間認識が正確でないと考察されている。

    個人的にずっと考えてはいたことだったのだが、他の人は自分と同じように色の印象を残していないかもしれないし、時間軸が並行して異なる映像が流れていく感覚(4次元の認識?)というのが無いのかもしれない。その代わりに他の人にはわたしが知らない認識の流れがあるのかもしれないが、それは検証しようがない。

    個人的な感想だが、それらの自己への検証がせつなくなるのは過去の記憶をひきずりだすから。学校の勉強は苦手だった。問題の意味がよく分からないこともよくあった。本を読むからといって国語の成績が良いわけではなかった。

    建築学科の学生ガウディが霊園を構想する際に、まず葬式のイメージから提案を始めたことが教師に否定されたというエピソードに、なんだかわたしは泣けてくる。なんでだよ。そうなんだ、どうしてなんだろうと思うよ。自分もこちら側の人間だった。

  • ガウディやルイス・キャロルにダーウィンもアスペルガー症候群だったというかなり詳細な研究書。ファンの人達には面白いはず。

  • 発達障害における「視覚優位」のガウディと
    「聴覚優位」のルイスキャロル。
    それぞれの特性(長所と弱点)を提示している。

    両氏に関心がないと読む進めるのがしんどい。。
    ルイスキャロルについてはよく知っていたこと
    (写真好き、少女好き)が述べられていたので
    すらすら読めたけど第2章のガウディ部分は
    かなり斜め読み。両氏ともこの優位性は
    家系、というのが興味深かった。

  • 岡 南

    映像思考のガウディと相貌失認のルイス・キャロル
    講談社 (2010/10)
    (こころライブラリー)


    人間の認知の仕方って偏りがあるんだ
    こんなにもあるんだ
    これって障害云々ではなくって 大なり小なり みんなあるよね

    難しい問題を例をとって丁寧に説明している
    へ~そうなんだ!って思うことばかり

    ちょっと難しかったけれど読み応えありました


    ≪ 普通とは? 際立つ個性 ふしぎ脳 ≫

  • 映像優位の子には言語化を無理強いしない。言語面での遅れはあって良い発達の違い。ストレスなく映像を言語化することを助ける。子の理解を優先する。こういう専門化の知識って親や先生たちに本当に必要。

  • 言葉も音もない世界を自らの内面世界に作り上げ、その世界で思考を進める。
    そんな映像思考を取り入れていこうと思った。

    認知の違いによって、立ち振る舞いや行動にも違いが出てくることが、印象的であった。

  • ふむ

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