ふたりのイーダ (子どもの文学傑作選)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062611558

感想・レビュー・書評

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  • 感想
    戦争を子供の目線で語る。子供の言葉によって戦争を表現することで生々しい恐怖が襲ってくる。恐怖から目を逸らすことなく直視する。次世代へ繋ぐ。

  • この版でたしかに子供の時読んだんだけど、情けないことにやはりぼーっと読んでいたらしく、細部は初読みと同じ。これはちょっとしたミステリー文学だし、何と言っても趣旨は明確。児童文学ながら、大人が読んでも十分引き込まれ、エピローグがすばらしい。著者のご逝去をきっかけに再読した。また未読の作品も読みたい。優れた児童文学はぜったいに必要。楽しいものだけでなく戦争や災害を語り継いでいくこともぜったい必要。

  • 何十年ぶりに読んだ。
    子どもの頃は椅子が動いて喋るのとイーダのイメージが怖かった。
    ストーリーそのものより印象に残っている。
    久々に読んでみて驚くのは松谷みよ子の巧さ。
    長崎源之助や早乙女勝元もたくさんの戦争もの児童文学を残している。
    そのこと自体は素晴らしいが、ストーリー自体はそう面白くないというのが正直なところ。
    戦争を全く知らない子どもたちに読ませるには、物語としての力が必要だが、これにはそれがある。
    子どもを探してさまよう椅子、冥界とつながっているのではないかと思わせる童女、少年の冒険、そして最後の結末の鮮やかさ。
    松谷みよ子は好きな作家ではないが、このころの作品には言い知れぬパワーがあって、好き嫌い関係なく惹きこまれてしまう。
    絵が暗いので敬遠する子が多いけど、これはこの絵だから生きる物語。
    ぜひ小学生のうちに読んでほしい。

  • りつ子さんの手紙を読んで、胸に込み上げてくるものがあり涙してしまった。
    最後のエピローグは直樹くんの希望にあふれた祈りであったけれど、その後放射能の影響であっけなくりつ子さんが亡くなったとしても全く驚かない。
    当時の広島や長崎には、そんな神も仏もない無慈悲な現実が数えきれないほどあったと思う。

  • 昔から知っている作品であるが、シリーズであることを知らなかった。
    四年生の直樹。いすの探すイーダが何歳くらいなのか、おじいさんの娘か孫か時系列がすぐに分からなかった。直樹のお母さんが戦争を経験している世代なのだ。直樹が私の両親くらいの年代だ。
    そう思ったら、いかに戦争が風化しつつあるかが見えてきた気がして怖くなった。
    自分も子どもたちにきちんと語り伝えられていない。
    次第に過去のものとなり、記憶が薄れていくのは必定だ。
    それに任せたとき人間はまた同じことを繰り返す。伝えていくことの難しさを改めて思い知る。

  • おそらく子どものとき読んだ作品。戦争が関わっていたような、という程度の記憶しかなく、再読。
    来年はブックトークで紹介したい。

  • 生まれ変わりの話は興味深いが易々と語の展開の手法にすることには反感を持つ。しかし、この物語は生まれ変わりの魔法をお気軽に使って物語を回したのではないことを知り驚いた。書く能力と使命を持つ者には類稀な奇跡や巡り合わせがあるのだと思った。

    りつ子を育てた父母の家族が灰になっていた場面などから俳人の金子兜太氏の言うように突然に消滅した命と人生を(闘病があったにしても)全うした人の死はぜんぜん違うという言葉がこの子どもへの物語で実感する。

    大人にも十分読み応えのある深い物語。著者が抱え表現した切実な思いを私たちは今一度、深く考える必要があるのだが・・

  • 子どもの頃(低学年)から、何度、読み返したか、わからない。おそらく、最初に「ヒロシマ」のことを考えるようになったのは、この物語がきっかけだったのではないだろうか。
    この物語はファンタジーでもあるが、ちょっとぞっとするホラーでもあり、松谷みよ子にしては珍しく(?)、謎解き仕立てになっている。
    ある暑い夏休み、直樹が一人で動く不思議な椅子に導かれて、古い洋館に辿り着く。いったい椅子は誰を捜しているのか、どうして洋館は無人になったのか、住民(おじいさんとイーダ)はどうなったのか。2605年という未来の日付は何を意味しているのか。
    仲良くなったお姉さん・りつ子とともに、その思いもかけない謎を解いていく。
    何度、読み返しても、最後の謎解きの手紙を読みながら、どうにもやりきれず、泣きたくなる。
    イーダは洋館に戻れるだろうか。しあわせな日々はよみがえるだろうか。
    「イナイ、イナイ、ドコニモ、イナイ……」
    イーダを探し続ける椅子のつぶやきが、切ない。
    これは、椅子のつぶやきでもあるし、同じように子どもや家族を亡くした人たちの心の声でもあるのだろう。

    ちなみに、物語の中の年が1970年代頃だろうから、今から、もう50年以上前になる。そのため、子どもが読んで、スムーズに物語の時代に入り込みにくくなってしまっているのが残念。
    大人になった直樹が、子どものころを思い返す設定にしないと、今の子どもには、ピンとこないのではないだろうか。

    この後、「直樹とゆう子の物語」というシリーズになる、その第1作となっているが、当初は単独の独立した物語だった。

  • 小学校1年生の頃、映画を観た。それからトラウマになり、表紙を見るのも怖かった。あれから40年余の中で読んだことあったはずなのに、初めて読んだような気もする。心が震えて言葉にならない声が出た。

  • 図書館で借りた本。
    夏休みのある日、4年生の直樹はもうずぐ3歳の妹ゆう子と一緒に、おじいちゃんの家に預けられることになった。
    たまたま迷い込んだ藪の中で、小さないすが「イナイ、イナイ」と行って歩きまわっているのに遭遇する。
    いすについて行くと、廃屋に行きあたった。この家に昔住んでいたのは、誰なのか。いすは誰を探しているのか。8月6日のままの日めくりカレンダーは、あの出来事へと導いていく。

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著者プロフィール

1926年、東京生まれ。1944年頃より童話を書きはじめ、1956年、信州へ民話の探訪に入り、『龍の子太郎』(講談社)に結実、国際アンデルセン賞優良賞を受ける。以来、民話に魅せられ創作と共に生涯の仕事となる。日本民話の会の設立にかかわり、松谷みよ子民話研究室を主宰。著書に『女川・雄勝の民話』(国土社)『日本の昔話』『日本の伝説』『昔話一二ヶ月』『民話の世界』(共に講談社)『現代民俗考』8巻(立風書房)など。

「1993年 『狐をめぐる世間話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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