ザ・ギバー―記憶を伝える者 (ユースセレクション)

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本棚登録 : 292
感想 : 61
  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062616522

感想・レビュー・書評

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  • 違いや個性を否定し、家族の組合せ(=家族ユニット)や職業の選択、個人の五感さえも画一的に決められた、苦痛とは無縁と称する世界が舞台。《十二歳の儀式》でジョーナスもまた、長老たちによって職業任命を受けることになる。ジョーナスに与えられた使命はこの世界で「最も名誉な仕事」であり、同時に「苦痛や孤独を知る」仕事であった。

    この作品を端的に表すとしたら「近未来ユートピアの仮面を被ったディストピア」でしょうか。児童文学ですが色々と考えさせられるテーマを背負っていて読み応えがありました。ジョーナスは与えられた使命をきっかけに、感情を持ち、個性を知り、今居る世界に疑問を持ち始めます。
    印象的だった場面は、ジョーナスが“両親”に投げかけた問い――「ぼくのこと、愛している?」。何の疑問も持たない“両親”の返答は、喜怒哀楽を持つジョーナスにとってどれだけ胸に突き刺さる言葉だったか。

    管理された世界は平和で安全です。しかしその代償はあまりにも大きいと気づきます。人は痛みを知っているから人に優しくなれる。人は孤独を知っているから人を慈しむことができる。
    ジョーナスが最後に一石を投じた選択が、この先世界にどのような変化をもたらすか。彼が夢見た未来に近づいていると期待したい。

  • 未来の超管理社会を描いたSF小説です。
    主人公のジョーナスは職業任命で「記憶を受け継ぐ者」となります。
    先輩は「記憶を伝える者」として、彼に過去の記憶を与えていきます。
    過去の記憶を持つものは彼ら以外にはなく、この町の全員が様々な制約を受けることで幸せに暮らしています。
    視覚や聴覚、感情を技術で抑制することで、極めて平等で機能的な社会が実現されたディストピアです。
    記憶を受け継ぐと同時に過去の人間が持っていた感覚を所有したジョーナスは、自分が住んでいる社会に初めて疑問を抱くことになるのです。
    繊細な表現による、静かな恐ろしさのある一冊。

  • 先に『ギヴァ― 記憶を注ぐ者』を読んだ。地元の図書館で検索してみたら絶版になったこの本『ザ・ギバー 記憶を伝える者』があったので、さっそく読んでみた。
    小さな差はある。
    ジョナスはジョーナスで、〈解放〉は〈リリース〉で、〈任命式〉は〈職業任命〉、〈同一化〉は〈画一化〉に。
    細かい翻訳の差はあるけど、受ける衝撃は変わらなかった。

    ただパパの言葉づかいが怖かったのが『ギヴァ―』の方でした。1995年の訳よりも現代に近い2010年の方がリアリティーがあって怖さが増す。それにしても児童書なんだよね、この本。表紙はカール・ネルソンという画家の写真。色に対するすばらしい感性の持ち主だったそうです。人に見えない色を正確に認識できたという。

    訳者あとがきよると、ロイス・ローリーは11歳から13歳を占領下の日本で過ごしていたそう。ロイス氏の父がマッカーサーの歯科医で、渋谷の駐留軍家族の専用居宅地域で暮らしていた。おとなたちの目をぬすんでロイス・ローリーは自転車で渋谷の町を走り回ったそうです。
    その時の体験が作品に投影されている。ラストシーンは特に近いものがあるとそう感じた。

  • 今でも思い出す児童文学と言えば、これ。
    小学校の図書館で出会いました。装丁とタイトルが印象的だったのを覚えています。

    生まれてから死ぬまで全てがコミュニティーごとに管理されている(それが普通である)社会。その中で「人類の記憶」を継承する役割を負うことになった少年のお話です。
    飢餓や戦争を忘れた代わりに、祖父母との暮らしや暖炉の温もりも忘れてしまった人々は果たして幸せなのか。
    とても深いテーマですが、物語としても非常に展開が面白く読みふけってしまいます。

  • 近未来小説、と言っていいのでしょう。
    とにかく衝撃作でした。

    読み進めていくと「どこかおかしい」と不安になってゆき、やがてこの世界の驚愕の事実を知ってぞくりとしました。
    読後は放心。
    とにかく色々考えさせられます。

    表紙買いや表紙借りをされそうにない本なので、だれか大々的に取り上げてくれないかと思ってしまう。

  • 数年前に読んだ作品だが、ジョーナスが暮らす社会が徹底的に管理され、その実態が明らかにされていく過程が今でも印象に残っている。

  • 子どもの頃に読んで、その衝撃が忘れられずにいた本。
    主人公が平然と享受している管理社会に、読み手の私達はほのかな違和感を募らせていく。色が見えていなかった、ということが明かされたシーンで、思わずページを捲る手を止め、最初から読み直してしまった。色が見えることや音楽が聞こえることは、当時の私にとってはあえて記述するまでもないような当然のことであった。作者はその「当たり前」を逆手に取り、まるで叙述トリックのようにコミュニティの姿を浮かび上がらせる。
    大人になって再読し、「これだよこれ」と頷きながら当該シーンに辿り着いた。コミュニティが色を放擲したのは、肌や髪の色による差別をなくすためだったのかもしれない、と今になって思う。コミュニティは清潔で、合理的で、どこまでも穏やかだ。

  • 一回しか読んでないけど、時々思い出す本。心を無くす怖さ、日の光の眩しさ。

  • 不思議な物語
    良かれと思われる生活
    でも不自然なところが・・・
    面白かった

  • 本の装丁も大事だなと思った一冊。悪くはないのだけど、タイトルと表紙を見て、私はなんとなく、アメリカンネイティブのシャーマニズムの伝承に関係した話だと思い込んでしまっていた。
    全然違いました。
    前半はSF〜ホラーチックで、ありがちな設定なのだけれど、後半の展開が素晴らしい! 記憶は力、生きる力の源なんだよね。私を前へ進ませてくれるもの、苦しい時に私の心を温めてくれるものは、記憶、思い出、そこから生まれる力なんだよね。そのことに気付かされたときにすごい衝撃を感じた。

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著者プロフィール

Lois LOWRY アメリカの児童文学作家。1937年ハワイに生まれ。11~13歳までの少女時代を東京・代々木で過ごす。ニューベリー賞受賞作『ふたりの星』『ギヴァー』のほか著書多数。なかでも本作を含む〈ギヴァー4部作〉は世界中にファンをもつ代表作。

「2018年 『ある子ども』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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