影帳 半次捕物控 (講談社文庫)

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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062630535

感想・レビュー・書評

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  • 味が濃い捕物帳、深くもある。

  • 江戸時代、窃盗は重罪で、十両以上の盗みは死罪になった。
    しかし人情として、被害者の方も、自分の訴えで人が死罪になるのはあまり気持ちのいいものではないし、仮にそこまでの重罪でなくても奉行所に出向いて時間を拘束されたりするのは面倒なので、被害者の方が「何とか穏便に…」と岡っ引などに金を払って、事なきを得ようとする。

    ところが相模屋の雪駄を盗んだ犯人は、その救いを拒むのだ。
    なにか割り切れない思いを抱きつつ、通常の手続きで犯人を助五郎親分に任せた半次。

    助五郎親分というのがあまり評判の良くない親分で、自分の弟分だった幸太郎が親分にたぶらかされて道を誤っているのではないかと噂が立ったり、幸太郎の兄弟分の常吉が死体で発見されたり、事件は複雑に絡み合って…ちょっと難しかった。

    長編だからかな。
    江戸時代の説明が丁寧な分、話が複雑になってしまったのだと思う。
    とはいえ、半次の周辺の人々にもう少し馴染んできたら、きっと居眠り紋蔵のように楽しく読めると思うので、引き続きシリーズを読み進めることにする。

  • 以前から古本屋で見つけて居たのですが「捕物控」という名前が気になって(ミステリーは読まないようにしているので)。ついに佐藤雅美の名前に負けて購入しました。
    やっぱり良いですね。確かに捕り物帳なのですがしっかりした出来です。特に「引合を抜く」と呼ばれる制度、これが岡引の主な収入源になっているのですが、そこらがキッチリ書き込まれ、又それが事件の発端になっているところなど、安出来な捕り物帳とは一線を画します。
    結末も佐藤さんらしいというか、なんとも言えない終わり方です(これは異論も多いと思いますが、私は肯定派です)。
    そういえば、途中で別シリーズの主人公・桑山十兵衛の名前が出てきたのは面白かったです。ひょっとしたら桑山十兵衛の方でも半次が出てたかしらん。

  • 半次捕物控の第一弾

    岡っ引きとは、盗人を捕まえて被害者を調べ上げ、被害者が奉行所に行かないで済むように取り計らう事が主な収入の手段であるときっぱり説明している。現代の私たちの感覚でいえば、被害者からお金を巻き上げている何とも酷い仕事となる。

    こういう家業が存在していて、街の人も普段から岡っ引きに袖の下を渡し、それで街の治安が保たれている時代の話であるということを、つまり現代の私たちの正義の感覚とは違う価値観の時代だと読者にきちんと認識させた上で物語を進めているのが、この小説の気に入っているところである。

    なので主人公の半次は、もちろん正義の為に働いてはいない。正義の為に働いたら岡っ引家業など続けられないからだ。じゃあ、何の為となると、当然食うための収入を得ることと、おのれ自身の恩とか義理で働いている。お世話になった人の頼みが断れないとか、自分のせいで被害を受けた人への詫びとか、メンツがたたないとかである。よくある捕物小説のように、正義感に満ち溢れた品行方正な岡っ引きが悪人を捕まえる話ではなく、意地だけがあって、失敗したり間違えながら進んでいく。そもそも後家と良い仲になるもの主人公らしからない。が、それもまた泥臭くていい。

    先が楽しみな小説である。

  • 短編かと思ったら、一つの事件の犯人を追う話でした。

  • 出だしから全く頭に入ってこず、そのままだらだらと終わってしまった。
    解説を読むとストーリーテリングに富んでいるとのことだが、本当かいな?
    他作品でも感じたが、この作家とはどうやら相性が悪い。

  • 若い半次親分ですね
    世の中、作家が都合よく書くような
    甘いもんじゃないといわんばかりの
    佐藤雅美先生の世界

    なるようにしかならないってことが
    思い知らされます・・・
    半次の思いつめる様子が良い!

  • 生っぽい人間のひしめいている、生活感のあるところが、おもしろかった。ドラマの時代劇チャンバラっぽくなっている時代小説もいいけど、江戸時代の舞台で人間の姿があるっていうのも、いいな。

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著者プロフィール

佐藤 雅美(さとう・まさよし)
1941年兵庫県生まれ。早稲田大学法学部卒。デビュー作『大君の通貨』で第四回新田次郎文学賞を受賞。1994年『恵比寿屋喜兵衛手控え』で第110回直木賞を受賞する。著作に『御奉行の頭の火照り 物書同心居眠り紋蔵』『頼みある仲の酒宴かな 縮尻鏡三郎』『関所破り定次郎目籠のお練り 八州廻り桑山十兵衛』『知の巨人 荻生徂徠伝』などがある。2019年7月逝去。

「2021年 『恵比寿屋喜兵衛手控え 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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