夏姫春秋(上) (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062630665

作品紹介・あらすじ

中原の小国鄭は、超大国晋と楚の間で、絶えず翻弄されていた。鄭宮室の絶世の美少女夏姫は、兄の妖艶な恋人であったが、孤立を恐れた鄭公によって、陳の公族に嫁がされた。「力」が全てを制した争乱の世、妖しい美女夏姫を渇望した男たちは次々と…。壮大なスケールの中国歴史ロマン、直木賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 春秋時代を全く知らず最初とても戸惑う。

  • <上下巻を通してのレビュー>

    中原の小国鄭は、超大国晋と楚との間で、絶えず翻弄されていた。
    鄭宮室の絶世の美少女夏姫は、兄の妖艶な恋人であったが、孤立を恐れた鄭公によって、陳の公族に嫁がされた。
    「力」が全てを制した争乱の世、妖しい美女夏姫を渇望した男たちは次々と・・・・・


    夏姫という春秋時代を通じて西施と並び称される美女を通して、その時代の様々な国の様子や君臣のあり方などが描かれています。夏姫には嫌いを通り越して怒りの感情さえ抱いてしまう・・・・・子の子南は辛かったでしょうね。それ以上に夏姫も過酷な運命に翻弄されて辛かったのでしょうが、どこをどう探っても好きになれる要素がないのです。(途中から夏姫を無視して読みました)

    覇権は斉の桓公から晋の文公へ、そして楚の荘王へと移行してゆくなかで、どれだけの策略がめぐらされ、どれだけの血が流されたんだろうかと真剣に考えてしまいます。
    優れた君のもとには優れた臣がいる。愚劣な君のもとには愚劣な臣がいる。
    どの時代でも力のない小国はつらいものですが、鄭と陳の2つの国だけはどういう事情があろうと好きになれません。


    話の流れは好きなのですが、夏姫が好きになれないので・・・・・

  • 古代中国・春秋時代に生きた夏姫と呼ばれた姫の物語。



    絶世の美女であり、夏姫を手に入れたものは次々と滅んでいった。

    それ故に希代の悪女とも言われているようですが、

    妖艶な美しさが男たちを狂わせていったのでしょう。



    かなり色っぽい場面も描かれていますが、

    夏姫自身の物語と言うよりも、

    夏姫を取り巻く男たちの物語と言った感じです。



    国と国の覇を争う心理戦。

    読んでいて非常にわくわくしてきます。

  • 1995年発行、講談社の文庫本。この巻では主人公周辺よりも国際関係の記述が主。歴史の国際関係は戦争の記述。春秋左氏伝を見ているとこの後の戦国時代の権謀術数とはかなり違う世界。氏族が違うのは民族が異なるようなイメージ、というのは納得がいくようないかないような。結構、亡命とかした大夫とかが徴用されるパターンもあるし、戦国では他国に遊説する人とかが増えて秦の統一以前からまとまりつつあるようにも感じる。とはいえ戦国(と楚漢戦争)では穴埋めでウン万人を殺したとかあるから別民族の意識は大きかったのかも。

    1991年4月海越出版社より刊行されたものの文庫化。

  • 直木賞
    著者:宮城谷昌光(1945-、蒲郡市、小説家)

  • 春秋時代の中国。鄭・楚・晋…夷は最初は近親相姦ヤローでとんでもない奴だと思っていたが、王としては少しましだったところが意外。

  • あらすじを書くと夏姫は傾国の美女という印象だが、むしろ人形のように強い意志を持たず、運命に流されて行く女性として描かれる。
    題は夏姫春秋だが、主人公はそれを取り巻く男達であり、魅力的な男が出てこない前半はさほどでは無い
    。終盤、物語は一気に盛り上がり面白くなる。それは楚王と最後に夏姫を救うことになる巫臣のキャラクターによるところが大きい。
    しかし、ちょっと詰め込みすぎです。次々に現れる登場人物(それが又、色んな名前をもっている)。本筋から外れるようなエピソード。
    どんどん変化する登場人物の気持ち。もう少し枝葉を刈り込んだら、もっと面白い話になったと思います

  • 第105回直木賞受賞作品。

    春秋戦国時代の鄭国の公女、夏姫を巡る物語。
    1ページ目から、十歳を過ぎたばかりで実の兄が寝所に忍んできて…という衝撃的な描写で始まり、幼い頃から「あれは童女ではない」と言われるほど妖艶な魅力を持っていた絶世の美女だが、それゆえ男たちに翻弄され続け、しかも関わる者はみな不幸になっていく。

    といっても、稀代の悪女が男たちを手玉にとっていく話ではなく、歴史に翻弄された一人の美女の生き様を描く、という筋書きでもない。

    実際に活躍するのは、夏姫の生国で小国に過ぎない鄭、嫁ぎ先の陳、大国である晋と楚などの王侯や武将たちであり、夏姫は時折登場して男たちの耳目をひく、という程度である。

    中国史に予備知識がないため、国の名前だけでも覚えるのに一苦労で、各王室の系図を載せるのであれば、代わりに簡単な登場人物紹介(国、肩書き、別名、血縁関係など)を載せてもらえるとありがたかった。

    とはいえ国ごとの気質や背景、登場人物の性格や行動原理などは見事に書き分けされている。場面が変わるたびに「どこの誰だっけ?」と困惑することはあるけれど、各場面ではのめり込むことが出来る魅力的な描写が多い。

    中でも十歳の妹に手を出すような、しょうもない兄と思っていた子夷が、立派な君子に成長していく様は予想外であった。楚王と並んで成長を見守るのが気持ちの良い青年君子と言える。

    惜しいのは夏姫が「美女」という他には、なんの性格も信念も、ものの考え方もうかがえないところで、曲がりなりにも主人公なので、もう少し掘り下げて欲しかった。

  • 『沈黙の王』の中の一編に夏姫の娘の話があって、
    興味を惹かれたので、夏姫春秋。
    直木賞受賞作なのだと、読み終えてから知った。

    絶世の美女・夏姫の話。
    中国、春秋時代。鄭の国の君主の娘。
    陳の公族に嫁いだ彼女は、一男を設けるが、夫と死別。
    寄る辺のない身となる。

    以後、その美しさのため、様々な男が彼女に触れるが
    ことごとく悲惨な道を辿る。
    彼女自身も息子を亡くし、自身の不幸に生きる気力をなくしていく。

  • 春秋戦国時代の話。
    鄭の国の夏姫という姫が主人公で、その美しすぎる容貌のために波乱万丈の人生を送ることになる。
    周陳晋楚斉などいくつもの国同士の戦いに巻き込まれ、夏姫は愛する心を失い幸せに笑えなくなってしまう。
    男たちの権力争いや駆け引きの道具とされた女性の悲しみや怨みがメインで描かれているが、どうしようもなく姫に心奪われる男たちの様子もよく描かれている。
    結末で救われる。

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著者プロフィール

宮城谷昌光
1945(昭和20)年、愛知県蒲郡市生れ。早稲田大学文学部卒業。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。91(平成3)年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞。94年、『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、2000年、第三回司馬遼太郎賞、01年『子産』で吉川英治文学賞、04年菊池寛賞を受賞。同年『宮城谷昌光全集』全21巻(文藝春秋)が完結した。他の著書に『奇貨居くべし』『三国志』『草原の風』『劉邦』『呉越春秋 湖底の城』など多数。

「2022年 『馬上の星 小説・馬援伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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