触れもせで: 向田邦子との二十年 (講談社文庫 く 36-1)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062630757

感想・レビュー・書評

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  • 数ある作家のエッセイの中で一番好きな本かもしれない。
    向田邦子とのエピソードがとても綺麗な日本語でつづられていて、著者の向田邦子への思いが伝わってくるし、読み終わった後も、さわやかな気分がする。向田邦子は飛行機事故で亡くなってしまったけれど、この一冊には彼女とのエピソードの一つ一つに楽しい思い出やその人柄がぎっしり詰まっていて、著者の悲しみよりも愛や感謝が伝わってくる良い本だった。

    料理研究家のコバヤシケンタロウさんがある雑誌でこの本を薦めていたのをきっかけに読みました。

  • 「久世光彦(てるひこ)」が作家「向田邦子」の思い出を綴ったエッセイ集『触れもせで―向田邦子との二十年―』を読みました。

    ここのところ「向田邦子」関連書籍がマイブーム… 4冊連続ですね。

    -----story-------------
    遅刻魔――あんなに約束の時間にいい加減な人も珍しかった。
    嘘つき――大きな嘘も上手だったが、とりあえずの小細工もうまかった。
    泥棒――どこを探してもあの人からもらったものなど出てきはしない。
    奪られてばかりいた。
    20年のパートナーなればこその知られざる“向田邦子の素顔”をはじめて明かす。
    -----------------------

    「向田邦子」と「久世光彦」は、二十年来の交遊があったらしいですね… 恋愛感情はなかったようですが、心情豊かに綴られた文書には愛情が感じられる温かさがあったし、余人には窺い知れぬ「向田邦子」の素顔も知ることができて、愉しく読めました。

     ■遅刻
     ■財布の紐
     ■漱石
     ■名前の匂い
     ■爪
     ■昔の大将
     ■春が来た
     ■私立向田図書館
     ■ゆうべの残り
     ■おしゃれ泥棒
     ■三蹟
     ■触れもせで
     ■青空、ひとりきり
     ■弟子
     ■雁の別れ
     ■アンチョコ
     ■ミス・メモリー
     ■小説が怖い
     ■上手い
     ■恭々(うやうや)しき娼婦
     ■ラストシーン
     ■お母さんの八艘飛び
     ■三変わり観音
     ■死後の恋
     ■向田邦子熱―あとがきに代えて―
     ■解説 黒柳徹子
     ■向田邦子年表・1 生い立ち
     ■向田邦子年表・2 書籍
     ■向田邦子年表・3 テレビドラマ

    本書を読むことで、これまでに抱いていた「向田邦子」像を、少しずつ補正して、さらにリアルに近づけて行った感じ… 「狡くて可愛い女」「良き時代の良き娼婦の資質を持った女、娼婦の資質を持ちながら娼婦になれなかった女」等、「久世光彦」の鋭い感性で表現した「向田邦子」という女性像は本当に魅力的で、これまでに知らなかった側面を知ることができましたね、、、

    個人的には『名前の匂い』に綴られている、

    「普通がいちばん幸せという向田さんのことを、以前よりずっと好きになった」

    という一文が印象に残りました… 名前も、生活も、行動も、フツーでいられることがイチバンだと思いますからね。

    生前に会いたかったなぁ… ついつい、そう感じちゃいますね。

  • 再読。二人の関係を男と女にあてはめるには下世話だし、仕事仲間というには濃すぎるし、親友というには隠した部分が多いし、二人は二人でしかなく、それがとてもうらやましい。全編に向田さんの不在と喪失が顔を出し、「ああ、この人は若くして急にいなくなってしまったんだなあ」と泣けてくる。こんなふうに向田さんを失った久世さんは、その後をどんなふうに生きてきたのだろうか。

  • 著者が向田邦子について書いた最初の作品を再読。本作では、向田さんに対する親愛の情(の、ようなもの)が素直に表現されているように思うが、2作目の"夢あたたかき"ではその部分が薄まった気がしてギャップを強く感じた。それが事故からの時間の経過のせいなのか、それとも久世さんが敢えて離れようと努力した結果だったのかは知る由もない。

  • 09.12.26~09.12.31 単行本P89

  • 私の中で、じわじわとダメージが来るようなニュースがありました。
    久世光彦さんの死去。

    ふと、読み返したいと思ったのはエッセイ集でした。
    「触れもせで。」「夢あたたかき」などなど。
    いつかお会いしたいなと思っていた人は、どこか遠くへ出かけてしまいました。
    だから、久世さんの大事に丁寧に表現されていたその世界の素晴らしさをどこかで表現していきたいなと思います。

    久世光彦 様

    あなたがいなくなったことを思うと寂しい気持ちが溢れます。
    それは、毎年楽しみだった映像もあなたの選ぶ言葉も見れないからだと思います。
    でもきっとほんのちょっとそれは寂しいだけで、私はときどきふと思い出すだけの話です。
    例えばそうだな、コーヒーにミルクを入れ忘れたまま飲み続けるそんな感覚です。
    でも、思い出すたびにきっと「ああお会いしたかったな」とか「ドラマ観たいな」とかそんなことを勝手に思うのだと思います。
    それはそれできっと構わないですよね?
    私はそう思って生きていくことにします。

    追伸 あなたが居なくなった世界は、私にとってあなたの世界から向田さんが居なくなった世界のようです。
    とんでもなく大きな落し物です。でも私はそれを大事にしますから、よろしくお願いします。

  • *向田邦子氏へのエッセイとも言えるべきか
    タイトルがとてもいい

  • 久世さんが戦友であった向田さんの思い出を綴った本です。

  • 私のガン泣き本のひとつ

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著者プロフィール

久世光彦

一九三五(昭和十)年、東京生まれ。東京大学文学部美術史学科卒。TBSを経て、テレビ番組制作会社を設立、ドラマの演出を手がける。九三年『蝶とヒットラー』でドゥマゴ文学賞、九四年『一九三四年冬――乱歩』で山本周五郎賞、九七年『聖なる春』で芸術選奨文部大臣賞、二〇〇〇年『蕭々館日録』で泉鏡花賞を受賞。一九九八年紫綬褒章受章。他の著書に『早く昔になればいい』『卑弥呼』『謎の母』『曠吉の恋――昭和人情馬鹿物語』など多数。二〇〇六年(平成十八)三月、死去。

「2022年 『蕭々館日録 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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