国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 9760
レビュー : 865
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062630863

感想・レビュー・書評

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  • 村上春樹はあまり好きじゃない、とある男の子に話したら、この本を薦められた。
    女の子が読むなら、この本がいちばんお薦めだと。



    でも多分それは間違いだ。
    なんて自分勝手な小説なんだろう。
    限りなく男の人目線の話。
    男の人だけで完結してしまっている。

    村上春樹の小説に出てくる女のひとは皆、男のひとが想像する姿。
    こんな女のひとだったらいいな。あるいはこんな女のひとだったらいやだな。

    村上春樹の小説には、男のひとは基本的に一人しかでてこない。主人公。
    ふらふらと考えがかたまらなくて、優柔不断。
    女のひとは沢山でてくる。色々な考えを持った女のひと、女の子。
    彼女たちはそれぞれ色々な事を考えて、色々な悩みを持っている。
    だけど、彼女たちはぶれない。
    危うくて脆くて壊れてしまいそうだけど、根底の考え方はふらふらしない。
    危ういなりに、しっかり芯を持った考え方をしている。
    ひたすら依存体質だったり、ひたすらだらしなかったり、ひたすら安定志向だったり、ひたすらエキセントリックだったり。
    そこに違和感を感じる。
    女のひとはそんなに強くない。
    女のひとはそんなに単純じゃない。
    単純、というと語弊があるかもしれないけど、「芯が変わらない」という意味での単純。
    女性に男性が甘えきっている構図がいやだ。

    主人公には芯がなくて、周りのいろんな女の子が持っている芯に惹かれていく。
    男の人はその芯に惹かれて、影響されて、成長していく。

    じゃあ女の人はどうなるんだ。
    女の人だって、周りの女の子の持ってる色んな芯に触れて、憧れて、真似しようとして挫折したりしてる。



    私だけかもしれないけど。

    これを読んで、男の子が村上春樹好きな理由がすこしわかった。
    こういう女のひとを世の中の男のひとが求めているのなら、それはすこし嫌だなと思う。
    マザコンっぽい。

    でもそれもある意味妥当なことなのかもしれない。
    「理想」はいつだって「シンプル」だ。
    好き好んでややこしい複雑なものを好きになる必要はない。
    単純に強いひと。単純に弱いひと。単純にエキセントリックなひと。



    でも村上春樹が嫌いなわけじゃないんだ。うまく言えないけど。
    表現が、描写が、胸を苦しくさせる。
    この本だってボロクソに書いてるけど、嫌いなわけじゃない。
    最後まで読んだもん。

    世の中にはうまくいかないことが沢山あって、皆それぞれ苦しい思いをかかえてるけど
    それでもまあなんとかそれなりに生きていこうよ、
    っていうのが村上春樹の小説だと思ってる。

    あと村上春樹の小説が苦手な理由のひとつに「ストーリーのわりにオチが弱い 」 っていうのがあったんだけど、
    今回はあまり感じなかった。
    収まるべきところに収まったという感じ。
    ていうかストーリーというストーリーもなかったかな。

  • 文体からは1973年のピンボールやノルウェイの森の瑞々しさ、生々しさは無く、全体的に乾いた印象を受けた。そして物語全体からも80年代までの村上春樹作品から一歩踏み出し、何かを失ったその後を描こうとしているように私には思えた。完成度という点から見れば村上作品の最高峰とは言えないかもしれないが、海辺のカフカなどねじまき鳥~以降の傑作群を生み出すためには必要な作品だったのかもしれない。
    追記
    しかし村上作品は終わり方がいい。海の彼方の海面に優しい雨が降っている描写は、美しいイメージを私の頭の中に思い起こさせてくれた。
    これだけでも'悪い読書ではなかったな'と思える。

  • 物語の主人公である 僕は 1951年生まれだ。
    「一人っ子」という境遇を 救い上げる。

    読みながら 既視感 があるのは 同時代を過ごしたからか
    それとも ムラカミハルキの世界に親しんだせいなのか、
    よくわからないが ぼんやりと その時代が 浮かんでくる。

    小学5年生の終わり頃に島本さんという足の少し不自由な女子が
    転向してくることで 5年生の僕は ちょっと変な気分となる。

    家が 目と鼻の先ということで クラスでは 隣の席で
    一緒に帰ったりして、
    島本さんの家にお邪魔してレコードを聞くのが楽しみ。
    リストのピアノコンチェルトが 僕にはお気に入りの曲になった。

    一人っ子 同士の会話 すすむ。
    島本さんは 僕に聞く
    『自分にもし兄弟がいたらって思うことある?』

    5年生の会話とは そんなもので始まるのかもしれない。
    島本さんは 大人びていて、僕は 子供のまんま。

    彼女は 一度だけ 僕の手を握った。
    『こっちへいらっしゃいよ』といって、

    それだけのことであるが、
    僕はそのわずかな体験がとても甘くセツない想いになっている。

    そんな風に 「国境の南、太陽の西」は はじまるのだ。
    異性に対する 想いが どこから来て どう始まっていくか
    わからない 時期の 不思議な感覚は
    一体 私にとっても どんな風だったろうか?

    そんなことを 想い出させる。

  • 2017/4/12読了。
    村上春樹の作品は読んだことがなかった。これまた癖のある作家だと思った。自身の心理描写に多くのページが割かれており、会話のテンポ、人同士の掛け合いというものは二の次という印象を受けた。これはこの作品だけがそうなのか、作品全体の傾向なのかは、他を読んだことがないので分からない。
    話の流れとして、何か面白いことが起きるわけではない。小さい頃に好きだった相手と不倫してウダウダ言って元の生活に戻るという感じだ。
    しかし、そんな単純な流れの中で、上記のような心理描写を事細かに行うことにより、人一人の思考の深淵を見ることができたような気がする。
    そういう意味では過程を楽しむ作品、といえる。

  • 読みやすかった。文章は相変わらずふわふわしてるけど、設定はわりとリアルな感じ。
    特に、中盤の島本さんと再会したてからの会話のシーンなどはさくさく読み進めれた。
    最後は妻と元に戻るという終わり方だったのが意外だったけど、良かった。自分が今のとこ読んだ村上さんの小説は、クライマックスてはなく読み進めてる最中の中盤らへんが面白いと思うことが多いな。

  • 村上春樹はこれで三作目かな。長編は読みたくなかったので量的には丁度良かった。話の展開は他の作品と同じようにエロい描写が多い。また、主人公が悩み苦しむ様も似通っている感がある。しかし、何故か引き込まれて夢中で読んだが、個人的には夫々の登場人物がその後どうなったのか気になる。

  • “この言葉の言い回し、すごく素敵だな”ってふと
    手が止まったページにはよく、ドッグイアしながら
    読んでいるのだけど、村上春樹の本はいっつも
    折りまくっちゃうから本の端がベコベコになります。

  • 読んでないと思ってよんだら読んでました。
    でも思い出せなくて結局最後まで読みました。
    それを4回ほど繰り返している(笑)

    この作品に関しては
    あんまり心に残るものではないけど
    やっぱり春樹の文章力には脱帽。

    その威圧感のない力に圧倒されました。
    言葉を頭の中で反すうして行くと
    なんだか今までの自分を
    失いそうになっちゃいます。

    春樹の本は続けて読むには危険すぎる。
    大人になっても
    それは乗り越えられないみたいです。

  • 再読。高3のときに読んだので、約20年ぶり。
    さらっと流し読み。ほとんど内容覚えてなかった。
    村上作品の中でも印象に残ってない部類に入る。
    こんな話高校生が読んでも理解できませんね?
    前後不覚の不倫して、
    でも結局奥さんに許してもらって日常に戻っていくって、
    あまりにも都合よすぎる話に思える。
    世の女性からブーイングを受けまくりそうです。
    村上春樹でもこういうストーリー書いてたんですね。
    大人になって読むとまた印象変わったのかな?

    • fujidonさん
      私は出版されてすぐに買い、一日で読み終えた記憶があります。まだ前の会社にいた頃でした。
      話の中に出てくるデューク・エリントンのスタークロス...
      私は出版されてすぐに買い、一日で読み終えた記憶があります。まだ前の会社にいた頃でした。
      話の中に出てくるデューク・エリントンのスタークロスト・ラヴァーズを聴きたくなり、レコード店を回ったのも覚えてます。これはいい曲ですね。
      2011/07/03
    • シャキーン!さん
      コメントありがとうございます。僕はその頃ちょうど受験を控えた秋でしたが、村上春樹だけは発売されると即買いで読んでました。スタークロスト・ラヴ...
      コメントありがとうございます。僕はその頃ちょうど受験を控えた秋でしたが、村上春樹だけは発売されると即買いで読んでました。スタークロスト・ラヴァーズは聴いたことことがないので、機会があったら聴いてみます。
      2011/07/03
  • 一人っ子という感覚をこれだけ共感できたのは、本に限らずこれが初めて。

著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。2019年8月7日発売の『文学界』でロングインタビュー「暗闇の中のランタンのように」掲載。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月末に刊行予定。

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