国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 9756
レビュー : 864
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062630863

感想・レビュー・書評

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  • 青山に上品なジャズバーを経営する主人公。
    小学校時代の友人、島本さんとの、雨の日のドラマチックな出会い。
    恋愛は、日常に起こり得る「事件」のようなものだ。

    ナット・キング・コールの「プリテンド」は好きな曲だ。
    「辛いときには幸せなふりをしよう。」
    歳を重ねるごとに、その意味がよくわかるようになる。

    太陽の西には、何かがあるのかもしれないし、何もないのかもしれない。
    そんなことを考えながら、日々現実を積み重ねている。

  • 年をとることでの喪失感を描いた小説なのだと思った。年をとっていく中で、自分が何か大切なものを失ってしまったんじゃないかという感覚。
    10代20代の時には世界に向けて開かれていた自分の感性、可能性が、現実を生きる中で徐々に輝きを失って、形が定まり、ひとつに固まってしまう。たいていの人は仕事をしたり子供を育てたりすることでそれなりのやりがいや責任をもち、忙しさの中でふと自分が何か失ったことに気づいたとしても、また逞ましく現実に戻っていくのだと思うけれど。

    小説の中では、仕事をしていない島本さんは若者のような定まらなさ、形の不安定さを持ち続けたまま大人になり、ハジメくんは喪失感を島本さんとつながることで埋めようとする。けれど結局それはうまくいかない。
    願わくば最後にハジメくんの背中にそっと手を置いたのが、有紀子さんであってほしいと思った。

  • 村上春樹作品の中で一番好き。

    しかし読んでいてどんどん辛くなってくる。
    読み終わると何とも心が沈んでしまう。
    イズミとの再会(?)シーンは息を思わずこちらが、あ、あぁ、と声が漏れてしまうくらい。

    常に何かしらの欠落を感じていて、それを埋めるために変える努力をして成功するのだが、結局埋め合わせにはなっていない、ハジメ。
    人を愛するのだが、自分の性格からは逃れられず、結局愛する人を傷つけることになってしまう。

    考え方とか、物事に対する姿勢がすごく似ていると思った。
    主人公に共感した数少ない作品。

  • 一見すれば不倫の話だけれど、私は純愛の話だと感じました。
    価値観も外観もセックスの相性も良い妻、やり甲斐のある仕事、最愛の娘たち、手放したいものがないような理想的な生活を送りながらも、心の奥底にずっと燻らせていた想いのために全てを捨てることのできる主人公の一途さと弱さが、主人公の生活の豊かさと現実味の曖昧な島崎さんの存在との表現的対比の中で、リアリティかつ繊細に描かれています。
    形而上の制約を取り払った恋愛は、倫理や常識上受け入れられ難いものが多いかもしれませんが、格好をつけることも計算することも捨てた、これまでにはない恋愛小説だと思います。

  • はまってしまって3日で読みきってしまった。
    のめりこんだけども、まだ消化しきれていない。

    やっぱり春樹はすごか。胸をかき乱される作品。単純に感動した、っていうコメントじゃ整理しきれない。けれども確かにYes, I was moved. 
    異性に、自分のためだけに用意されたもの、を求める感覚。
    一度過ぎてしまったら、二度と巻き戻せないものがある、ということ。
    大切な存在がありながらも、自分の失われた部分を完成させてくれる島本さんとの関係にのめりこんでしまう苦しさ。一緒になって感じた。
    あれだけ愛した島本さんを失ってしまっても、いつかは回復し、別の人と日常生活を始めることができるということ。人間のもろさとしぶとさ。
    恐ろしいけれど、それがリアルなんだろう。
    イズミとの再会のシーンは、おそろしくて、ミステリー小説のようだった。

    有紀子の台詞。
    「私はあなたと暮らしていて、ずっと幸せだった。(略)でもね、それにもかかわらず、何かがいつも私のあとを追いかけてくるの。(略)何かに追われているのはあなただけではないのよ。何かを捨てたり、何かを失ったりしているのはあなただけじゃないのよ。」

    私たち人間はだれもが多かれ少なかれ「失われた部分」を自分の中に感じながら、生きているのかもしれない。

  • 2日で一気に読んでしまった。大好きな本に追加。
    切ないー
    すべてを捨ててしまってもいいと思える恋。心が震える恋。その後の絶望感。
    すごく共感できた。

  • 村上作品の中で比較的注目されることの少ない作品。
    性描写もきつい。表現がおもいっきり悲しい。みんながみんな痛々しい。損ない続ける。でも生きていく。最後のイズミのくだりに毎回泣く。

  • 本書は社会人になったばかりの時に一度読んでおり、約8年ぶりに再読したが、これほど心に沁みる話だとは思わなかった。孤独で心が不安定になりそうなときに読むと癒される。

  • 彼の作品では好きな作品三本指に入る。

    後悔をしないように生きたいのは人間の常であるし、また後悔すると次は気を付けようと用心深くなる。

    イズミとの再会でぞわり、と背中にはりついた何かが今でも納得がいかない。


    噛めば噛むほど味のある、世界観を色んな角度から見たいと思う話。

  • 村上春樹の小説のなかで一番好きな作品。何度も読み返してる。

    私は女だし、四人兄弟の長女だし、ハジメくんとは全くちがう境遇だけど、読む度に重なる考え方、気持ちがある。またその時好きな男性とハジメくんを重ねてしまったりする。

    吸引力。
    全部とるか、取らないか、中間的なものは存在しないの。

    私の本はブックオフで買ったものだったけど、上司にプレゼントしたら、上司が既に持っていて、上司が買ったものをくれた。ボロボロから新品へ。

    2011/02/16読了
    2012/05/02読了@コタキナバル

著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。2019年8月7日発売の『文学界』でロングインタビュー「暗闇の中のランタンのように」掲載。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月末に刊行予定。

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