取引 (講談社文庫)

  • 講談社 (1995年11月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (678ページ) / ISBN・EAN: 9784062630986

作品紹介・あらすじ

公正取引委員会の審査官伊田は汚職の嫌疑をかけられた。何者かの策略に嵌(はま)り事件に巻き込まれたのだ。ある所からの誘いによって彼はフィリピンへ行くことになる……。ODA(政府開発援助)プロジェクトに関する談合事件をマニラで調査する伊田の身に危険が迫る!期待の乱歩賞作家が放つ長編推理サスペンス。

みんなの感想まとめ

緊迫感あふれる展開が魅力のこの作品は、公正取引委員会の審査官が巻き込まれるサスペンスフルなストーリーです。主人公伊田は、汚職の嫌疑をかけられ、フィリピンでのODAプロジェクトに絡む談合事件の調査に挑む...

感想・レビュー・書評

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  • 2作目のジンクスという言葉がある。
    本作は真保氏にとって江戸川乱歩賞受賞後の第1作、つまり第2作となるのだが、そのジンクスを跳ね返すべく、彼が並々ならぬ精力を本作に注いだのが冒頭から滲み出ている。

    まず本作のメインであるマニラでのODA大規模プロジェクトの内偵に主人公伊田が関わる経緯からして非常にミステリアスであり、読ませる。100ページ以上費やして語られる導入部はぐいぐいと興味を引っ張り、ページを繰る手が止められない面白さだ。

    そこから展開するマニラでの日本建設業界への潜入捜査、マニラを含め、フィリピン各所で繰り広げられる追跡行を読むに当たって、よくもまあ、これほど詳細に書けるものだと感心することしきりだ。真保氏の取材力の緻密さには定評があるが、確かにこれはすごい!

    まず、空港を降り立ってホテルにチェックインするまでの流れは私が今まで三度経験したその動きをそのまま投影しているかのようだ。しかも建設業界の内幕の様子もさることながら、フィリピンでのビジネスについても作者は熟知しており、終始ニヤリとするとともに、感嘆を禁じえなかった。
    そして主人公やその他登場人物が縦横無尽に行動するフィリピンのマニラの街並みの描写も詳細を極めているが、スールーとかバギオなどの通常日本人が行かないようなところにまで踏み込んで舞台にしているところが、単純に小説に使うという名目で作者がフィリピンへ観光旅行したのではなく、明らかに明確な意図を持って入念に取材した事が窺え、この作者の作品に向かう誠実さを感じさせられた。

    これがまだ2作めだというのだから恐ろしい。

    そしてこの本を読むタイミングというのもまた良かった。
    建設業界の談合話に加え、小説の舞台がマニラ。これは当時フィリピンに滞在していた私に対し、今読め!と云っているようなものである。

    しかし、それでも本作は5ツ星を手放しで与えようとするとどうしても抵抗があるのだ。

    それはテーマと中で扱われている内容にどうしようもない乖離を感じたからだ。

    私は冒頭のプロローグから第一部の展開までの物語の流れを読んで、愚直なまでに自らの仕事に対して正直な男の復活劇だと期待した。それは一度閑職に追いやられた男が公正取引委員会という仕事が世に蔓延る不正を正し、悪の芽を詰む物だということを自らの信条とする伊田和彦なる男が密命を帯びてフィリピンで行われているODAの大型プロジェクトの不正を暴く、そういう物語だと思っていたからだ。

    しかし、蓋を開けてみれば、それは単なる物語の意匠に過ぎなくて、この物語の核心はフィリピンで起きた誘拐事件の探索行、そしてその事件の真相を巡る物語だったのだ。

    確かにフィリピンという国を縦横無尽に駆け巡る誘拐事件の解決劇は面白い。
    2つ起きる誘拐事件のうち、核となる第1の事件は660ページ強の本書の中で300ページ弱と、半分を費やして語られ、それ自体1編の長編に相応しい内容になっている。
    しかし、そこから私が期待した展開は、そこから伊田の当初の目的である談合の証拠を掴む調査の話だった。
    しかし、上にも述べたように実はそうでなく、この誘拐事件に隠された真相を巡る物語が展開し、伊田は密命に対して何ら功を奏することなく、物語が閉じられる。

    これがどうしても私には納得が行かなかった。
    それは本作の主人公伊田と調査の対象となる相手の1人に彼の高校時代の友人遠山順司という人物が設定されていることも一因だ。

    この遠山順司というサブキャラクターが非常に魅力的に描かれている。この好男児に対し、伊田が自分の使命と友情の維持という葛藤に対し、どのような決断を下して乗越えるのかに私は非常に興味があった。
    多くのページを費やして繰り広げられる追跡行も、伊田と遠山の結びつきを強めるガジェットとして受け取っていたのだ。

    しかし結果は上に書いたとおりである。
    そこに作者の思惑と読者である私との思惑が一致しなかったのだ。これは非常に残念だと思った。

    しかし、これは単純に作者が悪いというわけではない。私が勝手に展開を予想した事による齟齬なのだ。
    もし私が何の先入観もこしらえずに白紙状態で向き合っていたら、読書の悦楽にどっぷり浸かることができただろう。

    真保氏の小役人シリーズはまだ2作しか読んでいない物の、非常に好きなシリーズである。だから私は良い読者でありたい。
    彼は小役人を主人公にする事でミステリを描く作家だという事を念頭に変な先入観を持たず、次から読む事にしよう。

    1992年発表の本書で語られる建設会社の談合事件が15年後の今なお続いているのを見ると、この世の中というのは何も変っていなく、日本という国が根っからの土木国家という事をまざまざと知らされる。
    それは本書で述べられるフィリピンもまた同様だ。100ペソ札(現在のレートで250円前後)1枚で賄賂が成り立つ貧困状況、幼児売買、臓器売買が成されている現状(しかも臓器売買は合法化されているとまで云われている)など全く変っていない(本書で述べられる気分の悪くなるような事実に対して、何ら驚かない、既に麻痺した自分がいることにも気付かされた)。
    故にこの作品が未だに古びれない輝きを放っているのだから実に皮肉なものである。

  • 真保さんの作品としては並以下の出来かもしれない。まず、冗漫にすぎる。主人公の正義漢ぶりが少々鼻につきすぎるし、登場人物にあまり同調できない。

    悪役にも魅力がないし、犯してる犯罪が酷すぎて救いがない。

    それでもリーダビリティは良く、テンポよく一気読みでした。

  • 読了までにとても時間が掛かりました。
    分厚さのせいだけではなく、内容のまとまりのなさも原因?

    公取から内偵役としてフィリピンに派遣された主人公が政治家の誘拐に巻き込まれてゆく、、、という話。
    だと思っていたのにODAやら、癒着やら、談合やら。誘拐はおまけ程度で主軸が全然違っていた為、大変読みにくい。

    やっと慣れてきたころに急にまた政治家絡みに話が戻るのであれあれ、という印象でした。

  • 話はおもしろい展開だった。

    後でもう一回読んでみようかな。

  • 話の展開や結末など、なんだかちょっとなぁ~、というのはあるけど、それでもまあまあよかったか、という感じ!?

  • 中々に読ませる小説だ。
    自体が二転三転し、展開が読みにくいのもよいと思う。

    ラストの方で若干息切れした感じがあるのと、ページ数の多さのためのマイナスはあるものの、面白い作品だと思う。

  • 主人公英語上手すぎだろう。筆者は英語話者じゃないんじゃないのかと思いました。込み入った話簡単にできすぎ。話は全然公取のエージェントとしては活躍しないし余計な事件がメインになるしで唖然とした。東京編いらねえじゃん。

  • 公正取引委員会出身の主人公が様々な事件に巻き込まれる話。ただ、公正取引委員会という主人公の特殊な出身があまり生かされていないように感じる。

  • いいね!

  • 内容が詰まっていたけどそこまで渋滞してなくて
    良かったです。けど脇役達が役割ありきの感じで
    存在してる感が他の話より強かったきがしまいた。

  • 結局、小役人シリーズ3編を読み切る。
    やはり、「連鎖」が、一番よかったのかもしれない。
    ちょっと、あれこれと考えすぎであるが。

    汚染食品の輸入。
    海底火山の噴火による島の形成と国家利益。
    ODAと談合。
     
    いずれも、現代という時代背景のもとで、起こっている問題である。
    厚生省の食品監視員
    気象庁の地震観測員
    公正取締委員会の職員

    国家機構の中で、少なくとも、その問題を目の当たりにして、
    いる人が主人公である。

    気象庁では、辞職して、追求する。
    公取は、辞職させられて、追求する。
    その点では、官僚機構をはみ出さない限り、
    その実体を追求することはできない。

    システムができていることは、人間らしさを失うことでもある。
    人間を回復する時、あるのは自分だけかもしれない。

  • 真保さんの初期作。

    小役人シリーズ、実は他の代表作よりも好きかも。

    彼らしい、二転三転するストーリーには、久しぶりに引き込まれた。

    結末………あの人が死んでしまってはいけないよ!あまりにも救いの無い結末が残念。

    ★4つの8ポイント。
    結末にもう少し救いが与えられていたならば、9ポイントだったかな。


    ………エピローグが、せめてもの救い。それがなければ、★も3つに落ちていたし………

    2012.05.24.了。

  • そうだ、飛行機の中で読み終わったのだ。舞台はマニラではあるが僕はベトナムに向かう飛行機なのであった。

  • 小役人シリーズの中でも公取委はまだ多少世間に知られている気がする。所謂「中の人」が読んでどう思うのか聞いてみたい。

  • フィリピンでのODAを巡る建設業界・政界・官僚の癒着と談合を内偵することになった公正取引委員の伊田。誘拐や人身売買など開発途上国の裏の世界を見る。

    真保裕一の初期の作品だけあって、深みが少なかったし、いろいろ詰め込み過ぎたきらいがある。でもODAっていったい意味があるんだろうかと考えされられた。一部の人が潤うだけで、根本的な解決にはならないんだよね。

  • 起承転結と言う言葉がありますが、この小説は起転転転って感じ。
    もうこれは、ちょっとでも話の内容の感想を書いてしまうと
    これから読む人に台無しになってしまうので書けませんけども。
    兎に角すごく話がテンポよくサクサク転がっていく。
    最初からすごいのに、どんどん凄くなっていく。
    それなのにリアリティを感じてしまうのは、やはり緻密な書き草のせいか。

    最後の結末は、あっさりと終わってしまい、ちょっと残念。
    でもきっと、なんとかみんなハッピーになっていくんだろうなという
    期待が持てる。

  • まさかの展開が多かったです。

  • 面白かったです。ハラハラドキドキで堪能できました。話の展開が強引過ぎる感もないではないけど、エンターテイメントとしてみれば十分楽しめます。

  • 最初は、公正取引委員会の審査官伊田の正義感を盾に、談合にどっぶり浸かった政府に巣食うキャリア組をネチネチと締め上げていく話しかと思い込んでいたのですが、読み進めていく内に、どんどん伊田は周りに流されて翻弄されるが生き残るというハードボイルド小説でした。推理小説なので、突拍子もない展開についていけないこともありましたが、多くの資料に支えられて作られたお話しであり、読者を飽きさせない作者だなぁと思いました。

  • 小役人シリーズ第2作。

    小役人だけど、舞台はフィリピン!
    それにしても真保さんの書く主人公(小役人)は
    女っ気(というより女運?)なさすぎて
    かわいそうになっちゃう〜。
    どうしてなの〜?
    ダメンズ好きな女もけっこういると思うけどな!(笑)

    身近で信頼している人物のどんでん返しは、
    小役人シリーズのお決まりのパターンかな?
    先に「密告」を読んでいたので(同じ展開で)
    最終章で犯人が分かっちゃったのが残念。

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著者プロフィール

真保裕一(しんぽ・ゆういち)
1961年東京都生まれ。91年に『連鎖』で江戸川乱歩賞を受賞。96年に『ホワイトアウト』で吉川英治文学新人賞、97年に『奪取』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞長編部門、2006年『灰色の北壁』で新田次郎賞を受賞。他の書著に『アマルフィ』『天使の報酬』『アンダルシア』の「外交官シリーズ」や『デパートへ行こう!』『ローカル線で行こう!』『遊園地に行こう!』『オリンピックへ行こう!』の「行こう!シリーズ」、『ダーク・ブルー』『シークレット・エクスプレス』『真・慶安太平記』などがある。


「2022年 『暗闇のアリア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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