ステップファザー・ステップ (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062632850

感想・レビュー・書評

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  • 初期の連作短編集。1993年(26年前だ!)に単行本が、1996年に文庫がそれぞれ刊行されています。

    宮部みゆきの連作短編集は時代物はともかく、現代を舞台としたものはあまり読んだことがありません(「希望荘」ぐらいでしょうか)。「模倣犯」を読んだ直後だからかもしれませんが、作者には、様式美とかお約束みたいなもので作者と読者の間に共通認識が成り立っている作品――例えば「大店の跡目争いが原因で起きた事件を扱う捕物帖」とか、「魔王を倒す剣と魔法のRPG」ゲームとか――より、そもそも大店と言ってもまっとうなところ、怪しいところと様々だし、跡目を争う者同士それぞれ言い分があったり、そもそも何のために誰と戦っているのかをわからないまま先に進む冒険だったり、そんな「お約束」で省略されてしまうはずのあれこれをこれでもかとばかり描き込んだ大長編が似合うように思えます。ここまで長くするつもりはなかったのにどんどん長くなってしまう…そんなところがご本人の言う「物語派」なんだと思います。

    そんな作者が書いた連作短編です。
    一般的に(自分が好きな)連作短編集だと、個々の短編で語られる物語や謎の外にその作品全体を通して語られている謎やら伏線やらがあって、だいたい最終話でその謎が明かされ、これまでの伏線が回収されて、それが読者にとってのカタルシスだったりします。
    でも宮部みゆきの初期作品だと、途中放置・消滅の道をたどったシリーズが多くて読者にとっては消化不良感でいっぱいです。「初ものがたり」のいなり寿司屋のおやじの正体も、この本の双子の来し方と行く末も、明かされないまま。

    その初ものがたりは<完本>化されて、未収録だった2編が文庫に収録されましたが、こちら『ステップファザー・ステップ』の以下続編4編…

    ・バッド・カンパニー(集英社『小説すばる』1997年1月号)
    ・ダブル・シャドウ (集英社『小説すばる』1998年1月号)
    ・マザーズ・ソング(集英社『小説すばる』1998年5月号)
    ・ファザーズ・ランド(集英社『小説すばる』1998年12月号、1999年1月号)

    は「単行本にはなりません」とのこと。いっそう欲求不満がたまります。

    そして、解説によると作者は「クライムコメディを書いてみたかった」そうですが、作者初期の「○○みたいなものを書いてみたかった」は成功していると言い難いものが多く(例えば、「ロードノベル的な、ハヤカワのポケミスに入っているようなものを一つ書きたい」と言及されている「スナーク狩り」とか)、この本もそのうちの1冊であるように思えます。

    何よりもまず、【「両親がそれぞれ駆け落ちして家を出て行き、二人だけで暮らしている中学生の双子」が庭で気絶していた泥棒を親代わりにする】という設定があまりにも突飛です。
    同じように突飛な【超能力を持つ町娘が主人公の捕物帖】である「震える岩」では、主人公と彼女を取り巻く人々の描写を詳細に積み重ねることで、お初が超能力を持っていることがなんだか当然のことに思えてくるのですが、この本ではそのあたりの描写が圧倒的に不足しています。
    さらに、短編に収めるためでしょうか、ミステリ的なトリックがかなり未消化の状態で出てきます。その結果、なんだかトリックの使い方のサンプルだけ見せられて、「じゃあ見本でなく本物は?」と楽しみにしていたらなんと本の最後まで読み終えてしまった、というそんな感じ。

    未収録作品を含めて改めて刊行したり、続編を書いたりといったことがないのは、作者自身がこの作品が習作的で、あまり出来がよくないことを自覚しているからかもしれません。

    この本、その解説がステキです。作者のインタビューや対談など、本になっていないものも含めて、ていうかほとんど本になっていないものの中から、自分の言いたいことを探し出してきています。物を読む量がよほど多くないと、そして読んだこと、どこに書いてあったかをきちんと憶えていないとこれは書けません。超労作で超良作です。解説を読むために買ってもいいくらいおすすめです。

    以下、各話に一言ずつ。
    ネタバレあります。

    「ステップファザー・ステップ」
    双子に捕まる話。
    連作短編の出だしなので、物語全体の設定の突拍子のなさはこの時点ではあまり気になりません。

    ただ、いくら世間と縁の無い生活をしていようと、他人とそっくり入れ替わってしまおうとか、入れ替わられてしまった元の人をどうするつもりだったのかとか、かなり引っ掛かる点が多めです。
    あと、多数ちりばめられている事実ネタが古くて時代を感じます。


    「トラブル・トラベラー」
    正直2編目からどう読めばよいのか悩んでしまいました。
    「ふるさと創成事業」の1億円で、観光地倉敷をそっくり真似た一角を市内に作ってしまった「暮志木市」が舞台になっているのですが、いくらクライム・コメディだからと言ってもこの設定は奇抜過ぎます。
    あと、猟銃を持って人質とって立て籠もった共犯者は、分け前の割に罪が重くなりすぎるように思えて、「画聖」のお札の印刷を消せる方法とかと合わせて、「ここはボツコニアン」のような雑さを感じてしまいました。


    「ワンナイト・スタンド」

    双子の担任の先生も双子だったとか、アイデアとしてはいいのかもしれませんが、表現不足で活かされてないような…
    なお、灘尾礼子先生はこの後も登場しますが、その出番に双子設定が全く活かされていないのも残念です。


    「ヘルター・スケルター」
    ステップファーザーを演じているときの「俺」は健康保険を使えないわけで、その辺を書き込めば多少のリアリティが出てきそうなのに、サラッと流してしまっています。

    隠したかったのは死体より車だというのはなかなか新鮮ですが、心中の理由も車を隠したかった動機も説得力なさ過ぎです。


    「ロンリー・ハート」

    飛んだ置石が偶然頭に当たって死亡とか、うーんって感じです。そんなに危険なんだったらこれまでにも事故が発生していそうな…


    「ハンド・クーラー」
    山形新聞を投げ込み続けたのは郵便番号990を見せたかったからとか、雑すぎです。
    いくら何でも山形新聞→〒990→自分が無理に回収した融資の金額、なんて連想できるのはエスパーだけですって。


    「ミルキー・ウエイ」
    双子が同時期に別々の犯人に誘拐されるとか、物語全体のトンデモ設定に合わせるにはこれくらい奇抜なプロットをぶつけなければならない、みたいな話ですが、不思議と2〜6編目のような残念感は少な目でした。全編通じてこれくらい開き直って現実離れしたプロットを持ってきたほうがよかったのかもしれませんね。


    続編は期待できないにせよ、発表済みの4編を収録した<完本>、出ないかなあ…。残り4篇を読むと、もしかしたらあまり芳しくない感想がガラッと変わるかもしれないのに。

  • 盗みに入ろうとして天災に遭い(これぞ天罰?)、隣の家に落っこちて倒れているところを助けられた泥棒の男。
    中学生の双子「哲」と「直」は、通報しないかわりに「お父さんになってほしい」と頼む。
    二人の両親は、それぞれ愛人と駆け落ちしてしまい、二人きりで家に住んでいるというのだ。
    当初は弱みを握られてしぶしぶ、だった泥棒だが、徐々に双子と情を通わせていくようになる。

    宮部みゆきには珍しいのでは?こんなにあっけらかんとしたコメディタッチのミステリー。
    「ブレイブストーリー」や「英雄の書」みたいな子どもを主人公にしたファンタジーを書きながらもご都合主義には走らず、重い現実を主人公に背負わせ、なんだか暗さを残してしまったり、ミステリーで超能力者を登場させながらも「ほんとにあるかも」というリアリティあるストーリーに仕立てるのが宮部みゆきなんだ。
    と勝手に思っていたんだけど、この本はファンタジーでもなければ超能力者が登場するわけでもないのに、「いやいや、そりゃないでしょ!!(笑)」と笑いとばせるような明るさがありました。
    20年前くらいに書かれた本なので、ワープロやら留守電やら、ちょっと時代を感じるところはあったり、そこも面白い(笑)

    表紙を見て、「知ってるこの絵…」としばし考え、あ、荒川弘だー!とわかったときはちょっとうれしかった。
    脳内イメージはずっとこの絵のまんまで読み終えた。
    そのうちこの登場人物で長編を、という構想を持っておられたようですが、今に至るまで続編がないようで残念。話の中で出てくる推理の方がしっくりくるような、現実味のない双子の家族設定に、何か裏があるのかなぁ、と気になるのだけど。

    • まろんさん
      宮部さん初期の作品ですよね。
      かなり前に読んだのですが、大好きです♪

      ブツブツ言いながらも面倒見がよくて、
      双子が可愛くてたまらなくなって...
      宮部さん初期の作品ですよね。
      かなり前に読んだのですが、大好きです♪

      ブツブツ言いながらも面倒見がよくて、
      双子が可愛くてたまらなくなっていく泥棒さんが素敵で(*'-')フフ♪
      双子も、大人びて冷めているかと思うと、急にほろりとするような発言をしたりして
      人のいい泥棒さんならずとも、そばにいてあげたくなっちゃうかも、と思ってしまいますよね(笑)

      中学生の、大人でも子どもでもない微妙な感じがとてもよかったので
      ドラマ化された時、双子が小学生になっていることに愕然とした私でした。
      2012/11/15
    • マリモさん
      まろんさんこんにちはー!

      これは初期ですねー、宮部さんって、読んでも読んでも「まだ読んでないのがある・・・!」っていう作家さんです(笑)。...
      まろんさんこんにちはー!

      これは初期ですねー、宮部さんって、読んでも読んでも「まだ読んでないのがある・・・!」っていう作家さんです(笑)。あと東野さんも。
      双子が可愛いですよね。テンパって、自分が直なのか哲なのかわからなくて確認を求めてくるシーンが何か好きでした。

      私はドラマ見てないんですが、確かに小学生設定は幼すぎる気がしちゃいます。
      ちょうどいい歳の双子の子役が見つからなかったという大人の事情?があったのかもですね。
      2012/11/15
  • 双子に気に入られた盗人。
    犯罪小説。金持ちからしか盗まないというところで悲劇ではない。
    犯罪が主ではなく、学校、家庭生活を一部から垣間見る。

    悲惨な話題があり、ご機嫌な話題がある。
    双子からはお父さん役を頼まれ、継父(step father)の気分になる。
    子供がおらず、結婚していないので、親としてはよちよち歩き(step)。

    継父の歩み(step father step)として微笑ましい。

  • あれ?これ、大沢在昌さん?て確認しちゃうほど何だか似てた♪ハートフルな物語り。どんどん愛情が湧いちゃって、しまいには嫉妬でスネちゃう「お父さん」が読んでてクスクスしちゃった!本当の親が帰らないで、このまま3人が一緒に居て欲しいな~なんておもっちゃいました。

  • 孤独で淡々と仕事をこなす泥棒が、ひょんなことから双子の小学生男子の“お父さん”に。泥棒、偽札、誘拐と物騒なワードがたくさん出てくるのに、双子と不器用なお父さんとのやりとりにほっこり。
    ふふっと笑える、あったかいストーリーだったな(´-`)

  • 宮部みゆきさんの初期の頃の作品。
    ユーモラスでハートフルな日常謎解き短編集です。読むと明るく元気になれます。

    両親が駆け落ちしてしまったために、子どもだけで暮らしていた双子たち。その家に泥棒に入ってしまったために弱みを握られ、保護者役を努めながら日常のちょっとした謎解きをすることになった主人公(名は明かされず)。

    とにかく双子と「お父さん」の疑似親子関係と掛け合いがコントのようで楽しい。筆致もかなり軽めなので、さらりと楽しめます。

    読書家にというよりも、読書初心者に『何かお薦めの本がない?』と聞かれたら、名をあげる一冊。
    万人向けのライトなミステリーです。

  • ライトな感じで読み易い。泥棒が双子の父親代わりになる話なんだけど、コメディータッチで笑える。読んでいく内に泥棒の感情移入が伝わって来る…この本を読むと、どんな悪い奴でも幼い子供から頼られたら嫌とか、出来ないとか言えないんじゃないんだろうなー…そんな心が芽生えて主人公が色々と擬似的なダメな親になった時の、やさぐれる様は切なくもあるし理解できるような気がする。恋愛と違ったものが芽生えるんでしょう。自分の血の繋がった子供なんてこんなものじゃないのがわかる!が、この本を読むと理不尽な世界もあるのだろう…でも、私は絶対に出来ないと思った。無理!笑
    最近読んだ本の泥棒の気持ちが「掏摸」と重なった。

  • let it be..
    誘拐犯にじぃちゃんが何したか気になるw

  • 息子が図書館から借りたので、続けて読んでみた。
    宮部みゆきというとヘビーなイメージがあるが、ライトなタッチ。双子の会話が面白かった。ステップファザーのステップというのもいい。

  • 完全に表紙買いです。完全にです。中身を一切確認せずに、表紙だけで買いました。
    買ってよかったです。双子はかわいいしお父さんはおもしろいし、始めてミステリをサクサクと読めました。
    じつはもう5周ぐらいしてます。そのくらい好き。一番好きなのは置き引きされる話かもしれない。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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