プレーンソング,草の上の朝食 (講談社文庫 ほ 19-1)

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  • 講談社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (470ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062633031

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  • 一緒に住むはずだった彼女と別れ、一人で住む広い部屋。転がり込んできた友人とその彼女。また別の友人。猫と競馬のこと。淡々と語られ、描かれる、練馬区の急行も止まらない駅近くに住む二十代男性の視点で描かれるストーリー。何気なさが何気なさを通って、何気なさに落ち着く。「猫って、一匹だけ選び出すのって、できないんだから。猫はつねに猫全体なのよ」「や、だめなんだよ。俺、さ。会社いくとつい一生懸命働いちゃうから。疲れちゃうんだ。それに、そういうのって、便利に使われちゃうじゃない」といった空気感の登場人物を楽しむ。そして「そんなんじゃなくて、本当に自分がいるところをそのまま撮ってね。そうして、全然ね、映画とか小説とかでわかりやすっていうか、だからドラマチックにしちゃっているような話と、全然違う話の中で生きてるっていうか、生きてるっていうのも大げさだから、「いる」っていうのがわかってくれればいいって」といったあたりがこの小説全体にも通ずるのかな、と。

  • うだつの上がらない青年のとりとめも無い日常系。ストーリーのゴール設定が無い系は苦手な上に、内容も猫と競馬という私にあまりかすらない。文体が面白い系だと読むがそうでもなく、逆に一文が長くて読みづらい。

    誰だーこれを紹介してくれたヤツは!と思い出してみると「ニートの歩き方」の著者だった。

    あっ、うんそ、れじゃしょうがないね。

  • とても不思議な感じがした。別に何か事件が起こったりするわけでもないが、普通とはちょっとちがう登場人物達の日常がとてもおもしろく読めてびっくりした。

  •  今年は個人的に保坂和志の飛翔の年となった。
     これは野間文芸新人賞候補となったデビュー作『プレーンソング』と野間文芸新人賞を受賞した『草の上の朝食』との連作。
     誰一人生活への強い意志を持たないこの部屋で展開される日常は彼の作風を見事に表現し切っていると言っていい。ある意味で魔術的リアリズムである。

     猫や競馬のネタが頻出し、日常生活を描くのもまたこの人にとっては普通のこと。句点を使わずだらだらと流れる文だがどこか飽きさせない。
     前作ではただの日常が描かれ、主人公の部屋で自己完結してしまった話も、後作では日常生活の一部としてだが恋愛に少しばかり焦点が当てられ、外の世界との関わりが描かれている。海へ行ったことで外への道が開けたのだろうか。

     どこか青さを感じさせるが、この勢いを上手く包んだこの作品を彼の最高傑作に推したい。

  • 黙々と読みながら身近な出来事の幸福を知る。
    特に何かドラマが起こるわけではない、こうやって僕らは日々を過ごしているのだ。

  • 2つ目に読んだ保坂。『空中キャンプ』と並ぶ1996年の奇跡。2作品が1冊にまとまったこの本がお薦めですが、あんまし売ってないので本屋で見つけたら買ったほうがいいですよ。

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著者プロフィール

1956年、山梨県に生まれる。小説家。早稲田大学政経学部卒業。1990年『プレーンソング』でデビュー。1993年『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、1995年『この人の閾(いき)』で芥川賞、1997年『季節の記憶』で平林たい子文学賞、谷崎潤一郎賞、2018年『ハレルヤ』所収の「こことよそ」で川端康成文学賞を受賞。主な著書に、『生きる歓び』『カンバセイション・ピース』『書きあぐねている人のための小説入門』『小説の自由』『小説の誕生』ほか。

「2022年 『DEATHか裸(ら)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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