東福門院和子の涙 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.50
  • (19)
  • (24)
  • (52)
  • (5)
  • (3)
本棚登録 : 238
感想 : 38
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (530ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062633222

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 公武合体。
    京都の中の宮中なんて、閉鎖的なところに飛びこんだ和子の苦労はいかばかりか…。

  • 最初が全然進まず、入内からやっと面白くなる。
    お江与の娘なので勝気かと思っていたらしおらしく柔和な方で、全然イメージが違っていた。
    我慢の人でもあり、徳川からみた和子だけど、御所の人からみた和子はどんな人か知りたくなった。

  • 解説にあるように、「天璋院篤姫」が江戸瓦解時の女性の生き方を描いたもので、これは江戸初期のそれを描いたもの。女性の生き方を通してその時代全体を捉える。

    男社会で、女性が裏から活躍して動かした、みたいな本もあるけど、道具として強制的に参加させられ、その中で誇りや矜持をもってよく生きたというふうに思える。教科書にある男性だけの歴史とは角度を変えて、歴史をみられると思う。

    東福門院作の押し絵を検索して、見た。花を付けた桃の枝。きれい。

  • 東福門院に興味をもったのは2年前サントリー美術館の「寛永の雅」を観に行ったから。小堀遠州、狩野探幽、野々村仁清が活躍した時代。宮廷文化の中心となった後水尾天皇と東福門院和子。
    前半は和子の母お江与の方の説明や、家康の天下取りについて長々語られている。この頃の歴史をざっと振り返るにはよいが、和子さんがなかなか出てこない。主題は孤立無援の宮中で和子さんが、どれだけ苦労し、涙を流し、それでも気高く生きたか、という事が江戸城から女中として一生奉公したゆきさんから語られる。宮尾さんだから仕方ないが「女」を前面に出した作品だった。和子さんの文化的貢献についてももう少し記述があるとよかった。出てくるのは雁金屋くらい?

  • 二代将軍、徳川秀忠と江姫との間に産まれた「徳川和子」の一生を侍女の視点から描く。

    当時は当たり前だったであろうお家の為の結婚、京都と江戸の価値観の違い、江戸期の朝廷の様子など、物語と合わせて時代背景を読み取るのも面白い。

    武家から朝廷へ嫁ぐという前代未聞の結婚を静かに受け入れる和子姫。その強さ、健気さに涙が止まらない。

  • 85
    武家の子として禁中へ嫁ぐことは、男子以上に並々ならぬ覚悟が必要だった時代
    和子姫はそれでも徳川のため、国のために、帝に尽くし、己の本分と重責を果たすべく、過酷な定めを生きるのである

  • 公武合体といえば幕末の「和宮」しか知らなかった。
    これは江戸幕府始まりのころの公武合体のために幼くして徳川家から禁裏へ輿入れした「和子(まさこ)」の物語をお付きの今大路ゆきが想いで話として語る形をとった作品。

    現人神と称される上様に自由にお目通りもかなわずひたすらに「待つ」当時の女の気持ちを描いているが歴史を正しく表したものではなくあくまでも「ゆき」の心情の元に語るお話。

    「姫様一番」という思いが少々ウザったくもあるけれど、当時も女子はこのようなものだったのかと切なくもなる。

    和子姫の花嫁行列のあたりは読んでても凄く華やかで大そうなものであったのが感じ取れて映像が浮かぶようだった。

  • お話は和子様のおつきの女中の語り口調で綴られています。
    和子様は徳川秀忠とお江与の方の間の姫君。
    やがて後水尾天皇に嫁がれて国母となられます。

    和子様のことをこの話の語り部である女中は「まるで春風のような方だった」と言っています。
    いつもほがらかで見ている者まで幸せにするような方。
    闊達で利発、その上、手先も器用だったようです。
    和子様の母上、お江与の方は和子様が嫁がれる前に、
    「和子はたぐい稀なるしあわせ者じゃ。悪いことや悲しいことなど、いささかも考えてはなりませぬ。よいこと嬉しいことのみ考えていれば、いつもそうなります。和子はそのようなさだめのもとに生まれておいでの姫じゃ故に」
    と言われました。
    でも帝のもとに嫁がれた和子様の人生はそのような順風満帆なものではありませんでした。

    実は和子様がお輿入れする前に後水尾天皇には既に奥方と子供がいました。
    それが公武合体のために和子様が輿入れする事になり、その奥方と子供とは引き離されてしまいます。
    それをよく思わぬ者も多く、宮廷内ではさまざまな嫌がらせにあいます。
    料理の食器はお父様の秀忠様のお土産のものを使うこともならず、全部白の食器にせよという事から始まり、夫である帝ともなかなか会う事も出来ず、いつまでも帝に寝所に招かれない。
    不思議に思っていると、それは帝の周りに「和子様はまだ月の障りがなく夫婦の契りはしばらく猶予給わらんことを」とでたらめをもって進言する者がいたからだったり・・・。
    その上、心のよりどころとなる帝は浮気のし放題。

    これで春風のようにいられたら・・・。
    それは心が無いということでしょう。
    和子様は一言も愚痴などこぼしたことのない方だったそうですが、後年は時折イライラと周りの者にあたったり、夜にひっそりと泣いておられたそうです。

    私がこの本を読んで学んだのは、周りの者の嫌がらせにより2年以上も帝と夫婦の契りを結ぶことのなかった和子様の態度です。
    和子様はその間ひねくれたり、落ち込んだりしないで、長い間ほっておかれたことについて帝に何も言われませんでした。
    そのいじらしい態度が帝の心を開いたものだと思います。
    周りに振り回されず、心平らに素直に生きている、その生きざまが福を運んでくるのだと思いました。

  • 敬語とっぱらったら、200頁ぐらいになりそうだ。

  •  「篤姫」を読んで俄然面白くなってきた江戸時代。幕末を生きた篤姫に対し、徳川幕府が開かれた頃は・・と選んだのが、この本。二代秀忠と江の間に生まれ、天皇家へと嫁いだ娘 和子の一生を、おつきの女性からの視点で語るというもの。
     当時の文化、風習がよくわかり、読み応えがありました。自分の思いとは別のところで決められた定め。それに身を任せることしかできなかった時代。それでも、凛として歩んでいった和子のことを思うと、小さなことでイライラしてたらいかんぜよ!と思うのです。やっぱり好きだな~この時代。

全38件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1926年高知県生まれ。『櫂』で太宰治賞、『寒椿』で女流文学賞、『一絃の琴』で直木賞、『序の舞』で吉川英治文学賞受賞。おもな著作に『陽暉楼』『錦』など。2014年没。

「2016年 『まるまる、フルーツ おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宮尾登美子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×