名探偵の呪縛 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062633499

作品紹介・あらすじ

図書館を訪れた「私」は、いつの間にか別世界に迷い込み、探偵天下一になっていた。次々起こる怪事件。だが何かがおかしい。じつはそこは、「本格推理」という概念の存在しない街だったのだ。この街を作った者の正体は?そして街にかけられた呪いとは何なのか。『名探偵の掟』の主人公が長編で再登場。

感想・レビュー・書評

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  • 天下一大五郎シリーズの長編小説。
    突然異世界転生のような形で、探偵・天下一大五郎として事件を解決していく物語。この世界の特徴として、密室やアリバイなどと言った本格推理の定番が消失している世界であると言うことがとても面白い設定だと思った。人々の歴史という者が存在せず、その鍵を握る盗掘品の謎とその中で起きる殺人事件の謎を解き明かしてくところがとてもワクワクした。
    そして読んだ後の感想としては、この本は東野圭吾氏の作風の転換期となった小説だと感じた。この時期(1996年)までは本格ミステリーの様相が強かった作者だが、この後は「天空の蜂」「虚ろな十字架」「さまよう刃」などの社会派小説が多くなっていった。東野氏は公式ファンブックの中で本格に自分が向いていないと気づいたためこの小説を執筆したとおっしゃっていた。そして小説のラストで本格ミステリーから一旦離れる事をヒロインや黒幕に告げている。その中でこの本は本格ミステリーへの一旦の休職宣言書であり、新たな分野へと挑戦するための架け橋でもあった。そう考えるととても東野先生の作品歴の中でも重要な本であると思います。

    最後にこの小説をアニメ化したときの声優陣を載せておきますので読む際の参考にしてください(敬称略)。
    天下一大五郎:神谷浩史
    日野ミドリ:佐倉綾音
    日野市長:銀河万丈
    月村博士:能登麻美子
    火田俊介:速水奨
    木部政文:茶風林
    金子和彦:諏訪部順一
    土井直美:勝木真沙子
    門番:小山力也
    大河原警部:安元洋貴

  • 最後がとても気になる終わり方。

    果たしてこれは著者自身の心情をのせたものなのか、あくまでフィクションとしての作者の終わり方なのか。
    名探偵の系譜とはいえ前作とは一味違った内容でどうなっていくのだろうと思いながら読み進めた。

  • 何だか、ご自分の若い頃を懐かしがって書いてるのかなって気がしますが、こりゃまた奇想天外なアプローチですなぁ。物語としては当然ながら面白いです。天下一探偵シリーズってことだけど、単独ものとしても充分面白いです。

  • 名探偵シリーズ2作目。
    1作目は所謂本格派をなぞった作品だが、
    2作目はその本格派という概念が存在しない世界。
    冒頭で惹かれました。
    前作と微妙に繋がっている。
    事件のために作られた環境、登場人物は目的(事件)がないと何をしていいのかわからず、困惑する。
    これは現実でもある話だなと思いました。
    進むしかない。
    東野さんの軽いタッチの作品も読みやすくて面白いです。

  •  単純なメタミステリーとして読むとそこまで惹かれなかったかもしれないが、本格ミステリーの王道である「密室」ものでデビューした著者の本格ミステリーに対する葛藤とそれと同じくらいの愛情を感じ、「『名探偵の掟』に対するアンサーというより、本格ミステリーは時代遅れではないかという思いと、それと同等の本格ミステリーへの懐かしさと愛を書きたかったのではないか。」という感想が浮かんだ。

  •  前作『名探偵の掟』のような感じを期待して読むとガッカリしてしまう人が多いだろう本書。東野氏の本格への愛が詰まっていて、私のような本格ファンには、頻繁に再読はしないけれどもそっと自分の本棚にしまっておきたい大事な作品。本格から入ったくせにだんだんバカにするようになり、斬新な手法のミステリを求めつつもまた一周回って好きであることを再認識する。この過程が同じ道のりを辿った読者の胸を打つのではないだろうか。
     録画しておいた剛くんの金田一のドラマ観なくては。

  • 『名探偵の掟』の姉妹編といえる本書。“掟”が短編だったのに対し、本書は長編です。
    小説家の“私”がいつの間にか別世界に迷い込み、“探偵・天下一”になっている・・という、『名探偵の掟』とはまた違う世界観でした。
    パラレルワールドのような、この世界では“本格推理”という概念が存在せず、そんな街で次々と起こる怪事件に挑む“探偵・天下一”。そしてこの街を作った“クリエイター”とは・・?
    という、東野さんならではの軽快な運びでサクサク読めます。
    前作はどちらかというと“本格推理”を揶揄するような印象でしたが、本書は“それでも、何だかんだで本格は面白いよね”という感じになっています。
    私もクラシックな本格ミステリを愛読しているので、封印しないでほしいです。
    ついでながら、ラストの勿忘草のくだりが心憎くてほっこりしました。

  • 東野圭吾さん『名探偵の呪縛』
    割りと最近読んでいたけれど、流れに従って再読。
    「掟」があって「呪縛」がある。順番に沿って読むとより楽しめた。こちらは皮肉をまたも逆手に取った本格推理的小説で、そう来るか、という捻りに納得。

  • なんだこれ?っと思った作品。著者が主人公として登場し、過去に自分で作り上げた世界に入り、次々と起こる殺人事件のトリックを解きながらこの世界に封印された本格推理小説を見つけるという話だが、面白いのは本格推理小説を封印したのは作者自身であり、この小説を通して作者の心境の変化が感じられるところである。
    また、作者である東野圭吾氏の考え方が垣間見得たようで面白かった。

  • 本格推理をこんな大掛かりな仕掛けで批判するか~って思うと同時に、これが成立するくらいの魅力が本格推理にはあるんだなって再認識した作品。
    「この街には本格推理がない。新しい話だ」ってなってたけど、こういう書き方、視点がされる話も面白い!

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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