おかしな二人 (講談社文庫)

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  • 講談社
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感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (636ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062633994

感想・レビュー・書評

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  • 2017年21冊目。
    大好きな作家である岡嶋二人が、どのように生まれてどのように解散するに至ったかを井上夢人氏からの視点で書かれたエッセイ。
    デビューまでと、デビュー以降のギャップに読んでいて苦しくなる部分も多い。そして、既に読んだ小説がどのようにして完成したのかなど、ネタバレだけでなく組み立て方なんかも出ていてとても面白かった。
    総合的に岡嶋二人は大好きなんだけど、面白い作品とそうでもない(もっと言えば残念とまで思える)作品のギャップがあって、それがやっぱり合作である故なのかと思ってたけどそうじゃなかったんだとか色々分かって、既に読み直したいと思う作品がいくつかある。
    ただ、解散に至るまではやっぱり一方の話だけでは分からないかな。
    徳山氏自身が出さないと言っているのだから真相は分からないままだろうけど、ぜひ徳山氏の思いも聞いてみたい。
    あたしは「99%の誘拐」で岡嶋二人を知って、その後すぐクラインの壺を読んだ。この二作品は今も増版されてるくらい人気のある作品だけど、あたしは同じくらい「明日天気にしておくれ」が好きなのだ。

  • おかしな二人は,岡嶋二人の自伝的エッセイである。もっとも,二人の作品ではなく,岡嶋二人のうちの一人である井上夢人の作品である。井上夢人と徳永諄一の出会いから,乱歩賞を受賞するまでのストーリー。そして,職業作家としての苦悩の日々と,岡島二人の解散までのストーリー。これらのストーリーが,リアルに,そしてナマナマしく書かれている。
    岡嶋二人の出会いから乱歩賞を受賞するまでの盛の部は,将来への不安を感じながらも成長していく二人の話である。徳山諄一の貯金を切り崩し,共通の知人であるダダと三人で会社を立ち上げ,わずか11か月で,会社をたたんでしまう。会社を経営していたわずかな期間の間の,二人の中で交わされた無駄話が,岡嶋二人の小説作りの土台となったという。乱歩賞の存在を知り,小説を書こうとする二人。どうやって小説を書いたらいいか分からない二人は,小説のタイトルだけ考えたり,連想ゲームをしたり…。その後,本格的に乱歩賞を目指す。「くたばれ巨象」,「探偵志願」,「あした天気にしておくれ」という作品を経て,「焦茶色のパステル」で,二人は7年かけて,実際に乱歩賞を取ってしまうのである。ここまではまさに痛快なストーリー。ここで終わっても「おかしな二人」は傑作だが,ここから,岡嶋二人が崩壊に向かう衰の部が続くのである。
    衰の部では,乱歩賞を受賞したあと,岡嶋二人がプロの小説家としてどれほど苦労したかが,恐ろしいほどになまなましく書かれているのである。
    岡嶋二人の不幸の原因の一つは,井上夢人が,執筆という作業を担当していたこともあり,メキメキと力を付け,成長していったのに,徳山諄一は,それほど成長できなかった点にあるのだ思う。いっそのこと,徳山諄一が井上夢人のマネージャーのような立場になってしまえばよかったのだろうが,わがままで頑固な井上夢人はそれを許さない。それどころか,デビューするまでの,アマチュア時代の岡嶋二人の関係を取り戻そうと必死になるのである。井上夢人のわがまま,頑固,そして理想主義が,もう一つの岡嶋二人の不幸の原因だろう。
    徳山諄一から,井上夢人の気持ちが離れていく様を読むのは,岡嶋二人のファンとしては辛い部分もあった。しかし,どういうわけか,井上夢人の方に感情移入をしてしまったので,おかしな二人を読むうちに,「もっと早く解散してしまえ」という気持ちがあったのも事実である。
    岡嶋二人の作品は,どれも水準が高く,好きなのだが,一番好きな作品は,99%の誘拐であり,二番目に好きな作品がクラインの壺である。どちらも傑作だが,ほとんど井上夢人一人で作り上げたクラインの壺という作品より,岡嶋二人の最後の合作といえる99%の誘拐の方が好きなのだ。
    井上夢人名義の作品も好きなのだが,いつか,岡嶋二人の新作を読んでみたいという気がする。
    いろいろ考えさせられ,何より小説を書きたいというような気持ちにさせられる「おかしな二人」という作品は,いうまでもなく名作。★5で。

  • こういう話しはあまり知りたくなかった。

  • どちらも悲しい。

  • 昨年、岡嶋二人を知り、『99%の誘拐』『クラインの壷』『焦茶色のパステル』『ちょっと探偵してみませんか?』の4作品を読んですっかり虜になってしまいました。
    二人の活動を振り返った本書には、未読の作品のネタバレも含まれると思われたので、読むのをためらっていたところもあったのですが、読み終えた今ではいいタイミングで読むことができたと思っています。
    二人の出会いと別れの経緯が生々しく描かれていて、時に胸がつまるほどせつない部分もありましたが、読後感は爽やかでした。二人の天才が駆け抜けた13年間の歴史は、一人の創作者とは違う苦悩があって、まさに岡嶋二人でしかありえないエッセイです。

  • 岡嶋二人の本の、面白さのバラつきに「そういうことだったのか」とすごく納得がいった。二人が作った本は、3分の1ほどしか読んでない状態でこの本を読んだ。かなりいろいろなネタバレもあったし、あのタイトルは面白くないという作者からのお墨付きもあった。でも、二人の創作の仕方、ネタの出し方練り方を知った今、面白くない物語でも新しい視点で楽しめると思うので、全部読もうという決意が固まった。イズミと徳さんの物語に萌えてしょうがない。すごいです。すみません。と思いながら読み終えたら、解説の大沢在昌さんが「まるで恋愛小説みだいだった」と書いている。それもイズミちゃんが女がで、徳さんが男だ。私が萌えてしまうのも仕方ないですね、大沢さんまでそう思ったんだから。大沢さんの本も今度読みます!

  • 解散するところがやっぱり悲しいですね。仕方ないんだろうけど。

  • 面白かったが切ない話。

    まさか[盛]の部分が乱歩賞受賞までとは。プロの小説家になってから(と言うより授賞式の日から)[衰]が始まるとは驚く。数々の傑作ミステリーが全て[衰]の時期に作られている事に驚く。小説家とはいかに厳しい職業か。ただこの本は井上氏側から書いた本なので、ちょっと徳山氏が可哀相に思えるが、あえて徳山氏は反論本を出していないのが、なんともこのコンビらしい感じもする。まるで恋愛小説みたいな本。

  • 気分が落ち込んで、鬱っぽくなり、エネルギーを要することが自発的にできなくなったときに読む本がいくつかある。その多くは、例えば『まんが道』『プレイボール』などのマンガであったけど、今回は既読の本棚に並んでいた本書を手にとった。本書は、井上氏による「岡嶋二人物語」であり、ミステリ作家の自叙伝であり、一種のノウハウ本であり、青春物語であり、そして何度も読むことができる☆☆☆☆☆の傑作である。
    解説の大沢氏と同様に、私は雑誌(『メフィスト』だったのだろうか? 当時の講談社の日本ミステリ専門誌だった)初出時に読んでおり、それもちょうど就職活動期で落ち込んでいたときで、忙しい時期だったにもかかわらず、あまりの面白さに一気読みしてしまったものである。だから、読むたびに、あのシュウカツの空気を思い出す。

  • わかり易く書けば「まんが道」の岡嶋二人版ですね。

    読んでて楽しい前半部に比べ、愚痴が多くなる後半部は読んでて切なくなってきます。

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著者プロフィール

昭和25年生まれ。昭和57年に徳山諄一との岡嶋二人名義で第28回江戸川乱歩賞を受賞してデビュー。平成4年に『ダレカガナカニイル……』(新潮社)で再デビューした。代表作に『ラバー・ソウル』(講談社)など。

「2020年 『平成ストライク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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