やがて哀しき外国語 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 2567
レビュー : 179
  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062634373

作品紹介・あらすじ

初めてプリンストンを訪れたのは一九八四年の夏だった。F・スコット・フィッツジェラルドの母校を見ておきたかったからだが、その七年後、今度は大学に滞在することになった。二編の長編小説を書きあげることになったアメリカでの生活を、二年にわたり日本の読者に送り続けた十六通のプリンストン便り。

感想・レビュー・書評

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  • 村上春樹さんの作品は、「遠い太鼓」しか読んだことがなくて、この「やがて哀しき外国語」もエッセイだから、小説は読んだことなくて。わたしの中では、なんとなく特異な出会い方をした、特別な作家さん。
    なんで小説からじゃないの?と聞かれれば、それは、私の尊敬する方が選ぶ本10選のなかのひとつが、遠い太鼓だったから。ただ、それだけ。笑

    筆者のアメリカ留学エッセイなんだけれど、驕りとか自慢とかそういったものは一切感じなくて、淡々と、あるがまま起こるがままの出来事をオリジナリティのある言葉で表現されているな、という印象。ジャズ喫茶を経営していたくだりとか、そこから小説家になったくだりとか。これって、人によっては武勇伝にしたり人生を変えたキッカケみたいに話ししたりする内容だよね?っていうようなことも、さらっとまるで朝ごはんを食べている最中に言われるような何気ない感じで描かれていて。かっこいいおとな。

    基本的な考え方に共感することが多くて、読みやすかった。どこか諦めている人、ここまでだと限界を知っている人が好きだし、わたしもそうでありたいと思っている。逃げているのではなく、分かっているということ。

  • 春樹さんのエッセイ大好きです。
    ブックオフで見つけて購入。
    春樹さんがアメリカで暮らしている頃、私もアメリカにホームステイしたことがあり、親近感を覚えました。
    あの頃は高校生で、アメリカの社会情勢がどのようになっているのか全然知らずに行っていましたが、今となって、そうだったのか~と気づくことが多々ありました。

  • 「海外生活を始めてしばらくした頃に読んだらいいよ」と勧められ日本から持参しました。90年代のエッセイですが、"アメリカ生活あるある"は大筋で今も同じような感じで、うなずきながら楽しめました。
    そして何よりあとがきに記された文章にとても励まされました。
    以下要約。

    ---外国で暮らすことのメリットのひとつは、自分が単なる一人の無能力な外国人、よそ者(ストレンジャー)でしかないと実感できることだ。差別されたり、あるいは部外者として理不尽な排斥を受けたりする目にあうのは決して無意味なことではない。たとえ弱者としてであれ、無能力者としてであれ、そういう風に虚飾や贅肉のないまったくの自分自身になれることができる(あるいはならざるを得ない)状況を持つというのは、ある意味で貴重なことではあるまいかとさえ感じている。
    自分にとっては自明性を持たない言語に何の因果か自分がこうして取り囲まれているという、その状況自体がある種の哀しみ似たものを含んでいる。そして日本に戻るとまた自分が自明だと思っているものは、本当に自分にとって自明のものなのだろうかと不思議に哀しい気持ちになる。僕らはみんなどこかの部分でストレンジャーであり、僕らはその薄明のエリアでいつか無言の自明性に裏切られ、切り捨てられていくのではないかという懐疑の感覚は、一人の人間としてずっと抱えて生きていくことになるだろう---

  • 村上春樹の小説というものはあまり好きにはなれない。というか他の小説と何がそんなに違うのか、ということが気になりすぎて純粋に楽しめない、と言った方が正しいか。しかし彼の生い立ちや特に本書での外国での生活や文化に対する考え方というものは非常に共感できるところがあった。海外文学に傾倒し、洋書の翻訳も手がける村上が外国語というものが結局苦手だと告白した所に驚いた。もちろんだから出来ないというわけではないが、外国語に対する姿勢というものが今の自分にとっても参考になるものであった。要するに下手は下手なり自分の気持ちを伝えたらいいのだ、という点である。村上でさえ意思疎通が十分にできず、全く理解されないことも多々あるという告白は少なからず自分にも安堵感のようなものを与えてくれた。ノーベル賞候補のかの村上春樹でさえもたかが英語ごときで四苦八苦しているのだという事実は英語の習得に悪戦苦闘している自分にもまだまだ努力の余地があるということか。

  • 村上春樹のエッセイ集。アメリカ滞在中のもので、主にアメリカ文化を通して観た日本みたいな感じが多い。時期としては湾岸戦争辺りからクリントン初期くらい辺り。

    例えば何か大事なものと自分の間に壁があっとして、村上春樹のものの捉え方というか文章は、その壁を少しずつ丁寧にハンドハンマーで丁寧に叩いていって、穴があきそうなところを発見して、そこを丁寧に掘って行くような感じがあって、そういう感じが自分が村上春樹を好きな理由なんだろうな、と思った。

    ネットサーフィンをしていて普段読む文章は、壁をバズーカーとかで破壊しようとしたり、ただ壁をちょっと離れて神経質に観察するだけ、みたいなものが多くて、そういう意味でも古い本だけど新鮮で楽しく読めた。

    20年位前の本なので、アメリカ文化のリアルな情報では最早無いような気もするけど、それでもなお読んで良かったなあ、と思った。

  • この人の考え方と文章がすき。

  • アメリカでの生活が書かれていた。平凡な日常だとしても村上春樹さんが文字におこすと、カラフルになる。どぎつい色ではなくてやさしい色。それは村上春樹さんのエッセイを読むといつも思うこと。
    村上さんが小説を書くようになったきっかけが、今まで読んだどのエッセイよりも詳しく書かれていたと思う。

  • これはアメリカとかイギリスでは読んでる新聞で生活階層が分かる、というような話がblogで出て、それを村上春樹がこの本で書いてる、と教えてもらったので読んでみた。

    村上氏が1990年秋から3年間、プリンストン大学に招かれた時に書いたエッセイだ。その中の「大学村スノビズムの興亡」に、氏の知っているプリンストン大学関係者は「NYタイムズ」を読んで、ビールはハイネケンとかギネスなどの輸入ビールを飲む、というのが一般的だと書いてある。

    何がコレクトで何がインコレクトかという区別がかなり明確である。というコレクトの意味が分からないのでだいたいの感じしかわからない文のあとに、分かりやすい実例が示してあった。

    もしプリンストン大学関係者で、バドワイザーが好きで、レーガンのファンで、スティーブン・キングは全部読んでいて、客が来るとケニー・ロジャーズのレコードをかけるような先生がいたら、・・たぶん相手にされないだろう、ということらしい。

    実は日本以上にアメリカは階級的な身分的な社会だという気がすると書いている。

    これが書かれてから20年たつわけだが、さてアメリカ、日本はどう変化しているのか。

  • ストレンジャーになりたいから外国へ行くという感覚は凄く共感できる。

  • 氏がプリンストン大学客員研究員として滞在した約2年間のプリンストン生活をまとめたエッセイ集。こうした体裁の旅行記(滞在記?)は『遠い太鼓』に続き2作目とのことだが、氏の相変わらずの独特な視点と間合いが楽しい。

    タイトルにもなっている『やがて哀しき外国語』とはなんとも妙味ある言葉で、普段着ではない余所行きに感じる落ち着かなさそして外からみたらそれも逆の感想にあり、そうなるとアイデンティティってなんだろう?と哲学的にもなる。まぁそれはそれとして気軽に読めて楽しめる本である。

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月刊行。2019年9月10日発売の『文藝春秋』10月号で「至るところにある妄想 バイロイト日記」を寄稿。

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