- Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062634779
感想・レビュー・書評
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「おはよう」という言葉はいい。何か気分が洗われる。おはようという言葉がいえる間柄はとてもよい。主人公45才、江波良介製薬会社の営業部次長。女房が死んで、会社もやめる。改めて女房が好きだったと思う。そして4年前に喧嘩して別れた愛人の日出子に、謝りに能登半島まで会いに行こうとするところから始まる。「おはよう」という言葉が好きであるが、それに命を与えようとしていた。
「ささやかないさかい」「傷つけ合う関係」から、「幸福」というものをつかもうとする。
日出子と愛人関係にあったことが、採用された社長に伝わることで、日出子は会社を辞めざるを得なかった。江南の友人、内海に話したことが伝わったのだ。社長は、日出子が好きだった。
女房が死ぬことで、わだかまりがなくなって、付き合いたいと江波は思った。女房の保険金で、贅沢なイタリア旅行をする。ローマには、喧嘩別れした兄もいた。兄と和解がしたかった。
日出子は、以前旅行した時に、あったパオロという障害児。両親はいかなる時にも楽天的に、陽気に、笑顔をたやさぬようにパオロに徹していた。「障害者」にたいして、自立することができるように日常的に接する。果たして、パオロは死んでしまったのか。確か、パオロは19歳になっている。
やはり日本では、障害者を疎ましくしか見られないことがあるが、もっと違った接し方を考える。
「登校拒否」ということに対するとらえ方がそのころはまだ違っていた。
父親の良介は、息子の亮一に語る。「心の師とはなるとも、心を師とせざれ」。心のままに従ってはいけないということだ。でも、そんなふうにはなれない。「自分の敗北を、自分以外のせいにする生き方だけは、お互いやめよう」と息子の亮一に伝える。
時代が違って、スタイルが変わってくる。今なら、高校に行かなくていいというかもしれない。
良介と日出子、さて、どうなっていくのか?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
内容(「BOOK」データベースより)
妻に先立たれた良介は、いきなり会社を辞め旅に出た。そして昔愛した日出子と彼女の故郷で再会し、二人でイタリアに行く決意をする。良介は父親とケンカ別れした兄に会うために、日出子は少年パオロの成長を確かめるために…。揺れ惑う愛を描きながら、生きることの歓びを見つめ直す、宮本文学屈指の名作。 -
生きること。朝の歓び。今の私には心に響いた。
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混沌としているので,下巻に期待
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宮本輝のいつものパターン
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譲っていただいたのがきっかけで、読みました。
冒頭は仄暗くどこかサスペンスを思わせる感じでしたが、読んでみるとそんな要素は全くありませんでした。
フラフラと恋愛にも、生き方にも路頭に迷っているように翻弄される男の話…私の歳では身近に感じにくい内容でしたが、若干の憧れのようなものを含んで読めました。
まぁ、フラフラ感だけは身に沁みるものがありましたが(笑) -
名作
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宮本さんの作品で読み逃していた作品だと思う、実家に行けば単行本がどこかにあるはずだ。この本、妻の死をきっかけに会社をやめかつての不倫、いや、愛人、でもない、とにかく付き合っていた女性の住む能登へ赴くところから物語が始まる。二人はそこで偶然再会する。偶然?そうしないとストーリーが進まないからしようがない。その再会の必然性はどうでもいい。二人が別れた事情が語られ、その罪滅ぼしとぴうか慰謝ということでイタリア旅行をプレゼントする。しかもファーストクラスでだ。で、なんとその費用は妻の死がもたらした保険金なのだ。なんか、こんな設定も宮本さんらしい。こんなというのは、自堕落というか破天荒というか常識からはずれたというかそういう意味だ。興味は、二人が今後どうなっていくのか、再びくっつくのか、そんなところにひきつけれられる。二人が再び近しい状になった時に、なにか言ってといわれてかけたことば「おはよう」にたいし「いいことばね」といシーンがあった。「朝の歓び」という題名につながっている。さて、イタリアで何が起きるのか。下巻へ続く。
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心に残っている言葉を抜粋
”自分の周りのものは、すべて、自分の影なのだ。自分が曲がっていれば、影も曲がる。すべて、自分次第なのだ。”
人間関係で少々凹んでる今の私へのぴったりな言葉。
そう、すべては自分の未熟さに起因している。
もっと懐の大きな人間になりたい。