音楽の海岸 (講談社文庫)

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  • 講談社
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感想 : 70
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062634816

感想・レビュー・書評

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  • 文字を追う作業って感じで読み進めた。
    官能的、直接的、なんだか村上龍は激しい文章を書くなと思った。
    タイトルとストーリーがうまく結び付かなかった。

  • 自分に惚れてる女たちを依頼があれば派遣しあがりを分け合う女衒のような暮らしをしてたケンジ。ある時から音楽一切を受け付けなくなってしまっていたが、ニースからモナコの海岸にあるという、何の情報も知識もコードも必要とせずに聴けるという音楽には憧れがあり。そんな中ある男から受けた、自分の女をおかしくした映画監督を社会的に抹殺し破滅させてほしい、という依頼。ケンジは女たちから情報を集め、映画監督や秘書に近づき、ある変態の医者をターゲットとして巻き込んで、そのプロジェクトにのめり込んでいくが…と。緊張感のあるダイアローグ。演技と策略と自らの中の欲望の正視、侮蔑と共感、憧憬。ないまぜになった饒舌。ターゲットを壊すことは、タフであることを自負していた自分が壊れることにもつながっていた。SM論と音楽論をほうりこんでまぜあわせて繰り広げられる物語。そして希望だけがない国というコンセプトがすでにこの時語られていて、のちの「希望の国のエクソダス」につながっていたんだな、とわかった。◆本当に死ぬ人は、例えその時、誰かに止められたとしても、いつか一人になった時に死ぬもんです。それに、人間が発狂したら、もうその人は別人になったと思わなければいけない。別人なわけだから、最初からやり直さなくてはいけないんです。◆あんたは喜んで犬のマネをしている自分が本当の自分なんだってことに気付いたんだよ。◆みんなが仲良くしなければいけないという教えが、あらゆる関係性の上に(略)のしかかっているので、それに耐えられなくなった連中が、できるだけ弱い部分を狙っていじめる。◆人類はどうして、こんなにきれいなメロディを必要したか(略)基本的に敗北者だからだろうと、思ったんです(p.255)◆生きる希望、生きていく希望は妄想以外にあり得ず、それにノーマルな形を与えたものが音楽。

  • 女に対してのリスペクトがしっかりありつつ手のひらで転がしてる感じがいい。女が泣いた時には頭を撫でながら綺麗な作り話をしてやれるような賢い男でないとこういうことはできないとおもう。優秀なヒモ。でも最後はちゃんと原因不明のガタがきて人間だよなと思わされるところがまたこういうとこに母性本能がやられる…と思う、ラストがしっかりしててちゃんと優しくてよかった。

  • 辛辣すぎる

  • 女性を手の中で転がし続けるヒモ。でもその女性たちへのリスペクトを忘れずに、そして言葉を巧みに扱うところが純粋にすごいと思いました。
    心で思っていなかったとしても、相手の状況を踏まえて言葉選びができるのは才能だと感じました。

    ところどころ表現が難しく、そして生々しいので苦手な方は覚悟して読むことをおすすめします…笑

  • SUMIってzinで紹介されてて古本屋三軒目でゲットん!すんげー面白い!新鮮!いい本はスペースがあれば捨てない方向に面舵いっぱいだね。
    最後はゲンナリしちゃったかな…
    そぅなっちゃうか…はぁふーん
    俺やっぱ村上龍が合ってるってことで。

  • 久しぶりの村上龍。
    似たトーンのお話を読んだ記憶があるので、大枠の物語としては既視感があり、言葉のセンスで読ませる量産品。

  • 音楽、映像、トラウマ、決して肉体的ではないサディストやマゾヒストの精神性の巧みな表現や会話。
    強さと脆さ、恐らくどの人間にもあるであろう表裏一体の各側面。
    それらの全てが無意識的にリンクしていることに気づかない。
    そのリンクする瞬間が見えた時、初めて断片的なものが統一化されて音楽が繋がってくように、人はまた一歩生きる道を進んできたようだ。
    だから今もなお、音楽が生まれ続けている。

    「生きていく希望っていうのは、他の誰かへの働きかけと、その誰かからの反応。他の誰かからの自分への働きかけと、自分の反応じゃ希望にならないから、妄想が起きるわけでしょう?」

    「音楽の全ての要素は他の誰かへの働きかけと、その誰かの反応だから。」

    凝縮。されていて、久々に残ったセリフだった。

    抽象的な映像や音が浮かぶ世界観の中に、やはり村上龍らしい淡々としたブレない流れがあり、面白いでは無く「好き」な作品。

  • とても限られた条件下で生きる妹によって救われるケンジ。妹は自身が置かれた状況から、生物学的に人間の構造はそもそもおのずから主体的、または突発的に死をすすんで受け入れてはいない。つまり、心臓は動き続けている。
    そうした状況下で、生きる根拠、心臓が動き続ける理由付けを試みるのだが、「妄想」という言葉で終着する。その妄想こそが生きる希望。
    その生きる希望は患者においてもそうだが、自らの働きかけと他人からの反応の獲得と定義される。そして、それは音楽の本質と同じである。
    心底から他人への働きかけを見失っている人々しかいない状況において、生きる希望がないのだから何をしてもよいという言葉に主人公は救われる。

    とても面白かった。また読みたい。

  • 2013.06.02読了。
    今年23冊目。

    村上龍何気に読むの初。
    難しかったー。
    ストーリーも面白かったし、いろいろ考えながら読んで私は好き。
    だけどしっかり噛み砕いて読めた感はない´д` ;
    し、レビューとして言葉にしてまとめる自信がないw

    いろんなことを的確に言葉で表現できるようになりたいと思った笑

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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