文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 12120
レビュー : 1521
  • Amazon.co.jp ・本 (630ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062638876

感想・レビュー・書評

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  • 私の読書人生を変えた一冊

    ・総評
    そう言っていいです。文字の力でここまで表現できるのかと思い知らされ、かつ、自分もこんな作品を作りたいと思える作品でした。
    確かに少しクセはありますが、私自身の感性にも多大な影響を与えて下さった作品です。

  • キャラクター小説。とても楽しく、知的て不思議なエンターテイメント。好きだ。

  • 近いうちに、また読みたいと思っている一冊

    近所の家の窓の軒先に、正月も過ぎた頃だというのに風鈴が吊り下げられていて、夜中も丑三つ時だというのに、妙に澄みきった音でちりりん、と鳴いた。

    これは夏に読みたくなる本だ。
    うだるような暑さの中ではなく、風鈴の音が静かに聞こえるような涼しい河原で、温泉の湯上りなんかに読んで、夢か現か分からないような、鬱陶しい悪夢なんかも楽しみたい。

    祭りのざわめきと、逃げ出した男の淡い恋心。
    20ヶ月も腹を膨らませたままの女が逃げ出した男に発する、助けを求める声。本当に湿気ている。


    本作は高校二年生の頃、悪友に薦められて読んだ。最初、そのトリックが滑稽に見えた。見えるはずなのに見えないこと自体があり得ないだろうとまで思った。見たくないものは徹底して見たくない。当時は不思議だった。

    そうして、私も歳をとった。
    姑獲鳥の夏のことなど忘れ、私は紙を目の前にして、鉛筆でメモを取っていた。誤字を発見して、消しゴムを探したが見つからない。机の上においたはずなのに。

    あれこれと探し回り、消しゴムはあるべき場所、机の上にあったのだ。そのとき、姑獲鳥の夏という本を唐突に思い出した。京極堂の言う通り、どこからが妄想で、どこからが現実の世界なのか、そんなものは本人には分からないものなのだろう。

    私の消しゴムの短い神隠しの旅を経て、私はもう一度姑獲鳥の夏を読んでいる。美しくて、邪悪で、私利私欲で、血の匂い、内臓の匂い、赤子の泣き声、女の怨嗟の声がする。

    これを書いている最中に、隣家から赤子の泣き声が聞こえた。人の形をした、まだ人ではない存在にほんの少し、恐怖心を覚えた。

    夏だけではない、冬にも読んでもらいたい一冊である。ヒロインがあの状況に、長きにわたり置かれていたと考えると心底ゾッとする。狂気を狂気とも思っていない人物がぞるりとでてくる。怖いというより狂っているとしか思えない。



    願わくば、電子書籍版の金額がもう少し、手の届きやすい金額であってもらいたいなぁ。全巻揃えると、本棚は占有される。電子書籍の良いところなんだ、こんな素晴らしい本を護身用にするにはもったいない。

  • 最初勧められて買ったものの表紙と厚さに圧倒されて暫く放置していましたが、意を決してページをめくり始めたらいつの間にか一気に読んでしまいました。そしていろいろ持ってかれました。登場人物がとても魅力的で京極堂さんの蘊蓄は長いですけど最後まで飽きずに読めると思います。

  • 長年、本棚の中で眠っていた本書だったが勇気を出して読んでみた。

    なにより驚いたのは、この真相をかなりの説得力を持って成功させたこと。
    京極堂の薀蓄や人物配置、作品全体から漂う妖しさなどの全てが説得力を増すための要因となっている。
    この真相だけをとって、揶揄することはできないだろう。

    推理小説という枠に収まり切らない傑作だと思う。
    もっと早くに読んでおけばよかった…
    『魍魎の匣』も近いうちに読みたいが…厚い…

  • 【再読】ぼんやりとトリックだけ覚えている状態で十数年ぶりに再読。
    そのせいか、それとも文庫用の文字組のせいか昔ほどおどろおどろしくは感じなかった。
    とても読みやすかった。
    とはいえ要所要所でぞっとするのは相変わらず。
    というか関口くんが記憶していたよりしっかりしていて驚いた。
    もっと人として駄目な感じじゃなかったっけ……?
    それこの後のシリーズの状態だっけ?

  • 夏ってことでこの作品。短絡的ですんません。でも、そこまで夏っぽさを感じさせられる作品って訳でもなかったです。百鬼夜行の第一作ってことだけど、最初から登場人物設定とか、良く練られてたんだな~、って感じ。でも、この他に魍魎しか読んだことないけど。本作も、妖怪伝説を絡めて、色んな薀蓄を披露しながら、主題となる部分はとてもゆっくり進んでいく。このあたりが好悪の分かれるところなんでしょう。でも、読んだ!って感覚は十分に味わえるし、清々しさとは程遠い結末だって、ここまで書ききられると圧巻。面白かったす。

  • 3読目。夏が来ると読みたくなる。

    百鬼夜行ファンとしては、京極堂の表情が豊かだったり榎木津の正義感がかっこよかったりして新鮮と思う反面、関くんはいつまでもどこまでも関くんだなぁ、と。
    京極堂が出てくる場面はやはりこの作品がいちばんかっこいい!涼子は私が思うにシリーズでいちばん美人。

    ストーリーや構成が綿密ですごい。このシリーズ好きだわぁと改めて思いました。きっとまた、夏が来れば読みたくなるな。

    ところで、じつは里村さんがかなり好きだったりする。

  •  20か月近くお腹に子どもを宿している女性がいるといううわさが流れる。さらに彼女の夫は密室から忽然と姿を消したらしく、文士・関口は奇妙な縁から彼女の姉と知り合いになり……

     前半の認識論や民俗学的な視点などかなりの情報量が詰まった作品です。昨今ライトミステリが流行ってますが、そういうのと真逆の位置にある作品だと思います(笑)。
     
     そのため面白さのエンジンがかかってくるまでは遅い印象ですが、後半の怒涛の解決部分は前半を読んでいるからこそ受け入れることができるものとなっていて非常に読みごたえがありました。

     ミステリ小説でありながら、幻想小説的な関口の語り口に、20か月の身ごもり、呪いや因縁などミステリらしからぬ雰囲気が終始漂っています。しかしそれを最後に現実世界の謎解きに持っていくのは、探偵役の京極堂が語るように「この世には不思議なことなど何もないのだよ」という言葉の実践であるように思いました。

     これまたすごい本を読んだなあ、と読み終えて思いました。ミステリの枠を広げた作品、という話を聞いたことがあるのですが、それを嫌というほど実感させられた作品でした。

    1995年版このミステリーがすごい!7位

  • 三文文士の関口巽は、級友である京極堂(中禅寺秋彦)の家を訪ね、最近耳にした久遠寺家にまつわる奇怪な噂について相談する。「二十箇月もの間子供を身籠っていることができるか」。京極堂は「この世には不思議なことなど何もないのだよ」と脳と意識の不思議について語りだす…。

    20ヶ月も身ごもった女の謎から、密室から失踪した男、そして語り手の失われた記憶…。次から次へ、ミステリーと言うよりはホラーテイストで語られる謎。それが「和風」な、ひんやりと不気味な雰囲気のなか、一つ一つ解かれていくのが面白い。

    語り手の関口のポンコツっぷり(いや、周りが凄すぎるのだけれど)にヤキモキした。が、読者は結局のところ語り手の思考を通してしか情報を得ることが出来ない。京極堂に頼み込む場面は、正に関口と一緒に「憑き物とやらをおとしてくれ」と懇願せねばならなかった。

    序盤で長々と語られる、脳が巧妙に自分を騙しているという話や、自分の意識や記憶がいかに当てにならないかという話は、聞いたことがある話だったのに、京極堂の語り口に面白さに、ついゾクゾクさせられる。

    まさかこの語りが最初から最後まで貫かれるテーマだとは思わなかった。

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著者プロフィール

京極 夏彦(きょうごく なつひこ)
1963年、北海道小樽市生まれ。小説家としてだけでなく、世界妖怪協会・世界妖怪会議評議員(肝煎)など妖怪研究家であり、他にも装幀家、アートディレクター、俳優など様々な顔を持つ。
広告代理店を経てデザイン会社を設立。1994年、そこで暇つぶしに書いた『姑獲鳥の夏』を講談社に送ったところ極めて評価を受け、同年、即出版・デビューに至る。瞬く間に執筆依頼が殺到する人気作家に上り詰めた。
1996年に『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、1997年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2002年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で第130回直木三十五賞、2011年『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞など、数多くの受賞歴がある。
代表作に「百鬼夜行シリーズ」「巷説百物語シリーズ」「豆腐小僧シリーズ」など。

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