文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 12120
レビュー : 1521
  • Amazon.co.jp ・本 (630ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062638876

感想・レビュー・書評

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  • 想像以上の面白さだった!
    民族学や心理学、精神医学などは元々興味がある分野。
    それらについてを京極堂が滔々と語り、その理論をベースに話が進んでいくというのは今まで読んで来たミステリーには無い展開。
    新鮮で面白く、引き込まれました。
    特に中盤からはページを捲る手が止まらず!という感じに。
    久しぶりに次から次へと謎が解明され事件の全容が徐々に明らかになっていく時の、ミステリーならではのドキドキ感と興奮を存分に楽しませてもらいました♪
    そして、前半部分で数多張られた伏線を終盤、回収していく様も見事だなと。

    それにしても京極さん、これがデビュー作なんて凄すぎじゃないですか?!
    このシリーズの続きを読むの楽しみです。

  •  民俗学やら心理学やら、薀蓄満載でとても濃厚だった。その薀蓄が、ストーリーの前提になっているので、他のミステリーと比べて少し骨が折れるところはあるかもしれない。小説以外の本をあまり読みたがらないくせに知識だけはいろいろと欲しがる私としては、結構ありがたい作品だった。

     人間は自分の都合のいいように世界を認識する、というのはわかったけれど、登場人物のひとりひとりが作者の都合のいいように出来すぎている気がしないでもなかった。
     それでも、そのひとりひとりが持つ濃密な背景が複雑に絡み合って出来た巨大な謎が解き明かされていく様は、硬く閉じた蕾が少しずつ緩んで、大輪の蓮の花が咲くような、そんな絢爛さを感じた。

     連綿と続くミステリ小説の歴史の中でも、関口はアンリライアブル・ナレーターの際たるものだろう。彼がいるからこそミステリは生まれるが、逆に言えば彼さえいなければ(久遠寺家を訪問したのが榎木津と敦子だけだったら)、こんなこじれることなかったんじゃ……(笑)でもまあ、真実が白日の下にさらされるためには、京極堂のアレが必要だったわけか。。。

  • 確かこの本を最初に読んだのは20年近く前だった。このシリーズの初読、「魍魎の匣」に次ぐ衝撃だった。
    そこから何度読み返しただろう。

    とは言えここ数年は家の本棚で他のシリーズとともにただ幅をとっていた。(とは言え他に比べたら全然スリムだけど)
    今回めちゃくちゃ久しぶりに読み返して思ったのは、想像以上にこの本からわたし、影響を受けていたんだなぁということ。
    とりあえず、90ページまでの関口と京極堂の会話内容が、勝手にわたしの人生の指針になってる気がする。
    特に脳と心と意識の関係については、自身のメンタルを穏やかに保つ秘訣になっているなぁ。
    あと、量子力学については、20年以上経って少し内容が解るようになっていて
    あの頃はチンプンカンプンだったけど20年分は成長したんだなぁと少しだけ自分を褒めたくなった。

    さて、肝心の内容。(以下、若干ネタバレ)

    もちろん話の筋は全て覚えていたし、
    オチについてだけなら今となってはなんら珍しいモノでもない。正直なぜ登場する人物はみなその可能性に至らないのかとも思えてしまうのだけど、
    昔は夢中でページをめくって貪り読んだことも同時に思い出した。
    今回読み返して、もの凄い情報量と、ドラマチックな描写、魅力的なキャラ造形、それこそ最初の90ページにわたるあのたわいなさげな会話が全て事件に収束していく筆力は、圧巻の一言。
    でもやっぱり若い頃、最初に読んだ、
    あの衝撃は超えられない。

    10数年前に、映画化されて、
    わくわくしてレイトショーを観に行ったことも思い出したな。
    …あ、
    そう言えばあの後から読み返してなかったかも(笑)

    とりあえず、また新刊が出ているようなので、
    久しぶりに追いかけようかなと思っている次第。

  • 京極夏彦初挑戦。あまりの分厚さに最初は面食らったが、一度紐解いてしまえばめくるめく語りと強烈な探偵役たちにグイグイ引き込まれあっという間に読了。とにかくキャラクターが魅力的な作品である。ワトソン役を仰せつかったはずなのに余りにも信頼の置けない鬱病の語り手関口、仏頂面の拝み屋で理屈の鬼の京極堂、他者の記憶を幻視する躁病探偵役榎木津と三者三葉に濃い。そうした彼らの語りを目で追ううちに、気がつけば事件は予想だにしない様相を帯びて我々の前に立ち現れてくる。確かに読者に対してフェアなミステリとは言い難いかもしれないが、この作品は読みながら推理するというよりは関口と一緒に怪異に囚われ、京極堂の推理に身を任せた方がより強いカタルシスを得られるような気がする。この小説に、邦ミステリの新しい土壌を確かに見た。

  • 当初は妖怪ミステリかと思って読んだ本作であるわけだが、現実と仮想現実の狭間で起こった、怪異譚というよりはSFめいた印象の受けるミステリだった。俗に言う正体不明の怪異と違い、怪異の成り立ちが面白く、科学では解明できない環境としての要因、それによって起こる現実との齟齬を謂わば怪異と定義し、その二つに筋道だった論拠を示す「憑き物落とし」と称する探偵術は非常に斬新である。呪術的な民俗学方面からアプローチを行いつつも、決して荒唐無稽はでなく、描かれているのは精緻で論理的なミステリである。事件とその結末事態に割いた紙幅は意外と短く、正直300頁程度でも十分だとは思うが、この、やや冗長にも感じる語り口がなければこの世界観は把握できないだろう。ぱっと見は陰惨かつ単なる怪奇事件に映るかもしれないが、関わる人間の認識を歪め、常識で支えられた世界を根底から覆してしまうかのようなスケールの大きさがあり、現実感を失認するからこそ、後の京極堂の憑き物落としが生きてくるわけである。「この世には不思議な事など何もない」というのはまさに言葉通りで、怪異に逃げず、かといって事件が怪異を偽装しているわけでもなかったというのが一番の特徴だろう。まさに認識の違い、現実と仮想現実の事件であり、読んでいて不安感で足元が喪失したかのようになるミステリは初めてである。それでも冗長であるため、好みとしては少しズレるのだが、傑作であるとは思う。

  • ずっと読みたかったので読みました。京極堂シリーズということはふわっと知っていたのでもっと京極堂が出張るのかと思いきや、語り部は関口くんだったのね。またこの、信用のできない語り部のおかげで読んでて惑わされまくりでした。あと京極堂めっちゃ喋る。もう京極堂が喋るとずっと京極堂のターンでちょっと笑ってしまった。関口くんはポンコツ愛されキャラでとてもよかったです。話の展開がこれはもしや?と予想できることと予想できないことがあって、ラストは一気に読みました。次も楽しみー!

  • ★4.0
    何故か夏に読みたくなる1冊で、もう何度目か分からないくらいの再読。蘊蓄を語らせると止まらない京極堂、見るもの全てに惑わされる関口、奇想天外・傍若無人な榎木津等、個々のキャラクターが本当に魅力的。そして、オカルトちっくな雰囲気を醸し出しながら、「この世に不思議なことはない」と現実的(時に強引)な解決を見せてくれるストーリー運びも個人的には大好き。骨壷の中の干菓子、塀の中の墓地、書斎の中の死体、その中にある対象を認識するまでの不安と、認識をしていても感知しない視覚。うん、やっぱり面白い!

  • こんな怪奇な話にどういう結着をつけるのか気になり、
    600ページ超あるのも気にならないくらい夢中で読んでしまった。
    ものすごい知識量を持って書かれているのがよくわかる。

    自分が見ていると思っている世界のなんと頼りないことか。
    心霊的なものじゃない部分でゾッとした。

  • 京極夏彦の作品は豆腐小僧から2冊目です。始めの京極堂と関口の会話がとてつもなく長く、すこし難しいと感じ、馬鹿なわたしには辛かった。頑張ってゴリゴリ読み進めていくうちに慣れてくるけど。映画の魍魎の匣を見ていたので、主要登場人物は皆、役者さんの顔で読めました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「役者さんの顔で読めました。 」
      それはイメージし易いかもね。京極堂役が堤真一と聞いて、見逃したのを少々後悔?しています(「ALWAYS 三...
      「役者さんの顔で読めました。 」
      それはイメージし易いかもね。京極堂役が堤真一と聞いて、見逃したのを少々後悔?しています(「ALWAYS 三丁目の夕日」や「プリンセス トヨトミ」での演技が気に入っている)
      2013/01/28
  • 百鬼夜行シリーズの第1弾&私にとって初のシリーズ小説。

    心理学・民俗学(怪異譚多し)・宗教学などが混ざったエログロ猟奇趣味とも言える事件を古本屋件憑物落としの京極堂が論理的に解明していくこのシリーズ。

    『姑獲鳥の夏』の語り部でもある文士・関口がこの奇々怪々な事件にのめり込んでしまったように、私も夢中で読んでしまった。
    しかし!京極堂が広大な知識に則して解明することで、現実世界に戻ることができると思いました。

    【幽霊や呪いというのは生きている人間の脳と心が作り出したもの】
    この京極堂のスタンスも非常に魅力的。

    百鬼夜行シリーズは【論理的に考えるトレーニング】になると信じてやみません!

    また、鬱気質の関口は
    《冷静淡々かつ博識な京極堂》と《天真爛漫だけど気分屋な探偵・榎木津》という数少ない友人2人に救われています。
    この2人と《超合理的で豪快な刑事・木場》はなぜか読者側の気持ちも軽くしていると思えてなりません。


    「表紙が怖いからちょっと…」
    と思っているそこのアナタ!
    ホラーじゃありませんよ!

    そして厚さは気にならないほど面白い。
    日本の民俗学などを研究している・していた方はツボだと思います。

    やっぱり人気作家は違う…
    先にコミック版『魍魎の匣』『狂骨の夢(未完)』を読んでいて、『狂骨の夢』がツボすぎるので評価4で!

著者プロフィール

京極 夏彦(きょうごく なつひこ)
1963年、北海道小樽市生まれ。小説家としてだけでなく、世界妖怪協会・世界妖怪会議評議員(肝煎)など妖怪研究家であり、他にも装幀家、アートディレクター、俳優など様々な顔を持つ。
広告代理店を経てデザイン会社を設立。1994年、そこで暇つぶしに書いた『姑獲鳥の夏』を講談社に送ったところ極めて評価を受け、同年、即出版・デビューに至る。瞬く間に執筆依頼が殺到する人気作家に上り詰めた。
1996年に『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、1997年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2002年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で第130回直木三十五賞、2011年『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞など、数多くの受賞歴がある。
代表作に「百鬼夜行シリーズ」「巷説百物語シリーズ」「豆腐小僧シリーズ」など。

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