文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.84
  • (1860)
  • (1839)
  • (2546)
  • (124)
  • (29)
本棚登録 : 13790
感想 : 1599
  • Amazon.co.jp ・本 (630ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062638876

作品紹介・あらすじ

この世には不思議なことなど何もないのだよ-古本屋にして陰陽師が憑物を落とし事件を解きほぐす人気シリーズ第一弾。東京・雑司ケ谷の医院に奇怪な噂が流れる。娘は二十箇月も身籠ったままで、その夫は密室から失踪したという。文士・関口や探偵・榎木津らの推理を超え噂は意外な結末へ。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 読む隕石。
    京極夏彦はグランドマスターである。
    と帯にある。その通りの作品でした。

    病院の娘が二十ヶ月間身籠ったままで、その夫は密室から消えて失踪
    古本屋であり陰陽師の"京極堂"という男が事件と病院に隠された呪いに迫る。

    なかなかの厚み(約620P)
    事件の話を持って来た関口さんとのやりとりからはじまり「会話が多いからわりとスラスラいけるかな?」本の厚みはこういうことか!なんて納得しようとしたのが愚かでした。

    現実に対する「記憶、意識」それがどれほど曖昧か不確かなのかを解く会話なので、後々関係してくると察知しコレがなかなか面白いが少し長く感じ不安になる(占星術殺人事件を読んだので、ここらへんの長さには少し免疫がついてる。)
    想像していたのは「京極堂が事件をパッと解決する」だったのだが、なかなか腰を上げるわけでもなく、その分他の探偵達(心霊探偵?見ただけでその人、場所の過去を見ることができる榎木津や、やや荒っぽい警察官の木場)が出てきて、なかなか飽きない。
    しかも、京極堂の本気モード入ってからのシーンは張り詰めた空気感が伝わってきて痺れました。

    解決に至るまでは怒涛で
    集中して、ページをひたすらめくってました…

    で、やはり最初の関口と京極堂の会話
    これが効いてくるし、会話した後の関口さんが「現実と仮想の認識によって、自分自身の存在を疑う(ぐらつく)」それと同様に読んでいる側も大きく揺さぶられ「全て何が真実なのかわからなくなる」そんな呪いをかけられた状態で進む。

    コレはシリーズ全て読んでみたい。

    発表当時に賛否が分かれた点については、後で少し調べてみよう。

  • 「何だ、理由を聞けば何てことはない。不思議でも何でもないじゃないか。」
    600頁超の物語の先にたどり着いたのは、梅雨が明けた青空でした。
    長い間、本屋さんで分厚い表装に購入を躊躇っていましたが、読んでみたらこの物語には必要なボリュームだと納得です。
    これがデビュー作品なのですか。凄いとしか言えないですね。
    持ち歩きに不便だけど、魍魎の匣も近い内に読むのだろうな。

  • 想像以上の面白さだった!
    民族学や心理学、精神医学などは元々興味がある分野。
    それらについてを京極堂が滔々と語り、その理論をベースに話が進んでいくというのは今まで読んで来たミステリーには無い展開。
    新鮮で面白く、引き込まれました。
    特に中盤からはページを捲る手が止まらず!という感じに。
    久しぶりに次から次へと謎が解明され事件の全容が徐々に明らかになっていく時の、ミステリーならではのドキドキ感と興奮を存分に楽しませてもらいました♪
    そして、前半部分で数多張られた伏線を終盤、回収していく様も見事だなと。

    それにしても京極さん、これがデビュー作なんて凄すぎじゃないですか?!
    このシリーズの続きを読むの楽しみです。

  •  「面白い本に出会ったら、その著者のデビュー作を読みなさい。そこには著者の全てが詰まってるから」
     子供の頃、本を贈ってくれた伯父が、手紙に書き添えてくれた言葉です。
     本書は、作家・京極夏彦のデビュー作ですが、京極夏彦そして京極堂の魅力がぎっしり詰まった作品だと思います。

     元々、親父が『鉄鼠の檻』を読んでいたのがきっかけで京極堂シリーズと出会いました。
     確かそのとき、
     「それ、面白いの?」と聞いたところ、
     「むちゃくちゃ面白い」と親父が答え、
     「じゃ、読み終わったら貸して」と頼むと、
     「これ、シリーズもんやから、順番に読まんとあかんぞ」と言われました。
     で、調べてみたら、『姑獲鳥の夏』『魍魎の匣』『狂骨の夢』そして『鉄鼠の檻』と、目の前で親父が面白がって読んでいる作品に到達するまでには、アホみたいに分厚い三冊のノベルスを読破しなければならないと知り、愕然としたのを覚えています。
     が、読み始めたらどハマりしました。寝食こそ忘れませんでしたが、学校の勉強は全部忘れて読みふけったのを覚えています(ヲイ

     冒頭、京極堂と関君が、徳川家康とダイダラボッチを引き合いに、延々100頁にわたり実存について議論するところで、一気に京極ワールドに引き込まれました。
     冷静に考えれば、「これ、いつ話が始まるねん?」と思うところですが、そんなことを考えさせない筆致で、知的にスリリングな会話が続くので、貪るように読んだ記憶があります。

     いよいよ事件が始まっても、鬱々とした関君の視点から物語が語られるため、いつしか自分も関君の気持ちに感化されたのか、暗いモノトーンの世界で物語世界を見ていることに気づきました。
     二十か月以上も妊娠中の女性。記憶が見える超能力探偵・榎木津。そして、久遠寺涼子と関君の過去…話はどんどんややこしくなります。
     眩暈坂を登るところから話は始まりましたが、僕も読み進めるにつれ、そんな感じがしてきました(笑)。「これ、ちゃんと風呂敷たためるの?」と少し心配になりながら、読み進めたのを覚えています。

     が、最後、全ての憑き物を落とすため、黒装束に身を包んだ京極堂が出てきたとき、ここまで読んできた僕の、心の中に澱のように溜まった憑き物も一緒に落としてくれたように感じました。
     こんな訳のわからん事件の真相が、京極堂の説明を聞くにつれ、オセロが一気にひっくり返されるように、きれいに説明されていきます。「この世には不思議なことなど何も無いのだよ、関君」というセリフは、著者から自分に向けられた言葉のように刺さりました。人生で体験したことのないレベルの「アハ!体験」だったと思います…って、何かオセロだのアハ!体験だの、比喩がセコいですね…orz

     今更私なんぞがあれこれ書いても屋上屋を架すようなものですし、なるべく予備知識なく読んで欲しいのでモヤーッとした感想しか書けませんが、とにかく未読なら読んで下さい。というか、これ読んでないって時点で人生損してます!

  • 言わずと知れた名著なので私ごときが今更どうこう言う必要もないけど、これは凄いわ。
    これじゃあ嵌まるわ。

    初京極夏彦。
    何となく京極夏彦は難読漢字ばかりで読み辛いという先入観があって今まで読まず嫌いだった。
    いざ読んでみたらなんとまぁ読み易いこと。
    私の思ってる京極評は誰かと勘違いしてたのかしら…とググったくらい。
    (文庫は適宜ふりがな振ってるからかな?)
    まぁ確かに少々古い表現をわざと使ってるけど、それは昭和27年感を出す演出であって、近代文学より遥かに読み易いし、むしろ古臭さは微塵にも感じず、僅か数行で物語世界に誘われた。
    ミステリに呪術世界を持ち込んだ独創性が評価されてるようだけど、それはもちろんそうなんだけど。
    なんだろ、特別な仕掛けがあるようにも思えないけど、少し読んだだけでたちまち脳裏に情景が画として流れるこの感じは。
    これが「筆力がある」ということか。
    あるいは作品に通底する京極夏彦の美意識に圧倒されるのか。

    このストーリーを、昭和27年という、戦争の傷跡が生々しく、科学が進歩しつつある中で辛うじてアミニズムが行き長らえていた時代に設定したことが、まず成功している。
    また、怪々奇々現象ばかりが起こるけど、京極堂はその全てを「この世に不思議なことなどない」という立場で論理的に説明してくれる。
    このスタンスが、いつもならオカルトファンタジーに思考停止してしまう私を、素直にストーリーにのめり込ませてくれて、結局は超現実的な展開なんだけど、現実に起こり得るものとして対峙できた。

    語り手の関口は(本人は否定してるけど)明らかに「狂い」である。
    「狂い」の視界を通してしか読者は物語を追えない。
    でも関口の偉いところは、自分を受け入れ、正常に向かおうとするところだ。
    そこは前向きなのだ。
    だから私は共感できる。
    で、京極堂は、友人が「狂い」だと知っていて、とことん関わる。
    なにこの包容力。ちょっと優しすぎじゃない??(惚れてる)

    事件が起こって、榎木津という「探偵」が出てくるの、冒頭でいかにも京極堂が探偵役っぽいポジションに収まってるので、意外性を呼んでいる。
    で、榎木津のキャラクターがまたイイ。お育ちの良い不思議ちゃんだけど、実は非常に常識的で精神がマトモである。
    この探偵が謎解きの手続きをすっ飛ばして一気に正解にたどり着き、一方で京極堂は事件の構造をとことん解説する。結局オマエが探偵役なんかい!っていう二重構造がまたイイ。

    主要登場人物がみんな魅力的で、個々のキャラが立ってて、ストーリー構造が堅牢で、私が個人的に大好物の30代ボーイズだらけなのが最高である。
    本の厚みなんて全く気にならないし、続編も読みたいし、普段あまり再読しないのにすぐ再読してしまった。
    京極夏彦、凄いわ。


    (追記)
    本作品を読んでシリーズ続きを読もうと思った方々。後のシリーズで予想以上に本作品の内容が絡んでくるので、事件の概要や登場人物についてしっかり記憶しておくことをお勧めします。

    • 土瓶さん
      こんにちは。
      「巷説百物語」と「続巷説百物語」も絶品ですよ。
      こんにちは。
      「巷説百物語」と「続巷説百物語」も絶品ですよ。
      2021/01/05
    • ゆうすいさん
      コメントありがとうございます!
      『巷説百物語』は絶賛積読中です(笑)。
      大切に読んでみますね。
      コメントありがとうございます!
      『巷説百物語』は絶賛積読中です(笑)。
      大切に読んでみますね。
      2021/01/05
  • はじめて京極夏彦の著作に触れたのは『魍魎の匣』で、これは二作目となる。この順番でよかった。『魍魎の匣』という一分の隙もない仕事の虜になっていなければ、この煉瓦書の大部分を占める膨大な前振りに耐えられなかったに違いないから。

    この本を繙いたのは遅まきながら漸く触れた『魍魎の匣』に圧倒され、ネットを調べた際に『魍魎の匣』以上に支持されていると某所で紹介されていたから。なるほど、特に2年もの間身籠り続けた女性の解放の場面は凄まじく、予想を上回る衝撃を受けたもので、本書を読んだ価値は大いにあった。

    ところで週刊少年ジャンプを長く読んでいた私には、同誌で連載していた怪作『魔人探偵脳噛ネウロ』が京極流を少年誌掲載作として翻案したものとみて間違いないだろうという印象が強かった。もちろん大雑把に「京極のパクリ」と括れる作品は無数にあるわけで、それだけ京極堂の仕事は凄まじかったわけで、何かを糾弾したり嘲笑したりしたいわけではない。ただ『魍魎』以上に『姑獲鳥の夏』の構造、特に憑物落とし以降の<犯人>の精神状態のカラクリはそのまんまだったのだ。

    「イエ」を縦に繋ぐ「遺伝病」の系を、医学的・科学的に解体しながら生理的な幻惑を編み上げ、京極の術で祓い落とす美技は、軽妙の粋をあくまで装いながら堅実の極みでしか成しえぬもので、ある種技芸の理想だろう。読み終えてから時間をかけて反芻し、物語を組み立てなおしていく過程でさえも何度溜息を吐いたかわからない。まったく恐れ入谷の鬼子母神と、誰もが口ずさんだだろう。私もそうだ。半端ないわ。なんもいえねえ。

  • 驚異の良作である。
    冒頭は京極堂の価値観について延々とかたっているが、
    飽きさせず、それでいてなお物語の中に引き込んでゆく
    京極さんには天晴れです。
    「姑獲鳥の夏」というタイトルに似合わず全然妖怪が出てこぬではないか!
    と、思うかもしれないですが、最後、上手に妖怪を登場させています。
    本の太さに驚くかも知れませんが、時間があれば是非どうぞ

  •  民俗学やら心理学やら、薀蓄満載でとても濃厚だった。その薀蓄が、ストーリーの前提になっているので、他のミステリーと比べて少し骨が折れるところはあるかもしれない。小説以外の本をあまり読みたがらないくせに知識だけはいろいろと欲しがる私としては、結構ありがたい作品だった。

     人間は自分の都合のいいように世界を認識する、というのはわかったけれど、登場人物のひとりひとりが作者の都合のいいように出来すぎている気がしないでもなかった。
     それでも、そのひとりひとりが持つ濃密な背景が複雑に絡み合って出来た巨大な謎が解き明かされていく様は、硬く閉じた蕾が少しずつ緩んで、大輪の蓮の花が咲くような、そんな絢爛さを感じた。

     連綿と続くミステリ小説の歴史の中でも、関口はアンリライアブル・ナレーターの際たるものだろう。彼がいるからこそミステリは生まれるが、逆に言えば彼さえいなければ(久遠寺家を訪問したのが榎木津と敦子だけだったら)、こんなこじれることなかったんじゃ……(笑)でもまあ、真実が白日の下にさらされるためには、京極堂のアレが必要だったわけか。。。

  • 遂に手を出してしまった。
    この分厚く読むのにヘビーな作品は、学生の頃から気にはなっていたが何となく避けていた。
    でも書店で読みたい作品が見つからず遂に手を出してしまった。
    長々と続く中尊寺の話は流石に碧碧とする所はあるが、やはりストーリーは面白く読者の期待を裏切らない。
    現実離れしていると思った部分が、中尊寺の推理で現実化する所は上手いと感心はした。
    いずれ他の作品にも触手が伸びるのだろう。

  • 確かこの本を最初に読んだのは20年近く前だった。このシリーズの初読、「魍魎の匣」に次ぐ衝撃だった。
    そこから何度読み返しただろう。

    とは言えここ数年は家の本棚で他のシリーズとともにただ幅をとっていた。(とは言え他に比べたら全然スリムだけど)
    今回めちゃくちゃ久しぶりに読み返して思ったのは、想像以上にこの本からわたし、影響を受けていたんだなぁということ。
    とりあえず、90ページまでの関口と京極堂の会話内容が、勝手にわたしの人生の指針になってる気がする。
    特に脳と心と意識の関係については、自身のメンタルを穏やかに保つ秘訣になっているなぁ。
    あと、量子力学については、20年以上経って少し内容が解るようになっていて
    あの頃はチンプンカンプンだったけど20年分は成長したんだなぁと少しだけ自分を褒めたくなった。

    さて、肝心の内容。(以下、若干ネタバレ)

    もちろん話の筋は全て覚えていたし、
    オチについてだけなら今となってはなんら珍しいモノでもない。正直なぜ登場する人物はみなその可能性に至らないのかとも思えてしまうのだけど、
    昔は夢中でページをめくって貪り読んだことも同時に思い出した。
    今回読み返して、もの凄い情報量と、ドラマチックな描写、魅力的なキャラ造形、それこそ最初の90ページにわたるあのたわいなさげな会話が全て事件に収束していく筆力は、圧巻の一言。
    でもやっぱり若い頃、最初に読んだ、
    あの衝撃は超えられない。

    10数年前に、映画化されて、
    わくわくしてレイトショーを観に行ったことも思い出したな。
    …あ、
    そう言えばあの後から読み返してなかったかも(笑)

    とりあえず、また新刊が出ているようなので、
    久しぶりに追いかけようかなと思っている次第。

全1599件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家、全日本妖怪推進委員会肝煎。94年、『姑獲鳥の夏』でデビューする。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞を受賞。著書に『幽談』『冥談』『眩談』『鬼談』『ルー=ガルー』『南極(人)』『厭な小説』『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』 『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『遠野物語拾遺retold』 ほか。

「2021年 『虚談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

京極夏彦の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
ツイートする
×