天空の蜂 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (634ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062639149

作品紹介・あらすじ

奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上。日本国民すべてを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非情の決断とは。そしてヘリの燃料が尽きるとき…。驚愕のクライシス、圧倒的な緊迫感で魅了する傑作サスペンス。

感想・レビュー・書評

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  • 東野さんが書いた原発のテロに関しての本。先に映画を見て、面白かったので原作を読むことにした。 分厚い本だったが意外とすぐ読み終えることができた。何度でも読み返せる本だ。

    私は原発の無い地域に住んでいて、原発について考えることが無かった。だが、「原発の仕組みは国民全員がある程度は勉強するべきだ」という言葉で意識が変わり、日本人にとって原発はどういうものなのか気づいた。私はいつでも電気がある暮らしをしているのに原発について無関心だった。

    この本が書かれたのが1995年だ。東日本大震災が起こる前にこんな作品を書いた東野さんに感心した。震災から10年経ったが、原発という蜂に刺されて知った痛みを忘れてはいけない。素晴らしい本だ。

  • 原発を題材にしたサスペンス小説。
    原発やヘリコプターなどの描写がかなり詳しく書かれているが、かなりくどい印象を抱いてしまった。もう少しミステリーや人間ドラマに重点を置いても良いのかなと思った。だがその分臨場感も伝わりノンフィクションに近いエンタメ感があってとても面白かった。
    福島第一原子力発電所の問題が出る10年以上前に出されたとは思えないほどリアルで、預言書かとも思えるような作品。
    原発についてまだまだ理解が追いついて折らず、知らず知らずのうちに目の前にある問題から目を背けてしまっている。その恐ろしさを知るには痛い目に『蜂に刺され』る必要があるというメッセージはとても強く伝わってきました。それを象徴する三島の最後の台詞『『新陽』に落ちたほうがよかった。そのことにいずれみんな気がつく』はまさに今の現状を表わしているのかなと思いました。

    この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
    湯原一彰:津田健次郎
    山下:安元洋貴
    赤嶺淳子:日笠陽子
    中塚一実:小山力也
    金山滋:玄田哲章
    室伏周吉:山寺宏一
    上条孝正:松岡禎丞
    三島幸一:中村悠一
    雑賀勲:杉田智和

  • 近所の図書館にある東野さんの小説の中で
    面白そうなものをピックアップ。

    こちらは、原発のはるか上空から
    制御不能の巨大ヘリコプターを墜落させるというテロ小説。
    しかもそのヘリには子供が乗り合わせていた…という設定。
    この手の小説ではお決まりのように
    冒頭は犯人の以降に翻弄される警察や原発関係者、
    物語後半から少しずつ犯人のトリックが明らかにされていき、
    収束に向かっていくというストーリーです。

    犯人への辿り着き方に若干の無理とラッキー(偶然)が
    含まれ過ぎているような気もしましたが、
    それでもどんな風に話が展開していくのか
    ドキドキしながら読み進めていました。

    著者は理系出身だけあって、
    原発関係のリサーチもかなりした上で、
    この物語を書いていることが読めばよく分かります。

    恐るべきはこの小説が出たのが1995年。
    同時多発テロも福島の原発事故もまだ起こっていない時代に
    ここまで原発の安全性とテロについて考えるきっかけを
    与えるような小説を著者が出したことでしょうか。

    映画も出ているみたいで、興味があるのですが、
    こういう系のストーリーは映像で見た方が
    楽しめるのでしょうが、
    映画は物語がはしょられていて、
    オリジナルの面白さが失われていそうな懸念があって
    ちょっと見るのを躊躇してしまうなぁ。。

  • 原発に纏わる物語。福島の事故よりも前の小説。
    子供を乗せたまま盗まれたヘリコプター。原発の上空でホバリング。墜落を阻止することは出来るのか。スリリングな展開と、原発に向き合う人間のドラマ。タイムリミットと条件に追い込まれるギリギリの活劇が描かれる。

    国民が気づき、考えることを求めた犯人。福島の事故を思わずにはいられない。もう人の手に負えないものになっているのだろう。皆が考え、選択していくこと。

  • 「蜂には一度刺された方が良い。」
    重たいですね。
    死なないけど、思い出す位の痛みでないと本気で考えないから。
    自分も沈黙の群衆になっているのだと、気づかされました。

  • 2021(R3)8.26-8.31

    2014年に、仕事の関係で、ある原発の見学をしました。一般では入れない所まで案内していただき、原子炉の予想以上の大きさに驚くと共に、自己を未然に防ぐための仕組みが何重にも施されていることを知りました。加えて、ちょうど防波壁を建設中で、その巨大さにも驚きました。電力会社の方の説明にも力が入っていて、必死に原発の必要性をアピールしていました。

    電力に何ら関わりのない仕事に就いている私たちを見学させてくださったのは、原発の安全性を周知してもらうためにほかなりません。それも、2011年の福島第一原発事故があったから故です。この事故で日本における原発の安全神話は崩壊しました。
    しかし、それまでは「日本の原発では事故は起きない」が一般的な概念だったと思います。

    本書でも、そんな「原発神話」が随所に出てきます。それもそう、初版は1995年。それを知ってビックリ!東日本大震災前なのか!

    物語の「縦糸」は、苦悩する原発側の人間、犯人を追う警察、時々出てくる犯人の三者から描かれるサスペンスなのですが、根底に流れている「横糸」は、「原発に対する東野圭吾からの問い」」なのだと思いました。
    私自身は「必要悪=ない方がよいが、ないと困る」。そんな身勝手な立場です。常に携帯やタブレットを充電し、職場でも自宅でもエアコンを付け、PCを触っている。スイッチ一つでいくらでも電気が使える。でも、その向こうにある、火力・水力・原子力・自然エネルギーでの発電の在り方を、もっと真剣に考えなくてはいけない。
    物語のラストのラストに、ある人物が放った一言は、2011後を生きる日本人一人一人が受け止めていかなければいけない一言のように思いました。

  • 奪取された自動運転ヘリコプターとそこに閉じ込められた子供。
    転落するであろう場所は原子力発電所の真上。
    墜落の阻止と子供の救助に奔走する人達のサスペンス。
    物語の展開はスリリング。どういう結末を迎えるか予想できない程。
    ただ専門知識と用語も多く。理解出来ずに端折った場面もありました。
    自分的にはもう少しわかり易い物語の方が向いてたかな。

  • ヘリコプターが乗っ取られて原発に墜落させると脅され、それを解決するまでの作品。個人的には途中、中弛み感があったが、最後はさすが東野作品と感心させられる結末で面白かった。

  • 社会派サスペンスミステリーというのかな?
    ヘリのコントロールとか、原発の仕組みなどなど、理系だなあという緻密さ。
    三島さんが気の毒すぎた…

  • 原発の存在。
    新たな社会派ミステリー!
    長編やったけど、あっという間に読めた!
    面白かったー。

    難しい機械類の名前がたくさん出てきたり、物理学的な内容もあったので、映像化も是非見たいところ!

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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