警視の死角 (講談社文庫 く 32-5)

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  • Amazon.co.jp ・本 (620ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062639644

作品紹介・あらすじ

高名な詩人の死に疑いを抱いた警視キンケイドの別れた妻。疑惑を告げに来た彼女が殺され、警視は恋人のジェマ巡査部長と共に捜査を開始した。連続殺人の様相を深めてきた事件を追う二人の前に三十年前の美少女失踪事件との関連が浮かびあがってきた。大好評の警視シリーズ最高傑作と評される第五弾。

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ5作目。
    恋人同士になった警視ダンカン・キンケイドと部下の巡査部長ジェマ・ジェイムズ。
    もともと仕事仲間として名コンビでお似合いだが、同僚であることと離婚経験からお互いに慎重な面もある。
    ジェマには幼い子供もいた。

    キンケイドの方は一方的に妻に去られて11年。
    突然、別れた妻ヴィクから連絡が来る。
    警官としての彼に相談したいことがあるというのだ。
    ジェマは面白くないが…

    大学で研究をしているヴィクは生き生きしていたが、再婚した夫イアンは出奔中。なんと教え子の女子大生とハワイにいるらしい。
    研究対象の詩人リディアの草稿や手紙が巧に書かれています。
    ちょっとヴァージニア・ウルフを思わせる女性詩人で、もっと若くウルフを崇敬していたという設定。何度も自殺を試みて、ついに死んでしまったという。
    なぜか遺産は、ずっと前に離婚した夫に残していた。
    その夫モーガンや、若い頃からの友人が大学近くに住んでいるため、ヴィクはインタビューを重ねていく。
    未発見の詩の草稿を見つけ、その内容と前後のいきさつから、自殺ではないのではと疑い始めたのだった。

    ダンカンは当時の調査資料を見せて貰い、確かに不審な点もあると感じた。
    大学町の美しい風景など、しっとりした描写も多い。
    大学仲間の登場人物も個性的。
    知的な女性がこれほど何人も出てくる小説も珍しいでしょう。
    そしてそれらが吹っ飛ぶほどの大事件。
    ヴィクが突然心臓発作でなくなり、毒殺も疑われる。

    そして、遺された11歳の息子キットは、実はダンカンの子供だったのだ。
    葬儀に訪れたダンカンの母は、一目でそれを見抜く。
    ヴィクの母ユージニアは気むずかしく性格に問題があり、さらにひどくなっている様子。
    祖父母に引き取られたキットが、ダンカンは心配でならない。
    キットは家出してしまい…

    2010年7月登録。
    もっと前~ブログを始める前に読んだので、メモがありませんでした。
    ここからとても良くなったので、再読。

  • キンケイドの元妻が伝記を書いている詩人の死に疑問を持ち、捜査を頼んできた。
    一旦は軽くあしらうキンケイドだったが、元妻が殺されたことで独自の捜査に乗り出す。

    事件が起こる前提を描いた1部と、事件そのものを描いた2部で読み応えたっぷりの600ページ。
    複雑な人間関係とそこに派生する感情を細やかに表していて、クロンビーのストーリーテラーぶりが十分発揮されている。
    キンケイドの元妻に出現に心乱れるジェマ。いきなりとてつもない現実を突きつけられて戸惑うキンケイド。
    二人の感情が事件の捜査に合わせて丁寧に描かれていていいなぁ。
    そして事件の捜査も巧く絡ませてあって、夢中で読んでしまった。
    ほんの些細な脇役の生活まで見えるような小説って、貴重だと思う。
    次の巻へと、どんどん手が伸びてしまうシリーズ。

  • 警視キンケイド・シリーズの第五作。

    ようやくキンケイドとジェマの関係が安定しそうかと思ったら、
    再婚した元妻が連絡をして来た。
    伝記を書こうとしている女流詩人の自殺を疑い、
    調べてほしいと。

    一応頼みに応じて調べるが、
    すでに終わった捜査を覆すほどの証拠は何もない。
    もちろんジェマは心穏やかではいられない。
    ところが、元妻は死んでしまう。
    病死なのか、殺人なのか。

    ディテールはよく読み飛ばしてしまうが、
    詩人が母親に書いた手紙が印象的だった。
    詩人の気持ちを、人生を、生き生きと表現していた。

    最初のほうで、
    ある娘が行方不明になったままの話には気が付いたので、
    なんとなく着地点は見えていた。

    猫はあまり好きではなかったようだが、
    シドはかわいがっているようで良かった。

    再婚後に生まれた元妻の息子が、
    キンケイドの息子だとわかり、
    今後の二人がどうなるのか気になる。

  • 主人公キンケイドの元妻の死。突然の身内との永遠の別れ。思うだけで身につまされます。事件は過去にさかのぼり、元妻が調べていた詩人の死とも関連が見つかり、ミステリーとしてもなかなか楽しめました。

  • 警視キンケイド・シリーズ第5作。

    キンケイド警視の先妻ヴィクトリアが登場。過去の作品ではキンケイドの回想シーンに名前が何度か出ていたものの、人となりがよくわからずにいた。ところが、やっと読者にその姿を見せてくれたと思ったら、意外な展開が待ち受けていて……。

    今回の舞台はケンブリッジ――古くからの有名な大学町だ。イギリス気分が大いに味わえるのではないかと期待したら、肝心の風景描写が少なくてちょっとがっかり。

  • ダンカン・キンケイド警視の元に、別れた妻ヴィクトリアからの連絡があったのを、ジェマは快く思ってはいなかった。十年以上も前に、自ら、ダンカンから去っていったはずなのに、今更、どうしたというの? ヴィクトリアは大学の英文学の講師で、今はある女性詩人の伝記を執筆中だという。そして、その調査の中で、自殺したと思われていた詩人が、実は誰かに殺されたのではないか、という疑惑を持ち、警官である別れた夫に助けを求めたというわけだった。すでに、地方の警察で自殺と断定されて処理された件を、キンケイド警視も蒸し返すつもりはなかったが、どうも怪しい点を見逃せないまま、ジェマを連れて、個人的に調査を始めようとした矢先、再び事件が起こり・・・?◆キンケイド警視シリーズ第5作目です。すでに、恋人同士として過ごすようになったジェマとキンケイド警視。しかし、そこに、離婚以来、音沙汰も無かった元・妻から、キンケイド警視に連絡が入り、ジェマは心穏やかではありません。湧きあがる嫉妬を抑えつつ、キンケイド警視の無神経さに、さらに腹を立ててしまうあたり、本当に、この二人は素直じゃないというのか、ダンカンが鈍感すぎるというのか・・・(まあ、男性はえてして、こんなものでしょうが)。今までのシリーズ作中でも、別れた妻のことは、ヴィクという名前ぐらいしか出てこなくて、ジェマ同様、読者も、彼女のことをキンケイド警視を捨てたひどい女!と思っていたはずなんです。でも、作者はひどい。彼女、ヴィクトリアの視点で語られる文章を読んで、こんな素敵な女性だったなんて、と驚くと同時に、偏見を持ってしまっていた自分が恥ずかしくなってしまうくらい。今までのシリーズでも、巻を重ねるごとに、親密さを深めてきたジェマとキンケイド警視の関係ですが、今作では、読者がまったく思いもしていなかった方向へと話が進みます。そして、やっぱり、ヴィクトリアや女性詩人リディアを通じて語られる、女性の哀しさの描き方には、とても心揺さぶられます。このシリーズは、特に、大人の女性に読んで欲しいミステリ、という思いは、今作で一層、強まるのです。

  • このシリーズ、どんどんおもしろくなっていく気がする。絶版なのが本当にもったいない!かなり長いのだけれどまったくダレずに読めるし、殺人にかかわる人間関係は複雑なのだけれどもわかりにくかったりはしなくて、どうでもよくもならなくて(笑)、最後までドキドキ。今回は、自殺したとされる詩人の若き日々や交友関係などが描かれていて、芸術的、文学的な雰囲気が味わえるし、舞台がケンブリッジ大学なのでアカデミックな雰囲気も。そして、主人公キンケイドの過去もからみあって、とにかくおもしろいー。あまりにもおもしろかったのですぐ続けて次の作品を読みはじめている次第。次作を待たずに読めるところが遅れて読むいいところだな、と。このシリーズ、ユーモアでもコージーでもなく、文章も落ち着いていて淡々とした感じなんだけれども、いかにもイギリスらしい、お茶の場面とか、自然風景の描写などがすごくここちよくて。ききこみに行ってお茶をごちそういなったり、パブでランチをとったり、ティーサロンでアフタヌーンティーしたり。読んでいるとクロテッドクリームとジャムをそえたスコーンを食べたくなります。

  • ?1997

  • シリーズ5作目。登場人物のバックボーンが丁寧に描かれている。シリーズならではの楽しみかも。

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著者プロフィール

米国テキサス州ダラス生まれ。後に英国に移り、スコットランド、イングランド各地に住む。現在は再び故郷・ダラス近郊で暮らす。代表作のダンカン・キンケイドとジェマ・ジェイムズのシリーズは、米英のほか、ドイツ・イタリア・ノルウェー・オランダ・ギリシア・トルコでも翻訳され、人気を呼んでいる。

「2023年 『警視の慟哭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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