- Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062645607
感想・レビュー・書評
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S&Mシリーズ二作目。前作の『すべてがFになる』もそうですが、本作も理系ミステリーの魅力爆発です。
本作もある大学の研究室内で起きた密室殺人事件をテーマにしています。森博嗣先生のデビュー作『すべてがFになる』は、真賀田四季博士の存在が強烈すぎて密室殺人事件だったことをすっかり忘れていましたが(笑)。
そもそも「理系ミステリー」って何なんでしょうか。
ネットで調べると『理系ミステリーとは、題材やトリックに科学や生物学など、理科系の学問を使ったミステリー』となっています。理系ミステリーで有名なのはこの森博嗣先生の『すべてがFになる』に続くS&Mシリーズや東野圭吾先生のガリレオシリーズですね。
実を言うとガリレオシリーズは『容疑者Xの献身』しか読んだことがないので、ガリレオシリーズが理系ミステリーだっていうのはあまりピンときてません←。
本作を読んでみて、やっと、理系ミステリーとはなんぞやということが分かりましたw。
通常のミステリーでは、殺人事件が起こって、刑事や探偵がやってきて、現場や被害者、被害者の家族や交友関係のことを調べていき、数々の参考人や目撃者から話を聞いて、犯人を見つけていくという流れになるかと思います。
本書では、密室殺人事件が起こって、主人公の犀川先生や西之園萌絵が探偵役として事件を調べていきます。
ここから通常のミステリーと理系ミステリーとの違いが分かれます。
理系ミステリー(少なくとも本書の犀川先生の推理)は、警察でいうところの「鑑の捜査」をしないんですね。
「鑑の捜査」とは、被害者の身辺調査や犯行動機の捜査や目撃者・参考人からの聴取やその場所の土地鑑を有する者なんかを捜査することです。
犀川先生や西之園萌絵は、殺人事件の起こった状況から、
この殺人を実行することが可能な人物は誰か?
という命題だけで、捜査を進めていきます。
この方法は、通常のミステリーしか読んだことがない人にとっては、とてつもなく限られた手がかりだけで捜査をしている様に感じます。
例えるならば、算数の文章問題で
ある大学の実験室の中でケンジロウ君が死んでいました。その奥の実験室ではタマコさんが死んでいました。二人とも背中にナイフが刺さっています。他の部屋には、大学の先生や他の学生がいました。この実験室は鍵がかかっていて、出入りするには特別な手続きをしなければなりません。この二人は誰に殺されたのでしょうか。なお、この二人とこの建物内にいた他の人々との間には特別な関係はないものとします。
みたいな感じです。
つまり、捜査の基本である被害者の身辺調査も詳細な鑑識活動も無しという状況で犯人を割り出していくのです。
犀川先生の天才的な推理によって、現場の状況から犯人が誰であるかという問題を証明していく。
そう、殺人事件の犯人は誰であるかを『証明していく』って言葉が一番この犀川先生の推理方法を語るときにしっくりくる言葉だと思います。
結論的にいうと、本書、面白かったです。
もちろん、犯人が割り出された後は、動機とかが解明されますが、それはあくまでおまけみたいなもの。犀川先生の『証明方法』を楽しむのがこのS&Mシリーズの醍醐味なんですね。
そして、いちいち犀川先生の言葉が小気味良いんですよ。
本書で僕が一番良かったと思った犀川先生のセリフは、「数学が何の役に立つのか」という答えに対して犀川先生の答え、
『だいたい、役に立たないものの方が楽しいじゃないか。
音楽だって、芸術だって、何の役にも立たない。
最も役に立たないということが、数学が一番人間的で純粋な学問である証拠です。
人間だけが役に立たないことを考えるんですからね。』
うん、格好いい。萌絵じゃなくても犀川先生に惚れちゃいますね(笑)。
犀川先生と西之園萌絵の恋愛の行方も楽しみですし、このS&Mシリーズはゆっくりと楽しんでいこうと思います。 -
S&Mシリーズ2作目。
今回読み返してみて思ったのが、
この作品の影響を無意識に受けていたんだ
ということ。
人を待たせるのは人の時間を奪うこと、
問題を解くことより出すことの方が難しいこと、
この2点は特に今の私に根付いていて、
犀川先生の受け売りだったことを思い出して
びっくり。
今作も前作同様、
知的な会話を繰り広げていて楽しい。
ただ、今作はいつものコンビS&Mだけでなく
犀川の友人の喜多が出てくる。
この犀川と喜多の会話もまた面白い。
萌絵のときは教師然といった、
どうしても上下の関係を感じさせるけれど、
犀川と喜多は対等で会話が軽い。
会話はかなり知的なのに少し少年っぽさすら感じる。
それが新鮮でより楽しめた。
印象的な台詞は
「最も役に立たないということが、
数学が一番人間的で純粋な学問である証拠です。」
の部分。
学生の頃、なんでこんな無駄なこと学ぶんだろうと
考えていた自分が、ちょっと救われた感じ。 -
前作「F」の真賀田四季という人物があまりに人間離れしていたので少し身構えていましたが、今作は非常に人間味が溢れた人物が犯人であり、心情も理解しやすく少しビックリしました。とはいえ、肩透かしだったかというとそのようなことはなく、論理的に組み立てられたトリックが明かされる流れは非常に魅力的であり、大満足の一冊です。
また、前作でも感じましたが、登場人物が非常に魅力的で素晴らしいですね。特に今回から登場した喜多先生は、犀川先生とは真逆の性格でありながら気のおけない友人であり、同レベルの高度なやりとりができる人物として、とても好きなキャラクターです。(途中まで犯人かも知れないと思っていたので、気が気じゃありませんでしたが…)おそらくシリーズのキーパーソンの一人だと思うので、今後の活躍が楽しみです。 -
「マイナス二十度でビールを飲むかい?」
同僚の誘いで低温度実験室を訪ねた犀川助教授と学生の萌絵。だがその夜、衆人環視かつ密室状態の実験室で男女二名の大学院生の死体が発見されて──。S&Mシリーズ第二作!
キンキンに冷える実験室で、背筋も凍る殺人事件が巻き起こる!監視下にあった密室という硬い氷を溶かした先の真実。その部屋は冷えていないはずなのに、真実で満たすほどに心の底から冷気が立ち上ってくるような狂気と哀愁を感じた。物理的な冷たい密室から、心という冷たい密室へスライドする構成が上手い。
犀川と萌絵のかけ合いに同僚の喜多も加わっての会話劇も冴えわたる。犀川の容赦ない推理ダメだしが面白い。あのデニーズでの会話を隣の席で聞いていたい(笑) そのダメだしを突破するため、萌絵の有り余るほどの行動力にもヒヤヒヤ。犀川の思考や哲学は背中から肩を叩かれるような気持ちよさがある。問いを立てて答えを導くのは、哲学も科学も変わらないのかもしれない。
p.11
犀川は、自分の授業でも試験は一切しない。問題を解くことがその人間の能力ではない。人間の本当の能力とは、問題を作ること。何が問題なのかを発見することだ。
p.238
「責任と責任感の違いがわかるかい?」しばらくして、犀川が言う。
「字数が違うわ」萌絵は咄嗟に冗談を言った。
犀川は笑わない。
「押しつけられたものか、そうでないかの違いだ」
p.399
「犀川先生なら、どう答えられますか?」国枝桃子が無表情で尋ねた。「学生が、数学は何の役に立つのか、ときいてきたら」
「何故、役に立たなくちゃあいけないのかって、きき返す」犀川はすぐに答えた。「だいたい、役に立たないものの方が楽しいじゃないか。音楽だって、芸術だって、何の役にも立たない。最も役に立たないということが、数学が一番人間的で純粋な学問である証拠です。人間だけが役に立たないことを考えるんですからね」 -
S&Mシリーズ。冷凍実験室の奥の部屋に、それぞれ男女の死体。また、天井裏から白骨死体と結構ガチ目の本格ミステリ。久しぶりに読んだが、このシリーズは本当に面白い。結構ハイペースで新刊が出ていて、講談社ノベルスを楽しみにしていたのを思い出す。哲学的な会話やジョークも心地よい。
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理系ミステリィの金字塔・S&M2作目。
すべてがFになるを読んでずいぶんとなるけど、最近のミステリィ熱に絆され、ついつい手に取ってしまったが、面白い。
理系チックな妙に捻くりまくっている文章は好き嫌いが分かれるだろうけど、僕は好き。
犀川先生の「役に立たないものの方が楽しい」というセリフが非常に良い。音楽を聴く、映画を見る、それこそ本を読む、役に立たないし、人類の発展に何ら寄与しないけど、それでも楽しいからやめられない。
フロッピーディスク(笑)。
時代感じる。。
3作目も楽しみだ! -
すべてがFになるほどの衝撃はなかったが、面白かった!割とわかりやすくまとまっていて、本格ミステリーの要素が満載だったが、それが森博嗣ぽくないと感じた。
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事件の話に入るまではダラダラ読んでしまったけど、それ以降はサクサク読めた。面白い。3作目も早く買いに行こう。
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最近読み始めた森博嗣S&Mシリーズ二作目。
密室殺人。犯人の供述一切なしに状況証拠と推理だけで犯行動機までを推察してしまうところがさすが犀川先生。
萌絵の行動にハラハラさせられるし、意外な場面でのキスが意味深。 -
面白い
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シリーズ2巻目。犀川先生と、もえちゃんのコンビにますますはまっちゃった。
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"学問の虚しさを知ることが、学問の第一歩"
これは学生時代に読みたかった… -
「すべてがFになる」に比べ、今回のは一般的なミステリーというかんじ。面白いことには変わりないけど、動機が現実的だったり事件が起きるのもS&Mの身近だったり。
極地研究室は前に実際見学したことがあるので、少しだけど理解しながら読み進められた。
犀川先生と萌絵の関係が少しずつ進むみたいでそっちも楽しみ!というかきゅんきゅん。
他のミステリーと違って物理的な話で推理されていくし、今回のは消去法パズルみたいですごく理屈が通ってるというか。。感情論の喧嘩より理屈で話してる方が納得できるのと似たようなスッキリさがある。それは私が理系だからというのもあるかもしれないけど。
ただ、蓋を開けてみたら動機がすごく現実的で人によってはもっとドロドロした作品にもなりそうなものだったのでびっくり。 -
SMシリーズの第一作目を読んだ後、
もうやめようかと思った森博嗣。
でもやめないでよかった!
こちらの方が断然おもしろいです^^
理系の言葉を読み飛ばすのが上手くなったのかなぁ
だんだんと犀川助教授と西野園萌絵に惹かれてる自分もいます(笑)
うん、シリーズ読んでしまおう♪
素晴らしいレビュー、今回もじっくりひきこまれました(⁎˃ᴗ˂⁎)
私は理系ミステリというだけで鳥肌が立つんですが、なるほど!「...
素晴らしいレビュー、今回もじっくりひきこまれました(⁎˃ᴗ˂⁎)
私は理系ミステリというだけで鳥肌が立つんですが、なるほど!「証明していく」ということなんですね♪その言葉でなんだか一気に心がふわっと軽くなりました♪
ハードルが高く思っていたこのシリーズ、「証明していく」過程を楽しみながら、いつか、いつか…(笑)読んでみたいです✧*。(ˊᗜˋ*)✧*。
コメントありがとうございます!
今まであまり理系ミステリは読んだことがなく、しかも根っからの文系人間なのでコ...
コメントありがとうございます!
今まであまり理系ミステリは読んだことがなく、しかも根っからの文系人間なのでコンピュータプログラムを使ったトリックとかよく分からないのですが、森先生のミステリはそんな僕でも分かりやすかったです。
「証明していく」っていうのも読みながら、思いついた言葉なので、もしくるたんさんのお役に立てたのならすごくうれしいです。
このシリーズはもう20年以上前のシリーズなので、多少古さも感じますが、十分楽しめますよ。タイミングが合った時に、ぜひ読んでみてくださいね!