冷たい密室と博士たち (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.45
  • (455)
  • (1197)
  • (2335)
  • (168)
  • (21)
本棚登録 : 11472
感想 : 916
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062645607

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • S&Mシリーズ二作目。前作の『すべてがFになる』もそうですが、本作も理系ミステリーの魅力爆発です。
    本作もある大学の研究室内で起きた密室殺人事件をテーマにしています。森博嗣先生のデビュー作『すべてがFになる』は、真賀田四季博士の存在が強烈すぎて密室殺人事件だったことをすっかり忘れていましたが(笑)。

    そもそも「理系ミステリー」って何なんでしょうか。
    ネットで調べると『理系ミステリーとは、題材やトリックに科学や生物学など、理科系の学問を使ったミステリー』となっています。理系ミステリーで有名なのはこの森博嗣先生の『すべてがFになる』に続くS&Mシリーズや東野圭吾先生のガリレオシリーズですね。
    実を言うとガリレオシリーズは『容疑者Xの献身』しか読んだことがないので、ガリレオシリーズが理系ミステリーだっていうのはあまりピンときてません←。
    本作を読んでみて、やっと、理系ミステリーとはなんぞやということが分かりましたw。

    通常のミステリーでは、殺人事件が起こって、刑事や探偵がやってきて、現場や被害者、被害者の家族や交友関係のことを調べていき、数々の参考人や目撃者から話を聞いて、犯人を見つけていくという流れになるかと思います。
    本書では、密室殺人事件が起こって、主人公の犀川先生や西之園萌絵が探偵役として事件を調べていきます。
    ここから通常のミステリーと理系ミステリーとの違いが分かれます。

    理系ミステリー(少なくとも本書の犀川先生の推理)は、警察でいうところの「鑑の捜査」をしないんですね。
    「鑑の捜査」とは、被害者の身辺調査や犯行動機の捜査や目撃者・参考人からの聴取やその場所の土地鑑を有する者なんかを捜査することです。

    犀川先生や西之園萌絵は、殺人事件の起こった状況から、
      この殺人を実行することが可能な人物は誰か?
    という命題だけで、捜査を進めていきます。
    この方法は、通常のミステリーしか読んだことがない人にとっては、とてつもなく限られた手がかりだけで捜査をしている様に感じます。
    例えるならば、算数の文章問題で

      ある大学の実験室の中でケンジロウ君が死んでいました。その奥の実験室ではタマコさんが死んでいました。二人とも背中にナイフが刺さっています。他の部屋には、大学の先生や他の学生がいました。この実験室は鍵がかかっていて、出入りするには特別な手続きをしなければなりません。この二人は誰に殺されたのでしょうか。なお、この二人とこの建物内にいた他の人々との間には特別な関係はないものとします。

    みたいな感じです。

    つまり、捜査の基本である被害者の身辺調査も詳細な鑑識活動も無しという状況で犯人を割り出していくのです。
    犀川先生の天才的な推理によって、現場の状況から犯人が誰であるかという問題を証明していく。
    そう、殺人事件の犯人は誰であるかを『証明していく』って言葉が一番この犀川先生の推理方法を語るときにしっくりくる言葉だと思います。

    結論的にいうと、本書、面白かったです。
    もちろん、犯人が割り出された後は、動機とかが解明されますが、それはあくまでおまけみたいなもの。犀川先生の『証明方法』を楽しむのがこのS&Mシリーズの醍醐味なんですね。

    そして、いちいち犀川先生の言葉が小気味良いんですよ。
    本書で僕が一番良かったと思った犀川先生のセリフは、「数学が何の役に立つのか」という答えに対して犀川先生の答え、

      『だいたい、役に立たないものの方が楽しいじゃないか。
      音楽だって、芸術だって、何の役にも立たない。
      最も役に立たないということが、数学が一番人間的で純粋な学問である証拠です。
      人間だけが役に立たないことを考えるんですからね。』

    うん、格好いい。萌絵じゃなくても犀川先生に惚れちゃいますね(笑)。

    犀川先生と西之園萌絵の恋愛の行方も楽しみですし、このS&Mシリーズはゆっくりと楽しんでいこうと思います。

    • くるたんさん
      こんにちは♪
      素晴らしいレビュー、今回もじっくりひきこまれました(⁎˃ᴗ˂⁎)
      私は理系ミステリというだけで鳥肌が立つんですが、なるほど!「...
      こんにちは♪
      素晴らしいレビュー、今回もじっくりひきこまれました(⁎˃ᴗ˂⁎)
      私は理系ミステリというだけで鳥肌が立つんですが、なるほど!「証明していく」ということなんですね♪その言葉でなんだか一気に心がふわっと軽くなりました♪
      ハードルが高く思っていたこのシリーズ、「証明していく」過程を楽しみながら、いつか、いつか…(笑)読んでみたいです✧*。(ˊᗜˋ*)✧*。
      2019/07/19
    • kazzu008さん
      くるたんさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます!
      今まであまり理系ミステリは読んだことがなく、しかも根っからの文系人間なのでコ...
      くるたんさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます!
      今まであまり理系ミステリは読んだことがなく、しかも根っからの文系人間なのでコンピュータプログラムを使ったトリックとかよく分からないのですが、森先生のミステリはそんな僕でも分かりやすかったです。

      「証明していく」っていうのも読みながら、思いついた言葉なので、もしくるたんさんのお役に立てたのならすごくうれしいです。
      このシリーズはもう20年以上前のシリーズなので、多少古さも感じますが、十分楽しめますよ。タイミングが合った時に、ぜひ読んでみてくださいね!
      2019/07/19
  • S&Mシリーズ2作目。

    今回読み返してみて思ったのが、
    この作品の影響を無意識に受けていたんだ
    ということ。

    人を待たせるのは人の時間を奪うこと、
    問題を解くことより出すことの方が難しいこと、
    この2点は特に今の私に根付いていて、
    犀川先生の受け売りだったことを思い出して
    びっくり。

    今作も前作同様、
    知的な会話を繰り広げていて楽しい。

    ただ、今作はいつものコンビS&Mだけでなく
    犀川の友人の喜多が出てくる。
    この犀川と喜多の会話もまた面白い。

    萌絵のときは教師然といった、
    どうしても上下の関係を感じさせるけれど、
    犀川と喜多は対等で会話が軽い。
    会話はかなり知的なのに少し少年っぽさすら感じる。
    それが新鮮でより楽しめた。

    印象的な台詞は
    「最も役に立たないということが、
    数学が一番人間的で純粋な学問である証拠です。」
    の部分。
    学生の頃、なんでこんな無駄なこと学ぶんだろうと
    考えていた自分が、ちょっと救われた感じ。

  • 前作「F」の真賀田四季という人物があまりに人間離れしていたので少し身構えていましたが、今作は非常に人間味が溢れた人物が犯人であり、心情も理解しやすく少しビックリしました。とはいえ、肩透かしだったかというとそのようなことはなく、論理的に組み立てられたトリックが明かされる流れは非常に魅力的であり、大満足の一冊です。

    また、前作でも感じましたが、登場人物が非常に魅力的で素晴らしいですね。特に今回から登場した喜多先生は、犀川先生とは真逆の性格でありながら気のおけない友人であり、同レベルの高度なやりとりができる人物として、とても好きなキャラクターです。(途中まで犯人かも知れないと思っていたので、気が気じゃありませんでしたが…)おそらくシリーズのキーパーソンの一人だと思うので、今後の活躍が楽しみです。

  • 1999年作品
    多分、昔に読んだ気がする。段々、思い出したような感覚だった。
    殺意にはそれなりの理由がある。共犯者の納得の理由がある。被害者も同情できない理由もある。
    犀川先生の人間らしい結婚願望や嫉妬があり、楽しめる。

    私はトリックをさほど重視しておらず、楽しめればそれでいい。
    微分方程式(ラプラス変換)
    フーリエ解析
    行列式・行列変換
    複素数関数
    ベクトル解析を知らずに、生きてこれたら幸せだったかもな?

  • 「マイナス二十度でビールを飲むかい?」
    同僚の誘いで低温度実験室を訪ねた犀川助教授と学生の萌絵。だがその夜、衆人環視かつ密室状態の実験室で男女二名の大学院生の死体が発見されて──。S&Mシリーズ第二作!

    キンキンに冷える実験室で、背筋も凍る殺人事件が巻き起こる!監視下にあった密室という硬い氷を溶かした先の真実。その部屋は冷えていないはずなのに、真実で満たすほどに心の底から冷気が立ち上ってくるような狂気と哀愁を感じた。物理的な冷たい密室から、心という冷たい密室へスライドする構成が上手い。

    犀川と萌絵のかけ合いに同僚の喜多も加わっての会話劇も冴えわたる。犀川の容赦ない推理ダメだしが面白い。あのデニーズでの会話を隣の席で聞いていたい(笑) そのダメだしを突破するため、萌絵の有り余るほどの行動力にもヒヤヒヤ。犀川の思考や哲学は背中から肩を叩かれるような気持ちよさがある。問いを立てて答えを導くのは、哲学も科学も変わらないのかもしれない。

    p.11
    犀川は、自分の授業でも試験は一切しない。問題を解くことがその人間の能力ではない。人間の本当の能力とは、問題を作ること。何が問題なのかを発見することだ。

    p.238
    「責任と責任感の違いがわかるかい?」しばらくして、犀川が言う。
    「字数が違うわ」萌絵は咄嗟に冗談を言った。
    犀川は笑わない。
    「押しつけられたものか、そうでないかの違いだ」

    p.399
    「犀川先生なら、どう答えられますか?」国枝桃子が無表情で尋ねた。「学生が、数学は何の役に立つのか、ときいてきたら」
    「何故、役に立たなくちゃあいけないのかって、きき返す」犀川はすぐに答えた。「だいたい、役に立たないものの方が楽しいじゃないか。音楽だって、芸術だって、何の役にも立たない。最も役に立たないということが、数学が一番人間的で純粋な学問である証拠です。人間だけが役に立たないことを考えるんですからね」

  • S&Mシリーズ。冷凍実験室の奥の部屋に、それぞれ男女の死体。また、天井裏から白骨死体と結構ガチ目の本格ミステリ。久しぶりに読んだが、このシリーズは本当に面白い。結構ハイペースで新刊が出ていて、講談社ノベルスを楽しみにしていたのを思い出す。哲学的な会話やジョークも心地よい。

  • ■帯
    衆人環視の中、
    実験室で起きた殺人劇。

    完全密室。
    しかもマイナス20度。
    理系研究者たちの頭脳が
    導き出した真実は
    何を意味するのか?

    ■感想、レビュー
    大学の実験室で起こる殺人事件。
    犀川助教授と、萌絵は犯人を突き止めることができるのか。

    これは見取り図がありましたが、
    見慣れない、聞きなれない実験室と登場人物が登場し、
    何度も見取り図を見ながら、繰り返し確認していたため、読み進めるのに時間がかかりました。

    全く犯人はわからないし(私の頭じゃ無理でした。苦笑)、犀川先生は積極的に謎を解こうとする感じでもなく、むしろ萌絵がやる気になっているけど、犯人が見つかる気配なし。
    萌絵が危ない橋を渡りすぎてて途中、心配になりました。苦笑
    犀川先生が寸でのところで救出したからよかったものの。

    いつ犯人わかるんだろう…と不安に思っていましたが、最後はしっかり犀川先生が解決してくれました。

    この本は、おしゃれな殺人劇を見ているようで、怖くないというか、安心して読み進められるんですが、途中で萌絵がムチャをするから、思わずページをめくる手が進みます。

    当時のインターネットって、そこまで性能が高いわけではないと思いますが、事件に使用するっていう発想、方法がすごいな、って思います。

    そしてまだまだ続くこのシリーズ。
    せっかく読み始めたので、S&Mシリーズ制覇したいです!

  • 理系ミステリィの金字塔・S&M2作目。
    すべてがFになるを読んでずいぶんとなるけど、最近のミステリィ熱に絆され、ついつい手に取ってしまったが、面白い。
    理系チックな妙に捻くりまくっている文章は好き嫌いが分かれるだろうけど、僕は好き。
    犀川先生の「役に立たないものの方が楽しい」というセリフが非常に良い。音楽を聴く、映画を見る、それこそ本を読む、役に立たないし、人類の発展に何ら寄与しないけど、それでも楽しいからやめられない。

    フロッピーディスク(笑)。
    時代感じる。。

    3作目も楽しみだ!

  • 一作目が予想以上に面白かったので、続けて読んでしまいました。
    ドラマではこれが1話だったのですね。

    前作に引き続き、密室殺人です。
    これは密室殺人シリーズなのでしょうか‥?
    前作の舞台となった研究棟は頭の中で想像できたので、理解しながら読み進められましたが、今作は見取図がついているにも関わらず、想像の難しい建物でした。
    ほぼよくわからないまま読み進めたように思います。
    (見取図に記載されている「床レベル」ってなんだよ…)
    つくりがよくわからないことが純粋に楽しむことの妨げになっていたように思いますが、この部屋は中からしか開けられないとか、シャッターは人の目があるから出られない、とか位置関係を無視して考えると理解が進みました。

    前作でも思いましたが、犀川の頭が冴え出してから答えを教えてくれるまで、その説明の過程はちょっともったいぶりすぎというか引っ張るなあと思いました。
    説明も思わせぶりというか、いいから早く結論を!とじれったくなった部分がありました。
    これは犀川というよりは作者の性格?でしょうか。

    密室のトリックは面白かったです。殺人を行うための手順もなるほど、と思いました。
    それに比べ動機がちょっと軽いかもしれないですね。
    もっと木熊教授の自己犠牲による(歪んだ?)親子愛が強調されていると狂気があって私好みでした。
    この辺は登場人物が理系というところも関係しているのかもですね(理系=人及びその感情に興味がないというわたしの偏見です)

    実験室に閉じ込められた萌絵がPCを立ち上げ、暖をとりつつ、助けを求めるというシーンが好きです。
    助けを求めるのはともかく、暖をとるというのがわたしには全く思いつかなかったので、ははあ、頭がキレるというはこういうことか…と感心しました。
    わたしにとっては萌絵というキャラクターを表す重要なエピソードなので、ドラマでは確かこのシーンがなかったのが惜しいです。
    (犀川が神通力で助けにきた‥みたいになっていたような)

    他の小説や映画などでもありますが、犯人の一人称(とそれに近いもの)で観客を導くのはどうかと思います。
    "推理"小説と銘打っているのに、そのようにいくらでも隠したい部分を隠せる演出をしてしまうと、観客が"推理"できないですよね。
    そうする以外に技術がなかったのかしら‥?とも思えます。
    この小説だと、それまで犀川と萌絵の描写だったのが、突然市ノ瀬の描写になったところがヒントだったのかもしれませんが(確かにおや?と思いました。)

    前作ではフロッピーが登場して、おお、懐かしいと思ったのですが、今作ではカセットテープも出てきたではありませんか!
    shikaのメールを読むところ、95年とあって時代を感じました。

  •  S&Mシリーズの2作目。この作品も前作同様密室殺人がテーマの話であり、よく出来たトリックだった。ただ今回の密室は犯人が意図して完成させた密室殺人でないからこそ、解決が難しいものとなっていた点は新鮮で面白かった。犯人に関しては中盤くらいで消去法でほぼ察する事ができる。
     本作は前作と違い、殺人の動機が重視されているように感じた。親子の絆があったしても、タマコまで殺してしまうのはどうなのかと思うが、それに関して犯人の口から説明がないのがこの作品の良さでもあると感じた。近頃の小説は、読者に1から10まで全部説明してしまう作品が多いが、作者が1つの答えを持っていたとしても、それをそのまま書かず、読者の想像に委ねる方が作品としての面白さが増すと個人的に感じているので、この作品の終わり方は好みの終わり方であった。
     また、犀川と萌絵の関係が少しではあるが進展しようとしている点が良かった。この調子でいい関係になってほしい。

  • すべてがFになるほどの衝撃はなかったが、面白かった!割とわかりやすくまとまっていて、本格ミステリーの要素が満載だったが、それが森博嗣ぽくないと感じた。

  • 事件の話に入るまではダラダラ読んでしまったけど、それ以降はサクサク読めた。面白い。3作目も早く買いに行こう。

  • 最近読み始めた森博嗣S&Mシリーズ二作目。
    密室殺人。犯人の供述一切なしに状況証拠と推理だけで犯行動機までを推察してしまうところがさすが犀川先生。
    萌絵の行動にハラハラさせられるし、意外な場面でのキスが意味深。

  • 面白い

  • シリーズ2巻目。犀川先生と、もえちゃんのコンビにますますはまっちゃった。

  • "学問の虚しさを知ることが、学問の第一歩"
    これは学生時代に読みたかった…

  • 「すべてがFになる」に比べ、今回のは一般的なミステリーというかんじ。面白いことには変わりないけど、動機が現実的だったり事件が起きるのもS&Mの身近だったり。

    極地研究室は前に実際見学したことがあるので、少しだけど理解しながら読み進められた。

    犀川先生と萌絵の関係が少しずつ進むみたいでそっちも楽しみ!というかきゅんきゅん。

    他のミステリーと違って物理的な話で推理されていくし、今回のは消去法パズルみたいですごく理屈が通ってるというか。。感情論の喧嘩より理屈で話してる方が納得できるのと似たようなスッキリさがある。それは私が理系だからというのもあるかもしれないけど。
    ただ、蓋を開けてみたら動機がすごく現実的で人によってはもっとドロドロした作品にもなりそうなものだったのでびっくり。

  • SMシリーズの第一作目を読んだ後、
    もうやめようかと思った森博嗣。
    でもやめないでよかった!
    こちらの方が断然おもしろいです^^
    理系の言葉を読み飛ばすのが上手くなったのかなぁ
    だんだんと犀川助教授と西野園萌絵に惹かれてる自分もいます(笑)
    うん、シリーズ読んでしまおう♪

  • S&Mシリーズ第2弾で『すべてがFになる』の1年後を描いた作品。低温度実験室を訪れた犀川と萌絵が衆人環視かつ密室状態の殺人事件に巻き込まれる。

    評価点
    トリック
    →前作と比べると大きな疑問点はなく納得感のあるものだった。あと一歩で完全犯罪だったトリックが想定外の事象によってほころびを見せ、奇妙な空間を作り出していた部分が特に気に入っている。前作は死体発見時のインパクトが大きく不気味さのピークだったが、今作はトリック自体に(犀川の解説も込みで)不気味さが演出されており後半にかけて盛り上がっていった。また、一見無駄に思えた萌絵と喜多のガバガバ推理パートだったが、その推理から着想を得て犀川が一本のきれいなストーリーを紡いでいく構成も何気に好きだった。

    セリフ回し
    →前作に続いてシリーズ最大の魅力。クイズ形式で簡潔に心理を突くのが面白い。
    「責任と責任感の違いがわかるかい?」「数学が何の役に立つのか、ときいてきたらどう答えられますか?」「内緒と沈黙は、どこが違う?」に対する回答が非常に魅力的だった。

    疑問点
    終盤の展開
    →萌絵が夜中の研究室に侵入したり、犀川が犯人に対してメールを出したりこの2人にしてはアグレッシブな行動が目立った気がする。萌絵も犀川も殺されてもおかしくない場面になったので読んでいるときの心情としては緊張感があり盛り上がった場所であったのは確かなのだが、振り返ってみるとちょっとした違和感かもしれない。


    犀川と萌絵のコンビがより好きになった作品となった。今後も2人の動向に注目したい。

  • ”防寒スーツも鍵になりそう…”
    ”娘がいるんじゃない?”
    なーんて事を読みながら思っても、それ以上は考えず(推理せず)、犀川先生がどのようにどこに辿り着くのかが早く知りたくて読み進める方を優先してしまう。
    ここ数年で、見ていたものは見せられていたものだったと実感した。
    全てを疑問を持って見るように変わらなきゃと思っていて、そういう意味でも、明らかになる犯人や動機より犀川先生がそこに辿り着くまでのプロセスを読むのを楽しんでいる。

    結婚願望がありそうなのには驚いたけど、狼狽える犀川先生は面白い。
    そういう顔を引き出せるのは萌絵だけかもしれない。
    これからの二人も楽しみ。

    里帰りで第6弾まで購入してきたけど、面白くて一気に読んでしまいそう…少しペースを落とさなくては。

著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森博嗣の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部 みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×