密やかな結晶 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 2346
レビュー : 312
  • Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062645690

作品紹介・あらすじ

記憶狩りによって消滅が静かにすすむ島の生活。人は何をなくしたのかさえ思い出せない。何かをなくした小説ばかり書いているわたしも、言葉を、自分自身を確実に失っていった。有機物であることの人間の哀しみを澄んだまなざしで見つめ、現代の消滅、空無への願望を、美しく危険な情況の中で描く傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 小川洋子さんの長編では今のところこの作品が一番好きです。何度読んでも、この静かで脆く不安な世界もとても好きです。
    少しずつ、人々は何かを失っていき、何をなくしたのかも忘れてしまう島。鳥が消滅したときは鳥を放し、バラが消滅したときはバラを摘んで川に流し、小説が消滅したときは本や図書館を焼く…記憶を保ち、消滅したものを持ったままだと記憶狩りに連行されるとはいえ、狂気も感じます。カレンダーが消滅して、冬が終わらないところもなんだか好きです。
    今回は、おじいさんがとても優しく心強く感じられたので地震からの展開には泣いてしまいました。
    ものの記憶も、自分の身体の記憶も失っていく主人公と、記憶を失わない編集者のR氏がわかりあえないところもせつなかったです。
    主人公の消滅が穏やかなものだったので、自分の消滅もこんな甘美すら感じるものだったらいいなと思いました。

  • 大好きなバンドが解散した時に、そのバンドのボーカルの人が「終わりの物語」としてこの本をお勧めされていたので読みました。

    最初は「忘れる」人たちの「忘れる」という感覚を掴むのに時間がかかります。

    私個人はベルベットという単語の意味を知らず、なんだろう?と調べたら生地の種類のうちの一つという事を知りました。そのあと本を閉じ家事などをしていると「ベルベット」という言葉を思い出すことが出来ず、なんだっけ?なんだっけ?というとてももどかしい状態になりました。私は思い出せない単語が生地の種類だということを覚えていたので「ベルベット」という文字にまたたどり着くことが出来ました。けれども、この本の主人公たちは「消滅」が起きた瞬間その言葉が持つ「意味」も「言葉自体」も少しづつ無くして、思い出せなくなっていくのです。

    私は「ベルベット」の文字がどうしても自分の力では思い出せないあのもどかしさを無知のお陰で体験し、本来体験できない「忘れる人たち」の心情のかけらを感じ「忘れる人」「忘れない人」両方の気持ちを噛み締めながらこの本を読めました。

    基本的に自分は楽観的な人間なので、「きっといつか彼が隠し部屋から出てきて、主人公といっしょに秘密警察と戦うのだろう」という話を想像をしていたのですが、彼はいつまでたっても隠し部屋から出られず、この物語はふさわしいラストシーンが訪れます。それが本当に静かで、泣けてしまいました。読破して一週間が経ちますが、ふとしたときにこの話の主人公のした事、思ったこと、それを見ていた彼の事を考えてまた泣けてしまうのです。

    主人公は作家なのですが、作中作もとても素晴らしいです。是非読んでください。私もこの本はもう一度読み直すと思いますし、小川洋子さんの他の作品もきっと読んでいくのだろうと思います。

  • 初めて読んだのが冬の終わりの昼下がり。
    一人暮らしの部屋で、コタツに潜り込んで。

    夢中で読み進めて、ラスト近くにふと顔を上げたら、窓の外は真っ白。
    いつの間にか雪が降り積もり、あたり一面が白い世界。

    しばらく小説の中にいるような不思議な気分に。
    本を開く度に、その時の気分が蘇ってくる1冊です。

    • yurinippoさん
      私もこの本大好きです!
      実は「本まっち柏」で買った「少女七竃と…」にどんぐり屋さんのカードが挟まっていまして。なんだか嬉しくてフォローさせて...
      私もこの本大好きです!
      実は「本まっち柏」で買った「少女七竃と…」にどんぐり屋さんのカードが挟まっていまして。なんだか嬉しくてフォローさせていただきますね。
      2012/05/25
  • 読めば読むほど切なくて、読みおわるとぽかんとする話
    流れに逆らうこと、逆らわないこと、どっちが幸せなんだろうかとか考えながら読みました

  • 限りない消失の物語。最後には全て失うことをわかっていながらも、生きる希望(のようなもの)や、それを受け容れる心を持った主人公の感情の動きが描かれていて、哀しくも、そこから何かを学びとれるんじゃないか、と感じてしまうような希望を抱いてしまった。

  • (2008より転載)
    【再読】大好きな作品のひとつです。ドキドキするし、とても切ない。大事なものが"消滅"してもそれを受け入れてしまう。うーん、どうかな。
    2008/10/3読了

  • 大人のための暗い童話。妖美的で、抽象的で、絶望的で、静謐的な喪失物語。

  • 江戸川乱歩の妖しさを思い出してしまいました。
    途中、
    タイプライターの小説の方がもしや現実なのかもしれない
    と推測してしまいました。


    違いました。

  • 小川洋子お得意の”失う話”。
    偏執的倒錯的な匂い。
    とても美しくて悲しくて壮大な物語。
    物語が終わってしまうことが悲しくて
    読み進めたくなくなるくらいのめり込んだ。

    「R」というイニシャルは何を表すだろう。

  • どんどんものの概念がなくなっていく島の話。
    タイプライターの先生との話は「薬指の標本」かといつも思っちゃうんだけど、この「ひそやかな結晶」の中の劇中劇というか、この話の主人公が書いてるお話だった。
    小川さんは大好きだけど、不思議すぎたり、ついていけないのも多いけど、この話は好き。
    でも、薔薇が世界から消えるなんて信じられない!
    というより、もっともっと信じられないものが消えていくんだけど・・・。

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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