ブラジル蝶の謎 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 3073
感想 : 210
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062645713

感想・レビュー・書評

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  • このシリーズの短編、無駄がなくて好き。

    2020.7.4
    63

  • なるほどと思えた表題作。一番正解に近かった『彼女か彼か』、思わぬトリックの『人喰いの滝』、やや異色の『蝶々がはばたく』が特に楽しめた。いずれも発想や時代がしのばれて面白いと思った。国名シリーズはアイデアが秀逸だ。

  • ちょっとモヤッとする本を立て続けに読んだので、安息が欲しくて有栖川さんを手に取った。
    ああほっとする。磐石。抜群の安定感。どこを取っても一定レベル以上のクオリティ。

    火村シリーズの短編は、基本、事件発生→警察が火村を呼びます→火村がアリスを誘います→現場に向かいます→現場検証→容疑者集まってます→話を聞きます→解決、ってパターンで、ほぼ容疑者の中に犯人がいる。
    どんでん返しは無いんだけど、その代わり短編に収めるべく「誰がどうやって」ってところを集中的に明かすに留め、事件の全容までは書かれない。絶対全容を細かく組み立ててるはずなのに、書かないことを勿体がらない。だから話に厚みが出るというか、良い効果になってると思う。
    あと、やっぱり火村とアリスの関係性がものすごくツボる。

    相変わらず派手ではないけど、そんな精神状態で読んだせいか、満足して、今回は☆4つ付けちゃう。

    ・「ブラジル蝶の謎」…なんかこれ凄く面白かった。殺された土師谷(弟)が、土師谷(兄)からどんな手紙を貰ったのか(薄々想像できるけど)凄く凄く気になった。そこ書かないの生殺しじゃん?(←褒めてる)
    最後の火村の台詞は心に重く響く。

    ・「妄想日記」…火村シリーズの暗号は高い確率で目眩ましなので、無理に解くことはない。やっぱり目眩ましだった。

    ・「彼女か彼か」…関係者の証言から始まるなかなか工夫された構成だった。髭ね。男性には日常のことでも女性にとっては盲点かも。

    ・「鍵」…貞操帯見たことなくて、思わずググりました。

    ・「人喰い滝」…これは凄いトリックだなぁ。思い付かないなぁ。

    ・「蝶々がはばたく」…震災が書かせた話。いつもと毛色が違う。北陸旅行とか蟹とか全然関係ないのに、設定が凝ってるなと思った。
    大自然の驚異を目の前にして、人は無力感に苛まれる。それでも希望を見出だそうとする有栖川さんの人となりを垣間見た気分。

  • 火村英生×有栖川有栖シリーズ6作目で、国名シリーズ3作目です。全6話の短編集です。個人的には表題作の「ブラジル蝶の謎」が一番堪能出来ました。「人喰いの滝」も面白い事は面白いのですが、その奇抜なトリックが脆いかなぁと。最後の「蝶々がはばたく」は血みどろの殺人事件でなく、ちょっとした謎解き物で良かったです。

  • 「ブラジル蝶の謎」
    これは麻々原さんの漫画で読んだのかな?昔も読んだのかな?何回か読んだことある記憶があります。けど、途中まで全然思い出せないのw どんな記憶力の持ち主なんだ自分。殺害現場が独特で、インパクトのある一作。
    金貸しの隠居していた弟が、金貸し業を営んでいた兄の死後、隠居先から出てきたところ、兄の家で殺されてしまった、という話。
    犯人が火村先生に対して結構挑発的なんですけど、あれはなんだったんだろうか…。

    「妄想日記」
    子供と妻を交通事故で亡くして以来、精神的に不安定になった夫が、療養していた妻の実家の庭先で火だるまになったのを発見されて…という話。
    新作文字の発想なかなか面白かったですよね。完全なるミスリードの伏線。解読方法をいろいろ考えてしまったんですけど、やっぱり何か意味があったんでしょうか。親切と狂気が隣り合ってる話。

    「彼か彼女か」
    これはねえ〜、あーなるほど、という綺麗なオチではないのかな。
    おかまバー?で働いていた人が殺されて、もめていたと言われる三人の容疑者が浮かび上がったけれども、犯人は誰か、という話。
    途中で、そういうことか、と答えは分かったものの、解き方がわからなかったんですが、模範解答を見て、膝を打ちたくなりました。そして、蘭ちゃんという強烈なキャラクターに持って行かれた感じはありますけどw

    「鍵」
    ある会社社長の別荘地で殺された秘書。その近くに落ちていた謎の鍵。その鍵なーんだ、という火村が一人で解決した話を、缶詰になっているアリスに話して聞かせるというお話。
    このオチの意外性が一番度肝を抜かれたかもしれませんw そして笑ってしまったw

    「人食いの滝」
    これこそ何度も読んでるような気がしてるんですけど、全然思い出せないんですよね。。
    短編映画?の撮影に山奥の滝にやってきた撮影クルーと、そのクルーが泊まっている家と川を挟んで向かい側に住むおじいさん。そのおじいさんが崖から落ちているところを発見されて…という話。事故なのか、殺人なのか、自殺なのか。
    これも足跡トリックですねー。ちょっと物悲しい感じのある話だなあ。

    「蝶々がはばたく」
    最後にこの話というのがなかなか後に残るものがありました。
    バタフライエフェクトの話をするところからすでに伏線は張られていたんですねえ。軽妙な二人の会話がなかなか面白い始まり。
    旅行に行くことになった火村とアリスだったんだけれども、火村は電車に乗り遅れ、アリスはカバンをぶつけてしまったことでたまたま縁を持った、通路向こうの席のおじさんと話をすることに。そのおじさんが先ほどホームで、昔蒸発してしまった仲間二人を数十年来ぶりに見かけた、という話から、その蒸発した時の状況をいろいろ聞いて、足跡も残さずにその人たちが消えた理由は…という日常ミステリー的なお話。
    オチを言ってしまうと、地球の裏側で起きた地震の影響で、いつもより深い位置までやってきた波が、砂浜についたはずの二人の足跡を消してしまった、という偶然。
    このお話は阪神淡路大震災の一ヶ月後に発表されたらしいんですが、ご本人も発表しようかどうしようかまよった、とあとがきにありました。
    当時のことはあまりよく知らないのですが、それでも、この話の締め方には、とてもぐっとくるものがありました。

  • 2016/12/01
    蝶々に挟まれた6短編

    ブラジル蝶の謎
     文化に取り残されたら世界はどう見えるのだろうか?

    妄想日記
     科学に取り残されたら残るのはオカルトだけなのか?
     日記は妄想でした

    彼女か彼か
     抗えない性別の差
     オカマ口調ノリノリで書いてない?


     宝石箱の鍵(意味深)
     事件と関係ない謎が入ると勝手に絡めて考えてしまう……反省

    人食いの滝
     長靴の滝
     長編にもできそう、そしたら別口からバレる気がする

    蝶々がはばたく
     でかい規模の謎。事件でも事故でもない、いうならぱ現象か。

  • 火村アリスシリーズの国名シリーズ。割と初期の作品が多いからなのかどうなのか、割とスタンダードな感じの話が多かったように感じました。変化球じみたトリックというか真相とかはなかった・・・ような。ミステリ小説も結構奇をてらったものとかも多いのでこういうオーソドックスなものを読むとなんかホッとしてしまう。昔ながらの「中華そば」とか「カレーライス」みたいな。変わり種もたまにはいいけどそればっかりでも疲れちゃうっていうか。褒めてるのかどうなのか実によくわからない感想ではある。
    しいて言えば表題作が最もオーソドックスなミステリミステリした感じで「鍵」がちょっとひねった感じ・・だろうか。

  • 氏の国名シリーズは3冊目。重たい長編を読むのが続いていたのでちょっと軽かったが、相変わらずコンパクトに本格ぽい推理小説が楽しめたので良かった。表題の「ブラジル蝶の謎」は蝶の鮮やかな色彩が目に浮かぶようだが、理由が...。「妄想日記」の暗号のような文字はかなり解読しようと時間をかけてしまった。「人喰いの滝」や「蝶々がはばたく」のように現場の見取り図が出てくると反射的に推理本能が働き、作者との勝負が始まってしまう自分が面白かった。「人喰い..」は島田荘司氏の助言に従って追加したという最初のフラッシュバック部分が作品内で効いていると思う。
    「蝶々が...」は最後の数行とこの作品に関する氏のあとがきに、今だからこそ考えさせられる。

  • ミステリーの書き方を読んだとき知った「蝶々がはばたく」をようやく読むことができた。プロット作りの過程を紹介されていたので、いつもとは違った楽しみ方ができた。その他の作品で面白かったのは「鍵」。まさか違うだろうと思っていた真相通りだったが、なかなか皮肉めいた感じがして面白かった。

  • Audible

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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