- Amazon.co.jp ・本 (486ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062646079
感想・レビュー・書評
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山田風太郎の長篇時代小説『柳生忍法帖〈上〉〈下〉 山田風太郎忍法帖(9)』を読みました。
『甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1)』に続き、山田風太郎の作品です。
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〈上〉
寛永19年春。女人救済で名高い、鎌倉東慶寺(とうけいじ)の山門をおびただしい女性の血で染めた「会津七本槍」の七剣鬼。
暗愚な藩主加藤明成(あきなり)を使嗾(しそう)し、硬骨の家老堀田主水一族を皆殺しにした暴虐に今天誅が下される!
大いなる恨みに燃える堀家の女7人を助けるべく、徳川千姫の命により、柳生十兵衛が、いま見参!
〈下〉
怨敵「会津七本槍」の四人までを討ち果たし、加藤明成に迫る復讐の刃!
だが見よ、七本槍衆の総帥、不死身の妖人芦名銅伯の自信に満ちた不敵な笑いを――。
慈僧沢庵をともない、敵陣会津に乗りこむ柳生十兵衛と堀一族の七美女。
彼らを待つは、驚天動地の地獄の幻法「夢山彦」。
妖異壮絶の大対決、最高潮へ!
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1962年(昭和37年)10月から1964年(昭和39年)2月まで『尼寺五十万石』の題名で地方新聞に連載され、『甲賀忍法帖』に改題され刊行された忍法帖シリーズのの第10作… 「柳生十兵衛三部作」の最初の長篇でもあります。
■破戒門
■堀主水(もんど)一件
■七凶槍
■修羅の巷へ
■蛇ノ目は七つ
■籠
■髯(ひげ)を生やした京人形
■十兵衛先生
■まんじ飛び
■般若組
■地獄の花嫁
■水の墓場
■晒(さら)す
■江戸土産
■北帰行
■僧正
■女人袈裟(げさ)
■これより会津
■銅伯夜がたり
■断橋
■首合戦
■沢庵手鞠唄
■南船北馬
■幻法「夢山彦」
■沢庵敗れたりや
■孤剣般若侠
■十兵衛見参
■雪地獄
■霞網
■天道魔道
■雲とへだつ
■巻末エッセイ 嘘もきわまれば真実が 白石一郎
■忍法帖雑学口座⑧ 日下三蔵
時は寛永19年(1642年)、悪逆の限りを尽くす暗君会津藩主・加藤明成を見限った国家老堀主水は、一族を率いて会津を退転するという騒動を起こす(会津騒動)… 明成は幕府の許可の元彼らを捕縛するが、それだけに飽き足らず、連行中に一族の女たちが匿われている男子禁制の尼寺東慶寺を強襲し、主水らの目の前で彼女らを惨殺する所行に及んだ、、、
これを実行したのは「会津七本槍」と呼ばれる明成子飼いの家来だった… 騒ぎは寺の後見人である天樹院千姫の出現によって収められるが、助けられ生き残ったのは堀主水の娘、お千絵を始めとする7人のみだった。
その後、堀一族の男たちは処刑されたが、残った7人の女たちは加藤明成及び会津七本槍に復讐を誓う… 千姫はそれを後援するが、彼女はそれに男の手を借りることをよしとせず、あくまで7人の女たちの手によってなされるべしと考える、、、
しかし、敵たる七本槍はいずれもそれぞれの武芸に精通した達人ばかりで、そのままではとても彼女たちの手に負える者ではない… 千姫に相談を受けた沢庵和尚は、反骨と無頼をもって知られる柳生一族の剣侠・十兵衛に堀一族の女たちの師範役を依頼する。
おもしろい…としてその役を引き受けた十兵衛だったが、果たして彼は武芸の覚えすらない女たちに、恐ろしい武芸者たちである会津七本槍を討たせることが出来るか? そして、暗君・加藤明成に裁きを加えることが出来るか? 果たして彼らの運命は…!?
忍法対幻法の凄絶な闘いを描く、山田風太郎の代表的傑作長編… 痛快無比な一大忍法帖雄編。
健気な女7人が沢庵宗彭(たくあんそうほう)や柳生十兵衛の力を借りながら、会津藩主・加藤明成や会津七本槍等の悪玉(仇)を討つ復讐譚を描いた勧善懲悪の物語… 善悪がはっきりしていて、悪を倒しにいく展開なので感情移入しやすいし、柳生十兵衛がむっちゃカッコ良かったですね、、、
相変わらずですが… バトル系エンターテイメント作品の要素が強いし、人間技を超越した忍法はSF的だったりホラー的だったりするので、時代小説の枠を超えたジャンルに縛られない独走的な作品だと感じました。
難といえば… 上下巻で1,000ページ近いボリューム、、、
奇想天外、波乱万丈なストーリー展開でテンポの良い作品ですが、ちょっと長かったなー もう少しコンパクトにまとめてある方が読みやすいと思いますね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
再読 2021/6/15
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十兵衛が直接手を下さずサポートに回るという着想が面白い。冒頭の殺戮シーンがあまりにも凄絶なのですが、その後のやりとりはどこか間が抜けていたり、妙に杜撰だったりして、戸惑います。
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ここまでに読んだ他の山風作品と較べると悲壮さ・卑猥さが減ってストレートな活劇ものになってる。
山風の本たちは作品上の関連性は描かれてないけど、
「甲賀忍法帖」で次期将軍に選ばれた家光と忍法勝負を提案した天海僧正はこの「柳生忍法帖」にも登場するし、
かたや跡目争いに敗れた忠長の顛末は「忍びの卍」で語られ、
更にこの本で堀一族の女たちの復讐を助けた十兵衛はその数年後に「魔界転生」で今度は自らの刀を振るうことになる、
そして彼の祖父が石舟斎の号を得た経緯は「伊賀忍法帖」で描かれる。
それらの繋がりを追っていくと一つの長大なサーガの一端を読んでる気分になって、増々山風ワールドに引き込まれていく。 -
剣術や鞭などの卓越した使い手である会津七本槍を、家族を殺された非力な女7人が討ち取るべく、柳生十兵衛に師事し1人ずつ復讐を果たしていく。
『甲賀忍法帖』とは違い、敵方が徹底的な悪として描かれ、彼らが「蛇の目は幾つ」と1人ずつ葬られて行くのは読んでいて爽快だ。バトルシーンには迫力がありハラハラさせられる。また、加藤家方の狂気と残虐性を象徴する「花地獄」などの描写も素晴らしい。よくこんなことを思いつくものだ。何とも言えぬ嗜虐的な気持ちになる。 -
山田風太郎先生の描く悪役は、本当にきもちいいくらい下衆で
す。生生しい描写といい、歴史上の人物の独自解釈の面白さといい、もっと早く読んでいればよかったと毎回思います。 -
感想は下巻。