笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 7298
レビュー : 690
  • Amazon.co.jp ・本 (486ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062646147

作品紹介・あらすじ

偉大な数学者、天王寺翔蔵博士の住む「三ツ星館」。そこで開かれたパーティの席上、博士は庭にある大きなオリオン像を消してみせた。一夜あけて、再びオリオン像が現れた時、2つの死体が発見され…。犀川助教授と西之園萌絵の理系師弟コンビが館の謎と殺人事件の真相を探る。超絶の森ミステリィ第3弾。

感想・レビュー・書評

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  • 10年ぶりに再読。
    前に読んだ時も思ったけど、なぜ『笑わない数学者』というタイトルなんだろう。と今回も思った。なんとなく、森さんの考える「数学者」が詰まってる感じ。

    ミステリィとしては、犯人がすぐわかるものだけど、問題は数学。ページめくる手を止めて考えてしまう。

    あと定義について。
    昔、駅のアナウンスで「白線の内側にお下がりください」というのを聞いて、線の内側ってどっちだ、と思ったことを思い出した。常識的な内側はわかるけど、そう決まってるわけじゃないよねって。右側のドアが開きます、のアナウンスも不思議に感じたな、そう言えば。誰が進行方向向かって右って決めたんだろう。

  • S&Mシリーズの第3弾。 トリック云々よりも犀川先生と萌絵ちゃんのやり取りが楽しかった。積極的というか、やや強引な萌絵ちゃんに、タジタジの犀川先生が可愛い。 今後の2人がどうなるのか楽しみです。 ところで…ビリヤードの5つの玉の問題は結局どうなったのかな(笑)

  • 森博嗣の本を読む度に、いかに自分が平凡でありふれた人間なのかをありありと認識させられる。彼の本を読んだ後しばらくはまだその余韻を覚えているのだけれど、ともすればそれすらも忘れてしまうお気楽な脳みそなので、読む度に再認識する、の方が的確かもしれない。
    毎回、似たようなことを書いているような気がして、それはつまり、毎回、似たようなことに感動・感嘆しているからなのだけれども、でもやっぱり書かずにはおられない。
    この内容を、96年に文庫として発表するという彼の前衛的な考え方。シャープなもの、特に思考は年月などの影響を受けず、その先端は尖ったままでいられるのだなと。
    これを初めて、まだ黒っぽい表紙で読んでいたときの私は、恥ずかしながらすっかり犀川先生の虜になっていて(今でもそうだが)、犀川先生みたいになりたくて、彼みたいに振る舞いたくて、彼に興味を持ってもらいたくて、彼の世界に行けない自分が、彼と同じ土俵に存在しない自分が歯がゆくて、それを軽々とやってのける西之園さんが羨ましくて仕方がなかった。犀川先生と一緒にタバコを吸ったり、心配してもらって探しに来てもらったり、一緒にドライブに行ったり、一見意味不明の冗談で笑い合ったりしている彼女に本気で嫉妬していたらしく、今回二度目の読書でまったく彼女について覚えていない自分に愕然。彼女、色々と微笑ましい葛藤があったのですね。
    天王寺博士も、覚えていた以上にスタイリッシュで、今の森作品にも通ずるような曖昧さが素敵。しびれます。
    あの頃思っていたよりも、ずっと丁寧に人々は描かれていて、理系=冷静で頭が良い、だけでない性格や感情の機微がとても繊細に観察されていて、あらためて森博嗣というひとの視野の広さにひれ伏したくなる思いです。
    読む度、ああ、なんて自分は凡庸なのだ、と頭を抱えたくなる。一生、あのひとが見ている景色は私には見えないのかもしれないと悲しくなる。
    でも、それでも、彼が生きているこの時代に、彼の書いた本を読んで感動できるくらいには、自分には知性の欠片があるのかもしれないと幸せな気分にもなったり。
    誰がなんと言おうと、森博嗣という人間は、私にとって特別中の特別です。冷静さを欠ける相手がいるのも、幸せ。

  • トリックはすぐ分かります。ただこの小説は読み込んでいくと面白い。タイトルの「笑わない数学者」とは一体誰なのか…。はっとさせられます。

  • 森博嗣の『すべてがFになる』からの
    西之園萌絵&犀川創平シリーズ第3弾!
     
    トリックは非常に単純。
     
    最初にひょっとしてそうかな?
    と思ったことがズバリ的中しちゃいました(^^;
     
    シリーズが進んできたので、萌絵と犀川の関係が
    だんだん周りからも認知されるようになってきてる(?)
    感じがします。
     
    謎解きよりも、主人公2人の人間模様を楽しみたい
    という方におすすめします。

  • S&Mシリーズの第3弾。
    オリオン像が消える時、人が死ぬ・・・?
    オリオン像消失のカラクリがわかれば、事件の謎も解ける。
    しかし、背後に結構面倒な事が隠されていたのには驚いた。
    殺人犯が誰で、どうやったかってことよりも
    そっちの方がミステリーでしょう。
    伏線といっても、気にしてなければ読み飛ばしちゃいますって。
    最後の最後で更に誘導されそうになるんだけど
    結局はタイトルがヒントになってるんだよね?
    なんというか虚しいなぁ~
    犀川先生は・・・きっと気付いてたよね・・・
    この余韻の残り方がスゴク好きです。

  • S&Mシリーズ3作目です。
    2作を読んだ時点でこれはもしかして密室殺人シリーズなのでは?と思っていましたが、これはちょっと毛色が違う作品なのですね。

    オリオン像のトリックは予想していたものと同じだったので、特に感想はありません。
    建物とオリオン像の高さがどれくらいのものかわかりませんでしたが、やはりオリオン像の方が低かったのですね。
    でも「寒いから外を歩き回って辺りを調べない」というのはちょっと苦しいのでは?(笑)
    萌絵なら寒かろうが暑かろうが調べそうですが…。

    最後、犀川と天王寺博士の地下での会話ですが、物理的に基生も宗太郎も翔蔵が演じていたということでしょうか?
    とすると、関係者はみんな嘘をついているし、みんな翔蔵を愛していたということになるのですが…。
    異常です。
    亡くなった2人の存在と才能を翔蔵が引き継いだと考えるのが現実的ですが、翔蔵が演じていたというほうがわたしは好みです(笑)
    一番最後の女の子とお爺さんのやり取り、もしかするとプールで亡くなっていたのは翔蔵氏ではないのかも!

    今まで読んだ2作もですが、犀川が謎を解き明かす際の思考の描写が気に入っています。
    誰しもあっ!と物事を思い付くことってあると思うのですが、それを客観的に冷静に書いていると思います。
    自分ではうまく表現できないけれど、ほんとにこんな感じです。
    それから萌絵の作ったサンドイッチ的なものを食べるシーンと、帰りの電車で思い付いたことをもっと深く考えようとするシーン。
    ここもよくわかります。

    建物から出られない状況で屋外で人が殺されているのを密室殺人と捉えるのはとても面白いです。
    どこか文学的(という言葉が正しいのかな?)で、粋で、「密室」としてはいままでの3作の中でいちばん気に入りました。
    何が「内」で何が「外」なのか。
    すべては自分次第。「定義」の問題ですね。
    このテーマに絡めているところも上手いなあと思います。
    萌絵、犀川と博士との自由の話も面白かったです。
    博士は天才的な数学者ということでしたが、この「内と外」問題はとても哲学的というか、文学的に思えます。
    「つむじ風食堂の夜」の食堂でのやり取りを思い出しました。

    ずっと密室のお話だったらちょっとつまんないなあと思っていたところに変化球が飛んできたので、以降も退屈することなく読めそうです。
    そうえいば、今回は(比喩ですが)テレフォンカードが出てきて懐かしくなりました。
    数か月前使ったのですが、使い方をあんまり覚えていなくて焦りました。
    あと余談ですが、先月、名古屋市科学館に遊びに行ってプラネタリウムを観たところだったので、ちょっと驚きました。
    オリオン座は冬の星座ですので、もちろん見せてもらいました。

  • S&Mシリーズ、三作目読了。

    物語のキーとなる「"オリオン像"が消える」というトリックに序盤の方から気付いてしまった為、大筋の殺人トリックも解ってしまったが、考えるうちに一つだけ矛盾点があり「違うのだろうか…」と思い読み進めていたものの、結局その矛盾点については詳しく明かされず。

    お読みになられた方も同じ疑問を抱いてるだろうと思うが、酔った律子を皆で1号室へ運ぶ時、"律子の部屋をマスターキーで開けたのは君枝"だというところ。これは単なるミスなのか、ラストの曖昧さも含めあえての描写なのか…。

    しかし天才数学者、翔蔵氏の言葉や思考には個人的にとても興味を掻き立てられるものがあり、退屈さを感じはしなかった。この辺りがやはり森博嗣作品の醍醐味とも思う。

  • この作品は楽しかった。「すべてがFになる」と同様に。同じ余韻に浸ることができているので大満足。

    2作目が楽しめなかった理由もはっきりとわかった。「冷たい密室と…」には、犀川と戦うに相応しい天才科学者が登場しなかった。ありふれた動機とありふれた殺人があるだけだったからだ。

    「すべてがFになる」の真賀田四季も、この作品の天王寺翔蔵も、私たちの理解やカテゴライズを寄せつけない超人たち。ぎりぎり私たちの側に立ち位置を構え、もしも萌絵という存在や、彼自身の超速の人格を制御するもう一つの人格がなかったら、彼らと同じ世界に移動してしまうに違いない我らが英雄、犀川。犀川にとって、こちらの論理においては否定せざるを得ない彼ら超人たちの生き方や思考の世界は本来、逃れられない魅力に満ちているはずだ。

    それゆえに危うい。この危うさがたまらない。いつか犀川が…ひとりの天才との戦いに敗れ、自らの人格を淘汰して、あちら側へ行ってしまうのではなかろうか。

    萌絵の存在がなければ、このストーリーは危険すぎる。あちこちに刻まれた科学的な言葉、論理の切れ端、哲学的思惟の断片に、私自身もとりこまれてしまいそうになっている。

    ちなみにオリオン像の謎はほぼ最初の段階で解けていた。しかしこれが本編の主題でない事は明白だ。

    果たして…彼は3人のうちの誰なのか。それとも…。この大きな謎が残されていることが「F…」と同じ魔力で、読後も私の心を離さない。これは…まずい。

  • S&Mシリーズ3作目。

    常識や思い込みを巧みに利用してトリックを仕掛ける森さん作品。
    伏線に気づくまであと一歩でした、いくつかの違和感を覚えたのですが、それらを繋げられなかった。
    それらの違和感が伏線だと気づいたのは全てが明かされてからですが。

    本作を通してミステリーの読み方や楽しみ方を掴みかけているようです、10作目まで注意深く読んでいこう、掴める予感がしています。

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著者プロフィール

森 博嗣(もり ひろし)
1957年、愛知県生まれ。作家、元研究者。名古屋大学工学部建築学科、同大学大学院修士課程修了を経て、三重大学工学部助手、名古屋大学助教授。名古屋大学で工学博士を取得し、2005年退職。学会で数々の受賞歴がある。
作家として、1996年に『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞し、同作で作家デビュー。S&Mシリーズとして代表作の一つに。『スカイ・クロラ』シリーズは本人も認める代表作で、2008年アニメ映画化された。その他にも非常に多くの著作がある。

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