星降り山荘の殺人 (講談社文庫)

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  • 講談社
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本棚登録 : 2036
レビュー : 315
  • Amazon.co.jp ・本 (494ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062646154

感想・レビュー・書評

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  • とてもオーソドックスな犯人当てです。
    いわゆる吹雪の山荘もの、クローズドサークルというやつです。

    登場人物は、主人公の青年・杉下、スターウォッチャーという肩書きを持つ星園。
    不動産業を営む岩岸、その部下である財野。
    作家の草吹あかね、その秘書の麻子。
    UFO研究家の嵯峨島。
    女子大生のユミと美樹子。
    以上9名が、岩岸が経営する山中のキャンプ場にモニターとして集まった。


    最初の夜、岩岸が殺され、吹雪にまかれ下山を阻まれる中、次の夜は財野が殺害される。
    そして三日めの夜、ついに探偵役による謎解きが始まる。

    星園は犯人を絞り込むために6つの条件を挙げる。

    1.位置関係(財野殺害の際に使用されたこけしを取ってくることが無理なく出来る)
    2.凶器の選択(物置のロープの存在を知らずに財野のパンツを捩じって使ったこと)
    3.アリバイ(和夫が岩岸が誰かと揉めているのを立ち聞きしたときにアリバイがある)
    4.心因的要素(オカルト否定派にはミステリーサークルを作るという発想がそもそも出てこない)
    5.身体的特徴(財野がつくった薬缶の警報装置の糸を結び直すことができる)
    6.行動(警報装置が不発だったことを強調する必要があった)

    それぞれの条件を当てはめていくと、誰も犯人に該当する人間はいなくなる。
    しかし、唯一、3番の「アリバイ」の条件だけが和夫の証言がもとになっており、客観的条件ではない。
    よって、3番を条件から外すことにより、犯人は和夫となる。

    ……というのが星園の推理なのだが。

    しかしこれを麻子が別の推理によってひっくり返す。
    すなわち、岩岸を殺害した凶器のピッケルをあらかじめ用意して現場に持ち込むことができたかどうかという条件。
    ピッケルはそれぞれのコテージに設置されているが、コテージに泊まっていない和夫にはそれができなかった。

    ピッケルは部屋ごとに若干形が違っており、どの部屋からピッケルを持ち込んだかが明白になってしまう。
    (暖炉の煤で汚れた壁にかかっていたため、かかっていた部分が白く抜けるから)
    それを隠すために、雪をかきあつめて壁を洗ったという推理を麻子は披露するのだが……ここがちょっと残念なんだよなあ。

    ピッケルの伏線があまりにも目立たなくて「やられた!」という感じにならないことがひとつ、
    自室のピッケルを持ち出した時点で壁に跡が残っていることは判るのだから、後から誤魔化すくらいならそもそも別の凶器を選択するよね、って思うのがもうひとつ。
    さらに言えば、雪をかきあつめた跡がミステリーサークルみたいになるっていうのもどうよ?

    そのあたりがちょっと美しくないのですが、全体的にフェアであることに間違いはなく、犯人当てミステリとしては楽しめました。

    しかし、本作の仕掛けはそのオーソドックスな部分以外にもあります。

    章の始めには常に作者(神の視点)によるナレーションが入り、星園が登場する章ではこう書かれています。

    「そこで本編の探偵役が登場する。探偵役が事件に介入するのは無論偶然であり、事件の犯人ではありえない」

    こりゃ、誰だって探偵役は星園であり、星園は犯人から除外されると思いますよね。
    おまけに星園は自分が解決したいという過去の迷宮入り事件の話までする。
    星園を探偵役としたシリーズ化さえ想像してしまいましたよ、僕は。

    ところが、犯人は星園。で、真の探偵役は麻子。
    例の「本編の探偵役が登場する云々」の章で、麻子もちょろっと(本当にちょろっと!)登場しているんですよね。
    キレイに騙されました。
    メタ部分に施された叙述トリックという非常にレアな仕掛け。
    お見事です。

  • 再建を図る雪降る山荘で殺人事件が起こった。集められたのはUFO研究家、スターウォッチャー、売れっ子女流作家など一癖も二癖もある人物たち。犯人は一体誰なのか。

    各章の冒頭に著者からの謎解き解決のヒントととも取れる一文があり、読者に犯人探しを挑戦させるような展開に。犯人探しは引っ掛かった。謎解き部分はあっさりしていたものの納得した。
    でもホームズはホームズのままで居てほしかった…
    せめて最後の最後でキャラ崩壊はしないでほしかった…

  • 王道クローズドサークル、読者への挑戦状チックなメッセージがたびたび出てくる。
    このメッセージが良い感じにミスリードしてて、最後まで読んで意図が分かるとなるほどね!ってなる。
    ただ、クライマックスで犯人が判明してからが残念。
    キャラが急に変わりすぎでは?
    動機がイマイチなのは、もともと動機を重要視しない進め方だから良いとしても、
    犯人が喚き散らす時のセリフが汚いし、罵倒のレパートリー少なすぎるし、急に知能レベル低い人が書いたみたいな文章になって戸惑う。
    せっかく少しずつ少しずつ好感が持ててきたキャラクターなのに、もったいないなぁこれは。
    あの夢を語るくだりは何だったのか。
    最後のどんでん返し、「まだ終わりじゃないよね?さらにもう一回どんでん返しがあるよね?」と期待したら、何もなく、という感じだった。

  • いつものごとく、騙された。

    しかしいつもと違う。
    いつもなら、騙されたとわかった時、
    胸がざわめき、心の底からしてやられた!
    悔しい!でも嬉しい!という気持ちになる。

    しかしこの小説はどうだろう。
    肝心のネタバレはさすがに書けないので抽象的になるが、
    犯人がわかった時に私の胸に訪れたのは
    爽快感ではなかった。

    犯人の話していた身の上を
    最後にバッサリと切り捨てたのにもガッカリした。
    主人公よりもキャラが立っていて、
    シリーズ物にも活かせそうだと思い、
    何となく愛着がわいていたせいなのだろうか。
    ホームズとワトソンとして、
    村の事件を解決してほしいと願っていたせいだろうか。
    最後の数ページまで来ても、
    さらなるどんでん返しを期待してしまっていた。

    彼は犯罪者にするには惜しい人物だった。
    その一言に尽きるのだろう。

    • 放浪金魚さん
      dadanotsumaさん
      はじめまして。突然のコメントに驚かせてしまったならばすみません。

      >何となく愛着がわいていたせいなの...
      dadanotsumaさん
      はじめまして。突然のコメントに驚かせてしまったならばすみません。

      >何となく愛着がわいていたせいなのだろうか。
      >彼は犯罪者にするには惜しい人物だった。
      読後に自分がものすごーくショックを受けた理由を明解に書いて下さっていたので目からウロコでした。これですよ、これ。
      じめっとした事件の中、ユニークなキャラでストーリーを引っ張っていた彼に愛着を感じていた分、思わぬ豹変と本作で見納めになってしまうというダブルパンチが心の引っ掛かりだったんだなーと気付かされました。ある意味、ようやくすっきり爽快です。

      本棚を拝見したところ推理小説を中心に広く読まれるご様子。
      また参考にさせていただけると嬉しいです。
      2016/07/15
  • 完全に引っ掛かった。
    その点は脱帽。
    が、面白かったかというと微妙だ。
    読みやすく引き込まれるように読んだのだが、読み終わった感想は微妙。
    うーん、微妙だ~

  • 雪山のコテージを舞台にしたクローズドサークル本格ミステリ。騙されることをアピールする作品はぶっ飛んだオチが多い中、これは至ってフェアな作品である。作中一番の仕掛けにはコロッと騙されてしまった。

    先入観を利用した、番外戦術とでもいうべき大掛かりな仕掛けではあるのだが、肝心の事件そのものもしっかりと作り込んである。トリックは普通で動機も唐突ではあるのだが、動機は分からないという記述があるのでフェアではあるし、確かに動機面まで推測するのは事前情報がないと無理だろう。

    大掛かりな仕掛け、いわば重要なトリックの正体は「探偵役と読者が思い込んでいた人間が実は犯人」という、言ってしまえばそれだけの話なのだが、このミステリのミソはフォーマットにある。まず登場人物紹介での探偵役と助手の配置というミスリードに始まり、各章の冒頭に記述された「事件の犯人ではありえない」「不自然なトリックは使われていない」「犯人だけは嘘をついている」「重要な伏線が張られている」など、やや説明過剰とも思えるミステリ上必要な手続きなど、フォーマットそのものが騙すための先入観を植え付けていたというのが非常に面白い。嘘はついておらず、フェアプレイであるのだが、その背後に仕掛けられた作者の企みに物の見事に翻弄されてしまった。真の探偵役である麻子は、読み返してみると要所要所でしっかりと推理を披露しているため、真の探偵登場は衝撃的ではあるのだが、あまり唐突感はない。読者の思い込んだ探偵役が矢面になったせいで、麻子の優秀さ、いわば探偵役としての振る舞いが上手く隠されていたのが凄い点だろう。作家の助手という麻子の肩書きも上手い隠れ蓑になっていて、作家の方が推理を披露していたので、どうしてもそちらに目がいってしまう。謂うなれば探偵役とその相棒が作中に二組存在しており、読者の思い込み、偽の探偵である星園と合わせて二重に隠されていたのだ。また麻子のヒロイン=犯人であって欲しくないという読者の願いも利用された感じがある。犯人を捜すミステリと見せかけて、探偵役を探さなければいけないミステリだったには脱帽した。騙されたことが分かる、というのはいいミステリの条件だと思う。事件そのものは普通であり、トリックも目新しくないのだが、大掛かりな仕掛けの鮮やかさが強烈に印象に残る傑作である。

  • クリスティの「アクロイド殺し」ほどの衝撃はないものの、フェアかアンフェアでいえば、フェア。ちゃーんと説明しているもの。説明こそがミスリードではあるけれど、正々堂々としたミステリで小気味いい。

  • ちょっと期待外れ。

    オススメ推理小説として紹介されていたので読んでみました。
    内容としては、今や定番となった雪の山荘での殺人事件です。
    スターウォッチャー星園の華麗な推理が展開されるか…

    新本格系を目指しているのか、章のはじめに読者へのヒントや注意点が挿まれており「作者はフェアに情報開示してるよ」というのを強調してます。

    それが頻繁に出てくるせいか、ゲーム感覚が強く、小説としての趣が低下してる気がする。(簡単に言うと、話に入り込みにくい)

    犯人もなんとなくこの人かな?とわかるレベル。
    論理的にではなくて、キャラに違和感アリアリなので…

    総論として、読者を騙そうというのがあざと過ぎて、推理マニアが作った推理ゲームという感じになってしまい、小説としてはいまいちでした。

    推理クイズ好きにはいいかも。

  • 何をおいても、この本は爽快感がすごい
    相当綺麗に騙されて、驚かされます
    そうきたか!でもやっぱりな!でも楽しめると思う。
    形式的な古典ミステリ、本格ものをそれなりに読んできた人以外には、何だこれ??という感じだろうけど。
    こういう形で本格という枠に挑戦する倉知さんが本当に好き!

    構成の引っ掛けが大半で、事件の内容自体は相当あっさり。和夫視点が読みやすい。

  • 全ての本格ファンに捧げたい
     毎度お馴染み、雪山の山荘でのクローズド・サークルです。閑古鳥のキャンプ場、胡散臭いUFO出没の噂など、とにかく舞台が冴えないのですが、そこに何とも言えない親しみを感じます。どんでん返しには、まんまと騙されました。フェアかアンフェアかで意見が割れてるようですが、特殊な仕掛けというだけで問題なくフェアでしょう。それよりも、犯人の行動に関するロジックが少し怪しい気がしました。
     中盤が中だるみ気味なのが惜しいですが、それを吹き飛ばすかのような気持ち良さが待っています。

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著者プロフィール

1962年静岡県生まれ。日本大学藝術学部演劇学科卒業。1994年、『日曜の夜は出たくない』で倉知淳として小説家デビュー。1997年、『星降り山荘の殺人』で第50回日本推理作家協会賞(長編部門)候補。2001年、『壷中の天国』で第1回本格ミステリ大賞(小説部門)受賞。2002年、「桜の森の七分咲きの下」で第55回日本推理作家協会賞(短編部門)候補。

「2013年 『シュークリーム・パニック ―Wクリーム―』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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