文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
4.01
  • (1989)
  • (1302)
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本棚登録 : 12867
感想 : 1189
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  • Amazon.co.jp ・本 (1060ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062646673

作品紹介・あらすじ

匣の中には綺麗な娘がぴったり入ってゐた。箱を祀る奇妙な霊能者。箱詰めにされた少女達の四肢。そして巨大な箱型の建物-箱を巡る虚妄が美少女転落事件とバラバラ殺人を結ぶ。探偵・榎木津、文士・関口、刑事・木場らがみな事件に関わり京極堂の元へ。果たして憑物は落とせるのか!?日本推理作家協会賞に輝いた超絶ミステリ、妖怪シリーズ第2弾。

感想・レビュー・書評

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  • さて、結局のところ魍魎とは?

    文庫本にも、最初のページに今昔續百鬼“魍魎”図があります。ちっちゃくて、見にくいけど。この一枚から、この後の1,000ページ以上の作品が出来上がるのだから、すごいとしか言いようがないです。(最近、同じような感想を、カリスマメロンの本棚で読んだ気がするのだよ。)
    匣にみっちり詰まった少女達の四肢の発見から始まり、最後は、人体の代わりとなる箱に至るまで、膨大な情報量は、一読では把握しきれません。
    小説が、源氏物語のように、2層構造になっていて、事件を追っていくメインの層と、京極堂の博識がむっちっり詰まった娯楽層。世間は、京極堂の博識ぶりにざわつくのだから、なかなかコンパクトにならないですね。
    密かな楽しみは、陰陽道のうんちく。当然、陰陽五行説の方位の知識も披露されてました。で、今作で最初の方に、中国の「算命」まで出してきて、さすがに詳細説明は無かったけれど、算命が日本で継承され始めたのは、第二次世界大戦後で、それまで知っているとは驚きなのです。
    算命学には、三極構造理論という肉体・霊魂・心からなる考え方があり、人間の主体は肉体、これに目に見えない霊魂が宿る。これを結びつけるのが、心。この小説の主題のように思います。
    心がなくなった匣には魍魎が蔓延るのでしょうか。

    • おびのりさん
      長旅だったわー。
      ユングとか苦手だわ。
      でも、読むよ。
      長旅だったわー。
      ユングとか苦手だわ。
      でも、読むよ。
      2023/07/23
    • 土瓶さん
      むしろ次の次「鉄鼠の檻」の方が合うかもね。
      舞台は禅寺。
      むしろ次の次「鉄鼠の檻」の方が合うかもね。
      舞台は禅寺。
      2023/07/23
    • ひまわりめろんさん
      分かる!常に一歩先を行ってる感じがカリスマたる所以よね
      分かるわ〜
      分かる!常に一歩先を行ってる感じがカリスマたる所以よね
      分かるわ〜
      2023/07/24
  • ラジオで「"パクリ"とは乏しい知識だからこそ起こる」正しく、詳しい知識を持って見れば、違いを認識することができる。
    という話を聞いたことを思い出す。

    シリーズ二作目
    キャラクターと謎で読ませるのだけど、やはり京極堂の説明シーンは少し長く感じました。"圧倒的な知識の塊"である京極堂が説く内容は、要はちゃんとした知識をもって相手の誤りを指摘しつつ、少し心を誘導しているのが二作目でちゃんと意識して読むことができました。

    でもまだ秋彦さんがどんな人なのかいまいちわかってない(見えてるのは一部のように感じる)まだ箱の中身まで見えてない感じでした。

    木場さんはわかりやすくて好印象。
    榎さんは…結構「境界線」の上でフラフラしてる感じ。
    関くんは少々鬱陶しいが、いないと説明パートが始まらないから助かってます…

  • とにかく、この分厚さにきっちりと寸分の違いもなく、物語が詰まっている事に恐怖すら感じました。
    後半の鵺と白蛇の対決は、息をもつかせぬ攻防で一気読みでした。

    最後の京極堂でのシーンが、あちら側に傾きかけていた私を引き戻してくれました。

  • とても面白かったです。登場人物の1人1人、文章の一文一文がとても魅力的で、読み終えるのが惜しいくらいでした。

    怪しげで奥行きのある雰囲気が今作にもあって、それに呑まれるだけでも気分がよかったです。また、前作と同様に、事件の全容が明らかになっていくにつれて見え始める物語の狂気。とても癖になります。このシリーズがあと8冊もあるのが嬉しいです。次作も期待。

  • 1000ページ超えの分厚さに怯んだけれど、満たされない、何をやっても何かが欠けている気持ち、どこか永遠を求める気持ち、これが自分の心の琴線に触れたのか、この作品という匣の中に入りこみ、言葉や世界の心地良さに隙間を囲まれ、ずっと出たくないようなそんな時間を味わった。


    どこか物哀しさを感じずにはいられない心の解放とも言える憑物落としは圧巻。息が詰まるほど魅了された。もう少しだけこの世界にこの匣に浸っていたい、そんな余韻がたまらない。

    • けいたんさん
      こんばんび〜(^-^)/

      京極さんのこの分厚さはなんなんだろうね(笑)
      面白そうだけど、手が出ないわ(^_^;)
      ろこちゃんで...
      こんばんび〜(^-^)/

      京極さんのこの分厚さはなんなんだろうね(笑)
      面白そうだけど、手が出ないわ(^_^;)
      ろこちゃんで何日くらいかかるのかしら?
      映画で2作ほど見たけど、きっと小説の面白さは表せてないんじゃないかと思うんだよね。
      2019/05/08
    • くるたんさん
      このシリーズ、20代の頃挫折したんよー。

      最近やっと興味が出てきた♪
      これは4日はかかったかなぁ。持ち歩けないしね。
      分冊版も出てるからそ...
      このシリーズ、20代の頃挫折したんよー。

      最近やっと興味が出てきた♪
      これは4日はかかったかなぁ。持ち歩けないしね。
      分冊版も出てるからそっちのが読みやすいのかなぁ。
      しかもまだこれ以上の分厚い巻があるよー。

      私はやっぱり映像だとついていくのが大変で、じっくり世界を味わえる 本の方を先に読みたい派だわ(*≧∀≦)ゞ

      って言っても 姑獲鳥の夏しか観てないや(*≧∀≦)ゞ
      2019/05/08
  • 正直、本屋で手に取った時はちょっと分厚過ぎじゃ…と思ってました。
    でも、読み始めてみたら京極堂の語り口に引き込まれて、分厚さなんか忘れページが進む進む!
    あっという間に読み終わってしまったという印象でした。
    いざページの残りが少なくなって来たら、なんだかこの世界観から抜けるのが寂しくて、まだ終わらないで欲しい…でも続きが気になり過ぎて読むのを止められない…でも読むと終わっちゃう…というジレンマに陥っていました 笑
    そして、前作に引き続き前半部分での大量の伏線を回収していく様は見事としか言いようがありません。
    後半謎が明らかにされるにつれて、あれも伏線だったか!と気付いて確認のためそこのページにちょっと戻ったりということを繰り返しました。

  • 推しが主演する舞台の原作だと言われたら読むしかない。読まないという選択肢はない。EXILEを好きになった結果京極夏彦を読むことになるなんて夢にも思わなかった。人生何が起こるかわからないな。EXILEを好きにならなかったら京極夏彦を読まないままの人生だったと思うから、こういう「自分じゃ絶対に選ばないもの」を選ぶ機会ができてうれしかったし、そういうところはオタクをやっていて楽しいところだと思う。
    ミステリーというものからして全然なじみがないし、京極夏彦のことはよく知らないけどなんだか難しそうだし、1000ページも読み切れるかなあ、と心配になりつつとりあえず買った。1000ページの文庫本を実際に持ってみると物理的な迫力がある。読み始めるとすぐに心配は消えた。読みやすくて美しい! 表記に特徴はあるけど、それでも文章がするする入ってくるのがすごい。それに内容もすごくわかりやすい。妖怪だったり神社だったり陰陽道だったりと難しいモチーフはたくさん登場するけど、そのひとつひとつを丁寧に説明してくれるから置いていかれる感じがしない。読んでいるうちにそういうモチーフまで魅力的に思えてくる。こんなの思春期に読んでたら人格形成に影響与えられまくりだっただろうな。
    ストーリーは入り組んでいるし、登場人物も多いし、一見難しそうに思えるんだけど、物語についていけない瞬間はひとつもなかった。謎はあるけど混乱はしない。だからこそ絡み合った謎が順番にほどけていくのがひたすらに楽しかった。ほどかれた結果がきれいなものだったとは言えないし、言葉にできない複雑な読後感があったけど、ほどき方が美しかったせいで本全体がどうにも魅力的に思えてしまう。
    自分の中にある怖いところをぐうっと引っ張り出されそうになるこの感じは何だろう。

    それから、読んでる途中でふと『たのしい編集』(和田文夫著、ガイア・オペレーションズ)のことを思い出した。そういえば、あの本に京極夏彦のことが書かれていた気がする! と本棚から引っ張り出してきた。
    「小説家の京極夏彦はみずから〈インデザイン〉でDTPをおこなっているという。デビュー作の『姑獲鳥の夏』(文庫版)をみると本文約六二〇ページ中、文章の途中で改ページされているのはわずか十一ヵ所。それもほぼすべて「、」で改ページされ、改ページの冒頭が会話ではじまるといった区切りのよい場合だけである」(『たのしい編集』本文から引用)
    どうやら京極夏彦はデザイナー出身らしい。読み終わったページをぱらぱらとめくってみたんだけど、どのページもみごとに見開きの最後で文章が終わっている! さらにびっくりしたのは本編後の注釈だ。
    「文庫版として出版するにあたり、本文レイアウトに合わせて加筆訂正がなされていますが、ストーリー等は変わっておりません。」(本文から引用)
    この徹底っぷり。私はこれまで「読みやすさ」や「わかりやすさ」といったものを「難しいものをかみくだき、平易にすること」だと思っていたけど、それ以外にももっと方法はあるのかもしれない、と気づかされた本でもあった。

    それにしても京極堂こと中禅寺秋彦、あまりにも魅力的すぎないか!? これを推しが演じるなんて想像するだけで泣きそう。京極堂が登場するたびに大興奮したし、かっこいい科白言うたびに付箋貼った。「この世にはね、不思議なことなど何ひとつないのだよ」というフレーズが推しの口から出てくる日が今から楽しみでたまらない。

    【読んだ目的・理由】推しの主演舞台の原作だから
    【入手経路】買った
    【詳細評価】☆4.0
    【一番好きな表現】
    「呪うも、祝うもそれは言葉次第。あなたの気持ちなど関係ない。たとえ発する者に嘘偽りがあろうとも、一度発せられた言葉は勝手に相手に届き、勝手に解釈されるのです。問題はどう表現するかではない。どう理解されるかです」(本文から引用)

  • やはり長編でした。仕事の昼休みなどの空いた時間を見つけては読んでいました。京極堂の憑き物落としのシーンは流石です。ここだけは一気に読み終えました。点在していた無数の伏線が見事につながり一本の線になる様は圧巻。あー、それでこうなるのかと!それと無駄なうんちくがまた至高!ただ、この小説はトリックを楽しむミステリとはちと違うようです。魍魎とは何なのか。気になる方は是非読んでみてください。猟奇事件に耐性がない人はキツイかもしれませんが。最後に一言。 「ほう」 私は何だか酷く、あの男が羨ましくなつてしまつた。

  • 読後の余韻に残ったのは、自分自身の幸せの平凡さとその温かさだった。
    あらゆる場面で魍魎は人に囁き、人は境界を越えてしまう。そんな偶然の絡み合いのミステリーだった。計画性の高いパズルのような事件ではなく、人が感情の揺らぎの中で蠢いていく有機性を感じた一冊だった。
    それにしても榎木津はなんとも憎めない。じめっとした重い話を掻っ攫ってくれる、乾風のようなキャラクターだと思う。このキャラクター達の絶妙なバランスも面白さのひとつだと感じている。

    • 土瓶さん
      こんばんは~^^
      榎木津は女性ファンが多いですねー。
      ご存じかもしれませんが「百鬼徒然袋 雨」と「百鬼徒然袋 風」は百鬼夜行シリーズの外...
      こんばんは~^^
      榎木津は女性ファンが多いですねー。
      ご存じかもしれませんが「百鬼徒然袋 雨」と「百鬼徒然袋 風」は百鬼夜行シリーズの外伝版で、あの榎木津を主人公にした中編集です。
      各3篇ずつだったかな。
      もし知らなかったらもったいないなと思ってお知らせしました。
      けっこう笑えます。
      できればシリーズは発売順に読んでいただくのが良いかと思いますが、よろしければ手に取ってみてください。
      2023/11/13
    • みねこさん
      土瓶さま
      コメントありがとうございます。
      素敵なお知らせにわくわくしました。まだシリーズ3作目を拝読中ですので、道は長いですが先が楽しみにな...
      土瓶さま
      コメントありがとうございます。
      素敵なお知らせにわくわくしました。まだシリーズ3作目を拝読中ですので、道は長いですが先が楽しみになりました。
      その頃には煉瓦本の成果で手首も強くなっていそうです。
      是非また、ご教示ください。
      2023/11/14
  •  京極堂が関口君の本の掲載順を考えて置いてあげたシーンがとても好き。
     ご無沙汰すぎるのがちょっと面白くなくて鳥口くん巻き込んで小さな意地悪をして、それでもなんだかんだで目的を達成させてあげて、物事を進展させて一人になった時関口君の忘れ物に気付いて、京極堂は聡明だからきっとその忘れ物を見て関口君の用件が鳥口くんのそれだけじゃないことに気が付いてああ悪い事をしたなあ、言えば良かったのに、いや言えなかったのかってとこまで考えて、まだ決まってないんだろうって想像して自発的に考えてあげたんだろうなあという気がしてその思いやりがとても心地よい。
     最後の関口君の本を見て大笑いしているところも好き。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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