詩的私的ジャック (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (474ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062647069

感想・レビュー・書評

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  • 妻の殺人を隠す為に考えたトリックもすごかったが、その妻と弟まで殺す計画に瞬時に変更し実行するのが恐怖でした。ほぼ完全犯罪を防いだ萌絵の行動が凄かった

  • 森博嗣先生のシリーズ作品をすべて読むというのが僕のライフワークのひとつであるが、本作はS&Mシリーズの4作目である。

    本作も理系ミステリーの魅力爆発であるが、今回は正統派な密室殺人が複数発生する。

    前作の『笑わない数学者』に比べるとトリックもかなり入り組んでいて読み解いていくのに力量がいる感じだ。

    さて、S&Mシリーズは理系トリックを解き明かすのも魅力だが、犀川先生と西之園萌絵との恋愛の行方が気になるところだ。
    今回は萌絵ちゃんがかなり大胆に犀川先生に迫っていく。お酒の力を借りたとはいえ、萌絵ちゃんからはっきりとああ言われてしまうと犀川先生も誤魔化しきれないよね。

    21歳の萌絵ちゃんをお子様扱いするのも気が引けるし、かといって13歳も年下で、幼いころから知っている自分の教え子に邪な気持ちを抱くのも大人の男性としてどうなんだ……と考えてしまう犀川先生の気持ちも良くわかる。
    まあ、この二人がどうにかなるのはいずれにしても萌絵ちゃんが大学を卒業してから考えるというのが一般常識的には一番波風が立たないのだろうな。

    このS&Mシリーズで僕がもう一つ楽しみにしているのが、犀川先生の名言だ。
    今回の犀川先生の名言はこんな感じ。
    犀川先生が萌絵ちゃんから大学院に進むことについて『自分は研究に向いているか?』と質問された際に答えるセリフだ。

      犀川『研究ってね。何かに興味があるからできるというものじゃないんだよ。
         研究そのものが面白いんだ。
         目的を見失うことが研究の心髄なんだ。
         君が、今、殺人事件に夢中なのと同じ。
         君だって、殺人が好きなわけじゃないだろう?』
      萌絵『不思議なことって、あまり日常にないでしょう?』
      犀川『勉強すればたくさんあることがわかるよ。
         わかっていないことばっかりなんだ。
         ただ、みんな、不思議を見逃しているだけだよ。
         ブーメランがどうして戻ってくるのか、
         ヘリコプタがどうして前進するのか、
         工学部の学生だって誰も知らない』

    う~ん。犀川先生の言葉にはいちいちうなずかされる。こういう風に言われると、じゃあ、勉強ちゃんとしようかなって思ってしまうよね。
    僕はもう40をトウに超えた中年男子だけど、中高生の時にこのS&Mシリーズを読んでいたら人生変わっていただろうなって思うなあ。

    • やまさん
      kazzu008さん
      こんにちは。
      1月から、その月の最後に読んだ本に、その月のベスト3を載せています。
      きょうから始めています。
      ...
      kazzu008さん
      こんにちは。
      1月から、その月の最後に読んだ本に、その月のベスト3を載せています。
      きょうから始めています。
      やま
      2020/02/23
    • やまさん
      各位
      こんにちは。
      1月最後に読んだ本は、「新・浪人若さま 新見左近【四】-桜田の悪 (双葉文庫) 」です。
      見つけ方は、私のページの...
      各位
      こんにちは。
      1月最後に読んだ本は、「新・浪人若さま 新見左近【四】-桜田の悪 (双葉文庫) 」です。
      見つけ方は、私のページの「読書グラフ」の2020.01をクリックして、1月、本、27(冊)をクリックして、一番最後までもって行くと最後に読んだ本の所に行き当たります。
      やま
      2020/02/23
  • 暗示的な連続殺人に、今まではバリバリの合理的手法で殺人が起こっていたのに今回はちょっと趣向が違う?と思いながら読み進めていったら、やっぱりトリックが潜んでいた。
    最後の殺人のトリックは全く予想外で驚いた。
    犯人の頭脳も凄いけれど、ほとんど萌絵から聞いた情報のみで推測する犀川先生の明晰さが凄い。

    萌絵との仲もぐっと縮まった感じで、その意味でも続きが気になる。
    すごく面白かった!

  • 犯人はなぜ密室を作ったのか?なぜ死体に文字を刻んだのか?なぜコンクリートを盗んだのか?
    そして、なぜ殺したのか。
    様々なWhyが交錯し、予想だにしない真相が導かれる。

    まず、「コンクリートが盗まれた」という事実から盗んだ=犯人はコンクリートに何かを隠した=その時持ち出せなかった という単純な三段論法から犯人を特定するのが見事。「もし、西之園くんの足がもう少し大きかったら、この事件は解決していなかったでしょう。」という皮肉的な一言も最高だ。

    また、寛は元々部屋にいて、入ってきた稔を殺してから出てきたというトリックも単純だが気づかなかった。元々は本物の稔だったが、部屋に入る前から寛が化けていたと誤認させるのが上手い。
    「結城稔を杉東よりあとに殺したことを隠すために死体に文字を刻んだ。」
    「入れ替わりのトリックを成立させるためには結城に尾行をつけさせなければならないので、稔が疑われるように歌詞に似せて殺した」
    というような一つ一つの事柄に合理的な理由がついているのも良い。

    ここまででもかなりの傑作だが、これに加えて動機も衝撃的。
    もう一度、真っ白なノートが欲しかった。衝撃的だが、理解できないこともない、むしろだれしもこういった発想は持つものではないだろうか。
    すべて、素敵なイーコールのために……

    最後の一文もとても良い。ミステリとしての出来も超一級品。それに加え、心に残る表現、魅力的なキャラクター。最後の作品だ。

  • 犯罪の内容とか犯人とかトリックとかよりも二人の関係が確実に進展してる気がするよ。

    その事実だけで星五はつけられるね。

    意外に時間が経つのも早いしシリーズが終わるまでに萌絵は卒業しそうだからその辺りどうなるか楽しみに読み進める次第です。

  • 今回は犀川先生が出張ということもあり、先生&萌絵ちゃんの師弟コンビシーンが少なくて物足りなさもありました。が!後半はいつも通り、秀逸頭脳で謎解き、そして、2人のなんとも焦れったいようなやり取り、、たまりませんでした。

    犯人の動機に関しては、快感とか恨みとかではなく、誰にでも1度は心に芽生える、言語化しにくい感情?で、あぁ、なんか少し分かるかも……と思ってしまいました。

    連続殺人、それ自体がカモフラージュになっている点。
    気持ちは言葉にしなければ伝わらないという教え。
    先生や萌絵が口にする高級なジョーク。
    緻密に計算し尽くされたトリックたちに覆い隠された、純粋さが生んだ動機。
    小道具さえもしっかり伏線回収される点。
    最後のフレーズに至るまで美しかったです。
    最高。。。

  • シリーズ通して感じているのが、淡々とした文体なのに無機質にならず心理描写が繊細だなということ。
    今作は特に重点を置いて心理描写がなされているように感じた。
    国枝さんずっと存在感はあるのにキャラクター性があまり見えてこなかったので今作で少し人柄が分かって嬉しい。
    犯行動機、ちょっと分かるなぁ。

  • 最後の“夢と希望”に対しての答えで、星5

  • いやー最高!どんどん犀川先生と萌絵のファンになっていく!!

  • 今回は3つの密室と4人の死体から成り立つトリックでした。
    頭ひん曲がりそうになりました。
    犯人を非難するのでなく、「本当にやったとは思えない」と警察が語る所は切なかった。
    萌絵ちゃんが少し大人になりました。

    2014.9.17(1回目)

著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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