霧の橋 (講談社文庫)

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レビュー : 33
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062648202

感想・レビュー・書評

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  • 乙川優三郎の時代小説大賞受賞作。
    これには唸らされた。乙川氏、見事な受賞作である。
    まずは、舞台設定が独特である。
    武家の次男坊である主人公与惣次が父の仇を討ちを果たして帰郷すると、事情によりお家は断絶していた。
    行き場をなくして江戸に戻った彼は、暴漢に襲われていた娘を助けた縁で、実家である商人の家の婿となり武士を捨てることとなる。
    本業の商いにおける大店の野望に立ち向かう本筋に、様々な話が絡んでくる。
    商人になったものの、なかなか捨て切れない武士としての心構え、父親が討たれた背景にあった物語と終わっていなかった仇討ち、そしてそういった事々に振り回される中で少しずつ失われていく夫婦の心の絆。
    筋の絡めたかも素晴らしいのだが、何と言っても変節していく二人の心情の描写と絆を取り戻そうとする焦りと揺れ、その奥深さに唸らされてしまった。
    そして霧の中、吾妻橋でのラストシーンでは、仇討ち、与惣次の心、夫婦の絆すべてに決着がつくのだが、ここは涙なしには読めずに何度も読み返してしまった。
    藤沢周平で最も好きな「蝉しぐれ」は、結ばれない運命の主人公と幼馴染の心情とそれにかぶさる情景描写が素晴らしかったのだが、それに匹敵するのではという思いで読み切ってしまった。
    素晴らしい時代小説に出会えた嬉しさでいっぱいの読後感だった。

  • 穏やかな主人公に心和むストーリー。一気に読めるが盛り上がりにも欠ける感じ。あまり印象に残らない。

  • もとは武士だった男が、紅屋の主人として生きる、人情あり、駆け引きありの物語。
    この作者は、一本の物語を描きながら、その裏に表のストーリィに負けないくらいの設定を用意する、というのが手法なんでしょうか。
    「喜知次」でもそうでしたが。
    商人としての浮き沈みが主ですが、裏筋の方が気になるというか、きっと作者はそれを描くために主筋を描いているのでしょう。
    夫婦の絆もあり、駆け引きの面白さもあり、かなり「読ませる」お話ですが、はらはらするような展開はちょっと苦手なので星4つ。

  • いままで読んだ歴史小説はチャンバラありのものがほとんどだったので、この作品には新しい歴史小説観を与えてくれた。決闘はほとんどないが、さらっとした読後感がなんともいえない。どこかやさしい小説である。

  • 何故か長編と思わず、短編集との思い込みで読み始め(笑)
    偶然の出会いから、刀を捨て商人となった主人公惣兵衛、商売上の諍いがどう展開するか、サスペンスタッチに描かれる。
    さらに、過去のしがらみから、時に武士の心が顔を出し、夫婦の間にすれ違いが生じる。
    しかし、商売仲間の言葉がきっかけに、過去を克服し、感動のラストシーンへ。
    この場面を描きたい為に、それまでの話があったかのよう。
    心に琴線を震わす夫婦小説。著者が、藤沢周平の後継者と世評される所以。

    蛇足ながら・・・
    この作品の主人公は、商人の道を選ぶが、同じく刀を捨て商人になった、あさのあつこ著『弥勒の月』シリーズの遠野屋清之介を思い浮かべる。
    故児玉清氏お勧めの作品であり、人間の心の闇を見事に笑顔ている。まだまだシリーズは続いているが、清之介が今後、商人を全うできるか、それとも刀を取らざるを得なくなるか、今後の行方が気になる。

  • 【状態】
    展示中

    【内容紹介】
    刀を捨て、紅を扱う紅屋の主人となった惣兵衛だったが、大店の陰謀、父親の仇の出現を契機に武士魂が蘇った。妻は夫が武士に戻ってしまうのではと不安を感じ、心のすれ違いに思い悩む。夫婦の愛のあり方、感情の機微を叙情豊かに描き、鮮やかなラストシーンが感動的な傑作長編。第七回時代小説大賞受賞作。

    【キーワード】
    文庫・時代小説・夫婦・家族・恋愛・武士


    ++1

  • 久々の時代小説だが、一気に最後まで完読できた。
    これまでの食わず嫌いを改めようと思う一冊。
    最後の展開が少しくどいが、読み終わった後に
    清々しい気分になったのも事実。

  • 読後、いい時代小説を読んだと心地良い余韻に浸れる小説でした。

    情景が目に浮かぶラストシーンは本当に素晴らしかったです。

  • この本を読んで後悔する人はいないだろう。むつかしいことは考えず、描かれた人の情に浸ると気持ちが良い。

  •  武士を捨てて商人になった惣べえ。しかし、心の底から商人になりきれず、武士としての立ち居振る舞いや考え方が顔をだす。「銀2貫」が思い浮かんだ。武士は、仇討だなんだと大変だ。商人として目の前の幸せがふいになりそうで心配したよ。

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著者プロフィール

1953年東京都生れ。96年「藪燕」でオール讀物新人賞を受賞氏デビュー。97年「霧の橋」で時代小説大賞、2001年「五年の梅」で山本周五郎賞、02年「生きる」で直木三十五賞、04年「武家用心集」で中山義秀文学賞、13年初の現代小説「脊梁山脈」で大佛次郎賞を受賞。16年「太陽は気を失う」で芸術選奨文部科学大臣賞を、17年「ロゴスの市」で島清恋愛文学賞を受賞。著書に「トワイライト・シャッフル」「R.S.ヴィラセニョール」など。

「2018年 『ある日 失わずにすむもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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