少年と少女のポルカ (講談社文庫 ふ 52-1)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062648516

作品紹介・あらすじ

男子高へ通うトシヒコは陸上部のリョウに恋してる。同級生のヤマダは「間違った身体に生まれたから」と女性ホルモンを注射する。幼なじみのミカコは突然、怖くて電車に乗れなくなった。心と身体の「違和感」にふるえる三人の青春を軽妙に描く表題作に、「午後の時間割」(海燕新人賞)を併録した芥川賞作家の作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 表題作と、海燕新人文学賞受賞作「午後の時間割」の2作品。1995年〜1996年の作品だが、全く劣化を感じなかった。藤野千夜作品は芥川賞受賞作品の「夏の約束」しか知らなかったが、他の作品も読んでみたくなった。

  • セクシャルマイノリティ当事者を特別だと感じたことはない。彼等の悩みを理解することなど不可能だ、私の抱えてるものが誰にも理解されないのと同じように。
    電車に当たり前に乗れる人には解らない。顔見知りばかりの街で生きる恐怖を他人は知らない。学生の頃が一番辛いものだ。でも同じ人間だから。感情があり、恋をして、痛みを感じる人間だから。笑う事を禁じられた人間なんていないの。人を馬鹿にする者より私や君のが愛を知っています。偶然触れた手が心臓になり全身紅潮し世界が貴方だけよと嬉しくて涙した。そこに性別は無かった。正直に、生きて欲しい。まだ彼等は16歳だ。

  • 世の中の人みんなが、この小説の中の主人公達みたいに他人と関わりあえたらいいのに、と思った。
    主人公達は世間から見れば明らかに少数派な人達だけど、決して自分や他人に対してくさくさしたりしない…。自分も他人も、認めている。
    穏やかで優しい小説。
    「午後の時間割」はハルコのダメっぷりがいい笑

  • 「男子高へ通うトシヒコは陸上部のリョウに恋してる。同級生のヤマダは「間違った身体に生まれたから」と女性ホルモンを注射する。幼なじみのミカコは突然、怖くて電車に乗れなくなった。心と身体の「違和感」にふるえる三人の青春を軽妙に描く表題作に、「午後の時間割」(海燕新人賞)を併録した芥川賞作家の作品集。」

    「ゲイ、性同一障害、不登校の高校生の物語。傷つきやすく繊細な心の動きが生き生きと描かれる。排他的な社会、残酷な世間におびえる人にとって、「怖いね」と声を掛け合う友がいることがどれほど大切か。作者が3人に寄り添い、うんうんとうなずきながら声を聞き取ったような優しさがじんわりと伝わり、胸を打つ。」
    (『いつか君に出会ってほしい本』田村文著  の紹介より)

  • 思春期と性と自我、人は誰しもこの困難に直面する。正解がないから環境や家庭といった様々な要因にたやすく揺れ、そうして挫折すれば大きな傷を負う。なんてリスキーな社会を創ってしまっただろう。

  • 55

  • きょう読了。はじめての作家さん。表題作と「午後の時間割」の二篇。
    表題作は、男の子が好きな男の子と、自分は女の子だと思って男の子が好きな子とを同時に描いているのが興味深かった。でも、ふたりの自己把握があまりにはっきりしていて、アイデンティティの確立に疑問をもたない感じなのに少し違和感を覚えた。それも生き抜くための術、ということなのかしら。二篇目の、ハルコの何かに裏切られた感じの方が、個人的には好きかも。年齢は関係性のなかで意味をもつものなのか…。
    斎藤美奈子さんの解説が、割とオーソドックスなことしか言っていなくてちょっと意外。

  • 芥川賞作家・藤野千夜のデビュー作含む短編集。オトコノコが好きな主人公の男の子。神様が間違えて男の子にしちゃったという心は女の子、スカートを履いて登校する男の子。電車に乗れない女の子。思春期の3人の抱えるココロとカラダの悩みを、誰しもを否定することなく、淡々とただ淡々と描きだした作品。思春期の悩める少年少女に合いそうな作品。2013/108

  • 『少年と少女のポルカ』
    男子高に通うゲイのトシヒコは陸上部のリョウに片思いをしている。
    トシヒコと同じクラスのヤマダは女性になるためホルモン注射や手術をし、女子の格好で通学する。
    ヤマダはトシヒコに好意を抱いており、ちょっかいをかけるがトシヒコはゲイである自分は認めても、女になりたいヤマダを理解できない。

    トシヒコとヤマダの視点交互に、高校生の日々を描いていく。
    トシヒコもヤマダも、自分の性癖を受け入れ本人にとっては穏やかに暮らしている。
    対して、トシヒコの幼なじみとして登場するミカコは秀才のごく普通の女子高生だが、心が不安定になって電車に乗れなくなり、家の近くをぶらぶらして過ごす。
    異質である2人が自分なりに生きているのに対し、普通のミカコが学校に通えない状況というコントラストが効いている。

    性同一性障害とか、同性愛とかをごく普通の高校生活にひそませることで感じ取るものがある物語。


    『午後の時間割』
    進学校を卒業し、浪人生活をはじめたハルコは、自分が「64歳である」と思い込んで過ごすことにする。
    ”委員長”とあだ名される美人の友人と気ままに過ごし、東大に現役で進んだと推察されるテシロギ君とデートする物語である。
    屋上で煙草を吸ったり修学旅行で酒盛りするような高校生活の回想と、マイペースな浪人生活が自然に交じり合って進んでいく。
    ハルコは失恋する。
    読んでいる途中で感じる予感通り、テシロギ君はゲイで、ハルコとは友人以上になれないのだ。
    ハルコは妄想家だけれど、リアルな妄想ができるということはある意味現実をしっかり捉えられているということであると思う。
    自分が64歳でないと認めることは、ハルコが現実と向き合わなくてはいけないことを示していると感じた。

  • 今の読むと、さすがに古さは隠せない。
    あれ? 自分が年齢を重ねたせいか?

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著者プロフィール

1962年福岡県生まれ。千葉大学教育学部卒。95年「午後の時間割」で第14回海燕新人文学賞、98年『おしゃべり怪談』で第20回野間文芸新人賞、2000年『夏の約束』で第122回芥川賞を受賞。その他の著書に『ルート225』『中等部超能力戦争』『D菩薩峠漫研夏合宿』『編集ども集まれ!』などがある。家族をテーマにした直近刊『じい散歩』は各所で話題になった。

「2022年 『団地のふたり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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