三月は深き紅の淵を (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.57
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本棚登録 : 11213
感想 : 1092
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062648806

作品紹介・あらすじ

鮫島巧一は趣味が読書という理由で、会社の会長の別宅に二泊三日の招待を受けた。彼を待ち受けていた好事家たちから聞かされたのは、その屋敷内にあるはずだが、十年以上探しても見つからない稀覯本『三月は深き紅の淵を』の話。たった一人にたった一晩だけ貸すことが許された本をめぐる珠玉のミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 幻の名著に取りつかれた人々の物語。一冊の本が人生に与える影響を感じさせる作品 #三月は深き紅の淵を

    作者や内容が謎に包まれた本『三月は深き紅の淵を』に取りつかれてしまった人たちの物語。全部で4つの中編からなる作品。
    カテゴリとしてはミステリーになるのでしょうが、むしろじっくりと楽しめる文芸作品といった趣き。

    ストーリー自体は比較的シンプルなのですが、綴られている文章の切り込み方が鋭角。今何を読まされているのか分からなくなるような幻想、夢想に包まれるのが魅力で、なんとなく読者に提示して終わっていくという不思議な一冊です。

    ■待っている人々
    謎に包まれた本『三月は深き紅の淵を』を大屋敷で探す物語。 面白い★5
    登場人物のクセがスゴイ。嫌らしい偏見と若者をなめ腐った価値観が大好き(実際にいたら嫌いになるでしょうけど)。
    ミステリーとしても憎たらしい結末で素晴らしい。

    ■出雲夜想曲
    本の作者に関する物語。
    「小説」というものに対峙する姿勢が独創的で、文学とは芸術だなと感じずにはいられませんでした。

    ■虹と雲と鳥と
    公園の階段で転落死した女子高生にまつわる物語。
    ありがちな事故、事件のストーリーと思いきや、しっかり本作のテーマに沿った内容になっていく。本作も本に対する深堀と思想が激しく、読んでいて幻想的で不気味なな気分になっていきます。

    ■回転木馬
    一見どういう話かさっぱり分からないが、おそらくこの物語は作者本人の叫び声。
    本を書くことの楽しさ、苦しさ、愛だったり、憎悪だったりが見え隠れする作品ですね。読み解こうとするより、感じることが大切です。

    なんとなく読んでしまうとよくわからなくなってしまいますが、読めば読むほど面白くなる作品なのは間違いない。続編もあるようですので、手に取ってみたいと思いました!

  • はじめての恩田陸さん。
    北見隆さんのカバーとイラストが気に入ってこの本を選んだのですが、うわぁ、凄い本を読んでしまったというのが率直な感想です。
    「三月は深き紅の淵を」という一冊の本を巡って、その本についての見解や読書談義がすごく興味深く、面白かった。
    謎が謎を呼び、とても魅力的なその本の作者は一体誰なのか。
    四章から成るミステリー仕立てで、ファンタジーの要素もあり、どこかしら不思議な懐かしさもあり、永遠にこの本を読んでいたくなりました。
    回転木馬の恐怖は、以前から私の中にもあって、延々と回り続けて、出口のない怖さを子どもの頃から感じていたので、同じような文章を見てハッとしました。
    読めば読むほど深い闇の中へ連れて行かれるような、他に類を見ない構成は素晴らしいです。
    理瀬のその後が知りたい。「麦の海に沈む果実」もぜひ読まなくては。

    • アールグレイさん
      こんばんは!
      夜遅くに失礼します。
      この本、良さそうデスね。今「Day to Day」が終わり、次は何を読もう?積読を1冊片づけようかな...
      こんばんは!
      夜遅くに失礼します。
      この本、良さそうデスね。今「Day to Day」が終わり、次は何を読もう?積読を1冊片づけようかなと思い、読みやすい本をかじり始めた所です。mcafeさんは、どんな本を読んでいますか?
      おやすみ(-_-)zzzなさい.
      2021/05/21
    • m.cafeさん
      おはようございます。
      私も日々積読の片付けに勤しんでおります。
      今年は梅雨入りが早いので、お家時間が多くて、ますます読書の時間が増えそうです...
      おはようございます。
      私も日々積読の片付けに勤しんでおります。
      今年は梅雨入りが早いので、お家時間が多くて、ますます読書の時間が増えそうですね(≧∀≦)
      2021/05/21
  • 「三月は深き紅の淵を」何とも詩的でぼやっとして近寄りがたい雰囲気さえ感じてしまう不思議な書名に魅かれました。

    四つの章から構成されていますが、この本の中にこの本と同じ本が登場して、その中でまたストーリーが展開してとややこしいことこの上ない作りです。でもなかなかに楽しめました。第一章と第二章は恩田さんらしくグダグダの世界。ただ、受ける印象は随分と違いました。私的にはいつか乗ってみたい寝台列車の雰囲気を存分に味わえる第二章がより好きです。これは、恩田さんの取材の賜物でもあり、それは第四章で明かされます。そして、第三章は少しキリッとした世界観の学園もの。最後の場面は想像すればするほどにとても切ないものがあり、強く印象に残りました。
    それにしても共通の本のことを題材にこうも全く違う世界が展開するというのも凄いと思いました。

    ただ、問題は第四章です。異物感満載。どうしてこんなものがここにあるのだろうかと戸惑いました。いきなり恩田さんが目の前に登場して語り始めたかのような世界。恩田さんの小説に対する考え方や生活風景がおぼろげに見えたりでこれはこれでとても面白いです。そんな中に突如、理瀬登場。実のところ理瀬については「麦の海に沈む果実」を読もうとしたら、順番はこちらを先に読むべしという何かの記載を見てこちらにしたのですが、う〜ん、何だか分かったような、分からないような不思議な物語が展開しました。この順で良かったのか?これはもう「麦の海に沈む果実」を続けて読むしかないですね。逆にそちらを先に読まれた方もいるようですが、どちらを先に読むのが正解だったのかは「麦の海に沈む果実」のレビューで書きたいと思います。

    いずれにしても第四章をどう捉えるかで評価が大きく分かれる作品だと思いました。

  • 複雑な構成に戸惑いましたが、読み終わった今となってはおもしろかったに尽きます。
    今までに味わったことのないような類のミステリアスな一冊です。

  • 小説の作者
    一人称
    小泉八雲
    出雲

    今、私は恩田陸さんが書いた「三月は紅き紅の淵を」を読んでいる……のだけど、「三月は紅き紅の淵を」の中の『三月は紅き紅の淵を』読んでいる…すごくすごく不思議な気分

    理瀬シリーズを読み始めようと手に取りました
    図書館本(リクエスト)

  • 66冊目『三月は深き紅の淵を』(恩田陸 著、2001年7月、講談社)
    謎多き稀覯本「三月は深き紅の淵を」を廻る4つの物語。
    メタフィクション的な要素を持った作品ではあるのだが、とにかく奇怪で複雑な構造をしており、最後の最後までどのような結末を迎えるのか全く予想もつかなかった。
    ほとんど実験小説のような作品であり、著者本人が自らの筆力を試すために本作を執筆したのでは無いだろうか、と思わずにはいられない一冊であった。

    「あたしはいつか必ず、『小説のなる木』を見つけだしてみせるんだから」

  • 気になってしかたがない一冊。

    たった一人に一晩だけ貸すことが許された一冊の本。
    その本をめぐって紡がれる四つのストーリー。

    どの話も個々に楽しめたけれど正直、最終章で頭は回転木馬状態。
    でも気になってしかたがない。また本を開く。
    そんな気に何度もさせられる何とも不思議な作品だった。

    たぶん随所に散りばめられた本好きの心を刺激するフレーズに魅せられてしまったからかも。
    そして最初一番理解できないと感じた最終章が読むたびに一番好きになるという不思議さ。
    解説まで大切にしたい大好きな一冊になった。

    • けいたんさん
      こんばんは(^-^)/

      久しぶりに恩田さん読みたくなった〜
      これよさそうだな。シリーズなんかな?
      こんばんは(^-^)/

      久しぶりに恩田さん読みたくなった〜
      これよさそうだな。シリーズなんかな?
      2019/03/28
    • くるたんさん
      けいたん♪おはよ♪

      うん、恩田さんらしい作品だった(* ॑꒳ ॑*)
      私、きちんと理解できてないんだけど、それもまた良し。このスッキリしな...
      けいたん♪おはよ♪

      うん、恩田さんらしい作品だった(* ॑꒳ ॑*)
      私、きちんと理解できてないんだけど、それもまた良し。このスッキリしない読後感もまた魅力だった♪

      これを読むと「麦の海に沈む果実」を読みたくなるよ(* ॑꒳ ॑*)
      で、次が「黄昏の百合の骨」
      この3冊がいわゆる理瀬シリーズみたい(*≧∀≦*)

      2019/03/29
  • 本書の題名になっている本を巡ってのミステリー。
    第1章は、招待された会社員が会長の別宅で、その本を探す話。
    そこで交わされる本の話題。
    「僕の知っている範囲じゃ両極端ですね。読む人はマニアックなまでに読む。読まない人は読まない。・・・女の子はファッションでしか読まない」
    「日本の社会自体、本を読む人間には冷たいんですよ。本読むって孤独な行為だし、時間もかかるでしょ。日本の社会は忙しいし、つきあいもあるし、まともに仕事してるサラリーマンがゆっくり本読む時間なんてほとんどないじゃないですか」
    ブクログ諸氏たちはみな、納得し同意するのではないだろうか。
    第2章は、その本を探して出雲へ旅行する編集者の話。
    第3章は、二人の女子高校生の死が、事故か自殺か、あるいは事件かを巡って、様々な憶測がなされる。
    第4章は、主語が、私になったり彼女になったり、はたまた色々な人物の固有名詞になったりと、めまぐるしく変わる奇妙な短編。
    著者が緻密かつ周到な計算で築き上げた小説なんだろうが・・・。

  • 著者もわからない、限られた人しか読んだことがないと思われる4部立ての本を巡る物語。
    本書自体も4章からなり、読み進むうちに、少しずつタイトルや著者にまつわる謎に近づいたような気になるが、関係性はわからないまま。
    構成などすごく考えられた小説だと思うが、3章の"虹と雲と鳥と"、4章の"回転木馬"は、私には重すぎてちょっと苦しくなった。

  • 『薔薇のなかの蛇』を読んで読むことにした。鮫島さんは趣味が読書という理由で、会長のどこから入ればいいのかわからないほどの門構えの大きな別宅に招待された。その屋敷内にあるはずだが、探しても見つからない稀覯本『三月は深き紅の淵を』。赤く硬い外皮が不規則に裂け赤い粒が多数現れる毒々しい石榴の実が鍵ではないだろうかと思ったが違うようだ。思索と推理の旅の第2章。小説が木になっている?第3章は、真相が気になって読み進めるしかない。第4章、私もメリーゴーラウンドが苦手。そう、孤独感、晒されている感じが嫌だったのだ。

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著者プロフィール

1964年、宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞および第2回本屋大賞を受賞。06年『ユージニア』で第59回日本推理作家協会賞を受賞。07年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞を受賞。17年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞を受賞。近著に『スキマワラシ』『灰の劇場』『薔薇のなかの蛇』、エッセイに『土曜日は灰色の馬』『日曜日は青い蜥蜴』など作品多数。

「2022年 『月曜日は水玉の犬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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