三月は深き紅の淵を (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 8402
レビュー : 948
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062648806

感想・レビュー・書評

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  • ブクログの談話室の「恩田陸さんに最近嵌りました」のスレッドを見て、恩田作品は「夜のピクニック」しか読んでないことに気が付いた。

    本屋で昔からよく見る本書を選ぶ。
    「三月は深き紅の縁を」という何か耽美的なタイトル。
    このタイトルについて具体的に語られることは無いけど、読書中に時々頭を掠めた。
    幻の本を探すという第1章。
    しかし、幻の本の作者を探す第2章、二人の少女の死を秘密を辿る第3章。第1章であった幻の本の紹介とは、設定が近いけれど変わっている。

    第4章では作者が何度も「書き出し」を書き始める。作者が語るモノローグは、執筆活動や過去の思い出、第2章の取材旅行。その一人語りが架空の物語に引き込まれる。
    何回もの「書き出し」は、やがて孤立した学園への転入生おの物語が本筋になっていく。ゴシックホラーというのかな、「アッシャー家の崩壊」のように最初から破滅が待ってるオドロオドロした話。映画「千と千尋の神隠し」で海上を走る電車のシーンを想い出す場面があった。作者の深層心理にある風景かな。
    ゴシックホラー(?)は、唐突過ぎて成功していると云い難い。
    大体、この第4章は完結してない。

    耽読したとまでは行かないが、この不思議な物語に浸っていられた。

    「麦の海に沈む果実」はこの学園ホラーを書き直したものだよな。読むべきか?

    ロレンス・ダレルの「アレキサンドリア四部作」のことが出てきた。30年ぐらい前に池澤夏樹さんの書評を読んで、いつか読みたいと思った本。忘れないでおこう。

  • 注:この本の内容と『黒と茶の幻想』の結末の方向性に触れています


    ウィキペディアを見ると4作目なんですね。恩田陸の。
    『六番目の小夜子』、『球形の季節』と恩田陸、お得意のパターン(設定といい、結末がどっかいっちゃうといいw)が2作続いて、次に本人曰く「完璧にプロットと作って書いた」という『不安な童話』。
    その後ということで、まぁなんというか。いろいろ鬱屈が溜まっていた時期だったんですかね?(笑)
    登場人物を通して語る、どっかで聞いたよーな、どーでもいい世相批判がうるっせーのなんのって!w
    『三月は深き紅の淵を』という妙にくどいタイトルもそうなんですけど、素人が手慰みで書いている小説じゃないんだからさぁ~w

    いや、読んでいて、やっぱりさすがだよなーと思う所も多々あるんです。
    どうという話じゃないんだけど、何だか妙に読んじゃうところとか。
    その辺りはさすが腐っても恩田陸!って感じ。←ホメていますw
    とはいえ、如何せん全般にテンション低すぎねぇ~か~って感じはするかなぁ~(と言うより、意気込みに筆力が追いついてなかったという方が適当か?)。

    この本は4つの話からなっているんですけど、1つ目『待っている人々』は話自体どーということないのもさりながら、上でも書いたように、登場人物を通して語る、どーでもいい世相批判が多すぎですね。
    著者独自の視点のそれであればまだしも、全て当時他の誰かも言っていたようなことで、読んでいて薄ら寒い(笑)
    ていうか、ウィキペディアを見るとこの『待っている人々』が出たのは1996年ということですけど、現在の世情批判と大して変わらないところが面白いです。
    その時代から4半世紀近くが経って、ITだなんだかんだ言っても、人間も世情も大して変わんないんだなぁ~ということなんでしょうか?w

    ただ、これも上に書きましたけど、どーということない話なんだけど不思議と読ませるんですよね。
    たんに恩田マジックということなのか、ていうか、この話の場合、時代が恩田陸に追いついた(or世の中が恩田陸化した?w)と言った方が適当な気もするんだけど……!?
    その辺り、当時リアルタイムで読んだ人に聞いてみたいです。
    小説としては、ま、★2つというところw


    2つ目の『出雲夜想曲』は結構好き。
    女性二人が夜行列車で延々語る、いかにも恩田陸というインドアな感じ、それはそれでいいんだけど、実際に出雲の着いてからの雰囲気がいいんですよね。読んでいて醸し出される光景が妙に暗くって。
    夜行列車の車内は夜だから当然暗いはずなのに、昼間である出雲での出来事の方にほの暗さを感じるところが面白い(上手い!)です。
    ただ、重箱の隅突っつくようですけど、あの廃屋で歩きタバコをする人はいないと思うけどなぁ…。
    小説としては、★3つ。

    3つ目の『虹と雲と鳥と』は、終盤いきなりバーン!という衝撃とそれに続く迫力ある場面があるから、そこで評価は一気に上がるんですけどねぇー。
    ただ、恩田陸オールスターズとでも言いたくなる登場人物たちに、え?またこの人たち?と、ちょっと食傷気味(笑)
    ていうか、不思議なのは二人の母親って、東京でデザイナーとして活躍していた父親と結婚したはずなのに、なんで離婚した後、どっちの奥さんも同じ長野に住んでいるんだろう?
    あと、二人がぶら下がっていたというのもよくわからないんですよね。
    そんなこと実際に出来るものなのか?第三者が後で見てそういうことがあったとわかるものなのか?
    その辺りはよくわからなかったんですけど、そういうのは重箱の隅だと思うので小説として★3つ。


    4つ目の『回転木馬』は……
    いやはや。もう笑っちゃいました(笑)
    恩田陸の持ち味は結末は読者にゆだねる(結末が書けないとも言うw)ところにあると思うんですけど、まさか四部作の4つ目全て読者にゆだねるという荒業に出ちゃうとは!w
    とはいえ、読んでいて妙に面白いのが可笑しくって。
    いや、小説の部分じゃなくて。書きあぐねて、あーでもない、こーでもないとやっている、エッセイの方。
    あれ読んでいると、「四部作!と、バチっと決めちゃったら逆にダサいっていうのもあるか?」なんて思っちゃったりで。
    いやぁ、憎めねぇ、憎めねぇ(笑)
    あそこまでやるなら、いっそ、「トイレにいってスッキリしてきた」とか「コンビニ行って、ビールと肉まん買ってきた」とか、バカ丸出ししちゃえばもっと楽しめたのになぁ~w

    というわけで、これは小説じゃないんで★は無し。
    ただ、それは小説としての評価で。エッセイ、それもデビュー後4作目を書いている(まだまだ新人)作家のエッセイとしてなら、★5つでもいいんじゃないでしょうか。
    ていうか、この4つ目の話だけでなく、この本は全体的に恩田陸の創作ノートみたく読めるところがあって、そこがとっても興味深かったです。
    1つ目だったか、2つ目の話だったか、「気に入った本を読んでいると、その行間から自分が書く小説が浮かび上がってくる」みたいなことを登場人物を言う場面がありましたけど、「そうそう。この著者の書き方って、そうだろうね」って、すっごく納得できましたもん。

    さらに、この本の中に出てくる、(2001年に出版される)『黒と茶の幻想』はこの時点でどのくらいまで構想されてたのか、あるいは書かれていたのか。
    登場人物や大体のストーリーはともかく、登場人物いわく「尻切れトンボという感じは否めないね。そんなこと、どうでもいいやって感じの終わり方なんだよ」って、もうこの時点でそういう結末と決めてたってこと!?
    しかも、その後に「とにかく、途中これでもかこれでもかと変な事件を羅列するのにエネルギーを使い切っちまったって感じだね。あれは」と続くって…。
    恩田陸って、どこかの時点で結末(らしい結末)を書くことを放棄したんだろうなーと気はしていましたけど、そうか!この時点だったんですね。
    それはやっぱり、完璧にプロットを作って書いたという、前作『不安な童話』のトラウマなのかなぁ…w
    ま、人間、自分らしくないことはしないに限るってことなのかもいれません(笑)

    それはそれとして、小説の方の最後。
    憂理が理瀬に「別の三月の世界で会えるかもしれない」と言う場面があるんですけど、自分としてはこっちの三月の世界の話の方が断然面白かったです。
    もっとも、それは先に『麦の海に沈む果実』を先に読んでいて、エッセイの合間に出てくる話の断片をつなげてストーリーに出来るからであって。もし、読んでいなかったら何が何やらわからなかったような気がするんですけど、どうなんでしょう?
    その辺り、こっちを先に読んだ人に聞いてみたいです。

    その「別の世界で会える」とか、エッセイの部分が丸々2つ目の話の取材ノート(どうインスピレーションを受けたか?)になっているところとか。この4つ目の話は、いろんな点で著者の創作法が窺えるところが面白いです。
    ただ。最後の最後、「この書き出しは、どうだろう?」とあるんですけど、「森は生きている」と思うけどなぁー(笑)

    全体的には、著者が持っている自らの小説の魅力に、著者の小説を書く力(技?)がまだまだ追いついていない時期の小説なんだろうなという気がしました。
    ただ、4つ目の話の(小説の方の)最後とか、3つ目の話の途中のいきなりの展開とか、ああいうはっちゃけた展開は恩田陸にしては珍しくて面白かったですね。
    この後に書かれた(らしい)『麦の海に沈む果実』のあのなんとも煮え切らなさを思うと、何とももったいないような。
    とはいえ、その煮え切らなさこそが恩田陸の(ファンが抱く)魅力的な部分でもあるのかもしれません。

    恩田陸は、時代が恩田陸に寄り添ってきたのか、恩田陸が時代に寄り添ったのか、どちらかはわからないですけど、妙に「現在」という時代と合っているようなところがあって興味深いです。

  • で、結局なんなのよ!?というのが売り。

  • p.55「夜、暖かい家の中で、これから面白い話を聞くのを待っている。恐らく、大昔から世界中でなされてきた行為。やはり、人間というのはフィクションを必要とする動物なんだな。」


    「三月は深き紅の淵を」という謎の本を巡る短編。
    表紙、挿絵が雰囲気あっていい。
    みんなの記憶の断片と口伝えのみで広がる本の存在、それがどこかにあるという謎、たくさんの本が詰まった家、という発想とわくわく感が雰囲気があって良かった。次のも「三月」の作者について意見を交わして故郷をつきとめられるのか、というアプローチが面白かった。
    残りの二編はあまりつながりが感じられないし、もやっとした感じで終わってて残念。

    恩田陸さんの、本や作者について語る部分が的確で批評的で作家の熱い思いみたいなのが感じられる。

  • 著者作品をいくつか読んで思ったが、どの作品も物語は違っても共通で、ノスタルジックな雰囲気がある。

    本作品も例外でない。面白かった、外さない。ミステリーが好きな人には恩田陸は本当におすすめだと思う。

  • 10年ぶりくらいに再読。
    ほとんど覚えてなかった。
    複雑な物語。だけどその複雑なのが面白いんじゃないかと思う。

    第四章はメタ的。
    「鳩笛」などの四部作からなる『三月は深き紅の淵を』と、それにまつわる「待っている人々」をはじめとする第一章から第三章。
    これらを含む四部作を書こうとしている第四章。
    さらにそれを読んでいる自分という四重からなる構造で自分という存在すら『三月は深き紅の淵を』という物語にからめ取られていく感じがした。

    理瀬の物語に女性だと思ってたら女装した男性の先生がいたような記憶があったけど、出て来なかった。

    一番すきなのは第一章。鮫島の言う自分が読んできた本が全て入っている図書館は確かに欲しい。

  • どこか焦点があわない感じだったなぁ。いや、これがこの作者の持ち味だったか(笑)

    先に茶と黒の幻想を読んでしまっていたのがまずかったかな。

    四話とも一話目で出てくる表題の内容と似通っていて異なっていて。ぐるぐる回る。作者の意図はいずこに?

  • なんとも複雑な小説である。4つの章から成る、というのがひとつのポイントになっている。4つの章は、『三月は深き紅の淵を』という謎の多い作中作品をめぐるストーリーということ以外、ほとんど共通点がない。ストーリー的にもつながっていない。それぞれ、独立した作品としても十分読めそうである。

    にもかかわらず、作者はこの作品をひとつの作品として成立させた。なぜなんだろう。

    この小説は、小説そのものと、作中作品が二重構造になっている。つまり、小説そのものは「メタ物語」である。これをひとつめのメタ性としよう。

    この作品に出てくる様々な物語は、実は恩田陸のほかの作品ともつながっているという。そうだとすると、この作品じたいが、恩田陸作品のメタ物語なんじゃないか。水島新司における『大甲子園』のような。これがふたつめのメタ性である。もちろん、『大甲子園』ほどベタではなく、そのメタ性が奥ゆかしくほの見える、というところが読み手の想像を豊かにするのだけど。

    ということで、メタ物語としてもふたつの構造をもっていて、そういう構造そのものが面白さを呼び起こしているんじゃないだろうか。

  • 何となく、実験的な作品なのかなぁ。面白いところがいろいろあるけど、ヒントめいたものがたくさん散りばめられているのに、物語として完成している感じがしない。モヤモヤしている。想像力で補うには、悔しいかな私には荷が重い。


  • これが幻
    あれが今

    今が幻
    本当は本の中。

著者プロフィール

恩田陸(おんだ りく)
1964年、青森市生まれ。水戸第一高校を卒業し、早稲田大学進学・卒業。1991年、第3回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作となった「六番目の小夜子」でデビュー。2004年刊行『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞及び第2回本屋大賞、2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。2017年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞、第5回ブクログ大賞などを受賞した。同作品による直木賞・本屋大賞のW受賞、そして同作家2度目の本屋大賞受賞は史上初。大変大きな話題となり、代表作の一つに挙げられるようになった。同作は2019年4月に文庫化され、同年秋に石川慶監督、松岡茉優・松坂桃李らのキャストで映画化される。

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