ウランバーナの森 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.20
  • (53)
  • (172)
  • (394)
  • (98)
  • (18)
本棚登録 : 1621
レビュー : 211
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062649025

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 癒やしの物語だ。

    心の奥にある罪悪やトラウマ。
    誰もが人知れず背負っているものってあるよね。
    ふとしたきっかけで、それを思い出して冷や汗をかいたりする。
    忘れたいと思ったり、謝りたいと思っても、実現できなこともある。

    物語の舞台は80年代の軽井沢。主人公は一世を風靡した世界的なポップスター。日本人の前衛芸術家の女性と結婚して一児をもうけ、今はメディアの目にさらされずに平穏な日々を過ごしている。そんな彼が家族と訪れた真夏の避暑地での不思議な体験……

    現実と空想が入り交じったような、少しばかりファンタジックな世界。この小説を読みながら、誰もが思い浮かべるであろう、丸メガネをかけた髭面の白人男性。ラブ&ピースで世界の頂点に上り詰めた彼だって、人知れず心に暗い闇を抱えていた。そしてその闇が表面上に現れだし、彼の日常に異変を生じてくる辺りの描写が、スルッと心に入ってくる。誰もが共感できる設定だからこそだろう。

    この本を読み終えた今、何かが少しだけ許されたような気がするのは気のせいではないと思う。

  • 「最悪」や「無理」といった、人間の弱さやダメさや、でも愛すべき、どうしようもなさを描いた、どっちかゆうたらヘヴィーな読感の作品と比べると、この作品は奥田さんの素直な優しさといいますか、ロックンロール愛が出まくっていておもろいなあ〜と思う次第です。これが奥田英朗としての、デビュー作なんですね。興味深いなあ。

    主人公のモデルは、そらもうロックンロール界では世界で一番有名であろう、あの4人組バンドの、あのメンバーの一人の彼なんでしょうが、
    小説として?ノンフィクションとして?これって実話だったら嬉しいなあ、って思わせるところが、奥田さんの優しさと実力なんやろなあ。
    そういう意味では、現実のノンフィクション的な捉え方をしちゃいますので、小説とは思えない感じもアリ。

    逆に、あのバンドの事も、あの人物の事も一切知らない人が、この作品を読んだとして、純粋に小説としての出来は?として読んで、どんな感想を思うんだろうか?そこが興味深くもあります。どうしても、あの人の事を考えながら、読んでしまってますので。そういう意味では、音楽好きではない知人に読んでもらって、その感想を聞くことは貴重かなあ?とか思ったりもします。

  • 軽井沢が舞台の小説はハズレがない。私のお気に入りの「避暑地の猫」や「火山のふもとで」と並び、その土地への憧れや自然の神秘的な現象など、特別なオーラを感じる。誰しも心の奥にある死者への思いや後悔がコミカルに描かれ、幸せな気持ちで読み終えた。これを万平ホテルでアップルパイを食べながら読みたかった!

  • 架空人物 ジョン。もちろん、レノンを想定。ポップスターが日本で過ごした隠遁生活でなぜ曲調が変わったかの理由を著者が想像した話し。お腹が痛いことから霊界につながる話しとは想像していなかった。

    ・天才は終生天才ではない。水脈を掘り当てれば水はでるが無限では無い。天才にも天才期限がある。
    ・お盆は正式には 盂蘭盆会(うらぼんえ)という。サンスクリット語で苦しみという意味のウランバーナからきている。

  • ビートルズ現役を知る年代であり、当時、自分にとっては音楽とはすなわち彼らの楽曲が唯一であり、すべてであり、絶対だった。そのため、当然、ジョン本人への思い入れも深い。そういった自分の中にある先入主を踏まえて、ファンである奥田さんが書いた本作を果たして楽しめるか、嫌いになったりしないだろうかと少々杞憂があった。ただ、奥田さんの音楽と向きあう姿勢は別のエッセイでも読んで深く共感していたし、あとがきに書かれている本作の着想の理由を読んで、やっと納得して読み始めた次第。ファンタジーの部分は最初驚き、なかなか凝った構成なんだなと思いながら読み進めるうち、主人公が便秘に苦しむ設定のみならず、その際の滑稽な描写、あるいは他の連作でおなじみの伊良部総合病院を連想させる場面など、奥田さんへのファン心をくすぐる内容も盛りだくさんで、非常に楽しんで読み終えることができた。

  • ジョン・レノンや彼らの音楽に詳しくなくても楽しく読めました。詳しい人が読めばかなり面白いのでしょうね。
    便秘の辛さ、トイレでの頑張りは読みながら口元がにやにや。大変さが擬音で迫ってきました、便秘怖い。
    便秘で通院する帰りに靄に包まれた森で過去のトラウマと向き合い、赦し赦されて癒される物語でした。

  • キース・ムーンがたまらなく良い。実際ジョンとの会話もこんな感じだったんだろうな。変人と異端児の差はあれど、天才同士の会話がたまらなく良い。散々荒れた生活をおくった後、「ビューティフル・ボーイ」行き着いたジョン。やっぱし、とてつもない天才だったんだな。

  • ジョンレノンと関係あるとは知らず読んでから知った。屁の表現がリアルすぎて笑った。ふと所々笑える箇所ありすぎ

  • めちゃくちゃ面白かった。
    ジョンのことはあんまり知らないけれどそれも良かったのかもしれないなあ。
    なんかすごく好きです。

  • 1979年の夏、ある一家が軽井沢で休暇を過ごしていた。夫は世紀の大スター、ジョン、その妻で日本人のケイコ、そして一人息子という家族構成。妻の名前は異なるけれど、ジョン・レノンをモデルとしているのは間違いなく、ファンとしては読まずにいられなかった。

    軽井沢のパン屋で、ジョンはある白人女性を自分の母と見間違えたときから、体に異変が起こりだす。それまでに全く経験したことのないひどい便秘になってしまう。薬がまったく効かず、苦しさで夜も寝られず。医者も効果なかったが、妻に勧められたある心療内科へ通うようになると、さらに彼の周囲が騒がしくなっていく。

    病院の帰りになると、必ず靄がひどく立ち込め、そこからジョンに関係ある亡霊が次々と現れ出す。その亡霊たちと対峙することで、ジョンは過去のトラウマを乗り越えていく。そして、頑固な便秘も治って心身ともに爽快、しばらく遠ざかっていた音楽活動への意欲がわいてきて今後の活躍が期待されるところで物語は終わる。

    幼少期の両親との関係や少年時代のワルな出来事、マネージャーとの関係等、実際のレノンの話が物語を盛り上げ、本当にジョン・レノンが軽井沢でこんな体験したのかも、なんて錯覚しそうになる。

    1979年、実際のジョン・レノンも充実したひと夏をおくったと信じたい。翌年、レノンは音楽活動を再開する。それにしても、レノン殺害事件は悔やまれる。殺害日当日の取材で、「人生のうちで2回、すばらしい選択をした。ポールとヨーコだ。それはとてもよい選択だった。」という彼の言葉がずっと心に残っている。

全211件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『家日和』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』『ヴァラエティ』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。

「2017年 『新装版 ウランバーナの森』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ウランバーナの森 (講談社文庫)のその他の作品

ウランバーナの森 単行本 ウランバーナの森 奥田英朗

奥田英朗の作品

ウランバーナの森 (講談社文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする