文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 564
  • Amazon.co.jp ・本 (984ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062649612

作品紹介・あらすじ

夫を四度殺した女、朱美。極度の強迫観念に脅える元精神科医、降旗。神を信じ得ぬ牧師、白丘。夢と現実の縺れに悩む三人の前に怪事件が続発する。海に漂う金色の髑髏、山中での集団自決。遊民・伊佐間、文士・関口、刑事・木場らも見守るなか、京極堂は憑物を落とせるのか?著者会心のシリーズ第三弾。

感想・レビュー・書評

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  • これだけのものをどう収束させるのか…ひたすらページをめくり続けた。

    息づかいしか聞こえない暗闇のお堂。
    憑物落としに自然と増す緊張感。

    脳裏にはいく本もの川が浮かんだ。

    夢と現、狂気、陰鬱さを携え何回も蛇行し、濁りが増していく。
    やがて全てが混じり合い、一本の大きな川となる。
    そして悲しみと愚かさを流れに浮かべようやく冬の鈍色の海へと還っていく。

    まさに京極堂が全ての思いを海に還し、誰もが緊張感から解放されたそんな瞬間だった。

    まるで潮騒の拍手に包まれたかのような朱美のラストシーンが印象的。
    これはいつまでも心に残る。

  • なかなか読書時間が取れず、読了までに随分と時間がかかってしまいました。
    が、どんなに時間が空いても途中で読むのを止めよういう気にはならないところが京極作品の凄さだなと。
    前作でも思いましたが、大量の伏線を京極堂の登場で一気に回収していく様は見事以外のなにものでもありません。
    京極堂が本格的に登場してからはページを捲る手が止まらなくなり、夜な夜な一気に読みました。

  • まさか京極堂シリーズに☆5つ以外の評価を付ける日が来るとは!
    なんというか、本作品はこれまで以上に緻密な事件で、決して物足りないとかそういうんじゃないんだけど、個人的にイマイチ乗り切れなかったのだ。

    理由はいくつか思い当たる。
    前作『魍魎の匣』では関連してそうな複数の事件がある部分でリンクしつつも別個の事件だったのが、今回は逆に全く無関係そうな複数の事件が実は一連のものだった、という趣向で、本作品でも京極堂の憑き物落としの儀式でその繋がりが明らかになるのだが、そのポイントとなる事項がかなり細かくて、「そうだったのか!」ってより「そうだったっけ?」という心境になってしまったのが、一番の要因である。
    要は、私が細かな伏線を覚えていられなかったんだな。
    結構良い環境で集中して読んだのだけど。

    じゃあなんで覚えていられなかったのかといえば、事件が主要人物に全く絡んでいなかったから、各エピソードに没入しきれなかったんだな。
    最初の『姑獲鳥の夏』から僅か半年足らずでそうそう何度も彼らの周辺で事件が起こったらそりゃ堪らないんだけどね。
    だから(なのか)今回事件に絡んだのは、いさま屋なのだった。
    しかし、私にとって伊佐間は、名前だけが出てくる京極堂サークルの知人だったので(『魍魎の匣』の最後にちょっと本人登場したけど)、まさか主要人物に昇格するなんて、かなり意外だったのだ。
    実は『魍魎の匣』の木場修ですでに同じような感覚を持ったんだけど、伊佐間はそれ以上だった。
    それに、木場修の時はあからさまに色恋沙汰だったけど、伊佐間は(絶対朱美に惚れてるけど)枯れてる(笑)からそういう気持ちを表に出さないので、なんか盛り上がりに欠けたのかな(下世話!)。
    まぁ、伊佐間のキャラは良かったけど。

    あと、それぞれの事件に同じようなモチーフが出てきて(髑髏とか神主とか)、頭の中で整理しきれなかったのも一因である。どのエピソードがどの事件のものだったか、途中で混乱してしまった。

    そんで、みんな大好き中禅寺は途中留守にしてるし、私が大好き榎木津はそんなに幻視しなかったし、レギュラーにもっと活躍してほしかったんだな。
    (いや二人とも充分活躍してるけど。榎木津は持ち前の天真爛漫さでまた人を救って素敵だったし)
    (京極堂が「そうだね」と言ってくれる時はなんか承認されたみたいで嬉しくなるなぁ。私に言ってるんじゃなくても)
    関口に至っては、今回は語り手としての役割さえも奪われてしまって、ホント存在感が薄かった。
    朱美のモノローグのみ一人称扱いにした作者の配慮だろうけど。

    事件そのものは、昭和27年という設定の時代性が活かされてて、史実なんかも踏まえられていて、とても奥行きがあった。ただ、真言立川流のことは全く知らなかったし、キリスト教にも日本神話にも疎いせいもあって、真相が刺さって来なかったんだよね。
    あぁ…「そうだったのか!」を味わいたかったなぁ。伊佐間が会った朱美と降旗が話した朱美が別人ぽいこととか、宇多川朱美が失顔症ぽいことまでは何となく気づいたんだけどなぁ…。


    あと本編と直接関係ないけど、中禅寺、関口、榎木津の年齢が分からなくなってしまって、すごくモヤモヤした。
    『姑獲鳥の夏』で関口が奥さんを「自分より2歳下だから28、29歳のはず」とか言ってたから、私の中では中禅寺と関口は31歳、1学年上の榎木津は32歳設定だった。木場修は35だけど、榎木津と木場修は幼なじみであって同級とは書いてないから、矛盾はないかと。
    でも今回降旗が木場と同級の35で、幼少時の回想での木場と榎木津は3歳も差があるようには思えず、なんだかよく分からなくなった。
    関口が胡乱なのか、私が胡乱なのか。何か見落としたかなぁ。


    胡乱と言えば、本作品でも関口はあらゆる友人から胡乱胡乱となじられてるけど、その胡乱な関口でさえ、宇多川から一度聞いただけの話を正確に再話するの、驚愕でしかない。
    ていうか、みんなの再話力、半端ない。子どもだった白丘が立ち聞きした神官達の会話を、神社の固有名詞に至るまで正確に覚えてるの、天才かよ。そしてそれを一度聞いただけの降旗もきっちり覚えてるってどういうことよ。
    私が京極堂の座敷に居合わせて、再話しなくちゃならない立場になったら、全くお役に立たないだろう…


    なんか自分がお馬鹿なことを露呈しただけになったけど。
    再読すればもう少しいろいろ入ってくるかもしれない。
    とりあえず一度目の読了の感想としては、上記の通りです。

  • 京極堂シリーズの中でも、
    狂骨の夢は様々な事件が実は繋がっていましたの形をとっており、特に後半の憑き落としのくだりで一気に伏線を回収する快感がたまらない。

    従来の妖怪の語りだけでなく、フロイトやユングの精神分析、神話の話、密教がでてくるなど、実際の知識を得る意味でも面白く、京極節にやられてしまった。

  • 前2作と違い主要登場人物達が密接に関わらないので派手さには欠ける。
    ただ後半からの今までに出てきた些細な描写やら宗教やらが綺麗に収束していき、京極堂が憑き物を落とす描写は圧巻。
    終わりはしんみりとしたまま終わるのかと思いきや、良い意味でぶち壊してくれた。
    終わり方に関していえば一番スッキリして好きかもしれないな今作。

  • 長い!長いよ!関口くんたちが出るまでが長いよ!!!!!
    とはいえ謎解きはボリュームたっぷりでちょっとややこしいけどまさかの真相だったし終わり方が好きなので大満足です

  • シリーズ第三弾である。
    関口巽はある日、前回の事件の渦中で死亡した久保竣公の葬式の席で大物小説家、宇多川崇からとある相談を受ける。それは、記憶喪失の妻の、海鳴りと甦ってくる記憶と殺した夫への恐怖に関するものだった。一方その妻、宇多川朱美は自分が記憶を失う以前に、前の夫を、首を切って殺してしまったのではないかという疑団にさいなまれていた。
    一方、宇多川夫妻が住む逗子で、関口たちの古くからの友人、伊佐間一成は、海岸で朱美と名乗る女性と出会う。折からの冷え込みで体調を崩していた伊佐間は、朱美にいざなわれるまま彼女の家へとあがりこむ。酒に酔うまま、朱美は過去に同じ店で奉公していた女性を殺してしまったと告白する。
    同じく、逗子にあるキリスト協会の居候、降旗弘と牧師の白丘亮一は、ある日訪れた宇多川朱美という女性から懺悔を聞く。彼女は、以前首を切って殺した夫が首をつなげて甦り、自分に会いにくるという。そしてその度に、絞め殺し、首を切っていると言うのである。
    「死体が生き返る」…そんなことがありえるのか。そんな中、今度は宇多川崇が何者かによって殺害された。謎が謎を呼ぶ連続殺人事件に京極堂が挑む。そこには朱美を取り巻く壮絶な過去の秘密があった。


    今回は髑髏を巡る争奪戦。不幸の連鎖としか言いようがない
    前作の『魍魎の匣』では、バラバラの事件を関連付けて考えるからこそ解決できなかったのに対して、今回は一見バラバラに感じられる事件全てを繋ぎ合わせて考えることで全体像が見えてくる。ものすごく巧妙です。各個人がだいたい1個ずつ事件を抱えてくるのはいつも通りですね。
    ただ今までと違うのは、これまでの2作品とは異なり、作品全体が関口目線で書かれてないんです。
    章ごとに主人公がいて、基本的にはその目線で話が綴られる。
    そのため、いつもより京極堂と仲間たちの存在感が薄い。京極堂が出てくるのも後半に入ってからでちょっと寂しい。
    フロイトを中心とした心理学、宗教・歴史がらみのことも出てきます。夢と現実(うつつ)の境界の脆さには、ガツンとやられました。

    今回はとにかく風呂敷の広げ方がハンパじゃない。また、伊佐間はいい味を出している。
    これだけ拡散したものが、最終的にひとつの結論にむかって収斂していく、その過程が破綻なく描かれてるだけでもすごい。後半は一気読みでした。今回の京極堂の憑き物落としは読んでいて本当に気持ちいい。

    それにしても、結構遣る瀬無い話だなぁ。特に「彼」は…。

  •  伊佐間さんの見方がとても好き。
     視点が場面場面で変わるんだけど、木場さん視点になるとイライラして、降旗視点になるとなんかもう「これしかない」みたいな気分になって、伊佐間さん視点になるとみんなどこか可哀想だなっていうほんのり温かいような気持ちになるのがとても面白かった。
     関口君視点になるとなんだかみんなが優しいように感じられる。木場さんは「みんなの関口に対する言動が冷たすぎるように感じられるが自分もそうしてしまう」って思ってたけど関口君視点だとそうでもなくて、むしろ関口君視点で鬱陶しいのは関口君自身だった気がする。

  • シリーズ第3段。
    作中での3作が半年の期間であったとは(笑)。

    いわゆる“本格推理”と呼ばれるジャンルなのだろうけれど、“仕掛けありき”とならずにストーリーでも魅せてくれるのが、京極さんの好きなところ。

    “民江”兄妹の悲惨すぎる人生……。

    ★4つ、7ポイント半。
    2015.09.19.図。

  • 人間の感情としては、人の執念深さや復讐心やらが描かれているのだがシリーズを重ねるにつれて動機がフクザツ&高尚になってゆき、感情としては全く移入出来なかった。
    が、小難しい話をわかりやすくストンと落ちる言葉にしてくれる様がどうにもアドレナリン放出を誘うようで、ついつい読み進めてしまう。
    それこそ、こっちが憑物を落とされているようだ(と同時に、別の憑物を宿されているとも言えるのだが)。

    三作目にして思うのだが、「不思議なことなど何もないのだよ」ということもまたある意味では憑物なのだなと。

    しかし私が魅力を感じたのは、だからといって不思議なこと否定論みたいなもので読者に何かを押し付けたりするわけでもなく、むしろ最後のたたみかけにおいては出来すぎていて信じ難い=夢から醒めるような心持ちがして、不思議なことなど何もない、ということこそ不思議だ、と言う風に思えてしまったことだ。
    (ラストのお前なんか大っ嫌いだ!なんて、憑物が落ちてようやくみんな呪いから醒めて現実に戻ったはずなのに、最もフィクショナルに感じる。設定された装置としての、セリフだと感じる)

    京極堂の言葉も確かに現実の一つの見え方ではあるけれど、それが絶対的に正しいわけでもなく、答えでもない。
    彼のやっていることは、完全に右に振れきってしまった針を左に振れきってみさせるようなことで、こういう風にも見えるのだよ、ということに過ぎないのだと思う。だから思いつきの歌を歌ったり、でまかせを言ったり出来るし、それで成立するのだと思う。

    誰もが、自分なりの現実を物語化することで、どうにか整合性をとって日々を送っているように思う。
    例えば、不眠の原因はバイオリズムのせいなのかカフェインのせいなのか枕のせいなのかわからない。
    きっとこうなのだろうという理由が自分なりにでもわかると、安心する。
    自分なりのストーリーを作って、それを思い込んだり疑ったりしながら現実なるものを構成していく。
    その解体と再構築のアシストが「憑物おとし」の役目なのかもしれない。

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著者プロフィール

京極 夏彦(きょうごく なつひこ)
1963年、北海道小樽市生まれ。小説家としてだけでなく、世界妖怪協会・世界妖怪会議評議員(肝煎)など妖怪研究家であり、他にも装幀家、アートディレクター、俳優など様々な顔を持つ。
広告代理店を経てデザイン会社を設立。1994年、そこで暇つぶしに書いた『姑獲鳥の夏』を講談社に送ったところ極めて評価を受け、同年、即出版・デビューに至る。瞬く間に執筆依頼が殺到する人気作家に上り詰めた。
1996年に『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、1997年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2002年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で第130回直木三十五賞、2011年『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞など、数多くの受賞歴がある。
代表作に「百鬼夜行シリーズ」「巷説百物語シリーズ」「豆腐小僧シリーズ」など。

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