文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 655
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  • Amazon.co.jp ・本 (984ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062649612

作品紹介・あらすじ

夫を四度殺した女、朱美。極度の強迫観念に脅える元精神科医、降旗。神を信じ得ぬ牧師、白丘。夢と現実の縺れに悩む三人の前に怪事件が続発する。海に漂う金色の髑髏、山中での集団自決。遊民・伊佐間、文士・関口、刑事・木場らも見守るなか、京極堂は憑物を落とせるのか?著者会心のシリーズ第三弾。

感想・レビュー・書評

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  • 三作目にして、少し京極さんの構成に慣れてきた気がします。
    今回の主役は悪夢と頭蓋骨。
    そして、お題は 狂骨ー今昔百拾遺・下之巻 からの展開。1枚が1,000ページです。
    狂骨は井の中の白骨なり。井戸の中をあの世とこの世の境界と考えているようです。村上春樹さんの小説の主人公達は井戸の中に入るイメージだけど、意識の境界に入る感じなのかな。
    最初は、無関係と思われていた、悪夢、頭蓋骨、首無し死体、集団自殺。それを京極堂の仲間たちが右往左往しながら、調べて、最後は京極堂が全てを一挙に絡めあげていく。

    すっごいと思います。今回は骨に関する蘊蓄と精神世界夢判断。解説のタイトルにもありますが、はなはだしいまでにリアル。ですから、読み飛ばせない。ついつい真偽を調べたくなる。そして、ストーリーを忘れがちになってしまう。予測では、3回読めば全体像をしっかり掴めると思いますが、先を急ぎますの。
    特に気になったのが、10月にお留守番する神様「鍵取神社」について。この地域は、神在月と呼ばれているそうです。
    そしてここがどこかと言えば、石川県羽咋なんです。白丘(牧師?)の出身地にもなっています。そして、羽咋は、松本清張のゼロの焦点の舞台になったところです。地名で、厳しい冬と断崖をイメージできます。当然、京極さんはわかっているはず、と思ったのですが、ふと逆に、松本清張もなかなかの歴史家だから、この留守番の神様に転勤先の愛人宅の設定を使ったのかなと思ったりしました。偶然なのかな。それにしては、マニアックなんだけど。

    さて、次作いきます。

    • 土瓶さん
      ( ̄▽ ̄)ナンノコトデショー?
      ( ̄▽ ̄)ナンノコトデショー?
      2023/08/20
    • bmakiさん
      (笑)
      土瓶さんの魔の手に囚われてしまったようです(笑)
      早速Amazonでポチってしまいました(^◇^;)

      京極堂も大好きなんで...
      (笑)
      土瓶さんの魔の手に囚われてしまったようです(笑)
      早速Amazonでポチってしまいました(^◇^;)

      京極堂も大好きなんですよね!
      シリーズ全て読んでいないですし、おびのりさんのレビュー見ながら、また私も読もうかなぁー(*^▽^*)

      おびのりさん、土瓶さん楽しいお話ありがとうございましたm(_ _)m
      2023/08/20
    • 土瓶さん
      bmakiさん。
      ご存じのこととは思いますが、来月の9月14日には17年振りとなる百鬼夜行シリーズの新作「鵼の碑(ぬえのいしぶみ)」がとう...
      bmakiさん。
      ご存じのこととは思いますが、来月の9月14日には17年振りとなる百鬼夜行シリーズの新作「鵼の碑(ぬえのいしぶみ)」がとうとう発売されます!!

      ですので京極堂を読み返す、読み始めるなら今が最適ですぞ。
      と、宣伝しておきます(笑)

      しつこくレスしてすまそm(__)m
      2023/08/20
  • これだけのものをどう収束させるのか…ひたすらページをめくり続けた。

    息づかいしか聞こえない暗闇のお堂。
    憑物落としに自然と増す緊張感。

    脳裏にはいく本もの川が浮かんだ。

    夢と現、狂気、陰鬱さを携え何回も蛇行し、濁りが増していく。
    やがて全てが混じり合い、一本の大きな川となる。
    そして悲しみと愚かさを流れに浮かべようやく冬の鈍色の海へと還っていく。

    まさに京極堂が全ての思いを海に還し、誰もが緊張感から解放されたそんな瞬間だった。

    まるで潮騒の拍手に包まれたかのような朱美のラストシーンが印象的。
    これはいつまでも心に残る。

  • 前作の2作品がとても面白かったので、安心して身を委ねて読むことができました。今作は瓢箪鮎にスポットライトが当たっていて、各作品ごとに中心人物が変わっていく形式はとてもいいなと思っています。今作も百鬼夜行シリーズ特有の雰囲気に満ち溢れてて、それに浸れるだけでも満足してしまいます。

    百鬼夜行シリーズを3作品読んでみて、このシリーズの面白さというのは、謎が謎を呼びストーリーが最大限膨らんだあと、気持ちいいくらいに話がまとまって解決に至るところにあるんだなと個人的に思いました。次作も楽しみ。

  • 4度旦那を殺した女性と骨の夢ばかり見る元精神科医、海に漂う金色の髑髏と山中での集団自殺!前作はハコハコハコ!!!やったのが今作は骨骨骨!!!「骨」がキーワードとなってホネホネロックもビックリの骨が事件を紡いでいく百鬼夜行シリーズ第3作目!

    さすがの1000ページくらいの超長編作品!260ページくらいまでお馴染みのメンバーが出てこない!って普通の長編やったら物語終わってもーてるやん!くらいのページ数消費量!ちなみに京極堂がでてくるのは600ページ以降という半端なさ

    百鬼夜行シリーズ物語3作目になるけども空気感がめちゃくちゃ良くてハマりにハマってきてる!こんなに長い長編やのに初めから楽しんで読めて終盤になってくると終わりが寂しくなってくる!

    今作を読み終わりそうになっただけで寂しくなるくらいやから百鬼夜行シリーズ最後まで読んだ時、半端ない百鬼夜行ロスになりそう。

  • 私の記憶力の乏しさは、この度の久し振りの再読にも遺憾なく発揮された。事件のあらましを、さっぱり覚えていなかったのである。なので逗子海岸からのスタートに「懐かしの神奈川の海岸線だなあ」と呑気に読み進めて、すっかり騙されてしまったのだった。
    髑髏を中心に、おどろおどろしい記憶と行動が折り重なり、悲劇にたどり着いてしまった今作。骨と髑髏が恐怖の象徴にもなっていたのに、憑き物落としが進むにつれてある種の滑稽さをまとっていったのが不思議な感覚がある。起きてしまった事実はひどく悲しいことであるのに、海岸でのラストは妙に軽快だ。事件を見つめる視点が瓢箪鯰の伊佐間に始まり伊佐間に終わったのも一役買っているのだろう。
    髑髏のほか、鍵となったのは夢の存在だ。降旗とフロイトの存在が、物語の横顔を照らし続けた。妖怪変化の類に軸があるように見せて、精神医学やキリスト教まで話の風呂敷が広がるのには驚く。知識の掘り下げも、京極堂の詭弁も、読み進めると本当にぞくぞくさせられる。
    前作を読み返した時にも思ったのだが、いい大人になって地名に対する認識が明るくなり、距離感が身体感覚として腑に落ちるようになっているのが楽しい。伊佐間が名越の切り通しを歩いて逗子の浜まで行ったのには、よくもまあそんなに歩くなあと思ったりしたのであった。

  • なかなか読書時間が取れず、読了までに随分と時間がかかってしまいました。
    が、どんなに時間が空いても途中で読むのを止めよういう気にはならないところが京極作品の凄さだなと。
    前作でも思いましたが、大量の伏線を京極堂の登場で一気に回収していく様は見事以外のなにものでもありません。
    京極堂が本格的に登場してからはページを捲る手が止まらなくなり、夜な夜な一気に読みました。

  • 「歴史も真実もひとつじゃないんだよ関口君」

    あんなに様々に散りばめられた謎、不可思議、言動等が最終的にそういう事だったのかと読者の理解出来る形に収束するのは本当にお見事の一言

  • 髑髏を巡り思惑が入り乱れ、朱美という女性を中心に大きな渦を描いているような一作だった。
    憑き物落としはいつも、自分に何も知識がなくても関口も代わりにあたふた、ぽかん、としてくれるので臨場感を味わえる。
    シリーズもここまで進んでくると、もういつもの事のように感じられる。
    自分は信じるもののためにどこまでやれるのか、ついそんなことを考えてしまった。
    平穏で少し退屈な毎日ほど、尊いものはないのかも知れない。自分が自分のために生きれることの幸福を噛み締めさせられた。

  • 「文庫版 狂骨の夢」(京極夏彦)を読んだ。
    
この物語は朱美というひとに尽きるな。
この女性を描きたいがための長い長い小説だったのではなかろうか。
このラストシーンは語り継がれるだろう。
    
あー面白かった。
    
『——この女は矢張り魔性の者やもしれぬ。』(本文より)

  • まさか京極堂シリーズに☆5つ以外の評価を付ける日が来るとは!
    なんというか、本作品はこれまで以上に緻密な事件で、決して物足りないとかそういうんじゃないんだけど、個人的にイマイチ乗り切れなかったのだ。

    理由はいくつか思い当たる。
    前作『魍魎の匣』では関連してそうな複数の事件がある部分でリンクしつつも別個の事件だったのが、今回は逆に全く無関係そうな複数の事件が実は一連のものだった、という趣向で、本作品でも京極堂の憑き物落としの儀式でその繋がりが明らかになるのだが、そのポイントとなる事項がかなり細かくて、「そうだったのか!」ってより「そうだったっけ?」という心境になってしまったのが、一番の要因である。
    要は、私が細かな伏線を覚えていられなかったんだな。
    結構良い環境で集中して読んだのだけど。

    じゃあなんで覚えていられなかったのかといえば、事件が主要人物に全く絡んでいなかったから、各エピソードに没入しきれなかったんだな。
    最初の『姑獲鳥の夏』から僅か半年足らずでそうそう何度も彼らの周辺で事件が起こったらそりゃ堪らないんだけどね。
    だから(なのか)今回事件に絡んだのは、いさま屋なのだった。
    しかし、私にとって伊佐間は、名前だけが出てくる京極堂サークルの知人だったので(『魍魎の匣』の最後にちょっと本人登場したけど)、まさか主要人物に昇格するなんて、かなり意外だったのだ。
    実は『魍魎の匣』の木場修ですでに同じような感覚を持ったんだけど、伊佐間はそれ以上だった。
    それに、木場修の時はあからさまに色恋沙汰だったけど、伊佐間は(絶対朱美に惚れてるけど)枯れてる(笑)からそういう気持ちを表に出さないので、なんか盛り上がりに欠けたのかな(下世話!)。
    まぁ、伊佐間のキャラは良かったけど。

    あと、それぞれの事件に同じようなモチーフが出てきて(髑髏とか神主とか)、頭の中で整理しきれなかったのも一因である。どのエピソードがどの事件のものだったか、途中で混乱してしまった。

    そんで、みんな大好き中禅寺は途中留守にしてるし、私が大好き榎木津はそんなに幻視しなかったし、レギュラーにもっと活躍してほしかったんだな。
    (いや二人とも充分活躍してるけど。榎木津は持ち前の天真爛漫さでまた人を救って素敵だったし)
    (京極堂が「そうだね」と言ってくれる時はなんか承認されたみたいで嬉しくなるなぁ。私に言ってるんじゃなくても)
    関口に至っては、今回は語り手としての役割さえも奪われてしまって、ホント存在感が薄かった。
    朱美のモノローグのみ一人称扱いにした作者の配慮だろうけど。

    事件そのものは、昭和27年という設定の時代性が活かされてて、史実なんかも踏まえられていて、とても奥行きがあった。ただ、真言立川流のことは全く知らなかったし、キリスト教にも日本神話にも疎いせいもあって、真相が刺さって来なかったんだよね。
    あぁ…「そうだったのか!」を味わいたかったなぁ。伊佐間が会った朱美と降旗が話した朱美が別人ぽいこととか、宇多川朱美が失顔症ぽいことまでは何となく気づいたんだけどなぁ…。


    あと本編と直接関係ないけど、中禅寺、関口、榎木津の年齢が分からなくなってしまって、すごくモヤモヤした。
    『姑獲鳥の夏』で関口が奥さんを「自分より2歳下だから28、29歳のはず」とか言ってたから、私の中では中禅寺と関口は31歳、1学年上の榎木津は32歳設定だった。木場修は35だけど、榎木津と木場修は幼なじみであって同級とは書いてないから、矛盾はないかと。
    でも今回降旗が木場と同級の35で、幼少時の回想での木場と榎木津は3歳も差があるようには思えず、なんだかよく分からなくなった。
    関口が胡乱なのか、私が胡乱なのか。何か見落としたかなぁ。


    胡乱と言えば、本作品でも関口はあらゆる友人から胡乱胡乱となじられてるけど、その胡乱な関口でさえ、宇多川から一度聞いただけの話を正確に再話するの、驚愕でしかない。
    ていうか、みんなの再話力、半端ない。子どもだった白丘が立ち聞きした神官達の会話を、神社の固有名詞に至るまで正確に覚えてるの、天才かよ。そしてそれを一度聞いただけの降旗もきっちり覚えてるってどういうことよ。
    私が京極堂の座敷に居合わせて、再話しなくちゃならない立場になったら、全くお役に立たないだろう…


    なんか自分がお馬鹿なことを露呈しただけになったけど。
    再読すればもう少しいろいろ入ってくるかもしれない。
    とりあえず一度目の読了の感想としては、上記の通りです。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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