現代思想の冒険者たち 22

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062659222

作品紹介・あらすじ

マルクスの思想は回復可能か。孤独な精神が演ずる壮絶な思想的格闘。付・略年譜、キーワード解説、読書案内。

感想・レビュー・書評

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  • 地元の図書館で読む。躁鬱とはやっかいである。ただし、この症状は創作のエネルギーになる場合があります。ただし、一般論ではないです。この哲学者は、躁のとき書くそうです。逆の人もいるようです。さて、世間はケインズ一辺倒です。金融政策は有効ではなく、財政政策を求めています。数年前と大違いです。その根拠はあるのでしょうか。多分、その根拠はないと思います。もし、有効でなければ、財政政策はとどめを刺されます。また、理論がありません。理論は、クリスチャーノ教授のものです。面白い理論です。ただし、現実に、適用可能なものなのでしょうか。そこら辺が疑問です。しかし、やってみる価値はあります。僕は、欝のときに、論文を書くタイプです。このテーマに取り組んでみたいと思います。問題は、モデルに馴染めないのです。そう言えば、MIUモデルも馴染めませんでした。ニューケインジアンも同様でした。やらなければ、始まりません。

  • アルチュセールの遺稿にも触れられつつ、彼の思索の全体を解説している。

    本書では2章を費やして、若きアルチュセールの高等研究資格論文を解説している。アルチュセールは、カントの観念論にひそむ問題を指摘するとともに、それを克服する道をヘーゲルに見いだそうとしている。カントは、意識に現われる現象と現象全体を可能にする物自体との間に分断線を引いて、純粋な主観性と現象の彼岸である物自体とはたがいに無縁だと考えた。だがアルチュセールは、そこでは世界と主観の両者が空虚な「真空」になってしまうと批判する。カントは、真空の充実を「当為」として要請することしかできない。これに対してヘーゲルは、人間の自己意識を「能産的真空」として受け取りなおし、自己意識が真空の中で、真空を通して、真空を充実させて絶対知へと至ると論じた。

    「真空」についての感受性は、彼に固有の体質とも言うべきものだったと著者は述べる。やがてアルチュセールはマルクスにおける「認識論的切断」を見いだし、認識を一つの社会的過程として捉えなおす視座を獲得した。そうした理論的実践に関する考察は、イデオロギーについての独自の思想へと彼を導き、ついにマルクス解釈を脱してアルチュセール自身の思想を紡ぐことへと彼を向かわせるようになったと著者は見ている。そして、そこで彼の思索の重要なモティーフとして浮上してきたのが、ふたたび「真空」の問題だったのである。

    晩年のアルチュセールは、マルクスが歴史を連続的な時間と考える観念論的な発想を脱け出せなかったことに、彼の限界を見る。マルクスから離れたアルチュセールは、デモクリトスとエピクロスの古代唯物論における真空についての議論などを論じつつ、「偶然の唯物論」の構想を暖めていたことに著者は触れ、既存の西洋哲学の発想を超えてゆく可能性を見ようとしている。

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著者プロフィール

今村 仁司(いまむら・ひとし):1942-2007年。岐阜県生まれ。京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。元東京経済大学教授。専攻は社会思想史、社会哲学。

「2024年 『資本論 第一巻 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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