日本とは何か 日本の歴史〈00〉

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062689007

感想・レビュー・書評

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  • 網野善彦の射程は長い。日本の歴史を語るのに、まず日本とは何か、を問う。日本列島に住み始めた人々が国を作り「日本」と名乗ったのは7世紀だ。しかし、従わない人々が、またその埒外で生きる人々がいた。それを含めて「日本」を理解しなければならない。

  • この書籍は、日本の成り立ちを専門家の一人である著者が解説されています。

  • 網野善彦著 2000/10/24発行

  • 歴史家の網野氏の日本に対する考察を示した本。
    2月11日は戦前の紀元節、神武天皇の即位の日という全く架空の日であり、実際日本という国号、国の名前が定まったのは、689年に施行された「飛鳥浄御原令」とされる。実際は702年に中国大陸に渡った即天武后の使者が日本国の使者と明言している。
    日本は「日の本」、つまり「日出る処」を意味している。それは中国大陸、当時の唐を強烈に意識し、唐から名付けた国名と言える。

    日本は海で覆われた「島国」で閉じられた世界で生活してきた均質・単一な民族、単一な国家であるというのも全く虚像であり、実際は海外との貿易を中世時代には既に活発に行っていて、民族的にもアイヌ民族を有し、国家としても琉球王国、中部以東、関東、東北と、本州列島西部とはかなり異なっている。倭人というのも、本州列島西部では重なるとしても日本人とは同一ではない。倭人と呼ばれた人は朝鮮半島南部などにもいて、新羅人となっていた。

    ペルーのリマ市の1613~1614年の人口調査では日本人は既に20名いたと記されている。
    メキシコにも16世紀には既に日本人が住んでいた。江戸時代の末期には能登の船がサハリン南部に赴き、商業が行われていた。これらは氷山の一角にすぎず実際にははるかに太い渡航者たちの流れがあると考えられる。

    また弥生時代以降、日本人は稲作を中心とした瑞穂国日本という先入観があるが、実際には漁業や商業が日本人の職業の大きなウエートを占めていると考えられる。明治5年に作成された壬申戸籍によると、人口は約2000万人であり、78%が農民、工民が4%、商人が7%、雑業が9%、雇人が2%となっている。一方で実際には、農民に区分された人々商業、漁業、廻船業、あるいは金融業まで営んでいた者も数多くいたと推定され、その多くは一般的な農民のイメージとは異なった裕福な暮らしぶりであったと考えられる。

    日本国の戸籍は律令制のもと702年にはきっちりとした形で存在した。そののち実態を失い、中世においては戸籍は作成されないが、江戸時代に宗門改め帳の形で復活する。この戸籍制度は古くは唐の制度を日本が受容し家父長制とっているが、世界の多くの国々は戸籍制度を持っていない。家父長制により女性の社会的活動が制約されている一方で、遺産相続などにおいては基本的に男女均等であり、社会の実生活の中ではその役割・権利も男性と拮抗していると考えられる。

    日本の農民のイメージや、近年まで海外から閉ざされていたイメージを覆す、示唆に富む本ではある一方で、素人には専門的で読み応えがありすぎる気もします。

  • 網野史学の決算ともいうべき力作です。「人類社会の歴史を一生に例えるならば、いまや青年時代から壮年時代に入ったといわざるを得ない」から始まる。いかにも人類の社会史という観点からの壮大な試みを感じます。そして日本という国号・天皇がずっと続いてきた、日本は一つの民族だった、日本列島は一つの文化・政治圏だった、瑞穂の国だった(稲作中心)、江戸時代まで自給自足の農業経済であった、という常識を次々に否定するその筆の説得力は凄みを感じます。西尾幹二などの国粋的な歴史観が台頭している中で、非常に新鮮でした。

  • 人生の50冊

    豊かな教養のための楽読部門 

    日本の歴史、文化史に関する再考を促す話題作。
    通説となっている「日本論」の常識を覆すのが主眼。

    この場合の「日本論」の常識とは
    ・単一民族説
    ・孤立した島国説
    ・水田稲作中心の農業国家などである

    これらの通説は大和朝廷が、随を中心とする対中外交政策として
    もくろんだ神話や物語を利用して流布したストーリーであり、
    無視された部分が多すぎることを解明している。

    強力化する中国政権に対して、柵封制度に従うか否かが
    当時の大和朝廷の最大関心事であり、
    厩戸皇子を中心に進められた政策が
    「柵封を受けず、自立国家として中国だけでなく周辺国家にみとめさせること」であった。
    そこで有名な「日出ずる所の天子」という一文が生まれる。
    この政策が中国の「天子」に対する「天皇」を制度発生させ、
    柵封における蔑称であった「倭」からの独立としての「日本」の
    国名を誕生させるに至と推理する。

    初期大和政権の日本の国土拡張のための侵略の課程も
    詳細に検討されており、
    特筆すべきは、幾内の大和朝廷に対する東国の対抗軸の説明。
    坂東の反乱である平将門の乱以降、
    源頼朝の鎌倉幕府、徳川の江戸幕府など、
    西国と東国はじつは二つの国と区分すべき存在だとしている。


    私にとっては
    紹介される森巣博氏の「日本国籍所有者という意味以外では、日本人というフレームワークは存在しない」という指摘が重要である。
    いまの最大関心事である
    「少子高齢化に対抗する大量帰化人の日本国籍取得」政策を
    バックボーンで支えるかもしれない理論書になりえると感じた。

  • 全体を通して通説批判だったので、読んでいて爽快ではある。
    通説批判だが、論理的に苦しいところはほとんどない。だから爽快感が味わえる。

    「日本っていつから日本なの?」「日本人を日本人種ってとらえたらおかしくない?」「海をバリアとして考え過ぎじゃない?」「昔って米ばっか作ってたの?」

    こんな問いへの答えが書いてありました。
    面白かったです。けれど、分析・証明のためにたくさんの具体的な情報が載っていて、挫折を誘いそうです。


    この本を読んで感じたこと。
    「一般常識にするには細かすぎるな。」

    網野さんは一般常識を正したいみたいだけど、ちょっと受け入れにくいかもな。

    この本で述べられている内容は
    ①日本という国名は6,7世紀に天皇制ができて初めて登場する。だからそれ以前の弥生・縄文時代を「日本の歴史」に含めるのは正しくない。「今で言う日本という場所の大昔」が正しい。
    ②日本は縄文人系の在来種や弥生人とかの朝鮮系人種、アイヌ、琉球など様々な民族で構成されている。それを無視して、ひと括りに日本人とすると、日本人という人種があるように錯覚してしまう。正確に理解すべき。
    ③鎖国とかの元寇のイメージで、日本は海に囲まれてガラパゴスであるように錯覚してしまう。けれど、海のおかげで海運ができ、海外と交流ができる。てか、実際頻繁に交流があったことが埋もれてしまっている。それはアカン。
    ④「瑞穂の国日本」という言葉があるように日本の農民は米を作ってるイメージである。でも、今の日本にはたくさんの生業が伝わっている。実際、様々な物を生産・流通させていた。確かに米は主たる産業だが、それだけじゃないということも言わなきゃ片手落ちだ。

    ということでした。
    でもこれを一般常識にするには具体的すぎて普及しにくいと思う。
    「ここ=日本!」「日本に住んでる=日本人!」「海=移動困難!」「日本人=米!」
    ドン!ドン!!ドン!!!ドーン!!!! ってあっさり分かりやすいから普及しちゃってるんだよね。

    「日本=6,7世紀から使われている名称」「日本に住んでる=地域によって人種は様々で特色もある」「海=障壁にもなるが、流通の重要な懸け橋でもある」「日本人=米が主流だが、地域の特色に応じて様々な産業がある」
    ダラダラ♪ダラダラ♪

    中学までは分かりやすくさっぱりでいいと思うし、世間で広く知られている情報を理解させるでいいと思うな。
    高校でこれを教えるべきだろう。一般ではかのように言われているけれど、実際はこういう見方もできるのだ。

    批判力がつくし、多面的な見方ができるようになるね。


    大学生に読んでもらうと良いんじゃないでしょうか。

    以上

  • 今までの歴史教科書の常識を真っ向から否定する見解は刺激的だった。「孤立した島国」「瑞穂国」「単一民族」といった日本へのイメージを虚像とまで断じ、日本の多様性をさまざまな事例を用いて説く見解は、大変興味深いものでした。
    でも筆者が真っ向から否定する君が代、日の丸だが、やっぱり私にとっては国歌は君が代だし、国旗は日の丸。そこは譲れない見解の相違。

  • 日本という国号が対外的に認められるのは702と
    天皇の前は、大王。

    国号というものの、天皇という名称に無頓着であっては
    ならない。と。

    高校でならった日本史も
    どんどん学界レベルでは動いているんだな。と実感。
    学部で鎖国から4つの口という認識が常識といわれたときも衝撃だったけど。

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プロフィール

1928年山梨県生まれ。東京大学文学部卒業。都立北園孝行教諭、名古屋大学文学部助教授、神奈川大学短期大学部教授、同大学経済学部特任教授を歴任。専門は日本中世史、日本海民史。著書に『日本中世の非農業民と天皇』『無縁・公界・楽』『異形の王権』『蒙古襲来』『日本の歴史をよみなおす』『日本社会の歴史(上・中・下)』『「日本」とは何か』『歴史と出会う』『海民と日本社会』ほか多数。2004年逝去。

「2018年 『歴史としての戦後史学 ある歴史家の証言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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