政党政治と天皇 (日本の歴史)

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  • 講談社
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レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062689229

作品紹介・あらすじ

明治・大正・昭和の天皇は、政治にどう関与したのか?昭和天皇はなぜ、田中義一首相を問責したのか?東アジアの国際環境のうねりの中で、変容していく日本の君主制。明治天皇の死から五・一五事件による政党政治の崩壊までを、日英比較を交え、さまざまな人々の生き様を通して描く。「倉富勇三郎日記」『牧野伸顕日記』「大正天皇実録」などから隠された事実を読み込み、新史料を駆使した意欲作。

感想・レビュー・書評

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  • この巻では、明治末期から昭和7年までの日本国内と国際情勢が解説されいます。
    日本で初めて投入された政党による政治と天皇との関わり合いの中、大正末期から軍部の台頭によって暗い世の中へと。

  • 2002年刊行。叙述対象の時期は、明治天皇死去、大正政変から五・一五事件まで。著者は京都大学大学院法学研究科教授。幣原外交と日本政治史の連環はやや詳しいが、本書は、かかる外交や陸軍の動向よりも、政府・政党の動き、さらには各種政治運動とその地方への波及が主たる叙述。その中で、美化・脚色された明治天皇像を行動モデルとした昭和天皇、宮中重臣の行動に関し言及されており、ここが他書と異なる視点で、注目すべきところかも。

  • 原敬の暗殺は日本国家の行く末に大きな影響を与えた。
    ①普通選挙について、納税の要件を撤廃せずに批判されていたが、あくまでも段階的な開放を考えていたのであって、自ら選挙法を改正していったはずである。
    ②政党出身の首相が、衆議院の支持を背景に宮中や陸海軍までに影響力を及ぼし、責任を持って政治を束ねるという、英国に類似した立憲君主制を確立・定着させようとした方向性が潰えた。
    ③彼が存命ならば、若き昭和天皇を支え、天皇の公平な調停者のイメージを保持し、満州事変が起きても陸軍をコントロールできたかもしれない。10代の若者による凶行は、日本が日中全面戦争、太平洋戦争にむかう道を変え得る、1つの可能性を摘み取った。

    張作霖爆殺事件時、前例に反して昭和天皇が過度な政治介入(田中首相の問責)を行ったことで、特に陸軍・国粋主義者からの信頼をおとすことになり、逆に、満州事変以降の積極調停に二の足をふむことにつながった。明治天皇は、政治の調停者としての役割は果たしたが、強い政治関与は行わなかった。
    昭和天皇に対する風当りは、昭和に入って、明治天皇・明治時代の神格化が進んだことも拍車をかけた。
    過度な精神主義とやせ我慢の建前にがんじがらめにされた息苦しい時代となった。

    首相の推薦は元老&後は右大臣が実施していた。
    最後の元老西園寺公望は、ライバル原敬・山縣有朋の陰に隠れがちだが、彼らの死後、調停者として随一の政治力を誇り、1920~30年代のキーパーソンとなった。

  • 歴史に関心を持ち始めた人、これから日本史を研究を始めようとする人向けのシリーズということで、大変読みやすくしている作者の意図が感じられた。
    とりわけ、政治を担当する人々の「対立」で、明治後期~昭和初期という時代を描くという構想自体に、まさにその意図を感じられた。

    ただ、「目的達成のために、利害の一致によって他者と協力したり別れたりすること」が「政治」の常であるのなら、「対立」よりも「協力」と「分裂」という構成で描く方が、方法として合っているのではないか、とも考える。

    しかし、「対立」は「協力」よりも世界をはっきりと描くことが出来る。
    作者もこの点については十分承知して用いていると考える。

    この非常に「鮮やかに描き出される世界」の弊害も考慮しつつ、ぜひこれから研究をしてゆこうと考える方々には読んでもらいたい。

  •  著者による「昭和天皇」「西園寺公望」「山県有朋」を読み、明治後期から昭和戦前期における並々ならぬ知見を感じ、著者の他の著作を検索し、本書を手にとってみた。
     本書は、明治天皇の死(1912年)から、政党政治が崩壊した1930年代を扱っているが、この激動の時代の歴史的事実を単に並べるだけではなく、「政治的勢力」「その路線」「時代的背景」「歴史的意味」等々、実に深いとしか言い様がない。
     本書のように時代を理解させつつ、現在の視点から色々と考えさせてくれる歴史書は他に無いとさえ思えた。
     本書は序章において、「昭和天皇の田中問責」(昭和3年、1928年)を取り上げているが、これは「つかみ」だろう。そしてこの歴史上有名な「事件」がどのような背景のもとに成立していたのかが、その後詳細に明らかにされていく。
     その中で、「明治憲法が最終的な判断者として天皇の役割を期待する形になって」おり、「明治憲法には大きな欠陥があった。・・・危機の場合は天皇か元老がつねに全体の調停をせざるを得ないしくみになっていた」とある。「明治憲法」における「政治システム」にこのような大きな欠陥があったとは驚きである。
     「元老」が健在な時代にはその欠陥が表面化することはなかったが、病弱な「大正天皇」と若年の「昭和天皇」の時代にそれが表面化したとすると、昭和20年の「帝国の破綻」は政治システム自体に内包されていたとなるのだろうか。
     本書の凄さは、この時代の膨大な歴史的事実を読者に飽きずに読ませていることである。前記の視点だけではなく、当時の社会情勢や、その影響と背景を描きつつ、その「政治システム」としての意味を読者に考えさせる点は、他の歴史書をはるかに凌駕していると思えた。
     しかし、本書を読んで思ったのだが、現在の日本の政治も多くの政治勢力の利害と路線の調整ができずに行き詰まっている。
     現在の日本は、危機の際の調整を「天皇」や「元老」が担っていた「明治憲法」時よりは、はるかに「決定権」が法律や規定上確立されているはずであるが、現実には機能していない。
     本書の「大正」から「昭和戦前期」の日本の政治風景を読むと、ひょっとしたらこの「危機に際しての政治勢力の調整不能」という「政治状況」は、明治期に「西洋的政治システム」を日本に移植することによって生じたもので、その背景は日本の「国民特性」にあるのではないかとさえ考えてしまった。
     ただ、本書はあまりにも大著である。384ページの内容は重い内容がぎっしり詰まりすぎている。それを意識してか冒頭に「天才スイマー前畑」、巻末には「庶民文化」を取り上げているが、全文を消化することは困難とも思えた。
     著者の力量は高く評価したいが、できれば多くの新書で小分けして読みたいを思うのは私だけだろうか。

  • 内容豊富なうえに、読みやすいと思います。タイトルの通り、歴代天皇の政治への関わりや民衆の中の天皇像の変遷が詳しく書かれていて、興味深かったです。

  • 日本の歴史(22)
    政党政治と天皇  大正時代〜昭和初期
    ISBN:9784062689229
    ・伊藤之雄(著)
    講談社
    2002/09/10出版
    398p 19cm(B6)


    ◆要旨 (「BOOK」デ−タベ−スより)
    明治・大正・昭和の天皇は、政治にどう関与したのか?昭和天皇はなぜ、田中義一首相を問責したのか?東アジアの国際環境のうねりの中で、変容していく日本の君主制。明治天皇の死から五・一五事件による政党政治の崩壊までを、日英比較を交え、さまざまな人々の生き様を通して描く。「倉富勇三郎日記」『牧野伸顕日記』「大正天皇実録」などから隠された事実を読み込み、新史料を駆使した意欲作。

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    ◆目次 (「BOOK」デ−タベ−スより)
    序章 一九二九年六月二十七日
    第1章 大正政変
    第2章 第一次世界大戦と日本の跳躍
    第3章 原敬首相の信念-「秩序」の再生と漸進的改革
    第4章 天皇と立憲君主制
    第5章 改革のうねり-国際協調とデモクラシ−
    第6章 護憲三派内閣
    第7章 北伐と御大礼
    第8章 世界恐慌と立憲君主制の危機
    終章 庶民文化と天皇

  • 「日本の歴史」シリーズのうちの一作。明治後期から昭和戦前期までの政治の流れを、政党政治や宮中の動き、憲正の常道ルールの形成などの観点から紐解いている。著者は近代日本政治への合理的選択アプローチの適用を批判した方で、日記などの資料をベースに一般向けにわかりやすく歴史を叙述している。

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著者プロフィール

京都大学大学院法学研究科教授
1952年生まれ,京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学,博士(文学)。
主な著書に,『昭和天皇と立憲君主制の崩壊――睦仁・嘉仁から裕仁へ』(名古屋大学出版会,2005年),『「大京都」の誕生――都市改造と公共性の時代 1895~1931年』(ミネルヴァ書房,2018年),『元老――近代日本の真の指導者たち』(中公新書,2016年)など。

「2018年 『日本政治史の中のリーダーたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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