江戸の怪奇譚: 人はこんなにも恐ろしい (The New Fifties)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 69
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062692601

作品紹介・あらすじ

口から針を吐く少女。殺人鬼に豹変したまじめな旗本。遊女の亡霊のしわざか、物の怪の悪戯か-今も昔も本当に怖いのは、人の心の闇が生んだ「現実」。

感想・レビュー・書評

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  • 表紙が好き

  • 怪談、奇譚を集めたというより、怪談を例に引き、実際はどうであったのか
    当時の実情や心理からの筆者の考察が書かれている。
    確かに浮世絵などで残っているからといって
    当時の人がみんな妖怪を信じていたというわけもなく、
    パロディや商売やその他いろんな理由があるだろう。
    たとえば今コロナ禍でアマビエが流行っているが、存在を信じているかと言ったら
    また別問題であることと同じだろう。

    神隠しの項で、藩が主導で子供を誘拐した例があることは知らなかったので
    大変驚いた。

    河童は自分でも昔調べたことがあって、河童は緑のイメージがあるが
    地域によっては赤であることもあり、間引きで捨てられた子供なのではと感じたので
    ストリート・チルドレンとの言い換えはなるほどと思う。

    現代になって毒親とかネグレクトとか名前がついてイメージを共有しやすくなっただけで、
    昔からそうした問題はあって、人間は別に変わっていないのだろう。

    猫や狐の話が個人的には好きだ。

  • 江戸時代に伝わる怪談を集めた本。
    江戸の人々が当時にしては合理主義的だったということに尽きる。

  • 歴史

  • 作者は原題を『成熟した大人のための江戸の怪談』としたらしいのだが、これでは売れないと『江戸の怪奇譚』となったらしい。

    最近は古文書が広く知られるようになって、江戸が夢のようないい時代だったという評価もよく聞くが、
    現代のニュースにも出てくるような残忍な子殺し、親殺し、陰湿ないじめなど、今以上におどろおどろしい事件も多数あったことが、たくさんの文書に残されている。

    怪綺談を不思議、妖と珍しがって怖いもの見たさで喜ぶ人ばかりであったわけではなく、怪綺談をたくさん集め、その背景を探り現象の真実を考察する江戸人もいたのだ。
    怪奇現象を集めた『反古のうらがき』は鈴木桃野という人がいる。

    現代の精神科医師のように、事件の背景を詳しく分析している。

    この作家も鈴木桃野のように、八十数冊という当時の本(黄表紙も含む)から、江戸当時の人々の生き様やその苦悩を丹念に掘り下げる面白い一冊。

  • 幽霊の正体見たり枯れ尾花、まさにその感じの一冊。
    狐狸妖怪の仕業と囁かれ、伝わってきたことに懐疑的な目を向け、現代の目で解いていくと、今の社会と変わらない問題が。
    苛め、介護、少年犯罪、虐待に痴情のもつれ…あれれれ?
    江戸時代の事件簿としても興味深い一冊でした。
    日本人って、変わってないのねー。

  • ただ奇談怪談を集めただけではなく、さらに考察して「ファンタジックに表現されてるけど、実はこうだったんじゃないかな?」と一歩踏み込んだ江戸の現実を見せてくれる本。普通に江戸怪談的な物を読みたいなと思っている人には向かないけれど、猟奇犯罪とかが好きな方にはオススメ。

  • [ 内容 ]
    口から針を吐く少女。
    殺人鬼に豹変したまじめな旗本。
    遊女の亡霊のしわざか、物の怪の悪戯か―今も昔も本当に怖いのは、人の心の闇が生んだ「現実」

    [ 目次 ]
    神隠し
    河童
    十六歳
    奇病
    猫娘
    嫉妬
    イジメ
    炎の女
    老人怪護
    ひとつ家
    懐疑的
    凶宅

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 今も昔も人間の本質って変わらないのね。

    人間の欲とか、闇とか、弱さとかが見せる『怪奇』っていうものの考証はおもしろいね!
    現代にも通じることがたくさんある!

  • 「今もここにある恐怖―大人のための怪談です。」

    『甲子夜話』や『耳嚢』から江戸時代の怪談マニアによるコアな書物に至るまで江戸時代の記録にみる怪異や超常現象を検証する。「人知を超えた」と思われる事件や出来事に見えてくるのは、その深さがどこまでも計り知れない人の心の闇。

     いわゆる「お岩さん」や「番町皿屋敷」系の幽霊話ではなく、絵や記録に残された実際の事件をとりあげて、「人はこんなにも恐ろしい」とサブタイトルにあるように、本当に恐ろしいのはそういう事件や怪奇現象を生み出す人の心の闇であり、その底知れなさであるというところへ持っていく。

     「河童」や「猫娘」という項目に混じって「嫉妬」「イジメ」「老人怪護」などが取り上げられ、その根底にある「性的欲求」や「差別」「利権」といったものが浮かび上がってくるとき、それが何も江戸時代に限ったことではなく現代でもなお、人が心の奥に抱える普遍的なものであることがわかる。単なる江戸の怪談話ではない本書のスタンスはここにある。

    〈〝今そこにある恐怖〟を想起させるものでなければ、われわれ即物的で打算的な「大人」は、江戸の昔の怪談などに興味をそそられないのである。〉

    「神隠し」の章で子供が行方不明になる事件が頻発していたことについて、日本の先住民族が種を残すために連れ去ったという推理や、美少年を連れ去る天狗の正体を愛欲や愛玩の対象を求めた僧侶たちとする説は、真偽のほどは別にしてもさもありなんという妙な説得力がある。霊力や知識があって自在に空を飛ぶことができる天狗を聖職者の隠れた愛欲の権化として考えると、これは自分の勝手な想像なのだが、あの長い鼻が男根を想像させてなんとも…w

     笑えない話もある。「ひとつ家」で語られる、山奥の村で仲良く暮していたはずの4人の母子。憑き物にとらわれた弟は兄と姉に母を殺すことを命じ、同じく夢心地のうちに兄は斧を母に振りかざし、兄弟は姉とともに母を細かく切り刻んだ。その後の子供たちの供述も載せられているが、動機は「不明」。物の怪の仕業かはたまた集団催眠か。だが「動機不明」のうちに行われる惨劇は、現代でもなお繰り返され、私たちはこうした惨劇のニュースを聞くにつけ震撼し立ちすくむ。

     利権であれ性欲であれ、動機がわかるものはまだ良いのかもしれない。人は、当事者自身でさえ自覚の無い狂気を目の当たりにしたとき人の心の闇の底知れない淵を覗いた思いに捕らわれ、その「わからなさ」という恐怖を霊や物の怪と名づけなければ完結できないのではないか。時代を超えてその恐怖は今も目の前にある。

  • 江戸時代も現代も怪奇を見せるのは人である。
    幽霊話や妖怪の話はその後ろにある生活がみせるものであるといいつつ、不思議な話を否定しているわけではない。
    丁寧な解説もあり、読みやすかった。もう少し数が多いと嬉しい。

  • 今も昔も人間の本質なんて変わらないものだということを考えさせられる一冊。

  • 怪談話や妖怪の紹介の後に、丁寧な解説や考察がついていて、風俗的な事がよくわかる。
    もっと沢山の怪奇話を載せて欲しかった。

  • 装画が洒落ている、

  • 内容は勿論のこと。でも一番惹かれたのは表紙の絵です。

  • それなりに面白い。しかし中盤以降は怪奇譚と云うよりも実録犯罪もののような展開。最後までテーマは怪奇で貫いて欲しかった。

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著者プロフィール

氏家 幹人(うじいえ・みきと)
1954年福島県生まれ。東京教育大学文学部卒業。歴史学者(日本近世史)。江戸時代の性、老い、家族を中心テーマに、独自の切り口で研究を続けている。著書に『大名家の秘密』(草思社)、『かたき討ち』『江戸人の老い』『江戸人の性』(いずれも草思社文庫)、『増補版 江戸藩邸物語』(角川ソフィア文庫)、『武士道とエロス』(講談社現代新書)、『江戸の少年』『増補 大江戸死体考』(いずれも平凡社ライブラリー)、『不義密通』(洋泉社MC新書)、『サムライとヤクザ』(ちくま文庫)などがある。

「2021年 『文庫 江戸時代の罪と罰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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